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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 三面鏡の少女-51

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三面鏡の少女 51


夜闇に溶け込むような黒髪がざわりと蠢き、信じられない速度でその長さを伸ばしていく
見た目はただの髪の毛でしかないそれは、路上で暴れる鉈を持った男に絡みつくとその全身を覆い尽くし、ぎちぎちと締め上げる
「きっ……さ、ま……『組織』、の……この、髪……Hと、呼ば、れ、る……黒服……」
「違うわボケっ!」
怒号と共に締め上げる力が一気に増し、更には振り回されて地面に叩き付けられ、男は意識を失いぐったりと動かなくなった
「どいつもこいつも、あんなのと間違うとか! 性別も格好も違うでしょ!?」
しゅるしゅると髪の毛を縮めながら怒りに肩を震わせるのは、制服姿の女子高生
「菊花、携帯電話取ってー」
怒りで荒くなった呼吸を整えて、道端のスポーツバッグに向かって声を掛ける
ちりちりと音を立ててファスナーが開くと、中から携帯電話を抱えた着物姿の日本人形がもぞもぞと這い出してきた
てちてちと携帯電話を運んできた日本人形を抱き上げ、受け取った携帯で電話を掛ける
「もしもし繰です、目標確保しましたよ」
『髪の伸びる日本人形』の契約者である女子高生、宮定繰(みやさだ・くくる)の連絡を受け、その数分後
現場に現れた女黒服は、荷物でも梱包するかのようにてきぱきと気絶した男を拘束する
「お疲れ様。私に戦闘力が無いばかりに苦労を掛ける」
「適材適所ってやつでしょ。私としても戦ってた方が何かと実感があって良い感じだし……アレと間違えられるのだけは業腹だけど!」
携帯を弄りながら不貞腐れる繰に、女黒服は苦笑を向ける
「そうは言っても彼は有能だ。以前、不覚を取ったところを助けられたしな」
「私を助けてくれた時? その後? その辺の事、あんまり覚えてないんだけど」
「後ぐらいだな。君の一件が片付いて、その原因を追っていた時だ」
繰には記憶の欠落がある
中学三年の頃に家族で海外旅行に行ったらしいのだが、その事を丸ごと覚えていないのだ
家族の話によるとブティックで姿を消して、数日後にひょっこり戻ってきたらしい
その後、とあるアンティークショップで出会った菊花と共に都市伝説との戦いを切り抜け、この女黒服の誘いで『組織』に身を置く事になった
そして女黒服とは、出会いではなく再会である事を知らされる
海外で起きた人攫い都市伝説から繰を助けてくれたのは彼女で、恐怖の記憶を消す措置を行ったために事件も彼女の事も忘れていたらしい
「私、あいつ大っ嫌い! 女と見れば誰彼構わずセクハラ三昧、挙句に都市伝説が違うのに能力が被るとか!」
憤る繰を、抱き上げられた菊花がまあまあと宥める
「菊花がいてくれるから、あいつと能力が違うって理解してもらえるのよね……大丈夫よ、菊花の能力が被ってるのが悪いんじゃないの。あのセクハラ大魔王が全部悪いの。あいつ死ねばいいのに」
「『組織』の中ではかなり強いし頭も切れ、何より人脈がある。味方にすると頼もしい代わりにアレだが、敵には回さないようにな」
拘束した男を黒塗りの車に放り込み、一仕事終えた女黒服
ふと何かに気が付いたように繰の肩を掴む
「な、何? 仕事終わったし私は帰るよ?」
「左手、見せてみろ」
その言葉に、びくりと身を竦ませる繰
「気にするような事じゃないってば! ちょっと切られたけどすぐ血も止まったし痛くないし!」
「傷跡があっては家族に怪しまれるだろう」
ぐいと強引に引っ張り出された左手の甲に、血を拭った跡と深くはないが目立つ傷跡があった
「これぐらい誤魔化せるってば! っていうか黒服さんの治療は、その!」
「嫌悪感があるのは判るが、我慢してくれ」
「いや、そうじゃなくっ、ぅんっ!」
繰の左手を口元に引き寄せ、その傷にそっと舌を這わせる女黒服
温かく濡れた舌先が触れると、『唾でも付けておけば治る』という能力でその唾液で濡れた部分からゆっくりと傷跡が消えていく
「これで大丈夫、跡も残らない」
唾液で濡れた繰の手を、ウェットティッシュで丁寧に拭う女黒服
「……どうした?」
「何でもないっ!」
空いた右手で真っ赤になった顔を覆い、あらぬ方向を向いたまま声を荒げる繰
その足元では「何も見ていない」という自己主張でもするかのように、菊花が背中を丸めて座り込んでいた
他に負傷が無い事を確認した女黒服が車で走り去って行くのを確認し、繰は負傷前よりむしろ艶の出た左手を見詰め溜息を吐く
「あいつの能力っていうか舌遣いは充分セクハラよねぇ……自覚無いのかな」

―――

「あ」
「ん?」
それからしばらく経ったある日、ばったりと道端で出会う繰と黒服H
「珍しいな、いつもはガン無視するくせに」
「あんたにはできたら一生関わりたくなかったわよ……ただ、私に仕事回してくる黒服、最近何の連絡も無いんだけどさ。何か知らないかなって」
「お前さんの担当……何て奴だ?」
「名前なんか知らないわよ。『組織』の黒服ってしか名乗られてないんだし」
「それだけで判るわけないだろ。せめて外見の特徴とか無いのか」
「黒い服と黒いサングラス、髪はセミロングの女の人」
「胸は?」
「そこそこ」
「となると、あいつか」
「そんだけの情報で判るとかあんた何者よ」
「そんな事はもっと細かい情報を寄越してから言え」
実際のところは『組織』の人員はおおよそ把握しているので知ってはいたのだが、敢えて誤魔化すために妙な遠回りをしていたりする
「雑用じみた探索任務中に消息を絶った、原因は目下調査中。上層部は死亡と判断してるはずだ」
「そう」
「淡白な反応だな」
「テンパってもあいつが戻ってくるわけじゃないし。担当居なくなっちゃった私はどうなるの?」
「そのうち別の担当が付いて、そいつから連絡が入ると思うぞ」
「ん、ありがと。用事が済んだらあんたの顔なんか見てたくないから。じゃあね」
「嫌われたもんだねぇ」
「うっさい女の敵。私の友達に手ぇ出したりしたらぶっ殺すからね」
「いやいや、お前の友達が誰とか判らんから。紹介してくれんのか?」
「んなわけないでしょ!? いい、この界隈の女子高生には決して近付かない事ね!」
やや呆れた様子の黒服Hに捨て台詞を残して、繰は駆け出していた
ただ闇雲に走り続け、周りに人が居ない路地裏でぺたりと座り込み
「あ、もしもし、佳奈美? ちょっと急用でさ、買い物の約束……うん、ごめんね。この埋め合わせはまた今度……判ってるってばー、それじゃまたね」
明るい声で友達に電話を掛けた後
膝を抱えて顔を伏せ、誰にも知られないようにこっそりと
名も無い黒服のために泣く少女の繰の背中を、物言わぬ菊花がそっと撫でていた


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