黄金竜が咆哮をあげる
それだけで空気がビリビリと振るえ、脆くなっていたコンクリート片が砕けていった
それだけで空気がビリビリと振るえ、脆くなっていたコンクリート片が砕けていった
『化け物共がぁ!!』
「黒服さん、結界展開に使用しているパワーストーンだが…」
「……正直、もう、あまり数がありません」
「……正直、もう、あまり数がありません」
長期戦になればなるほど、不利な現実
…早く、勝負をつけなければ
…早く、勝負をつけなければ
だが、黄金竜となった朝比奈の動きが、予想外に俊敏すぎる
せめて、あの巨体に相応しいスピードになっていれば、近づきようがあったものを
マドカの「フィラデルフィア計画」で、一瞬だけ動きを止められたとしても、それだけでは接近が間に合わない
せめて…せめて、一瞬で、あの懐にもぐりこむことが、できたなら…
せめて、あの巨体に相応しいスピードになっていれば、近づきようがあったものを
マドカの「フィラデルフィア計画」で、一瞬だけ動きを止められたとしても、それだけでは接近が間に合わない
せめて…せめて、一瞬で、あの懐にもぐりこむことが、できたなら…
「……なぁ、ちょっと、いいか?」
ずる、と
二人に近づいてきた山田
…どうやら、結界範囲内にいなかった彼に、若干炎が掠っていたらしい
少し焦げた状態で、山田は言ってくる
二人に近づいてきた山田
…どうやら、結界範囲内にいなかった彼に、若干炎が掠っていたらしい
少し焦げた状態で、山田は言ってくる
「あんたが持ってる、その、槍の穂先。それをあのドラゴンに刺せば、どうにかなるのか?」
デビ田の『オイ、へたれ。オレサマソノ槍ノ穂先ニ近ヅキタクネェ』という言葉を無視しつつの山田の問いかけに、はい、と答える黒服
「少なくとも、朝比奈 秀雄の、ドラゴンとしての能力だけでも、押さえ込めます」
…それに
その状態、ならば
「組織」から持ち出した切り札も…効果をあらわす
その状態、ならば
「組織」から持ち出した切り札も…効果をあらわす
「…そうか、それなら………ちょっと、提案があるんだ」
………山田が口にした、提案に
デビ田が、全力で異議を申し立てたのだが…山田にしか聞えていなかったため、その異議は山田によって、無言で却下された
デビ田が、全力で異議を申し立てたのだが…山田にしか聞えていなかったため、その異議は山田によって、無言で却下された
「マドカ姐ちゃん!」
「……っこっちに来たら、危ないよ」
「……っこっちに来たら、危ないよ」
気絶しているコーク・ロアの被害者やら犬やらを避けつつ、座り込んでいるマドカに駆け寄ってきた舞とリカちゃん
…マドカは、片脚を負傷している
たいした怪我ではないようだが、それでも、行動には支障が出てしまうだろう
…マドカは、片脚を負傷している
たいした怪我ではないようだが、それでも、行動には支障が出てしまうだろう
「チャラい兄ちゃん…」
「………」
「………」
…翼は……マドカを、見ていない
気遣っていない訳ではないようだが、彼女のほうを見ようとしない
ただ、まっすぐに朝比奈 秀雄を睨み上げている
気遣っていない訳ではないようだが、彼女のほうを見ようとしない
ただ、まっすぐに朝比奈 秀雄を睨み上げている
………と、ゆらり
朝比奈が、再び、その大きな顎を開け始めた
朝比奈が、再び、その大きな顎を開け始めた
「やば……っ!?」
ちろちろと、奥に見える炎
舞は、マドカを立ち上がらせ、その射程範囲から逃れようとした
舞は、マドカを立ち上がらせ、その射程範囲から逃れようとした
黒服とTさんが、彼女らの傍に結界を展開しようとして…
「……こっちは、構わなくていい!!」
翼が、叫ぶ
同時に、炎のブレスが吐きつけられ
その、炎を
翼の右腕から生まれた炎が、受け止めた
翼の右腕から生まれた炎が、受け止めた
『む……!?』
「…俺の攻撃は、今のてめぇには、効かねぇだろうよ…!」
「…俺の攻撃は、今のてめぇには、効かねぇだろうよ…!」
ドラゴンに、炎や熱は通用しないだろう
西洋のドラゴンは、炎の化身とされる事も多いのだから
だが
西洋のドラゴンは、炎の化身とされる事も多いのだから
だが
「それでも!てめぇの攻撃、受け止めるくらいはできんだよっ!!」
『翼ぁ……っ!!』
『翼ぁ……っ!!』
朝比奈が、翼を睨みつける
だが、翼は一歩も引かない
……翼自身を焼き尽くす訳にもいかないのだろう
朝比奈も、これ以上、うかつに炎のブレスの威力を上げる事ができないようだ
だが、翼は一歩も引かない
……翼自身を焼き尽くす訳にもいかないのだろう
朝比奈も、これ以上、うかつに炎のブレスの威力を上げる事ができないようだ
「大樹!親父の炎は、俺が受け止める…だから、その間に!」
翼の右腕から発声する、「厨2病」との多重契約の炎が威力を増していく
翼が、朝比奈のブレスを、全て受け止める事ができるなら
…防御に回す分の力を、朝比奈に向けることが、できる
翼が、朝比奈のブレスを、全て受け止める事ができるなら
…防御に回す分の力を、朝比奈に向けることが、できる
『翼ぁ……!私の邪魔を、するなぁ!!』
「てめぇの好きなんかに、させてたまるかっ!この糞親父が!」
「てめぇの好きなんかに、させてたまるかっ!この糞親父が!」
再び吐き出される炎
厨2病の炎が、それを全て受けとめる
厨2病の炎が、それを全て受けとめる
「……すっげ」
「こわいの」
「こわいの」
にじにじ
飛び交う炎に恐怖を感じたのか、にじにじ、舞の鞄の中に避難するリカちゃん
……と、舞は、自分の携帯に、メールが届いているのに気づいて
え、と小さく声をあげた
飛び交う炎に恐怖を感じたのか、にじにじ、舞の鞄の中に避難するリカちゃん
……と、舞は、自分の携帯に、メールが届いているのに気づいて
え、と小さく声をあげた
『おのれ………おのれぇ!!』
ばさり、朝比奈が翼をはばたかせる
それによって生まれた風圧が、辺りに散らばった雑居ビルのカケラを吹き飛ばした
吹き飛ぶ瓦礫が、凶器となって黒服達に襲いかかる
それによって生まれた風圧が、辺りに散らばった雑居ビルのカケラを吹き飛ばした
吹き飛ぶ瓦礫が、凶器となって黒服達に襲いかかる
「---っこの全てが朝比奈 秀雄に返るなら幸せだっ!」
Tさんが叫ぶと、その瓦礫が光に包み込まれ
そして、同時に離れた光弾と共に、それは朝比奈に襲い掛かる
そして、同時に離れた光弾と共に、それは朝比奈に襲い掛かる
『無駄ぁっ!!』
己の顔面に向かって飛んできたそれを、朝比奈は尾を振り回す事で防御しようとした
が
が
視界が、光に包み込まれる
振り回そうとした尾が、脚が、床や壁にめり込む
振り回そうとした尾が、脚が、床や壁にめり込む
『…無駄だと言っているだろう、マドカァ!!!』
しかし、朝比奈は構わずに尾を振り回した
飛んでくる瓦礫を、光弾を、叩き落していく
飛んでくる瓦礫を、光弾を、叩き落していく
さぁ、このまま、あの化け物共も叩き潰して…
『-----っ!?』
…いない
あの黒服の男の、姿が…消えている
赤い服の少女を毒で動きを封じた直後に現れた男の姿も、ない
あの黒服の男の、姿が…消えている
赤い服の少女を毒で動きを封じた直後に現れた男の姿も、ない
『どこに……!?』
唐突に生まれた、気配
黒服と、もう一人、青年が……突如、朝比奈の、床に埋め込まれた脚の傍に、姿を現した
あの少女が使った、空間転移の力か
だが、そんな場所に出現するなど、愚かなっ!!
床に埋め込まれた脚を力任せに引き抜いて、朝比奈は黒服達を踏み潰そうとする
………だが、しかし
黒服と、もう一人、青年が……突如、朝比奈の、床に埋め込まれた脚の傍に、姿を現した
あの少女が使った、空間転移の力か
だが、そんな場所に出現するなど、愚かなっ!!
床に埋め込まれた脚を力任せに引き抜いて、朝比奈は黒服達を踏み潰そうとする
………だが、しかし
『…何っ!?』
脚が、抜けない
こんなもろい床など、あっさりと破壊できるはずだと言うのに
見れば、己の脚が埋まるその床が、白い光に包み込まれていた
こんなもろい床など、あっさりと破壊できるはずだと言うのに
見れば、己の脚が埋まるその床が、白い光に包み込まれていた
「………床が強固になれば、幸せだ」
そんな声が耳に届いたような、気がして
そして……黒服が手に持った、小さな槍の穂先を、構える
ぞくり、と、朝比奈の本能が………否、朝比奈が契約している「黄金伝説」のドラゴン達が、警告を告げてくる
駄目だ
その槍の穂先に触れるな、と
駄目だ
その槍の穂先に触れるな、と
警告の声に従い、朝比奈は尾を振り回す
勢いに任せて、黒服達を一気に薙ぎ払おうとする
勢いに任せて、黒服達を一気に薙ぎ払おうとする
叩きつけられる一撃
しかし、それを、青年が受け止めた
骨の砕ける音がするも、それが黒服に届かないよう、立ちはだかって耐えている
苦痛を感じた表情すら浮かべないとは、どう言う事なのか
しかし、それを、青年が受け止めた
骨の砕ける音がするも、それが黒服に届かないよう、立ちはだかって耐えている
苦痛を感じた表情すら浮かべないとは、どう言う事なのか
『----っこの、化け物がぁ!!』
「そんな姿になってるあんたには、言われたく、ないっ!!」
「そんな姿になってるあんたには、言われたく、ないっ!!」
ぐぐぐ、とさらに力を込められる尾の動きを、必死に封じる青年
ならば、炎で焼ききるまで……
ならば、炎で焼ききるまで……
「させるかよっ!!」
炎は炎で受け止められる
翼の炎が、邪魔をする
翼の炎が、邪魔をする
忌々しい
何故、どいつもこいつも、邪魔をしてくるというのか!?
忌々しい…化け物共が!
何故、どいつもこいつも、邪魔をしてくるというのか!?
忌々しい…化け物共が!
ゆらり、朝比奈は、体内で毒を生成し始める
もう、面倒だ
この猛毒のブレスで、片付けてやろう
もう、面倒だ
この猛毒のブレスで、片付けてやろう
「…………そこまでです」
っとん、と
腹に、人の手がふれてきた、感触
黒服が、槍の穂先を手に、朝比奈のその巨大な腹に、触れて
腹に、人の手がふれてきた、感触
黒服が、槍の穂先を手に、朝比奈のその巨大な腹に、触れて
「これ以上、その力を使わせるわけには、いきません」
そして
槍の穂先が………朝比奈の腹に、突き刺さった
槍の穂先が………朝比奈の腹に、突き刺さった
絶叫が、辺りに響き渡る
巨大な黄金竜の苦悶の声が、学校町全体を揺らした
巨大な黄金竜の苦悶の声が、学校町全体を揺らした
「っとと!?」
ぶんっ!と尾が暴れ出す
明確な狙いはない
苦痛で暴れているだけだろう
だが、その分力の加減など一切なく、洒落にならない
山田は慌てて、黒服を連れて転移した
一瞬前まで彼らが立っていた場所に、尾が叩きつけられ、床が抉れた
明確な狙いはない
苦痛で暴れているだけだろう
だが、その分力の加減など一切なく、洒落にならない
山田は慌てて、黒服を連れて転移した
一瞬前まで彼らが立っていた場所に、尾が叩きつけられ、床が抉れた
「…危ね」
「大丈夫ですか!?」
「あぁ、まぁ、こっちは」
「大丈夫ですか!?」
「あぁ、まぁ、こっちは」
先ほどまで、朝比奈の尾の攻撃を受け止めていた山田に、黒服が気遣うような声をかけてきた
一瞬前まで、全身の骨が砕けていたが大丈夫だ
山田の中でデビ田がその痛みに苦しみ悶えているだけで、特に問題はない
デビ田にとっては、大問題だが
一瞬前まで、全身の骨が砕けていたが大丈夫だ
山田の中でデビ田がその痛みに苦しみ悶えているだけで、特に問題はない
デビ田にとっては、大問題だが
「とりあえず…やった、のか?」
苦しみ悶える朝比奈の様子に、山田がそう呟く
…あんな、ちっぽけな槍の穂先
だが、それを突き刺された朝比奈は、苦しみ悶え、暴れている
黒服は、いえ、と小さく首を左右に振って…そして、苦しむ朝比奈を見上げた
…あんな、ちっぽけな槍の穂先
だが、それを突き刺された朝比奈は、苦しみ悶え、暴れている
黒服は、いえ、と小さく首を左右に振って…そして、苦しむ朝比奈を見上げた
『な、んだ……何だ、これはぁ………っ、化け物、何を、したぁ!?』
「…あなたが契約しているのは、「黄金伝説」に語られる竜……聖人達によって、退治された竜です」
「…あなたが契約しているのは、「黄金伝説」に語られる竜……聖人達によって、退治された竜です」
聖ゲオルギウスに、聖マタイに
聖人達によって、倒された竜
彼らは、聖人達の武力によって退治されたのではない
聖人達によって、倒された竜
彼らは、聖人達の武力によって退治されたのではない
その、祈りによって、退治されたのだ
「黄金伝説」に語られるドラゴン達
その弱点は…聖人の、力
その弱点は…聖人の、力
「その竜と、多重契約しているあなたには、苦痛でしょうね……その聖遺物………ロンギヌスの槍の、力は…!」
『が、ぁあああああ………っ!?』
『が、ぁあああああ………っ!?』
ロンギヌスの槍
かの聖人の腹を貫き、その穂先を聖人の血で濡らした聖遺物
かの聖人の腹を貫き、その穂先を聖人の血で濡らした聖遺物
ある人は言う
その槍の穂先を手に入れた者は、世界を制すると
その槍の穂先を手に入れた者は、世界を制すると
ある人は言う
その槍の穂先は、以降、人を殺すのではなく…人を癒す物へと、転じたのだと
その槍の穂先は、以降、人を殺すのではなく…人を癒す物へと、転じたのだと
黒服が「薔薇十字団」から借り受けたロンギヌスの槍は、後者の話を元に生まれた物だ
その穂先は、本来、最早誰も傷つけない
その穂先に貫かれた者は、傷も病も、全て癒える
その穂先は、本来、最早誰も傷つけない
その穂先に貫かれた者は、傷も病も、全て癒える
しかし
それは、聖遺物である事もまた、事実
それは、聖遺物である事もまた、事実
よって、ロンギヌスの槍は、「黄金伝説」のドラゴン達と契約している朝比奈に、激痛を与えていた
だが、同時に、その力が朝比奈の傷を癒す
だが、同時に、その力が朝比奈の傷を癒す
つまり
苦痛こそ与えているが……ロンギヌスの槍の穂先だけでは、朝比奈を倒すには至らないのだ
苦痛こそ与えているが……ロンギヌスの槍の穂先だけでは、朝比奈を倒すには至らないのだ
「……苦しいでしょう?……ですから」
す、と
黒服が、スーツの内側から…もう一つ、布に包まれた物を取り出した
しゅるり、布が解かれ……現れたのは、一本の、小太刀
黒服が、スーツの内側から…もう一つ、布に包まれた物を取り出した
しゅるり、布が解かれ……現れたのは、一本の、小太刀
「その苦しみから、解放します」
『----やめ………!?」
『----やめ………!?」
っひゅん、と
黒服が、小太刀を朝比奈に投げつける
だが、小太刀は朝比奈のすぐ傍を、通過しただけだった
黒服が、小太刀を朝比奈に投げつける
だが、小太刀は朝比奈のすぐ傍を、通過しただけだった
それで、いいのだ
こちらは、刺す必要などないのだから
こちらは、刺す必要などないのだから
ぶつんっ、と
それは、何にも触れずに床に落ちたはずなのに
だが、確かに……何かが切られた、音が
辺りに響き渡った
それは、何にも触れずに床に落ちたはずなのに
だが、確かに……何かが切られた、音が
辺りに響き渡った
『-----ぐ!?』
どくんっ
何かが脈動する気配が、辺りに響く
何かが脈動する気配が、辺りに響く
『…な、ば、馬鹿、な……』
ぐらり
朝比奈の巨体が、揺れた
朝比奈の巨体が、揺れた
『何故だ!?何故………っ』
その、巨体が
ゆっくり、ゆっくりと………縮んでいく
ゆっくり、ゆっくりと………縮んでいく
『何故………っ、私から、離れる………ドラゴン共ぉ………!!』
朝比奈と契約していた……「黄金伝説」の、竜達が
その体から、離れていく
契約が無効化され、解放されたその存在が、どこかへと飛んでいく
その体から、離れていく
契約が無効化され、解放されたその存在が、どこかへと飛んでいく
「…「刃物は縁を切る」、か?」
「はい……通常でしたら、ここまでの強制解除はできないでしょうが…」
「はい……通常でしたら、ここまでの強制解除はできないでしょうが…」
Tさんの問いかけに頷く黒服
「刃物は縁を切る」
都市伝説の契約を強制的に破棄させる事ができる、ある種、恐ろしい力を秘めた都市伝説
だが、本来、不意でも撃たなければ効力は発動しないし……ある線より強力な都市伝説の契約を強制解除するなど、到底できるはずがない
そう、朝比奈の「黄金伝説」のドラゴン達を、強制的に引き剥がすなどできるはずもないのだ
それを、ロンギヌスの槍が、実現させた
聖遺物を突き刺された「黄金伝説」のドラゴン達は、「刃物は縁を切る」の力によって引き剥がされる程に、その力を弱めていたのだ
都市伝説の契約を強制的に破棄させる事ができる、ある種、恐ろしい力を秘めた都市伝説
だが、本来、不意でも撃たなければ効力は発動しないし……ある線より強力な都市伝説の契約を強制解除するなど、到底できるはずがない
そう、朝比奈の「黄金伝説」のドラゴン達を、強制的に引き剥がすなどできるはずもないのだ
それを、ロンギヌスの槍が、実現させた
聖遺物を突き刺された「黄金伝説」のドラゴン達は、「刃物は縁を切る」の力によって引き剥がされる程に、その力を弱めていたのだ
「ぐ………く、ぁ……」
----からんっ
ロンギヌスの槍の穂先が……落ちた
朝比奈 秀雄から、「黄金伝説」のドラゴン達が抜け出て…彼の肉体は、人間の姿へと、戻った
強制的にドラゴン達を引き剥がされた反動だろうか
朝比奈が、苦しげにうめいている
ロンギヌスの槍の穂先が……落ちた
朝比奈 秀雄から、「黄金伝説」のドラゴン達が抜け出て…彼の肉体は、人間の姿へと、戻った
強制的にドラゴン達を引き剥がされた反動だろうか
朝比奈が、苦しげにうめいている
「……勝負あった、か」
その体から、ドラゴン達の力は消えた
クールトーも、今は動きを封じられている
クールトーも、今は動きを封じられている
朝比奈 秀雄の牙は、全てもがれたのだ
「大樹!大丈夫か?!」
「翼……はい、大丈夫です」
「翼……はい、大丈夫です」
慌てて駆け寄ってくる翼
黒服に怪我がない様子に、ほっとしたように笑みを浮かべた
黒服に怪我がない様子に、ほっとしたように笑みを浮かべた
「…親父、は」
「……強制的に、ドラゴン達を引き剥がしましたから…しばらく、反動はあるでしょうが。しかし、命に別状はないはずです」
「……強制的に、ドラゴン達を引き剥がしましたから…しばらく、反動はあるでしょうが。しかし、命に別状はないはずです」
朝比奈に視線を向ける黒服
その視線に、僅かに同情が、篭る
その視線に、僅かに同情が、篭る
…ぱたぱたと、聞えてきた足音
望と詩織が、ようやく到着したのだ
望と詩織が、ようやく到着したのだ
突然、巨大なドラゴンが消えた事に驚いたのだろうか
急いで、黒服達に駆け寄ってくる
急いで、黒服達に駆け寄ってくる
「……終わった、か?」
呟きながらも…Tさんは、警戒を解かない
何故だろうか?
何か……嫌な予感、が…
何か……嫌な予感、が…
「-----な」
痛みに、苦しみに悶えながらも
朝比奈は、憎悪の篭った眼差しで……黒服達を、睨み付けた
朝比奈は、憎悪の篭った眼差しで……黒服達を、睨み付けた
「……ッ見下す、なぁあああ…!この、化け物共がぁ………!!」
「………!?」
「………!?」
ごぽ、と、血を吐きながら、朝比奈が立ち上がる
反動で激痛が走っているだろうその体を経たせ、叫ぶ
反動で激痛が走っているだろうその体を経たせ、叫ぶ
「化け物、共が、この私を……朝比奈 秀雄を、見下すなぁっ!!人間がいなければ、存在すらできぬ癖に…………人間を、見下すなっ!!化け物共が!!」
「……ッ大樹は、お前を見下してなんていないだろ!」
「……ッ大樹は、お前を見下してなんていないだろ!」
翼が、大樹を庇うようにたって、朝比奈に叫ぶ
駆けつけた望も黒服の傍らに立ち、いつでも戦闘状態に入れるよう、朝比奈を警戒している
駆けつけた望も黒服の傍らに立ち、いつでも戦闘状態に入れるよう、朝比奈を警戒している
朝比奈の憎悪が、狂気が増している
牙をもがれても、まだ、朝比奈は、その願いを捨てない
牙をもがれても、まだ、朝比奈は、その願いを捨てない
「黙れ、翼……!お前も、その化け物に、だまされているだけだ………彼女は、門条 晴海は……「組織」の狗共に騙され、その身を捕えられ弄ばれ……その命を、散らしたっ!!」
その、憎悪は
「組織」の構成員である黒服に、真っ直ぐに叩きつけられる
「組織」の構成員である黒服に、真っ直ぐに叩きつけられる
「「組織」の狗が……私から、彼女だけでなく、翼まで………息子まで、奪うか……!」
一瞬
その言葉に、黒服が動揺する
その言葉に、黒服が動揺する
翼が、両親を疎むようになった理由は、自分ではないか?
黒服は、そう考えた事があったから
自分が、翼に接触するようになったから
そちらと比べるようになってしまって、翼が、両親を疎むようになったのでは、と
黒服は、そう考えた事があったから
自分が、翼に接触するようになったから
そちらと比べるようになってしまって、翼が、両親を疎むようになったのでは、と
その迷いに、黒服が動揺したのと
『ソウサ、コイツラハ、ゴ主人様カラ、何モカモ、奪ッテイッテシマウノサ』
そんな、声が
楽しげな楽しげな声が、辺りに響いたのは
ほぼ、同時だった
楽しげな楽しげな声が、辺りに響いたのは
ほぼ、同時だった
『ナァ、ゴ主人様ァ?「組織」ノ狗ハ、ゴ主人様カラミィンナ、何モカモ奪ッテイッチマオウトシテルゼェ?ゴ主人様カラダケジャネェ!!全テノ人間ノ大事ナモンヲ、奪ッチマオウトシテンノカモシレナイゼ!!』
「---悪魔の囁き!」
「---悪魔の囁き!」
ゆらり
朝比奈の周囲が歪み…姿を現したのは、巨大な、蛇
七つの頭を持ち、そして、その全てに立派な王冠を被った……巨大な、巨大な、黒蛇
まるで悪魔そのものの姿をしたそれが、朝比奈に纏わりつき、ケタケタと笑った
朝比奈の周囲が歪み…姿を現したのは、巨大な、蛇
七つの頭を持ち、そして、その全てに立派な王冠を被った……巨大な、巨大な、黒蛇
まるで悪魔そのものの姿をしたそれが、朝比奈に纏わりつき、ケタケタと笑った
朝比奈が契約している、悪魔の囁きが…その姿を、現したのだ
『ホラホラホラホラ、戦ワナクチャ、ゴ主人様。モウ、何モ奪ワレタクナインダロォ?彼女ヲ生キ返ラセタインダロォ?』
「……そうだ…………だから、私に力を貸せ、化け物………………貴様の力、私の目的のために、使いつぶしてやる………!」
『ヒャッハハハハハハハ!!イイネイイネェ!!ソウサ、モット俺ヲ憎ンデクレヨォ、イクラデモ使イ潰シテクレヨォ!!??サイッコウダゼェ、俺ノゴ主人様ハヨォオオオ!!!』
「……そうだ…………だから、私に力を貸せ、化け物………………貴様の力、私の目的のために、使いつぶしてやる………!」
『ヒャッハハハハハハハ!!イイネイイネェ!!ソウサ、モット俺ヲ憎ンデクレヨォ、イクラデモ使イ潰シテクレヨォ!!??サイッコウダゼェ、俺ノゴ主人様ハヨォオオオ!!!』
けたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけた
7つの首が、楽しげに楽しげに笑う
7つの首が、楽しげに楽しげに笑う
悪魔の囁き
それを纏った朝比奈は………いまだ、戦意を衰えさせる事、なく
己を取り囲む者たちを睨みつけ…戦闘体勢を、取った
それを纏った朝比奈は………いまだ、戦意を衰えさせる事、なく
己を取り囲む者たちを睨みつけ…戦闘体勢を、取った
……ぐるる、と
主の様子に、クールトーが、小さく唸り声を、あげて
----がぶり
誰にも気づかれぬまま、己の脚を一本、噛み千切った
主の様子に、クールトーが、小さく唸り声を、あげて
----がぶり
誰にも気づかれぬまま、己の脚を一本、噛み千切った
to be … ?