ドクター63
虚空に無数のモニターが浮かび、数十人のオペレーターが様々な情報を処理している『アメリカ政府の陰謀論』の本拠施設
ステレオタイプなアメリカ人男性の姿をした『陰謀論』は、その全てを見渡す椅子に座り様々な思索を巡らせていた
「ジョン・スミス様」
英語圏における非常にポピュラーな名前であり、偽名の代名詞とも言える呼称で呼ばれ、『陰謀論』が意識をそちらに向ける
「日本の『組織』が、当組織の構成員により殺害された事に関して抗議の声明文を送ってきましたが。報告によるとCチームが活動中の模様です」
「被害は?」
「現状では末端の構成員が一名です」
「なるほど」
ジョン・スミスは深く頷き、様々な情報に目を走らせる
「アメリカ全土における、日本の『組織』の一人により引き起こされた『マッスル・ハザード』による被害総額を伝えてやれ。主力数十名が戦闘不能になった事、都市伝説の隠匿作業、筋肉男の残党処理などの分も含めてな」
「学校町に潜伏している人員に関しては如何致しましょうか」
「そちらで好きなようにしろと伝えておけ。邪魔なら始末してもこちらは文句は言わんが、返り討ちに遭っても知らん。苦情があるならあの筋肉が引き起こした事象を全て片付けてから言えとな」
「それで納得するとは思えませんが」
「納得できないのなら、直接話をしろと言っておけ。書面でのやりとりなどでは伝わる事も伝わらん……まあそのような度胸のある輩など、指を折って数える程もいないだろうがな」
『アメリカ政府の陰謀論』の能力は、リアルタイムで声を聞かせた命令を自主的に行動させるというものである
その効果は通信や放送でもリアルタイムに伝わるものであれば効果を発揮する
つまり、直接対話をすると言う事は、操られる事を前提としなければいけないのだ
これに抵抗するための力は、個としての強さではなく世界への影響力の強さであり、国家の首長に匹敵する政治力を有する必要がある
命令を口にする前に殺せばいいと思われがちだが、彼の存在の根底となっているのはアメリカという国家であり、これを消滅せしめるか陰謀を巡らせられるだけの国力を削がなければ、彼はすぐにどこかで再発生して活動を再開するのだ
「まったく、私は私なりに世界の常識を都市伝説から守ろうとしているというのに。まったく……MIBという存在の派生如きが私に要求をしようなどとは」
「Cチームは撤退させなくてもよろしいので?」
「好きにさせておけばいい。アレは策に溺れる程度の策士だ、そろそろ捨て頃だったという事だよ。あの程度の連中に潰されるほどあの町はヤワじゃない。残念な事にな」
ジョン・スミスは懐から煙草を取り出すと、一本咥えてライターを取り出す
「まあ、どうにかしろとしつこく要求してくるなら……望み通りどうにかしてやるとも。そうなると堂々と正面から私達の戦力を投入する機会を戴けるわけだが」
「前述の『マッスル・ハザード』で当組織のエースラインは半ば全滅しておりますが。あと何度も言いますがここは禁煙です」
「ああ、CチームぐらいならAチームの面子が一人いれば潰せる。あいつらが作っている『祟り神』程度なら、人員を使い捨てれば我々には影響は無い。あれで潰せるのは精々国一つだ。太平洋を隔てた我が国には届かんよ」
渋々といった様子でライターをしまい、席を立つジョン・スミス
「日本への通達は前述の通り。要点は筋肉をどうにかしろ、金を払え、それが嫌なら下っ端一人くたばったぐらいでガタガタぬかすな、だ」
「了解しました。そのように返信します」
煙草を咥えたまま部屋を出ていき、無機質な廊下で改めてライターを取り出し火をつける
ぷかりとだらしなく紫煙を吐き出しながら、ジョン・スミスは気だるげに嘲う
「世界が全部アメリカになってしまえば、もっと楽なんだがな……まったく、日本という国は何時になっても面倒事しかもたらさん」
そんな独り言に割り込むように、廊下の何処かに仕込まれたスピーカーが、先程のオペレーターの声を響かせる
《廊下も禁煙です。所定の喫煙所かプライベートルーム、または応接室までお引き上げ下さい》
「……あいつは私がこの組織の長だとわかってるのかね」
《そのように私を作ったのはあなたです。空調設備と防災設備に影響がある前に速やかに消火及び移動をお願い致します》
「やれやれ、秘書はかくあるべしと思って多少厳しく作ってみたがここまでとは」
そう呟いて火を点けたばかりの煙草を、そのままぽとりと床に落とし――煙草は跡形も無く消滅していた
「さて、そろそろ麻雀を打ちにいく時間だな。そういえば麻雀でも日本にはしてやられてばかりだ……まったく、あの国は本当に厄介だ」
こつこつと静かな靴音を鳴らし、ジョン・スミスは何処かヘと姿を消すのであった
ステレオタイプなアメリカ人男性の姿をした『陰謀論』は、その全てを見渡す椅子に座り様々な思索を巡らせていた
「ジョン・スミス様」
英語圏における非常にポピュラーな名前であり、偽名の代名詞とも言える呼称で呼ばれ、『陰謀論』が意識をそちらに向ける
「日本の『組織』が、当組織の構成員により殺害された事に関して抗議の声明文を送ってきましたが。報告によるとCチームが活動中の模様です」
「被害は?」
「現状では末端の構成員が一名です」
「なるほど」
ジョン・スミスは深く頷き、様々な情報に目を走らせる
「アメリカ全土における、日本の『組織』の一人により引き起こされた『マッスル・ハザード』による被害総額を伝えてやれ。主力数十名が戦闘不能になった事、都市伝説の隠匿作業、筋肉男の残党処理などの分も含めてな」
「学校町に潜伏している人員に関しては如何致しましょうか」
「そちらで好きなようにしろと伝えておけ。邪魔なら始末してもこちらは文句は言わんが、返り討ちに遭っても知らん。苦情があるならあの筋肉が引き起こした事象を全て片付けてから言えとな」
「それで納得するとは思えませんが」
「納得できないのなら、直接話をしろと言っておけ。書面でのやりとりなどでは伝わる事も伝わらん……まあそのような度胸のある輩など、指を折って数える程もいないだろうがな」
『アメリカ政府の陰謀論』の能力は、リアルタイムで声を聞かせた命令を自主的に行動させるというものである
その効果は通信や放送でもリアルタイムに伝わるものであれば効果を発揮する
つまり、直接対話をすると言う事は、操られる事を前提としなければいけないのだ
これに抵抗するための力は、個としての強さではなく世界への影響力の強さであり、国家の首長に匹敵する政治力を有する必要がある
命令を口にする前に殺せばいいと思われがちだが、彼の存在の根底となっているのはアメリカという国家であり、これを消滅せしめるか陰謀を巡らせられるだけの国力を削がなければ、彼はすぐにどこかで再発生して活動を再開するのだ
「まったく、私は私なりに世界の常識を都市伝説から守ろうとしているというのに。まったく……MIBという存在の派生如きが私に要求をしようなどとは」
「Cチームは撤退させなくてもよろしいので?」
「好きにさせておけばいい。アレは策に溺れる程度の策士だ、そろそろ捨て頃だったという事だよ。あの程度の連中に潰されるほどあの町はヤワじゃない。残念な事にな」
ジョン・スミスは懐から煙草を取り出すと、一本咥えてライターを取り出す
「まあ、どうにかしろとしつこく要求してくるなら……望み通りどうにかしてやるとも。そうなると堂々と正面から私達の戦力を投入する機会を戴けるわけだが」
「前述の『マッスル・ハザード』で当組織のエースラインは半ば全滅しておりますが。あと何度も言いますがここは禁煙です」
「ああ、CチームぐらいならAチームの面子が一人いれば潰せる。あいつらが作っている『祟り神』程度なら、人員を使い捨てれば我々には影響は無い。あれで潰せるのは精々国一つだ。太平洋を隔てた我が国には届かんよ」
渋々といった様子でライターをしまい、席を立つジョン・スミス
「日本への通達は前述の通り。要点は筋肉をどうにかしろ、金を払え、それが嫌なら下っ端一人くたばったぐらいでガタガタぬかすな、だ」
「了解しました。そのように返信します」
煙草を咥えたまま部屋を出ていき、無機質な廊下で改めてライターを取り出し火をつける
ぷかりとだらしなく紫煙を吐き出しながら、ジョン・スミスは気だるげに嘲う
「世界が全部アメリカになってしまえば、もっと楽なんだがな……まったく、日本という国は何時になっても面倒事しかもたらさん」
そんな独り言に割り込むように、廊下の何処かに仕込まれたスピーカーが、先程のオペレーターの声を響かせる
《廊下も禁煙です。所定の喫煙所かプライベートルーム、または応接室までお引き上げ下さい》
「……あいつは私がこの組織の長だとわかってるのかね」
《そのように私を作ったのはあなたです。空調設備と防災設備に影響がある前に速やかに消火及び移動をお願い致します》
「やれやれ、秘書はかくあるべしと思って多少厳しく作ってみたがここまでとは」
そう呟いて火を点けたばかりの煙草を、そのままぽとりと床に落とし――煙草は跡形も無く消滅していた
「さて、そろそろ麻雀を打ちにいく時間だな。そういえば麻雀でも日本にはしてやられてばかりだ……まったく、あの国は本当に厄介だ」
こつこつと静かな靴音を鳴らし、ジョン・スミスは何処かヘと姿を消すのであった