血に塗れるのは慣れている
返り血には慣れている
返り血には慣れている
命を奪う瞬間に、とうに慣れていると知ったならば
彼女は、どんな顔をするだろうか
彼女は、どんな顔をするだろうか
「紫苑」
「………は?」
「………は?」
獄門寺 菊と契約した、その翌朝
朝食の最中に、菊が突然、そんな事を言ってきた
……朝食は、起きた時、菊がもう作っていた
普通に美味しいのが、何か腹立つ
朝食の最中に、菊が突然、そんな事を言ってきた
……朝食は、起きた時、菊がもう作っていた
普通に美味しいのが、何か腹立つ
「紫苑」
「いや、それは聴こえたけど……何、それ」
「名前」
「いや、それは聴こえたけど……何、それ」
「名前」
もぐ、と
ご飯を飲み込み、そう告げてきた菊
相変わらず、目元はよく見えない
ご飯を飲み込み、そう告げてきた菊
相変わらず、目元はよく見えない
「名前?」
「紫苑の、名前。紫苑」
「紫苑の、名前。紫苑」
…菊が何を考えているのか、考える
味噌汁を一口飲んで……あぁ、とようやく思い当たった
味噌汁を一口飲んで……あぁ、とようやく思い当たった
「私の名前?」
「そう」
「そう」
「…紫苑」
「何度も呼ばなくていいわよ」
「……紫苑、で、いい?」
「何度も呼ばなくていいわよ」
「……紫苑、で、いい?」
小さく、首を傾げてきた
子供っぽい仕種をされても、あまり可愛くない
子供っぽい仕種をされても、あまり可愛くない
「まぁ、いいわよ、別に」
「……そうか」
「……そうか」
…どうやら、ほっとしているらしい
こいつなりに、一応、真剣に考えてくれてはいたのだろう
私が気に入るかどうか、心配していたのか
こいつなりに、一応、真剣に考えてくれてはいたのだろう
私が気に入るかどうか、心配していたのか
(……心配なんて、しなくともいいのに)
名前のなかった私
よほど酷い名前でもない限り
私は、それを気に入っただろうから
よほど酷い名前でもない限り
私は、それを気に入っただろうから
朝食を終えて、後片付け
後片付けは、一応手伝っておいた
後片付けは、一応手伝っておいた
一人暮らしらしい菊
だだっ拾いワンルームのこの部屋は、私がいてもまだ広く感じる
…家賃が高そうだ
若く見えるのにこんな部屋に住めると言う事は、親からの仕送りでもあるのだろうか
そう、考えていると
だだっ拾いワンルームのこの部屋は、私がいてもまだ広く感じる
…家賃が高そうだ
若く見えるのにこんな部屋に住めると言う事は、親からの仕送りでもあるのだろうか
そう、考えていると
「…服」
「え?」
「え?」
菊が、壁一面のクローゼットを開けた
…思わず、硬直する
そこには一面、服がみっしりと入っていたからだ
しかも、全部女物
…思わず、硬直する
そこには一面、服がみっしりと入っていたからだ
しかも、全部女物
「……好きなの、選べばいい」
「っちょ、ま、なんでこんなに服もってんのよ!?」
「っちょ、ま、なんでこんなに服もってんのよ!?」
しかも女物を!?
「サンプル」
「は?」
「サンプル」
「は?」
「サンプル」
…昨夜、同じような会話があった気がする
どう言う事なのか
追求したいが、追及しても「サンプル」としか答えが返ってこない気がするのは気のせいか
どう言う事なのか
追求したいが、追及しても「サンプル」としか答えが返ってこない気がするのは気のせいか
「好きなの選べ、って言われても…どうすればいいのか、わからないわよ」
正直、おしゃれには興味がある
でも、突然、服を沢山見せられて好きなのを選べといわれても…どうしたらいいのか、わからない
でも、突然、服を沢山見せられて好きなのを選べといわれても…どうしたらいいのか、わからない
菊は、じっとこちらを見つめてきている…の、だと思う
前髪のせいで、視線はよくわからない
前髪のせいで、視線はよくわからない
「……希望」
「は?」
「…希望」
「は?」
「…希望」
えぇい、今度は何だ
何と言おうとしているのだ
何と言おうとしているのだ
契約者の事を理解できないなど、都市伝説失格だろう
気合で、理解しようとする
気合で、理解しようとする
「…私が、どんな格好したいか、って?」
「……ん」
「……ん」
正解らしい、頷いてきた
もっと、わかりやすく言え
言葉が少なすぎる
もっと、わかりやすく言え
言葉が少なすぎる
「……そうね、私、白い服しか着た事ないから……カラフルで、可愛いのが、いい」
せっかく契約して、少し、都市伝説の制約から解放されているのだ
白いワンピース以外がいい
白いワンピース以外がいい
私の言葉に、菊はクローゼットから、服を選び出した
縞模様のキャミソールに、その上に着る用の、首元が大きく開いた明るい色のセーター、その上に羽織るカーディガンも、明るい色合いだ
ふんわりした、カラフルなスカートに、それにあわせた原色のタイツ
最後に、可愛らしいリボンを用意して
縞模様のキャミソールに、その上に着る用の、首元が大きく開いた明るい色のセーター、その上に羽織るカーディガンも、明るい色合いだ
ふんわりした、カラフルなスカートに、それにあわせた原色のタイツ
最後に、可愛らしいリボンを用意して
「………ん」
と、差し出してきた
所要時間、3分もたっていない
所要時間、3分もたっていない
受け取ると、サイズはどうやら自分にちょうどよさそうだ
菊に背中をむけさせ、着替える
クローゼットの内側についていた全身鏡に、自分の姿を映してみた
菊に背中をむけさせ、着替える
クローゼットの内側についていた全身鏡に、自分の姿を映してみた
……悪くない、と思う
少々、子供っぽくはあるだろうか?
でも、悪くない、と、思う
少々、子供っぽくはあるだろうか?
でも、悪くない、と、思う
「いいわよ」
「…ん」
「………似合ってる?」
「…ん」
「………似合ってる?」
見上げて尋ねれば、頷いたきた
うん、なら良し
うん、なら良し
「………行く」
「どこへ?」
「…仕事……来る、か?」
「どこへ?」
「…仕事……来る、か?」
…仕事、か
学生ではなく、既に社会人らしい
学生ではなく、既に社会人らしい
「まぁ、ついていってやってもいいけど…それなら、姿を隠した方がいい?」
「………?」
「………?」
首を傾げてきている
あぁ、そうか
説明していなかった
あぁ、そうか
説明していなかった
「私、幽霊みたいな属性もあるから。姿を消すくらいはできるわよ。あんたにしか見えない状態になる、とかね」
「……必要、ない」
「……必要、ない」
言いながら、ジャケットを羽織っている菊
…英国風とでも言うのだろうか
チェック模様の格好
菊のすらりとした体格には似合っているが、前髪が長い、どこか暗い顔立ちには少し似合わないかもしれない
それでも、多分、この格好で歩いていたら、数人は振り向いてくるんじゃないだろうか
…英国風とでも言うのだろうか
チェック模様の格好
菊のすらりとした体格には似合っているが、前髪が長い、どこか暗い顔立ちには少し似合わないかもしれない
それでも、多分、この格好で歩いていたら、数人は振り向いてくるんじゃないだろうか
とりあえず
姿を隠す必要がないのなら、そのままついていくとしよう
菊の後を追ってマンションの部屋を出て、駐車場に止めてある車に向かう
姿を隠す必要がないのなら、そのままついていくとしよう
菊の後を追ってマンションの部屋を出て、駐車場に止めてある車に向かう
…さて、この男、どんな場所で働いているのだろうか
少し、好奇心が湧き上がってきたのだった
少し、好奇心が湧き上がってきたのだった
to be … ?