Tさんの、言葉に
彼女、朝比奈 マドカは、一瞬、迷いを見せた
視線を彷徨わせ…しかし
彼女、朝比奈 マドカは、一瞬、迷いを見せた
視線を彷徨わせ…しかし
「……あぁ」
と、頷いてきた
その様子を見て、Tさんは黒服への電話を繋ぐ
短いコール音の後
その様子を見て、Tさんは黒服への電話を繋ぐ
短いコール音の後
『…Tさん?どうかなさったのですか?』
すぐに、黒服が出た
少々話が…と、Tさんは、それを切り出す
少々話が…と、Tさんは、それを切り出す
「朝比奈 マドカ。今、彼女がここにいてな」
『-----』
『-----』
受話器の、向こう側で
黒服が息を飲んだのが、わかった
黒服が息を飲んだのが、わかった
『……いえ、何でもありませんよ、翼………Tさん、少々、お待ちください』
「あぁ」
「あぁ」
…すぐ傍に、翼がいたのか
万が一にでも、話のカケラでも、翼に聞かせたくなかったのか
どうやら、黒服が場所を移動しているらしい音が聞こえる
万が一にでも、話のカケラでも、翼に聞かせたくなかったのか
どうやら、黒服が場所を移動しているらしい音が聞こえる
『…失礼………朝比奈 マドカが、どうかしましたか?』
「彼女と、会って話してもらいたい事があるのだが」
『……話、ですか』
「彼女と、会って話してもらいたい事があるのだが」
『……話、ですか』
はっきりと伝わってくる、黒服のマドカへの、嫌悪
…恐らく、あの青年と契約して情が強くなったせいもあるのだろうな、とTさんは判断した
マッドガッサー騒動の最中の、とあるやり取りで…彼が、翼のことを大切に思っているのは、よく伝わってきたから
…恐らく、あの青年と契約して情が強くなったせいもあるのだろうな、とTさんは判断した
マッドガッサー騒動の最中の、とあるやり取りで…彼が、翼のことを大切に思っているのは、よく伝わってきたから
『できる事ならば……あまり、顔を合わせたくない相手では、ありますが。こちらとしても、彼女には話があります』
「ほぅ?」
『…今、朝比奈 マドカと話せるでしょうか?』
「ほぅ?」
『…今、朝比奈 マドカと話せるでしょうか?』
わかった、と答え、携帯をスピーカーモードにするTさん
少々道の脇に三人とリカちゃんで入り込み、そこで話を続ける事にする
少々道の脇に三人とリカちゃんで入り込み、そこで話を続ける事にする
『…朝比奈 マドカ、そこにいるのですか?』
「あぁ、いるよ」
「あぁ、いるよ」
マドカの声に、一瞬、黒服が黙り込む
それでも、やや間を置いて、感情を押し殺した声が、聞こえてきた
それでも、やや間を置いて、感情を押し殺した声が、聞こえてきた
『私に、話があるそうで?』
「そうさね。できる事ならば、翼も一緒の方がいいんだけど」
『そうですか……こちらも、あなたと翼を交えて話がありましたので、丁度良いところです』
「そうさね。できる事ならば、翼も一緒の方がいいんだけど」
『そうですか……こちらも、あなたと翼を交えて話がありましたので、丁度良いところです』
感情を、押し殺してはいるものの
黒服の声からは、隠し切れない嫌悪の感情が漏れ出してしまっている
長く続いてしまった誤解
それは、そう簡単にとけるものではない
黒服の声からは、隠し切れない嫌悪の感情が漏れ出してしまっている
長く続いてしまった誤解
それは、そう簡単にとけるものではない
『…………ただ。条件があります』
「条件?」
「条件?」
…黒服が、条件と口にした事に
Tさんと舞、それにリカちゃんも首をかしげる
Tさんと舞、それにリカちゃんも首をかしげる
『その話し合い……日景 宗光さんと、千鶴さんも、同席する事』
黒服が提示した、その条件に
う、と…マドカが、あからさまに、嫌そうな表情を浮かべてきた
う、と…マドカが、あからさまに、嫌そうな表情を浮かべてきた
「誰それ??」
「…姓から察するに、今の日景家の当主夫婦、か?」
『えぇ、そうですよ』
「…姓から察するに、今の日景家の当主夫婦、か?」
『えぇ、そうですよ』
舞達の疑問に、答える黒服
…マドカに向けている声とは、かなり声音が違う
…マドカに向けている声とは、かなり声音が違う
「ち、ちょいと待っておくれよ!?どうして、あの鬼婆と糞爺も同席しないと駄目なのさ!?」
慌てて、そう黒服に尋ねるマドカ
…現在の、日景当主夫婦
それはつまり…マドカの、父親と母親だ
それと顔を合わせることを、彼女は本気で嫌がっている様子だ
マドカの、その疑問に……黒服は、ゆっくり、答えてくる
…現在の、日景当主夫婦
それはつまり…マドカの、父親と母親だ
それと顔を合わせることを、彼女は本気で嫌がっている様子だ
マドカの、その疑問に……黒服は、ゆっくり、答えてくる
『…本日。翼と一緒に、日景家を訪問しました』
「----っ!」
「----っ!」
マドカが、息を飲む
それに構わず、黒服は続けてきた
それに構わず、黒服は続けてきた
『そして…翼には、日景家がどう言う家なのか…すべて、話しました』
「話したのか?」
『はい。驚いていましたが、あの子はその事実を、きちんと受け入れましたよ』
「話したのか?」
『はい。驚いていましたが、あの子はその事実を、きちんと受け入れましたよ』
ですから、と
黒服は、マドカに告げる
黒服は、マドカに告げる
『…あなたが、何故、今になってあの子と会おうと思うのか。その理由が、私にはわかりません。しかし……もし、あなたが、翼との仲を修繕したいと望んでいらっしゃるのなら、あなた自身も、ご両親と和解なさってください』
「うぅ……」
「うぅ……」
視線を彷徨わせているマドカ
…よほど、両親との仲が最悪らしい
翼とは、会いたい……昔の事を、詫びたい
その気持ちは、強いのだろう
しかし、それと同じくらい……自分の両親とは、顔を合わせたくない
そんな感情が、伝わってくる
…よほど、両親との仲が最悪らしい
翼とは、会いたい……昔の事を、詫びたい
その気持ちは、強いのだろう
しかし、それと同じくらい……自分の両親とは、顔を合わせたくない
そんな感情が、伝わってくる
「どうしても、その条件を飲まないと駄目かい?」
『あなたの、実のご両親でしょう?翼は、あなたのご両親と良い関係を築いていますよ』
「……それは、その……わかってる、けどさ」
『あなたの、実のご両親でしょう?翼は、あなたのご両親と良い関係を築いていますよ』
「……それは、その……わかってる、けどさ」
殴りこんだ時に聞いたし、と若干、物騒な事を口にするマドカ
…そう言えば、翼が日景の姓を名乗る事になった事で、怒鳴り込んだとか言っていたような言ってなかったような
…そう言えば、翼が日景の姓を名乗る事になった事で、怒鳴り込んだとか言っていたような言ってなかったような
マドカは、俯いている
感情が交錯し、迷いが生まれているようだった
感情が交錯し、迷いが生まれているようだった
「……話したいって言っておいて、申し訳ないんだけどねぇ………悪いが……時間を、くれないかい?」
ようやく
マドカが絞りだした答えは…それだった
自分の両親と顔を合わせるには、心の準備が必要なのだろう
マドカが絞りだした答えは…それだった
自分の両親と顔を合わせるには、心の準備が必要なのだろう
『構いません……正直、こちらも、翼が難しい状況ですし。そちらの都合がつきましたら、ご連絡ください』
すまないね、と
マドカが、小さく苦笑する
マドカが、小さく苦笑する
「姐ちゃん、いいのかよ?」
「…正直、ね。翼と会えるんなら大歓迎だが。鬼婆と糞爺と顔合わせて、冷静でいられる自信がないんだよ」
「…正直、ね。翼と会えるんなら大歓迎だが。鬼婆と糞爺と顔合わせて、冷静でいられる自信がないんだよ」
はぁ、とため息をつくマドカ
…黒服は、マドカが両親とここまで不仲である事を、知っていたのだろうか?
…黒服は、マドカが両親とここまで不仲である事を、知っていたのだろうか?
「黒服さん」
『…すみません。ですが、これは本日、日景家を訪れて、宗光さん達とも話した結果、彼らも同席した方が良いと結論が出ましたので』
『…すみません。ですが、これは本日、日景家を訪れて、宗光さん達とも話した結果、彼らも同席した方が良いと結論が出ましたので』
マドカに向けていた声とは、何万倍も柔らかさが違う声で、Tさんにそう答える黒服
それに……と、続けてくる
それに……と、続けてくる
『…そんな事がない、とは思いたいのですが。朝比奈 秀雄が、朝比奈 マドカを見張っていないとも、限りませんし……』
----朝比奈 秀雄
その名前にマドカがぴくり、と反応した
その名前にマドカがぴくり、と反応した
「…ちょいと、待っておくれ?あいつが、あたしを見張っているかもしれないって?どう言うこったい?」
『……あなたは、朝比奈 秀雄とは、接触していらっしゃらないですか?』
「自慢じゃないが、離婚して以来、姿を見たのはテレビに映ってんのを去年ちらっと見たくらい。連絡とろうにも連絡先もわからないし、正直、のたれ死んでたと思ったくらいさ」
『……あなたは、朝比奈 秀雄とは、接触していらっしゃらないですか?』
「自慢じゃないが、離婚して以来、姿を見たのはテレビに映ってんのを去年ちらっと見たくらい。連絡とろうにも連絡先もわからないし、正直、のたれ死んでたと思ったくらいさ」
マドカのその答えに
そうですか、と黒服は、かすかにほっとしたような声を出す
そうですか、と黒服は、かすかにほっとしたような声を出す
『万が一、朝比奈 秀雄があなたに接触を試みてきたら……決して、関わってはいけませんよ』
「元旦那との接触を禁止するたぁ、どう言うこったい?」
「…姐ちゃん、知らないのか?」
「元旦那との接触を禁止するたぁ、どう言うこったい?」
「…姐ちゃん、知らないのか?」
舞の問いかけにも、何の事だい?と首をかしげるマドカ
…だが、その表情は、どこか
その答えを、予感しているような……そんな、表情にも見えた
…だが、その表情は、どこか
その答えを、予感しているような……そんな、表情にも見えた
Tさんと、黒服の声が、重なる
『…今、あの子は、翼は。朝比奈 秀雄に、狙われ、精神的に、追い詰められようとしています』
「それも、日景家の権力を手にするために、あの青年を利用しようと、狙っているらしい」
「それも、日景家の権力を手にするために、あの青年を利用しようと、狙っているらしい」
二人の、その言葉に
ぷちっ、と
わかりやすく、マドカが切れた
わかりやすく、マドカが切れた
「----っんの、バカ亭主!?まだ、そんな事を考えていたのかい!?」
『…やはり、知らなかったのですか。あの子が狙われていた事を』
「去年、テレビであいつが映ってる姿を見た時に、無性に嫌な予感はしたがね!!当たって欲しくはなかったよ!!」
『…やはり、知らなかったのですか。あの子が狙われていた事を』
「去年、テレビであいつが映ってる姿を見た時に、無性に嫌な予感はしたがね!!当たって欲しくはなかったよ!!」
ぐしゃ!とマドカが怒りに任せて、タバコを握りつぶした
まだ火がついていたそれに、あちち、とやや情けない声をあげる
まだ火がついていたそれに、あちち、とやや情けない声をあげる
『…念のために言っておきますが、朝比奈 秀雄の居場所を見つけ出して、殴りこもうなどと考えないでくださいね?
どうやら、あなたも何らかの都市伝説と契約していらっしゃるようですが……朝比奈 秀雄は、三つの都市伝説と多重契約を結んでいる上に、三つ目の都市伝説の詳細が不明です。危険すぎますからね』
「う!?………わ、わかったよ」
どうやら、あなたも何らかの都市伝説と契約していらっしゃるようですが……朝比奈 秀雄は、三つの都市伝説と多重契約を結んでいる上に、三つ目の都市伝説の詳細が不明です。危険すぎますからね』
「う!?………わ、わかったよ」
黒服の言葉が図星だったのか、うろたえるマドカ
…もしかしたら、翼の性格はマドカに似た部分があるのかもしれない、とTさんはこっそりと考えた
……多分、それを指摘したら、翼は全力で否定してくると思うが
…もしかしたら、翼の性格はマドカに似た部分があるのかもしれない、とTさんはこっそりと考えた
……多分、それを指摘したら、翼は全力で否定してくると思うが
『…とにかく。こちらとしては、あまり翼を刺激したくありません……準備が整うまで、出来れば』
「わかったよ。翼に会わないように、って言うんだろ?……仕方ないから、我慢するよ」
「わかったよ。翼に会わないように、って言うんだろ?……仕方ないから、我慢するよ」
はぁ、とマドカがまた、ため息を吐いた
「テレビで、元亭主の顔見て嫌な予感がして。翼を護らないと、って思って来たけど………あの子はとっくに、あんた達に護られてたんだね」
そう、口にしたマドカの表情は
どこか、酷く寂しそうで
だが、マドカはそれを、決して口に出そうとしない
それは、彼女の中のプライドのせいなのかもしれなかった
どこか、酷く寂しそうで
だが、マドカはそれを、決して口に出そうとしない
それは、彼女の中のプライドのせいなのかもしれなかった
母親でありながら、息子に親として見てもらう事叶わず
…他の存在を、親のように思って、自分から離れられ
その、息子が親のように思う相手に、弱みを見せたくなどないという、そのプライド
…他の存在を、親のように思って、自分から離れられ
その、息子が親のように思う相手に、弱みを見せたくなどないという、そのプライド
「…あの子に何かあったら、容赦しないよ」
『………心得ています。私も、あの子の事は大切ですから』
『………心得ています。私も、あの子の事は大切ですから』
そう口にした、黒服の声は
家族を大切に思う、父親のような声で
家族を大切に思う、父親のような声で
その声を聞いて、また
マドカはどこか…複雑そうな表情を、浮かべたのだった
マドカはどこか…複雑そうな表情を、浮かべたのだった
to be … ?