「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 不良教師と骨と模型-06

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
  さぁ、はじめよう 夜の宴を
  観客のいない舞台をはじめよう

  そう、あなたは既に舞台にあがっている
  降りる事など、許されない

  舞台から降りる時は
  それは、命を落とす時だけなのだから


                      Red Cape




 びちゃり!
 飛んで来たそれを、彼はひらりとかわした
 塀に、無数の蛞蝓が蠢いている
 ……気色悪い

「悪い子だねぇ。料理を粗末にしちゃあいけないよ?」
「それはこっちのセリフなんだが。つか、そんなもんを俺は料理とは認めねぇ」

 ロクな料理など作れない癖に、彼はぼそりとそう呟く
 人体模型と白骨標本が戦っている相手
 しかし、それは隙を見ては、彼の口目掛けて料理を放り投げてくる
 それを彼が避けると…それは、無数の蛞蝓へと変化するのだ


 『蛞蝓おばさん』

 雨の日に、傘を忘れた少年が走って帰っていると、優しそうなおばさんに声を駆けられた
 おばさんは少年を家に招待し、美味しい手料理を振舞ってくれた
 …しかし、その少年は日ごと衰弱していくようになり…ある日、公園で遺体で発見された
 なぜか、少年の周囲には蛞蝓が数匹うごめいていた

 蛞蝓おばさんの仕業だと、子供たちは噂した
 その後、再びそのおばさんは別の少年を家に誘った
 しかし、蛞蝓おばさんの噂を聞いていた少年は、持ち歩いていた塩を料理にかけた
 すると、料理は全て蛞蝓へと変化し、少年は驚いて塩を全てオバサンに投げつけて逃げ出した…


 それが、蛞蝓おばさんの都市伝説 
 塩を投げつけられた蛞蝓おばさんがどうなったのか?…そこまでは、あまr語られていない
 しかし、蛞蝓おばさんというネーミングと、最後に塩を投げつけられた、と言うエピソードから…恐らく、皆はこんな想像をするはずだ

 …蛞蝓おばさんの正体は、巨大な蛞蝓なのだ、と

「…その結果が、これか」

 どろり、ぐちゃり
 蠢くそれは、巨大な蛞蝓
 それは、料理を出現させて投げつけてくる
 狙いがさほど正確ではないのが幸いだ

『うぅ、な、蛞蝓みたいな生き物はちょっと苦手です…っ』
『はっはっは、打撃が効きにくい相手はきついですわー』
「効きにくくても、やれ。とりあえず攻撃しとけ」

 タバコを咥えつつ、ぼそりと彼は呟く
 …確かに、場所も悪いし、攻撃は効き難いだろう
 ここは、白骨標本と人体模型のテリトリーではない

 理科室の外……どころか、学校の外だ
 恐らく二人とも、本来の力の半分すら出せていない
 …それは、彼とてよくわかっている
 だから、こそ……仕込みはしてきているのだ

 白骨標本の骨の刃が
 ミサイルのように飛ぶ人体模型の内臓が、目玉が
 蛞蝓おばさんを容赦なく攻撃する
 しかし、その攻撃は時に避けられ、当たってもあまり効果はなく
 戦局は、なかなか動かない

「あぁ、もう、どうして食べてくれないの?」

 ひゅん!と
 蛞蝓おばさんは、サラダを投げつけてきた
 避ける
 びちゃり、サラダは塀に激突し…蛞蝓へと変化した
 塀をうねうねと、蛞蝓は不気味に蠢いている

「愛の篭った手料理よぉ?食べてぇ?」
「いらん」

 冷たく言い切る
 …愛の篭った手料理なんざ、食い飽きている
 若干、鬱陶しいほどの弟の愛情料理を
 だから、そんなもんはいらん

『はっはっは、無駄やでー。あのお人は、ブラコンな弟はんの愛情料理でおなか一杯やからなー』
「あえて人が口に出さんかった事を言うな。死ね。氏ねじゃなくて死ね」

 ぼそり、人体模型に対し、絶対零度の声で突っ込む彼
 あの変態め、後で小腸と大腸を蝶結びにでもしてくれようか
 第一、無駄口を叩いている暇があったら、とっと得意のグロ攻撃でもしていろ

「あらぁ、それなら、おばさんの料理の方が美味しいわよぉ?」

 再び、料理を構える蛞蝓おばさん
 あぁ、鬱陶しい

『そんな事、させませんっ!!』

 白骨標本の骨の剣が、料理を引き裂く
 ぼとぼとぼとっ!
 切られた瞬間、それは蛞蝓に変わり…白骨標本の剣に纏わりつく

『はわわわっ!?き、気持ち悪いです~!!』

 ぶんぶんぶん!!!!
 嫌そうに、白骨標本は剣を振り回す
 あの剣と化した部分も、彼女の体の一部
 すなわち、体の上を蛞蝓が這っているような状態
 …確かに、気持ち悪いだろう

「ほらほらぁっ!!」

 蛞蝓おばさんは、両手に料理を構えてきた
 …って、待てや、こら
 最早、料理の姿すらしてないぞ
 どう見ても蛞蝓山盛りだ
 正直、見ていて気持ち悪い

 …だが
 両手に料理を構えた
 即ち、全力攻撃の合図
 …チャンスか

「人体模型、アレを使え」
『アレ?あぁ、ガッコーの外出る前に何や言ってたアレですなー、わかりましたわー』

 ぐぐっ、と
 人体模型は、腹を突き出す
 …そして
 蛞蝓おばさんが、両手に構えた料理を放とうとするよりも、先に…人体模型の攻撃がはじまる!!!

『胃袋ミサーーーーイル!!!!』

 っぼん!!!!
 轟音とともに、胃袋が発射される!!
 テリトリーの外に出て居る為、一度に発射できる内臓部位は一箇所ずつになってしまっている
 …だが、だからこそ
 彼は、人体模型の胃袋に細工した

「あははぁ、打撃は効かないって……」

 蛞蝓おばさんの言葉は、最後まで続かなかった
 気付いたのだろう
 発射された胃袋から零れ落ちる、白いそれに

「っま、まさかぁ!?」
「……お前の弱点は、あからさまだからな」

 ぼすっ!!と
 胃袋は、蛞蝓おばさんに命中した
 その体にぶつかり、バウンドし……その、衝撃で

 胃袋に大量に収まっていた塩が、蛞蝓おばさんにぶちまけられるっ!!

「ぎぃゃああああああああああああああああああああ!!!!?????」

 蛞蝓おばさんの悲鳴が、辺りに響き渡る
 どろり
 全身に塩を浴びた蛞蝓おばさんの体が溶けていく

 …蛞蝓の弱点は、塩だ
 昔から、そう決まっている

「…溶かして勝つなんざ、趣味じゃないんだがな」

 …あいつじゃあるまいし
 笑顔で敵対する者を溶かしていく弟の笑顔を一瞬思い浮かべてしまい、やや頭痛を感じながら
 彼は静かに、解けていく蛞蝓おばさんを眺める
 どろり、どろり、どろり
 塩で解けていく蛞蝓おばさん
 やがて、最初からいなかったように、消えていなくなってしまったのだった


「…帰るぞ」
『あ、は、はい』

 ぶんぶぶん
 蛞蝓を引き剥がし終わった白骨標本が、彼の言葉に答える
 胃袋を回収した人体模型も、軽快なタップのリズムを踏みながら戻ってきた

『はっはっは、いつの間に胃袋が塩だらけになってたんやろ。どうりで胃袋が重たいと思ったわー』
「とっとと気づけ、その程度」

 冷たく言い放ち、すたすたと進む
 …深夜とは言え、目撃されないとは言いかねない
 白骨標本も人体模型も、誰にでもその姿は見えてしまうのだ
 さっさと学校に戻るに限る

『あ、あの…』
「……うん?」

 …ふと、白骨標本が声をかけてきて
 どうした、と彼は無気力に振り返る
 白骨標本は、どこかシュンとした様子で

『ごめんなさい…私たちのテリトリーが狭いから、苦戦してしまって…』
「………」

 …まったく
 今更、そんな事を気にしていたのか
 ふぅ、とタバコの煙を吐き出しつつ、彼は答える

「…別に、気にしちゃいない」
『で、でも…』
「元々、学校から出ること事態少ないんだ。問題ないだろ」

 そう、今回は例外だ
 …あまり、学校の外では戦わないようにしている
 こいつらを、あまり外に出すべきではないのだ


 …それに

「………」

 無意識に、彼は自分の首に触れる
 …あまり、必要以上に親しくなるべきではないのだ
 いつか、巻き込むかもしれないから

『…?あの…』
『どうかしたんでっかー?』

 ぬぬっ
 目の前に現れる、白骨標本と人体模型のどアップ
 ………
 っじゅ

『うおわっちゃあ!!??』
「とっとと帰るぞ、遅れるなよ」

 口にタバコを押し付けられ、悶絶する人体模型に冷たく言い放ち
 あわあわしている白骨標本も置いて、彼はさっさと進んでいくのだった






  何故、貴方は戦う道を選びましたか?
  何故、あなたは都市伝説と関わる事を選びましたか?

  見て見ぬふりもできたと言うのに
  しかし、関わる事を選んだ、ということは

  貴方は、覚悟が出来ていると、判断してもよろしいのでしょうか?





                               Black Suit D





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