その店の前に立ち
青年は、そこに入ることを、やや途惑った
…自分には、この店に入る資格はないのではないか?
そう、問いかけてでもいるような状態
青年は、そこに入ることを、やや途惑った
…自分には、この店に入る資格はないのではないか?
そう、問いかけてでもいるような状態
肩まで伸びた髪を金髪に染め上げ、肌も春に入ってまだ間もないというのに随分と綺麗に日焼けしている
まだ肌寒い季節なのだが、随分と薄着をしていて、ジャラジャラとたくさんのシルバーアクセサリーを身につけている
そのわりには、ピアスだけは身につけていないのが、やや違和感を与えるかもしれない
まだ肌寒い季節なのだが、随分と薄着をしていて、ジャラジャラとたくさんのシルバーアクセサリーを身につけている
そのわりには、ピアスだけは身につけていないのが、やや違和感を与えるかもしれない
「………」
店の前で、青年はやや、迷ったように視線を彷徨わせていたが
…店の前でこうしていても、店にとって迷惑にしかならない、と悟ったのだろうか
決意した表情で、店内へと踏み込んだ
…店の前でこうしていても、店にとって迷惑にしかならない、と悟ったのだろうか
決意した表情で、店内へと踏み込んだ
カラン・コロン……カラン・コロン……
喫茶店「ルーモア」の、来客を告げるベルの音が響き渡った
喫茶店「ルーモア」の、来客を告げるベルの音が響き渡った
いらっしゃいませ、とアルバイトらしい店員の少女が声をかけてきた
席に案内されそうになったが…それを、青年は断って
…店の奥にいた、店長に視線を向けた
席に案内されそうになったが…それを、青年は断って
…店の奥にいた、店長に視線を向けた
ぴくり、奥の席に座っていた…どこか、軍人のような雰囲気を纏った男が、青年の様子に、小さく警戒を見せた
そのすぐ傍の席に座っていた少年も、同じく小さな警戒を見せる
そのすぐ傍の席に座っていた少年も、同じく小さな警戒を見せる
警戒されるだろう事はわかりきっていた
拒絶されるだろう事も予測できている
拒絶されるだろう事も予測できている
だが、それでも
自分がやる、と自ら志願してきたのだから
それを、やりとげない訳にはいかない
自分がやる、と自ら志願してきたのだから
それを、やりとげない訳にはいかない
「あんたが、この店のマスターだな?」
「…?そう、だけど」
「…?そう、だけど」
あぁ、そうか
やっぱり、この男が
目当ての人物を見つけ……青年は、名乗る
やっぱり、この男が
目当ての人物を見つけ……青年は、名乗る
「…俺は、「首塚」首領、平将門が臣下の1人。日景 翼だ」
「首塚」
その、単語に…少年と、軍人らしき雰囲気を纏った青年が即座に反応した
が、それに構う事無く、青年……翼は
床に膝をつき
手をつき
その、単語に…少年と、軍人らしき雰囲気を纏った青年が即座に反応した
が、それに構う事無く、青年……翼は
床に膝をつき
手をつき
「「首塚」所属を名乗る者として………あの男が、貴殿に犯した罪を、謝罪しに来た……………本当に、すまなかった」
そのまま、頭を下げてきた、翼の姿に
ルーモアの一同は、あっけにとられたように、その動きを止めたのだった
ルーモアの一同は、あっけにとられたように、その動きを止めたのだった
いくら、他に客がいない時間帯だったとはいえ、いつまでも土下座を続けられても、困るだろう
マスター達は、翼を落ち着かせて、とにかく席につかせていた
……その、際に
マスターは、翼が随分と、精神的に疲弊している状態である事に気づいた
その原因が、自分への…自分達への謝罪ではないだろうと、それにも気づく
この青年は、何か、大きな大きな問題を抱えている、最中で
自身がそんな状態であるにも関わらず、「首塚」を代表して、謝罪に来たのだ、と
マスター達は、翼を落ち着かせて、とにかく席につかせていた
……その、際に
マスターは、翼が随分と、精神的に疲弊している状態である事に気づいた
その原因が、自分への…自分達への謝罪ではないだろうと、それにも気づく
この青年は、何か、大きな大きな問題を抱えている、最中で
自身がそんな状態であるにも関わらず、「首塚」を代表して、謝罪に来たのだ、と
「…本当に、すまなかった。謝罪して、許される事ではないと、わかってはいるが…」
俯いた状態で、再びそう告げてきた翼
「首塚」の構成員が、このマスターを一度は殺めてしまった、その事実を
翼は、「首塚」全体の責任として、捕えているのだ
…それは、将門もまた、同じ考えで
「首塚」を代表して来たと言う翼は……今、間違いなく、平将門の使者となっている
「首塚」の構成員が、このマスターを一度は殺めてしまった、その事実を
翼は、「首塚」全体の責任として、捕えているのだ
…それは、将門もまた、同じ考えで
「首塚」を代表して来たと言う翼は……今、間違いなく、平将門の使者となっている
輪とカシマが、翼を警戒しているのに気づいて
マスターは大丈夫、とでも言うように、二人に目配せした
そして、翼に向き直る
マスターは大丈夫、とでも言うように、二人に目配せした
そして、翼に向き直る
「日景 翼君……だったね。「首塚」の意志、確かに承ったよ…だから、顔をあげて」
「………」
「………」
マスターの言葉に、顔をあげる翼
…やはり、疲弊した表情
なんらかの悩みに、押しつぶされそうになっている状態
同時に、深い、まるで自分がその罪を犯してでもしまったかのような、マスターへの罪悪感を抱えているような状態
…マスターは優しく微笑み、翼に告げた
…やはり、疲弊した表情
なんらかの悩みに、押しつぶされそうになっている状態
同時に、深い、まるで自分がその罪を犯してでもしまったかのような、マスターへの罪悪感を抱えているような状態
…マスターは優しく微笑み、翼に告げた
「…確かに。私は、彼の力で一度命を落とした…けれど、私が今、ここにいるのも。同じ人物の力の影響だ」
もう、共に過ごす事はできぬと、そう思っていた存在
それと、再び同じ時を過ごす事ができるようになったのも、また…その時間を奪ったのと、同じ人物がもたらした、奇跡
それと、再び同じ時を過ごす事ができるようになったのも、また…その時間を奪ったのと、同じ人物がもたらした、奇跡
「私は、彼の事も…「首塚」の事も、恨んではいないよ」
だから、もう
「だから…そんな、申し訳なさそうな顔をしないで。君達「首塚」の意志は、君から確かに承ったから」
「…………そうか。ありがとう」
「…………そうか。ありがとう」
小さく笑う翼
だが、その笑顔も、力がない
だが、その笑顔も、力がない
「…それじゃあ、俺は、これで」
「あぁ、待って」
「あぁ、待って」
席を立とうとした、翼に
マスターは微笑み、告げる
マスターは微笑み、告げる
「せっかくだから、飲み物の一杯でも飲んでいったらどうだい?サービスするよ」
「…いや、俺は」
「…いや、俺は」
小さく、首を左右に振ろうとした翼
…その、翼の頭を
マスターは、そっと撫でた
ぴくり、翼の体が小さく跳ねる
…その、翼の頭を
マスターは、そっと撫でた
ぴくり、翼の体が小さく跳ねる
……一瞬
翼が、親から逸れて泣いている、子供に見えたような
そんな、錯覚を感じて
マスターは、優しく、翼を見つめた
翼が、親から逸れて泣いている、子供に見えたような
そんな、錯覚を感じて
マスターは、優しく、翼を見つめた
「君が、今、何に悩んでいるのか…何を抱えているのか…私には、それを知る力は、ない」
たとえ、知ったとしても
その悩みを払拭する手伝いを
抱えているその重みを、共用する事はできないかもしれないけれど
だが、それでも
その悩みを払拭する手伝いを
抱えているその重みを、共用する事はできないかもしれないけれど
だが、それでも
「…けれど。せめて、話を聞くくらいは、できるから」
「…………いや」
「…………いや」
話す事などできないと
そうとでも言うような表情の翼に、マスターは続ける
そうとでも言うような表情の翼に、マスターは続ける
「悩みを、相談すること…誰かに打ち明ける事。それは、とても大切な事だよ」
相談することで、打ち明ける事で
その重みが、軽減される事もあるのだから
だから
その重みが、軽減される事もあるのだから
だから
「ただ、聞く事しかできないかもしれないけれど………でも、せめてそれだけはできるから。悩みを1人で抱え続けていては…いつか、それに押しつぶされてしまうよ」
子供にするように、翼の頭を撫でるマスター
…翼は、どう見ても成人している
あまり、適切な対応ではないように思える
だが、翼は撫でてくるそのてを、振り払おうとは市内
ただ、何か考え込むように、俯いて
…翼は、どう見ても成人している
あまり、適切な対応ではないように思える
だが、翼は撫でてくるそのてを、振り払おうとは市内
ただ、何か考え込むように、俯いて
「…………ク」
「?」
「…アイスハニーミルク………注文しても、いいか?」
「?」
「…アイスハニーミルク………注文しても、いいか?」
ぼそり、と
小さく、告げてきた言葉
それに、マスターは微笑んだ
小さく、告げてきた言葉
それに、マスターは微笑んだ
「ご注文、承りました。少々お待ちください」
そう言って、カウンターの向こうに向かうマスター
途中、輪となにやら話しているようで
…その、後ろ姿を
翼は、眩しいものでも見るように……そして、自分がけっして手に入れられないものを、見るように
じっと、見つめていたのだった
途中、輪となにやら話しているようで
…その、後ろ姿を
翼は、眩しいものでも見るように……そして、自分がけっして手に入れられないものを、見るように
じっと、見つめていたのだった
fin