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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 三面鏡の少女-46

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三面鏡の少女 46


時間にしてほんの十数秒
運転席と助手席という位置関係から、やや不自然な体勢で抱き合っていた二人は、ゆっくりと身体を離す
真っ赤になったまま、やや乱れたコートの襟を正して照れ隠しの作り笑いを浮かべる佳奈美
「心配掛けてごめんね、Hさん。なんかまたあたし一人でテンパってたみたいだね」
「別にお前だけのせいじゃない。俺も『組織』に関わる話は全然してなかったからな」
急ブレーキで不自然な角度で停まっていた車を、ハンドルを切り返して路肩に寄せる
「あたし、ね」
佳奈美は、ぽつりと呟いた
「ずっとHさんに助けられてばっかりだなって」
秋祭り後の通り魔
クリスマスの謎のサンタクロース
年明けには白蛇
謎の寒気
分身の造反
そして今回カードの呪い
当然ながらそれら以前にも様々な事に巻き込まれては助けられている
1~2ヶ月に1回ほどのペースで何らかの騒動に巻き込まれている彼女は、Hが居なければ何回死んでいるだろうか
「自分の能力をちゃんと使いこなせてれば、Hさんに迷惑掛けずに済んでたかもしれないのに」
「そうは言うがな。狙われやすいお前さんをマークしておく事で、事件解決の手掛かりになる事も多いんだぜ、実は」
秋祭りに佳奈美を襲った『夢の結末』の契約者などはその典型だ
「囮!? あたし囮!?」
「そういう意味じゃない。居るだけで何かと助かってるって事だよ」
その言葉には、Hにとっては二重の意味が掛けられている
が、真意は上手く伝わってはいないようで、少女は首を傾げてうーんと唸っている
「それに、俺の能力を使うにあたっては、随分と貢献してもらってるしな」
「忘れろー!?」
「忘れたら俺、戦えないだろ」
「妄想! 妄想でカバー! Hさんならできるでしょ!?」
「ふむ、じゃあ佳奈美のあんな姿やこんな姿を妄想してみよう」
「やめー!? やっぱり妄想やめー!!!」
にょろにょろと髪が伸びる様子を見て、真っ赤になって喚きながらHをぽかぽか叩く佳奈美
彼女と過ごしている時間は、過去も、復讐の事も、全て忘れそうになる
だが結局それらを忘れる事はできるはずもなく
彼女と離れた時に感じる寂しさと、失われるかもしれないという不安が日に日に大きくなるばかり
だからこそ
「久し振り」
車の正面に突如現れた少年の姿は、その心を大きく揺さ振る
外見は15か16歳ほど、身長は180には幾分か届かない程度の男子高校生といった頃合の少年だ
黄金色の瞳と、一房だけ金髪になった黒髪を見て、Hは小さく舌打ちする
「車ぶっ壊されたくないだろ? 降りてこいよ」
「佳奈美、待ってろ」
「え? あ、でも」
佳奈美は車の前に立つ少年とHを交互に見て、不安げに訪ねる
「あれ……星くん、だよね?」
身長も、体格も、服装も、瞳の色すら違う少年を見て、一目でその正体に気付いた佳奈美
「いいか、絶対に車を降りるな。俺に何があっても、あいつに何があってもだ」
「え、でも」
さっさと車を降り、言葉を遮るようにドアを閉め
変わり果てた姿の星に、つかつかと歩み寄る
「そんな様じゃ、やっぱり佳奈美は任せられねぇな?」
「はっ、あんたが俺じゃあ間に合わないとか言うから、ちょっと追いついてやっただけさ」
「『悪魔の囁き』はまだ憑いてんのか?」
「ああ、とっくに俺に干渉なんかできなくなってるけどな」
《……いっそ離れてぇよもう》
『悪魔の囁き』の泣き言をスルーして、星は静かに笑みを浮かべる
「そう構えるなよ、喧嘩しに来たわけじゃないんだからさ……まだ、な」
「その姿を佳奈美に晒すだけで、充分喧嘩売ってるぜ。あいつがどれだけ心配すると思ってんだ」
「しょうがないだろ、カナお姉ちゃんとあんたの二人共いないと確かめられないんだからさ」
ちりちりと音を立てて、星の髪がまた一房金色に染まっていく
「『カナお姉ちゃんは車を降りて、ここに来る』」
その言葉と同時に、ばんと助手席側のドアを開けて佳奈美が飛び出してくる
「待ってろって言ったろ!」
「でも! 星くん、なんかおかしいよ!?」
星の元へ駆け寄ろうとした佳奈美を、Hは抱き留めて制する
「別に危ない事なんか何もないよ。ただ確かめたい事があるだけだから……『俺の質問に、正直に答えてよ』」
言葉が楔のように心に打ち込まれる
「カナお姉ちゃんは、その黒服の事を、愛してるの?」
「ふぇっ!? ちょ、星くん! 何言って……」
「カナお姉ちゃん……『はいかいいえで、すぐ答えて』?」
佳奈美を抱き留めていたHなら、その口をすぐ塞ぐ事ができただろう
だが、僅かな心の揺らぎがその行動を一瞬遅らせる
Hが押さえ込むよりも早く、佳奈美は答える
「はい」
ぽろりと口から零れ落ちた言葉に、一番動揺しているのは佳奈美本人だった
今までにない程に顔を真っ赤にし、額にぶわりと汗が浮かべ、もの凄くうろたえた顔でHと星を交互に見る
「いやでもねHさんって結構モテモテっぽいし歌手のおねーさんとかものすっごい美人だしHさんの事大好きみたいだしあたしみたいなちんちくりんが出る幕とか全然ないよねっていうか生きててごめんなさーい!?」
半泣きになりながら、Hの腕の中でじたばたと暴れる佳奈美
「そっか。多分そうだろうなぁと思ったから、俺も色々先走っちゃったわけだけど」
佳奈美とは対照的に、星は落ち着いた様子だった
「さて、そんなカナお姉ちゃんの気持ちを受けて……黒服、あんたの気持ちはどうなんだ?」
ちりちりと髪を金色に染めながら、星は心に楔を穿つ
もし彼が佳奈美の事を女性として愛し己のものとしたいと思っていないのであれば、殺してでも奪い取る事に躊躇は無い
だが彼が、佳奈美の事を愛しているのならば
佳奈美が求めるものを与える存在ならば
「『正直に答えろ』よ……あんたはカナお姉ちゃんの事をどう思っている?」
星は、彼女の傍にいたかった
その笑顔を見ていたかった
だが、彼女が笑顔でいるために、一番近くにいなければないのが自分でないのならば
《車ん中で抱き合ってる二人を見てたろ。あいつらの仲はぶっ壊してやんなきゃ彼女はお前のもんにならないんだって。どうせ聞いてねーだろ、ばーかばーか》
ああ、俺は馬鹿なんだ
それ以上に、やっぱりガキでしかなかったんだ
だから、難しい事なんて
出来やしないんだ


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