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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 三面鏡の少女-47

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三面鏡の少女 47


自分には人を好きになり人に好かれる価値が無いと思っている少女
自分には人を好きになり人に好かれる資格が無いと思っている男
「あたしは」
黒服Hに庇われるように立っていた佳奈美が、泣きそうな声を出す
「Hさんの事、化物だなんて思った事は無いよ。今まで会ってきた人も、都市伝説も、みんなそう。他の人と何か違う外見や能力があったって、一緒の世界で生きるのに……何も都合の悪い事なんて無いよね?」
声に震えが混じり、所々つかえながら
「復讐とか、確かにあんまり良い事じゃないけど……Hさんにどうしても必要な事なら、仕方なかったんだと思う。騙したり利用したりした人達には……ちゃんと謝って、許してもらおうよ」
涙をぼろぼろと零しながら
「あたし……Hさんと……宏也さんと、ずっと一緒にいたいよ……」
佳奈美が、およそ生涯で初めて、他者よりも自分の気持ちを優先して発した言葉
それを聞き届けて、星はやれやれといった調子で天を仰ぐ
「完璧にフラれたなー、俺」
《だーかーらー、最初っから俺の言う通りにしてりゃ角を立てずにだなぁ》
「うっさい。『俺から離れろ』」
《ちょ、こら待て!? 力の使い方をレクチャーしてやったり、戦闘のサポートしてやったりした恩義を忘れたかコラ!?」
『悪魔の囁き』の声は、途中からその場にいた全員に聞こえていた
星の背中からころりと転げ落ちる、子猫ほどの大きさをした、蛇の頭をした尻尾を生やした山羊頭の悪魔
「ゲェー!? 何で実体化までしてやがんだ!?」
「知らないよ。成長したら実体化できるって言ってたし、俺の力の余波じゃないの?」
首の後ろを摘まれて、じたばたと足掻く『悪魔の囁き』
「成長してたらこんなサイズのわけあるか!? つーか犬を放たれたらぺロリと食べられるサイズだろこれ!?」
「俺と一緒にいれば大丈夫じゃない? 面倒ぐらいは見てやるよ」
ひょいと頭の上に『悪魔の囁き』を乗せ、悠然と二人に向き直る星
「おい……また能力を使ったのか」
「手っ取り早いだろ? どうせあんたの薬とか、とっくにこいつには効かないし」
「こいつの力で強化されてたのと、一回打たれて耐性もついてたしな。もう意味無ぇけど」
星の頭の上で、不貞腐れながら金色に染まりゆく髪の毛をわさわさと掻き分けてへばりつく『悪魔の囁き』
「カナお姉ちゃんも言ったろ。都市伝説に飲み込まれても、人間でなくなったとしても、俺という確固たる存在があれば何も都合の悪い事なんて無いのさ。それが『手塚星』か『ゴールデンアップル』かの違いだけ。何にも問題は無い」
「問題無いわけがあるか! お前の両親は! 友人は! 佳奈美の気持ちはどうなる!」
「大丈夫さ。だって『手塚星という存在に関する記憶と記録は、全てこの世から消滅する』んだから」
「なっ……!?」
星の全身から湧き溢れた黄金色の輝きが、空高くまで舞い上がり町全体を越えてもっと遠くまで、広く広く降り注ぐ
その髪の毛はあっという間に全て金色に染まり、都市伝説が具象化した存在へと成り果てた
「ふざけるなっ……佳奈美がお前の事をどれだけ心配してたか、判ってるのか!」
記憶を改竄されたせいか、意識を失いくたりと倒れ込む佳奈美
都市伝説そのものであるHは、大きな影響を受けなかったようで、記憶には一切揺らぎが無い
「判ってるさ。だからこそだよ」
星は僅かに笑う
「こんな事があった以上、この先カナお姉ちゃんはずっと俺の事を心配しただろうさ。自分のせいで大変な事になったって。そんな重荷を負わせられないだろ?」
「だからって、誰もお前の事を覚えてない世界で! お前だけが誰とも噛み合わない思い出を抱えた状態で! 生きていくってのか!」
「思い出? そんなもん、これから作るからいいさ」
あっけらかんと言い放つ星に、Hは絶句する
「カナお姉ちゃんが幸せなら別にそれでいい。だからあんたはカナお姉ちゃんを幸せにしろ。あんたが半端なところでくたばったら、絶対許さないから覚悟しとけよ」
「お前……本当に『悪魔の囁き』取れてんのか? 新しいの憑いてねぇだろうな」
「残念ながら、今更新しい種なんか憑いたってこいつに太刀打ちできねぇよ……あーくそ、貧乏籤だよもう」
星の頭の上でぶつくさ呟く『悪魔の囁き』
「あんたがカナお姉ちゃんの事が好きだってのも、人間になって一緒に居たいってのも……改めて言葉にして誓えよ。語り続ければ奇跡は必ず起こる、そういう都市伝説そのものである『ファンタ・ゴールデンアップル』が言ってんだから間違いは無いさ」
あくまでノリノリで調子の良い星に、意識を失っている佳奈美を抱き寄せたまま、Hは疲労感たっぷりの溜息を吐いた
「お前の事を真面目に心配してた俺が馬鹿みたいじゃねぇか」
「俺の事を心配してたカナお姉ちゃんを心配してた、の間違いだろ?」
「うるせぇ……それよりもお前はこれからどうすんだ。全ての記憶と記録から消えたって言っても、そりゃあ表の話だ。俺程度の半端黒服にすら効いてないんだ、『組織』の連中に目ぇ付けられてるのは確実だぞ」
「さてね。あんたやカナお姉ちゃんに迷惑を掛けない程度に、俺なりになんとかやってくから大丈夫だよ」
そう言って星は二人に歩み寄ると、意識を失ったままの佳奈美の頬をそっと撫でて、その首に掛けられていた安っぽいネックレスを外してポケットにしまい込む
「ホワイトデーにあげたプレゼント。あんたの前で開けるなって言ってたやつ」
少しだけ
ほんの少しだけ寂しそうに微笑むと
「それじゃ、またな」
「ああ、またな」
星は頭に乗せた小さな悪魔と共に、のんびりと歩み去って行き

―――

「や、また会ったな」
「早ぇよ!?」
目を覚ました佳奈美を家に送り届けた後、疲労感で一杯になりながら『組織』へ戻ったHを出迎えたのは、先程しんみりとした空気で別れた星だった
「何でお前がここにいるんだよ!?」
「いやほら、『組織』に目を付けられてるのは確実だってあんたが言ってたろ。いやマジでその通りでさ。なんか人手が足りないって勧誘された」
「誰だよこんなの勧誘した馬鹿は!?」
その言葉に反応し、『組織』の中の誰かがくしゃみをしたが
それが誰なのかはHが知る事は無いのであった


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