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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ドクター-62

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ドクター62


暗い
暗い暗い部屋
何も見えない、何の音もしないその部屋は
彼女にとってとても大好きな『におい』がした
暗闇の中でありながら、部屋の中にある道具の数々の存在が手に取るように判る
判るからこそ
彼女は恐怖した
己がそこに拘束されているという事実に
「ようこそボクの研究室へ」
ぱちん、と音を立てて無機質な蛍光灯の明かりが室内を照らす
手術台へと拘束されたH-No.9と、それを悠然と見下ろすドクター
H-No.9の四肢は素材不明のベルトでしっかりと拘束されており、暴れようとしてもびくともしない
「身体の調子はどうだ、どこかまだ痛むところはあるかね?」
その言葉に、ふと力を込めた四肢に不自然な痛みが全く無い事に気が付く
「都市伝説の耐久力と回復力があるとはいえ、『飲むだけで傷を癒す薬』の効果は上々というわけだ」
「……どういうつもり?」
「どうもこうも、怪我をしていては存分に愉しめないだろう?」
何を言いたいのか理解できず、混乱するばかりのH-No.9
そんな彼女の唇を、ドクターの唇が覆い塞ぐ
「んっ!?」
ドクターを自分と同じタイプの人間だと想定していたH-No.9からすれば、余りにも予定外の出来事だった
だが予想外とはいえ混乱はすぐに収まり、口腔へ侵入してくる悪寒にも似た快感を遮断するべく反射的に抵抗する
「――っ」
僅かに眉根を寄せて、ドクターは口元を押さえて身を引いた
口中に広がる血の味に、残念そうな顔をして肩を竦める
「随分と手厳しいな」
「肉欲と快楽で愛でも教えようって魂胆? その程度でどうこうできるなんて思わない事ね」
血の味を確かめながら、己の優位を確保しようと余裕の笑みを浮かべ語ろうとしたその時
室内に金髪の看護婦がぺこりと頭を下げて入ってくる
「まったく、事が済んでから紹介するはずだったというのに」
この女は何を言っているのだろうか
そんな疑問に答えるかのように、看護婦が微笑みながら自己紹介をする
「初めまして、ドクターの契約都市伝説の『エイズ・メアリー』です」
「……な、に?」
口腔に広がる血の味と、僅かに残る事故の際の傷の感触が、鮮烈に蘇る
「貴様、まさか最初から、このつもり、で?」
「君が反省し今までの行いを悔いるようであれば。この言葉を言わずに済んだのかもしれないのにね」
心底残念そうに溜息を吐き、ドクターはH-No.9の耳元でそっと囁いた
「Welcome to the world of AIDS」
全身にぶわりと嫌な汗が浮かび上がらせ
明らかに動揺した目で、ドクターとメアリーを交互に見る
「『組織』の黒服なら、都市伝説が本物かどうかぐらいは判るのだろう?」
血の混じった唾液でその唇を濡らし、拘束されたままのH-No.9の身体に優しく触れる
「ボクはね、君の非人道的な実験の数々に関しては咎める権利は無い。その一端を利用させてもらった立場でもあるからね。だが、無差別に病をばら撒くという行為には、医者として反省を促さなければいけない」
服のボタンを外し、少しずつ、少しずつ肌を露わにさせながら
踊るように、啄ばむように、肌の上に指を走らせながら
「実験に関する報いは後から来る者に任せて……ボクには、病を患うという事の苦痛と苦悩と恐怖を、じっくりと体感した上で感想を述べていただこう」
連絡を受けた黒服Hと辰也が診療所を訪れるまでの間
H-No.9には、感染という恐怖を内包した数多の快楽が与え続けられた

―――

「というわけで、お楽しみモードに入ったので私は引き上げてきました」
「ドクターってああ見えてドSですからねー」
「いやいや、普段からどう見てもドSだから。ていうかドクターって感染能力使えたっけ?」
「使えませんよ。私の契約者としての能力は、あくまで私の扱うウイルスの影響を受けないための耐性能力だけです」
地下にある研究室の声は全く届かない、地上の診療室
茶飲みに訪れるご老人方から戴いた羊羹をつつきつつ、のんびりとお茶を啜る診療所の面々
「第一、本当に私の力で『都市伝説級のエイズ』を感染させたら、Hさん達に引き渡す前に死んじゃいます」
「そういやそうだな。本場の黒服でさえ秒殺だったし」
白衣姿のバイトくんが、出会った当時の事を思い出しながら苦笑する
「姉さんも総統のところに預けてきましたし、看病の手伝いにはミツキさんも行きましたし。黒幕に関わるつもりが無ければ、我々は一件落着といったところですか」
エニグマ妹、デリアがやれやれといった調子で羊羹をつつく
「それにしても……姉さんもあんな能力にしてやられるなんて。能天気に見えて気苦労が多いんですかね」
エニグマ姉、コンスタンツェの苦悩の原因が自分にあるとも知らず、のんびりと羊羹を堪能するデリア
最も、そんな事に気付いているのはコンスタンツェのみなのだが
「ところで、Hさんと辰也さんは何時頃到着するんですか?」
「さあ……なんだか忙しそうだったので何時になるかは」
ドクターの洗練され過ぎた技術を知っているメアリーは、地下で快楽漬けにされているであろうH-No.9に大きな哀れみと小さな嫉妬の念を送るのであった


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