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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 三面鏡の少女-45

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三面鏡の少女 45


ぽつり、ぽつりと雨粒が地面に水玉模様を作り上げていく
空はそれほど暗くなく、通り雨だろうと判断して、傘も差さずに能力を使い濡れるのを防いでいた手塚星
彼の身体はそれまでの小学生らしい姿ではなく、想い人に見合う年齢の姿へと変質していた
「俺は、強い、強い、まだまだ強くなれる……」
《一気には無理だっての。身体が持たねぇってマジで。俺のアドバイスは割と的確なんだぜ?》
ぶつぶつと呟きながら歩く星に、呆れたような声で諭す『悪魔の囁き』
「足りないんだよ……無敵の能力も発動させる前に攻撃されて倒されちゃ意味がない」
その外見は変わる事無く、その骨が、筋肉が、皮膚がぎちりと強度を増す
「能力の強さだけじゃない。身体も強くならなきゃいけないし、武器も必要だ」
ふと、遠くで馬が嘶いたような音がした
この町なら馬の一頭や二頭、都市伝説絡みでうろついていてもおかしくはない
そうは思っていたのだが
それは馬の呼吸と嘶きではなく
バイクの排気とエンジンの音
大柄の男が跨る大型のバイク
真紅に染め抜かれたその胴体には、『SEKITO』の文字が刻まれていた
そのバイクの主である呂布は、バイクのエンジンを掛けたままアスファルトに足を下ろす
まるで突風に煽られているかのような威圧感に、『悪魔の囁き』が星の頭の中で喚く
《逃げるぞ! これはマジで洒落になりそうにない!》
「……だろ」
《お前が死んだら俺も巻き添えで死ぬんだからな! 聞いてんのかおい!》
「こういうのが闊歩してるなら、ぶっ倒せなきゃお姉ちゃんは守れないだろ」
退くのではなく、有利な距離を確保するための後退
やや広げた間合いで、星は力を込めて言葉を放つ
「俺の手には武器がある!」
じゃらりと音を立てて星の手に握られたのは、それは先端を鋭く削ぎ落とした細い鉄パイプのようなものの束
「速く速く何より速く飛ぶ! そして確実に敵をぶち抜く!」
星の手から放たれた得物は、様々な軌道を描きながらあらゆる方向から呂布に襲い掛かる、が
呂布もまた中空から引き摺り出すように得物を手に取り、一閃でその全てを薙ぎ払う
《お前の能力が干渉する力より、あいつの存在と意思力が強ぇんだよ! 逃げ隠れなら力が干渉するのはお前だから何とかなる、早くしろって!》
「だが武器は形を変えて敵を拘束する!」
《頼むから話を聞けよ!?》
「ぬう!?」
打ち払われた鉄針がワイヤーのように細く長く伸びて呂布の全身に絡み付き、鋭利に尖った両端は勢いをそのままにアスファルトに突き刺さる
「この程度で俺を止められると思うな!」
皮膚を裂きながらも、力を込めてそれを振り解くが
「俺は高く高く跳ぶ! ぶった斬るだけの武器を、奴目掛けて叩き込む!」
何も持っていなかったはずの手に戸板ほどもある巨大な剣が現れ、呂布の頭上から思い切り振り下ろした
轟音を立ててアスファルトに突き刺さる鉄塊のような剣
それは半ばから真っ二つに叩き斬られており、砕かれたアスファルトの真ん中に両手で戟を構えた呂布が立っていた
「俺に両手を使わせるか。楽しませてくれる」
「楽しませてるつもりなんか無い」
殺意に満ちた目で呂布を睨み付け、星は叫ぶ
「燃えろ燃えろ燃え尽きろ! お前の身体は炎に包まれた!」
爆音を立てて火柱が吹き上がり、雨粒を蒸発させながら周囲を焦がし呂布の身体を包み込むが
「憤っ!!!」
気合一閃その炎は吹き散らされて、陽炎となって散り消える
「言葉を現にする能力か」
そう言うと呂布はつまらなそうに殺気を鎮め、戟を一振りして何処かへと消してしまう
「何だよ、素手でも充分だとでも言うのかよ」
「それ以前だ。貴様と戦う価値は見出せん。貴様は俺を楽しませるつもりは無いと言ったが、確かにその通りだな」
「――っ!!! 見えない刃で貫かれろ!」
くるりと踵を返す呂布の背中に、星は不可視のナイフを具現化し雨霰と叩き込むが、見えないはずのそれすらも振り返りすらせずに片腕で薙ぎ払われる
「そこに無いものさえ作り出す能力がありながら、何故にもっと直接殺せる手を使わん。口に出すだけで良いのなら、頭の中を抉るなり心の臓を潰すなりできるのだろう?」
「それ、は……相手の身体に直接干渉するのは、相手が強ければ効果を発揮しにくくて」
「だからといってまず試さぬ道理は無かろう。単に貴様は死合うほどの気概が無いだけだ。死ぬのは怖くはないが、殺すのが怖いといったところか」
「うるさいっ! 俺はお姉ちゃんを守る為だったら、誰だって殺してやる!」
「そのような事を口にしているうちは無理だな。覚悟が出来ているのならば、言葉にせずとも手は下しているものだ」
焼け焦げたライダースーツの煤を払いながら、いつの間にか戦闘領域から避難していた赤兎の元へ歩み進む呂布
「試さぬのなら俺は別の強者を探しに行くぞ」
赤兎に跨る呂布に、声を発する事なく立ち尽くす星
呂布はつまらなさそうに顔を背けると、そのまま赤兎のエンジンを嘶かせ走り去って行った
《そう落ち込むな、相手が悪かっただけさ。生きていただけでめっけもんだって。もうちょいまともな相手なら臓腑を捻り潰すぐらいやれるさ、なあ?》
「……ああ、そうだとも。俺はお姉ちゃんの為なら、何だって出来るんだ」
自分に言い聞かせるように、その言葉を己の心に刻み付けるように、力を込めた言葉を紡ぐ
あちこちが砕け崩れた心に刻み込まれた言葉は、そこからまた新たなるひび割れを生んで崩壊を進めていく
「ここでの、戦いは、無かった」
そのほとんどが自分が揮った力の影響だという事もあり、言葉一つで荒れ果てた道路は瞬きする間もなく何事も無かったかのように修復される
「何でも、できる、俺は、お姉ちゃんを、守る、できるんだ、やるんだ」
《おい、大丈夫か? 都市伝説に呑まれかけてんじゃねぇのか、おい》
星は『悪魔の囁き』の声など聞こえないかのように、ただ独り言を呟きながら歩き出す星
黒かったはずのその瞳は、何時の間にか金色に染まっていた


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