現在の学校町は、朝比奈秀雄が起こした混乱が最大に膨れ上がっている。
それに対処しようと、様々な都市伝説の個人や集団が《コークロア支配型》によって操られた人々と戦っている。
それに対処しようと、様々な都市伝説の個人や集団が《コークロア支配型》によって操られた人々と戦っている。
「フン、数が揃えば勝てるとは限らんぞ!」
そして、此処にも人々と戦い、行動不能にしている都市伝説が居た。
遠目に見ても判るような筋肉質、裸の上半身に、下半身は道着といった半裸の漢の《兄鬼》と名乗る都市伝説だ。
彼は、《コークロア支配型》に支配された人々を、相手取りながら他の都市伝説の様子を観察している。
遠目に見ても判るような筋肉質、裸の上半身に、下半身は道着といった半裸の漢の《兄鬼》と名乗る都市伝説だ。
彼は、《コークロア支配型》に支配された人々を、相手取りながら他の都市伝説の様子を観察している。
「この騒動は、オレにとってチャンスと言えるな。どの様な都市伝説や契約者が居るかを、知る機会に成る」
観察している、とは言っても視認している訳で無く。戦いによって感じる気配を通して、推測している訳だ。
「チッ、何だ? このマッスル野郎。邪魔だな消すか、手ぇ出すなよ」
人々を相手に、自身の力を試して居た《兄鬼》に突然、声が掛けられる。
どう考えても好意的では無い声の主に、道を開ける様《コークロア支配型》の被害者たちが脇にずれる。
すると、右手に警棒を持った男性が、そこには立っていた。
どう考えても好意的では無い声の主に、道を開ける様《コークロア支配型》の被害者たちが脇にずれる。
すると、右手に警棒を持った男性が、そこには立っていた。
「貴様、他の奴らとは違うな? 成程、《悪魔の囁き》に憑かれているのか」
「あぁ? 何言ってんだ。……何でも良いわ、サッサとくたばりやがれ!!」
「あぁ? 何言ってんだ。……何でも良いわ、サッサとくたばりやがれ!!」
男は、決して短くは無い《兄鬼》との距離を一瞬で近づき、警棒で振り下ろす様に殴りかかった。
さすがに意表を突かれ、《兄鬼》はその一撃をまともに喰らってしまうが、倒される程のダメージは負わない。
ただ、自分に攻撃を喰らわせた事でこの男に興味を示した。
さすがに意表を突かれ、《兄鬼》はその一撃をまともに喰らってしまうが、倒される程のダメージは負わない。
ただ、自分に攻撃を喰らわせた事でこの男に興味を示した。
「ほう、やる様だな。さっきまでの雑魚共とは違い、楽しめそうだ」
「ざけんじゃねー! 余裕のつもりか、手前」
「ざけんじゃねー! 余裕のつもりか、手前」
激昂したまま今度は、横殴りに《兄鬼》を攻撃する男だが、当たる事無くかわされてしまう。
速かったのは距離を詰めたときのみで、攻撃自体は普通のスピードのため、《兄鬼》は難なく見切る事が出来た。
しかし、それにより《兄鬼》は男の都市伝説を掴み切れない。
速かったのは距離を詰めたときのみで、攻撃自体は普通のスピードのため、《兄鬼》は難なく見切る事が出来た。
しかし、それにより《兄鬼》は男の都市伝説を掴み切れない。
(身体強化系かと思ったが、違うのか? ならば、移動系か。いや、考えても仕方が無いか)
「兄気闘法、鎧」
「兄気闘法、鎧」
圧縮した兄気を、装甲として全身に纏わせる《兄鬼》。
そんな事は、お構いなしと言う様に男は警棒を振り回し、回避を止めた《兄鬼》に再び命中した。
ただし、今度は兄気によって守られていたため、《兄鬼》はダメージを喰らう事は無い。ただ、男の能力が解らないので自分からは攻撃しない。
その後も何回も攻撃を続ける男だが、全く効かないのを理解していくと、元から不機嫌そうだった表情が更に歪み出す。
男のイラつきに呼応するように、《悪魔の囁き》が体から滲み出し姿を現した。
そんな事は、お構いなしと言う様に男は警棒を振り回し、回避を止めた《兄鬼》に再び命中した。
ただし、今度は兄気によって守られていたため、《兄鬼》はダメージを喰らう事は無い。ただ、男の能力が解らないので自分からは攻撃しない。
その後も何回も攻撃を続ける男だが、全く効かないのを理解していくと、元から不機嫌そうだった表情が更に歪み出す。
男のイラつきに呼応するように、《悪魔の囁き》が体から滲み出し姿を現した。
「っそ、何で効かねぇんだ!? あぁ、ムカつく」
「オイオイ。何、チンタラヤッテンダ! サッサト片ヅケヤガレ!」
「うっせーんだよ。指図すんじゃねぇよ!」
「オイオイ。何、チンタラヤッテンダ! サッサト片ヅケヤガレ!」
「うっせーんだよ。指図すんじゃねぇよ!」
一見、男は《悪魔の囁き》と会話している様に見えるが怒りで頭が一杯な男は、《悪魔の囁き》の事を認識してはいない。
ただ、話しかけられた事に反応しているだけのようだ。
そんな男が、《兄鬼》への攻撃を一旦止め、又もや高速で移動し距離を稼いだ。
ただ、話しかけられた事に反応しているだけのようだ。
そんな男が、《兄鬼》への攻撃を一旦止め、又もや高速で移動し距離を稼いだ。
「埒が明かねぇな。こんなタダの武器じゃダメって事か? なら、これで如何だ!?」
「む?!」
「む?!」
警棒が突然に光り出した事に、《兄鬼》は警戒すると同時に、男の都市伝説の予想を付けた。
男が契約したのは、恐らく契約者自身では無く、その所有する道具に干渉する能力なのだろう。
男が契約したのは、恐らく契約者自身では無く、その所有する道具に干渉する能力なのだろう。
「こいつなら、如何だ!! 《格段に優れた新製品》になったこの警棒なら」
「オーオー! 良イゾ良イゾ。ヤッチマエェ!!!」
「成程、《格段に優れた新製品》か。あの高速移動は、靴を改造していたと言う訳だな」
「オーオー! 良イゾ良イゾ。ヤッチマエェ!!!」
「成程、《格段に優れた新製品》か。あの高速移動は、靴を改造していたと言う訳だな」
ごく稀に、切れない蛍光灯などの今の技術では有り得ない筈の製品が現れる事が有るが、直ぐにメーカーの人間が来て、高額の迷惑料と共に回収に来るため、知られる事が無い。
そんな話から生まれた《格段に優れた新製品》は、契約者が所有権を持つ道具の性能を文字通り、格段に優れさせるようだ。
そんな話から生まれた《格段に優れた新製品》は、契約者が所有権を持つ道具の性能を文字通り、格段に優れさせるようだ。
「余裕そうじゃねぇか!」
普通の警棒から一変してメカメカしくなった棒を振り被り、男は高速で《兄鬼》に突っ込む。
良く見れば、その靴の裏から空気が噴射されている。それにより移動スピードを上げている様だ。
高速移動とは言え、どうやら小回りは利かないらしく。真直ぐに突っ込んでくる程度なら、《兄鬼》に避ける事は難しくない。
警棒の間合いを測り、確実に避けた筈…ザシュ…だった。
良く見れば、その靴の裏から空気が噴射されている。それにより移動スピードを上げている様だ。
高速移動とは言え、どうやら小回りは利かないらしく。真直ぐに突っ込んでくる程度なら、《兄鬼》に避ける事は難しくない。
警棒の間合いを測り、確実に避けた筈…ザシュ…だった。
「ハァッ、ハッハー!! 如何だ、ビーム警棒の威力は」
「スゲー、スゲー。ソノ調子ダー!!」
「スゲー、スゲー。ソノ調子ダー!!」
警棒の先から光が伸び、まるでビー○サー○ル等の様な姿となり。兄気の鎧に守られている筈の《兄鬼》の体を斬りつけた。
高密度に圧縮されている兄気を貫いた事から、その威力は高いと考えられるだろう。
傷を付けた事に、男は調子付いたらしく今まで以上の勢いでビーム警棒を振り回しだした。《悪魔の囁き》も好い気に成って、それを囃し立てている。
一方の《兄鬼》は、危機を感じながらも、自信が有った防御を貫いた男の強さに笑みを浮かべ出した。
高密度に圧縮されている兄気を貫いた事から、その威力は高いと考えられるだろう。
傷を付けた事に、男は調子付いたらしく今まで以上の勢いでビーム警棒を振り回しだした。《悪魔の囁き》も好い気に成って、それを囃し立てている。
一方の《兄鬼》は、危機を感じながらも、自信が有った防御を貫いた男の強さに笑みを浮かべ出した。
「何、笑ってやがる?! ピンチだってのが分からねぇのか」
「否、何。楽しいと思ってな、強者との闘争は!」
「否、何。楽しいと思ってな、強者との闘争は!」
全力で地面を蹴り出し、恐れる事も無く《兄鬼》は男に突撃していく。
「馬鹿が。自分から、やられに来やがったか」
当然、男はそれを迎撃せんとビーム警棒を突き立てる。向かって来る相手には、斬撃よりも刺突の方が良いと思ったのだろう。
その判断は、有る意味で当たり、有る意味で外れていた。
その判断は、有る意味で当たり、有る意味で外れていた。
「なっ……………!」
「肉を貫かせて骨を潰す、と言った感じか」
「肉を貫かせて骨を潰す、と言った感じか」
線の攻撃では無く点の攻撃だったために、《兄鬼》の肉体を貫く事には成功したが、致命傷に成らず。
逆に、警棒を持った腕を掴まれる。そして、男の右腕を《兄鬼》は全力で握り潰す。
逆に、警棒を持った腕を掴まれる。そして、男の右腕を《兄鬼》は全力で握り潰す。
「グ、グァァァァァァァ!!」
ボキ、グチャと音を立て、呆気なく男の腕は使い物に成らなくなり、悲鳴を上げる。
《格段に優れた新商品》は道具の強化であり、契約者本体の肉体を強くする能力は無いのだ。
普通の人間の体が、筋肉を極めんとする《兄鬼》の握力に耐えられる筈は無かった。
《格段に優れた新商品》は道具の強化であり、契約者本体の肉体を強くする能力は無いのだ。
普通の人間の体が、筋肉を極めんとする《兄鬼》の握力に耐えられる筈は無かった。
「オイオイ、ヤリ過ギジャネェノカ。コイツハ被害者デモアルンダゾ」
「誰が、こいつを救うために戦っていると言った。オレは強者と戦うだけだ。その結果、如何なろうと知った事では無い」
「誰が、こいつを救うために戦っていると言った。オレは強者と戦うだけだ。その結果、如何なろうと知った事では無い」
《悪魔の囁き》の制止も無視し、追撃を仕掛けようと《兄鬼》は空いている腕を引いた。
普通ならば、この一撃でケリが付いただろう。ただ、普通では無かったのは男が、諦めてはいなかった事だ。
折られながらも警棒を手放さなかった腕を振り回して、《兄鬼》の肩を斬り裂いた。
普通ならば、この一撃でケリが付いただろう。ただ、普通では無かったのは男が、諦めてはいなかった事だ。
折られながらも警棒を手放さなかった腕を振り回して、《兄鬼》の肩を斬り裂いた。
「な、めんじゃねぇぞ!! 俺が、俺の装備が負ける訳が無いだろう!!!」
「ハ、ハハハハハ。ソウダ、ソノ調子ダァ!」
「るせぇ」
「ハ、ハハハハハ。ソウダ、ソノ調子ダァ!」
「るせぇ」
腕の痛みを振り払う様に《兄鬼》に向かい、男は叫びを上げる。
その様子に、調子を取り戻す《悪魔の囁き》が声を上げる。
その様子に、調子を取り戻す《悪魔の囁き》が声を上げる。
「俺は、俺の《格段に優れた新製品》は誰にも劣らねえんだ。お前をぶっ殺して証明してやる」
ビーム警棒を無事な左腕に持ち替えて、特攻の姿勢で《兄鬼》に向き合う男。
「良いだろう。真っ向から、打ち破ってやる。兄気闘法、刃」
全身に纏う兄気のほぼ全てを、無事な方の腕に集め男に向き合う《兄鬼》。
「だぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」
「フンっ!!!!!!」
「フンっ!!!!!!」
結果として、振り下ろされた男の刃は《兄鬼》の肩を斬り落とし、横薙ぎに放たれた《兄鬼》の手刀は男の胸部を斬り裂いた。
倒れる男と片腕を失いながらも立ち続ける《兄鬼》、どちらも無事とは言えないが勝敗は明らかだった。
ふと、息は有るが瀕死の状態の男から、上げられる筈の無い叫びが響いた。
倒れる男と片腕を失いながらも立ち続ける《兄鬼》、どちらも無事とは言えないが勝敗は明らかだった。
ふと、息は有るが瀕死の状態の男から、上げられる筈の無い叫びが響いた。
「グギャアァァァァァァ」
いや、叫んだのは《悪魔の囁き》だった。
どうやら、先程の斬撃に巻き込まれていたらしい、何とも運の悪い事だろう。
ともあれ、男に憑いていた《悪魔の囁き》は駆除された訳だ。
どうやら、先程の斬撃に巻き込まれていたらしい、何とも運の悪い事だろう。
ともあれ、男に憑いていた《悪魔の囁き》は駆除された訳だ。
「ふむ、《悪魔の囁き》が消えたか。まぁ良い、この傷では戦えないだろう」
消滅して行く《悪魔の囁き》の様子を見てから《兄鬼》は、男への関心を薄めていく。
彼は、強いモノと戦う事だけが目的であり、戦えなくなった相手に興味を持つ事は無い。
止めを刺す事も無ければ、治療をしようと言う考えも無い。
彼は、強いモノと戦う事だけが目的であり、戦えなくなった相手に興味を持つ事は無い。
止めを刺す事も無ければ、治療をしようと言う考えも無い。
「さて、片腕が無くなったが、如何するか。良し、他の戦地を直接見に行く事にするか。
……その前に、片手でどこまで出来るのか試してみるか」
……その前に、片手でどこまで出来るのか試してみるか」
《格段に優れた新製品》の男が倒れた事で、大人しくしていた《コークロア支配型》の被害者が再び動き出す。
そんな彼らの様子を見て、《兄鬼》は言った。
そんな彼らの様子を見て、《兄鬼》は言った。
終り