恐怖のサンタ 悪魔の囁き&コークロア編 17
「……し、死ぬかと思った……」
「(ソリャオレサマノ台詞ダロォガ。オレサマハ二回モ死ヌ程ノ痛ミヲ味ワッタンダゼェ?)」
「(ソリャオレサマノ台詞ダロォガ。オレサマハ二回モ死ヌ程ノ痛ミヲ味ワッタンダゼェ?)」
転移を終え、俺は中腰のような体勢で軽く息を吐いていた。
人家の明かりこそあるが、辺りはまだ暗い。
薄い光の中に浮かび上がっているのは、巨大なライオンと遭遇した場所から約200mほど離れた公園。
その遊具の並ぶ一角に、俺は立っていた。
既に身体の傷はほとんど塞がり、着ていた服も再生を始めている。
ただ、血は付着した状態で固定されているため、服全体が奇妙な赤い斑模様で彩られていた。
仕事柄、不本意ながらも俺としてはこれには最早慣れてしまった光景なのだが、隣に立つ女性にはそうでもなかったらしい。
目を丸めて何かを言おうとしている彼女に、先手を打つように慌てて手を挙げる。
人家の明かりこそあるが、辺りはまだ暗い。
薄い光の中に浮かび上がっているのは、巨大なライオンと遭遇した場所から約200mほど離れた公園。
その遊具の並ぶ一角に、俺は立っていた。
既に身体の傷はほとんど塞がり、着ていた服も再生を始めている。
ただ、血は付着した状態で固定されているため、服全体が奇妙な赤い斑模様で彩られていた。
仕事柄、不本意ながらも俺としてはこれには最早慣れてしまった光景なのだが、隣に立つ女性にはそうでもなかったらしい。
目を丸めて何かを言おうとしている彼女に、先手を打つように慌てて手を挙げる。
「い、いや、別に怪しい者じゃなくて。その……そうっ! 手品なんだ、これ。さっきのテレポートも、これも。ああええと、ライオンは、その、あの……」
「(……馬鹿カテメェハ。コノばばぁモ契約者ダロォガ、何慌テテヤガル)」
「そ、そうだっ! あれだ、俺はサーカスに所属してる手品師で、さっきのライオンはそこの檻から…………え?」
「(……馬鹿カテメェハ。コノばばぁモ契約者ダロォガ、何慌テテヤガル)」
「そ、そうだっ! あれだ、俺はサーカスに所属してる手品師で、さっきのライオンはそこの檻から…………え?」
言葉の途中で、デビ田の声に首を傾げる。
その意味を数秒吟味した後、恐る恐ると言った体で女性の顔を窺った。
暗闇であまりよく見えないのだが、女性の表情は驚きと言うよりも、どこか面白がっている風に見受けられる。
その意味を数秒吟味した後、恐る恐ると言った体で女性の顔を窺った。
暗闇であまりよく見えないのだが、女性の表情は驚きと言うよりも、どこか面白がっている風に見受けられる。
「え、あれ、何、契約者? この人も? いやいや、まさかそんな――――」
「あぁ、見てなかったのかい? さっきあのライオンからあんたを助けたのはあたしだよ」
「…………マジか」
「あぁ、見てなかったのかい? さっきあのライオンからあんたを助けたのはあたしだよ」
「…………マジか」
先程のコンクリのライオン詰めを思い出して、密かに肩を落とす。
やっと、ようやく、久々に都市伝説に関係のないまともな人間と接する事が出来たと思ったのに……。
やっと、ようやく、久々に都市伝説に関係のないまともな人間と接する事が出来たと思ったのに……。
「おやまぁ、随分と気落ちして。嘘をついた方がよかったかねぇ」
「いや……いいんだ、うん。そうだよ、これが俺の『日常』じゃないか……ははっ」
「いや……いいんだ、うん。そうだよ、これが俺の『日常』じゃないか……ははっ」
精一杯の虚勢を張るも、出てくるのは乾いた笑いだけ。
この上なく虚しかった。
この上なく虚しかった。
「けど、さっきは助かったよ。あのままじゃあたしがアレと戦う事になってただろうからねぇ」
「あ、あぁ……でも、あれって空間移動系の都市伝説だよな? 俺がいなくても逃げられたんじゃ」
「いんや、あたしの都市伝説はあんたの程便利じゃないからねぇ」
「あ、あぁ……でも、あれって空間移動系の都市伝説だよな? 俺がいなくても逃げられたんじゃ」
「いんや、あたしの都市伝説はあんたの程便利じゃないからねぇ」
そう言って女性は笑っているが、俺にはよく分からない。
あのライオンを塀に埋め込んだのは、どう考えても空間移動系の能力だろう。
それを使えば、俺のようにあの場から脱出するのは簡単だったように思えるのだが。
何か使用回数の上限か、はたまた能力の効果に制限でもあるのだろうか。
あのライオンを塀に埋め込んだのは、どう考えても空間移動系の能力だろう。
それを使えば、俺のようにあの場から脱出するのは簡単だったように思えるのだが。
何か使用回数の上限か、はたまた能力の効果に制限でもあるのだろうか。
「見てみるかい?」
考えている事が表情に出ていたのか、唐突に女性は軽く言い放った。
さらりと言われて、一瞬反応が遅れる。
さらりと言われて、一瞬反応が遅れる。
「……え、いいのか?」
「なに、さっき助けてもらったお礼だよ。……それに、珍しいものも見せてもらったしねぇ」
「なに、さっき助けてもらったお礼だよ。……それに、珍しいものも見せてもらったしねぇ」
ようやく修復を終えた服へと視線を向けて、女性が笑う。
別に面白い見世物でもないだろうに、女性の感性に触れるものがあったらしい。
良子と言い、女心はよく分からない。
別に面白い見世物でもないだろうに、女性の感性に触れるものがあったらしい。
良子と言い、女心はよく分からない。
「――――さぁ、よく見てるんだよ」
「ん……? あ、あぁ……」
「ん……? あ、あぁ……」
ちょっと思考に耽っている間に、女性の方は準備を終えたらしい。
その手に乗ってるのは、どこにでもありそうな平凡な石ころ。
今俺の周囲に散らばっているものと、大して変わらないだろう。
その手に乗ってるのは、どこにでもありそうな平凡な石ころ。
今俺の周囲に散らばっているものと、大して変わらないだろう。
それをどこか遠くへ飛ばすのだろうか、とそんな事を考えていた、その時。
俺と女性を包み込むように、眩い光が辺りを覆った。
俺と女性を包み込むように、眩い光が辺りを覆った。
「……何だ、今の」
急に表れた光は、同じように急に収束した。
軽く目をしばたかせて、頭を振る。
暗い所にいきなりあんな明るい光を見せられたものだから、どこか目の調子に変調をきたしていた。
軽く目をしばたかせて、頭を振る。
暗い所にいきなりあんな明るい光を見せられたものだから、どこか目の調子に変調をきたしていた。
「…………あれ?」
だから、俺の目にソレが写った時も、何かの見間違えかと一瞬疑ってしまった。
ついさっきまで、女性の掌に乗せられていた石ころ。
それが、跡形もなく消えていた。
その光景を少しの間凝視して、ぽんと手を打つ。
ついさっきまで、女性の掌に乗せられていた石ころ。
それが、跡形もなく消えていた。
その光景を少しの間凝視して、ぽんと手を打つ。
「手品か、凄いな」
「……あたしの都市伝説の力だよ。あんた、面白い事いうねぇ」
「……いや、うん……分かってるんだけどな」
「……あたしの都市伝説の力だよ。あんた、面白い事いうねぇ」
「……いや、うん……分かってるんだけどな」
奇妙な現象を見た時の、咄嗟の拒絶。
半ば習慣化してきた自身の行動に、虚しさややるせなさを感じるのは何故か。
あの光も、消えた石ころも、女性の能力によるものなのだろう。
全く、どんな都市伝説なのかは想像できなかったが。
半ば習慣化してきた自身の行動に、虚しさややるせなさを感じるのは何故か。
あの光も、消えた石ころも、女性の能力によるものなのだろう。
全く、どんな都市伝説なのかは想像できなかったが。
「つーか、そんな能力持ってるんなら、あのライオンにも勝てたんじゃないのか」
「どうだろうねぇ」
「どうだろうねぇ」
俺の指摘に、女性はただ掴み用のない笑顔で返した。
……どうしたものか、と思う。
謎の女性……なんて言えば格好はいいが、用は見知らぬ人間である。それも契約者の。
このまま家に招待するべきか、それともここで別れるべきか。
厄介事は出来るだけごめんこうむりたいのだが、かといってあんなライオンがうろついている今、女性を一人で帰してしまうのもそれはそれで何だかアレである。
ここは土下座覚悟で一度家に来てもらうべきかと、そんな事を考えていると
……どうしたものか、と思う。
謎の女性……なんて言えば格好はいいが、用は見知らぬ人間である。それも契約者の。
このまま家に招待するべきか、それともここで別れるべきか。
厄介事は出来るだけごめんこうむりたいのだが、かといってあんなライオンがうろついている今、女性を一人で帰してしまうのもそれはそれで何だかアレである。
ここは土下座覚悟で一度家に来てもらうべきかと、そんな事を考えていると
「――――ヤメトケヤメトケ。マタアノ女ヲ怒ラセテェノカ、テメェハ」
けだるそうな声が、頭上から降ってきた。
同時に、ぺちぺちと頭皮に軽い衝撃が走る。
同時に、ぺちぺちと頭皮に軽い衝撃が走る。
「……いつの間に出てきてんの、お前」
「テメェニャ関係ネェダロウガ。ンナ事ヨリサッサト帰ロウゼェ? サッキノデ大分オレサマモ参ッテンダシヨォ」
「テメェニャ関係ネェダロウガ。ンナ事ヨリサッサト帰ロウゼェ? サッキノデ大分オレサマモ参ッテンダシヨォ」
不機嫌そうに俺の頭に乗っかり、子蛇を姿を取ったデビ田がその尾を振り回す。
姿が姿だけに痛みすら感じないのだが、いかんせん邪魔だ。
目の前の女性の急に表れたデビ田に固まっているようだし、ここはさっさと俺の中に戻させるべきだろう。
姿が姿だけに痛みすら感じないのだが、いかんせん邪魔だ。
目の前の女性の急に表れたデビ田に固まっているようだし、ここはさっさと俺の中に戻させるべきだろう。
「ああいや、悪いな。こいつ、俺の中に巣食ってる悪魔の囁きなんだけど、別に今は大人しくしてて――――」
ひとまず誤解を避けようと、愛想笑いをしつつ女性に顔を向けた……のだが。
俺より1メートル程離れて立っていたはずの女性は、いつのまにか俺の目と鼻の先に立っていた。
ついでに、何故かその手がデビ田の首辺りを握り締めていた。
俺より1メートル程離れて立っていたはずの女性は、いつのまにか俺の目と鼻の先に立っていた。
ついでに、何故かその手がデビ田の首辺りを握り締めていた。
「吐きなっ! あのバカ亭主の居場所知ってるなら話しなっ!!」
「ッチョ、コラ、首締メテクンナッ!? 何ダコノばばぁ、フザケンジャネェゾッ!!」
「ッチョ、コラ、首締メテクンナッ!? 何ダコノばばぁ、フザケンジャネェゾッ!!」
唐突に開始されたデビ田と女性の二人修羅場状態。
豹変した女性が、力の限りデビ田の胴体を握りこんで旦那がどうのと言っていた。
……やっぱり、女って怖い。
豹変した女性が、力の限りデビ田の胴体を握りこんで旦那がどうのと言っていた。
……やっぱり、女って怖い。
「あんたを作った馬鹿亭主の居場所だよっ! さっさと吐きなっ!!」
「意味分カンネェヨッ! へたれ、テメェ何トカシヤガレッ!」
「あー、いや、そこで振られてもなぁ……」
「意味分カンネェヨッ! へたれ、テメェ何トカシヤガレッ!」
「あー、いや、そこで振られてもなぁ……」
夜叉もかくや、という女性の顔にビビりまくりの俺。
既に、一人で帰すのがどうのの話ではなくなっていた。
デビ田の生みの親と言えば、悪魔の囁き騒動の元凶である。
そして、この女性はその元凶を探しているらしい。
つまりは、今学校町を騒がせている事件の関係者。
見逃すわけにもいかなかった。
既に、一人で帰すのがどうのの話ではなくなっていた。
デビ田の生みの親と言えば、悪魔の囁き騒動の元凶である。
そして、この女性はその元凶を探しているらしい。
つまりは、今学校町を騒がせている事件の関係者。
見逃すわけにもいかなかった。
「……その、こんな所で話すのも何だし、俺の家に来るか?」
内心で溜息をつきながら、目の前で争う女性に提案する。
どうにも、俺はまた厄介な事に巻き込まれつつあるらしかった。
どうにも、俺はまた厄介な事に巻き込まれつつあるらしかった。
【続】