ドクター74
「別にこのくらいの怪我、どうでもいいのに」
穴だらけになった腕に『蝦蟇の油』を塗られながらも、態度は変わらず悪いままの宮定繰
「かといって、ここまで重傷だと病院に行くにも都合が悪いですから。妙な噂が立っては『組織』としても問題です」
A-No.18782は、繰と彼女に薬を塗る黒服Gから微妙に間合いを取っている
「警戒しなくても無理矢理奪うような真似はしない」
大柄で強面な外見に似合わず、繊細な手付きで繰の手当てを済ませていく黒服G
『組織』の内部派閥など知らない繰は、二人のやり取りについては全く理解できていなかった
「ねぇ……あんたら仲悪いの?」
余りにもド直球な質問が繰の口から零れ落ちるが、黒服GもA-No.18782もそれぞれ沈黙を守っていた
何やら重苦しい空気をこれっぽっちも理解せず、沈黙に首を傾げる繰
「……終わったぞ。他に痛む所が無いか?」
「別に。元々治療なんていらないのよ」
包帯の巻かれた腕を曲げ伸ばししながら、ふんとそっぽを向く繰
「どうであれ怪我を治して貰ったんですからお礼ぐらい言いましょうよ」
「私は頼んでないもの。このぐらいの怪我で困りゃしないわよ」
肩を竦めて見せるA-No.18782だが、黒服Gは気にした様子も無く治療に使っていたものを片付ける
そして、丁度治療が終わったタイミングで、何食わぬ顔で戻ってくる黒服H
何十人の分身を操る敵と戦ってきたとは思えない、いつもと変わらぬ様子でだ
「ちっ、死ねば良かったのに」
「お仕事仲間なんですから、そんな事を言っちゃいけませんよもう」
吐き捨てるような声ですこぶる物騒な事を呟く繰を、A-No.18782が笑顔のまま嗜める
「お疲れ様でした。それでは我々はこれで撤収します。道中、残党がいないか確認しつつ本部へ帰還しようと思いますので」
「という事はだ。それ、置いていくつもりは無いって事で良いんだな?」
A-No.18782の抱えた小さな壷、『蟲毒』が満たされた最悪に近い呪物
それを見咎めて黒服Hが声を掛け、A-No.18782はそれまでの笑顔を僅かに苦笑に歪める
「勘弁して貰えませんかね? うちの上司、怒ると怖いんで」
ぽつぽつと浮かび上がる蒼白い鬼火、『ウィル・オー・ウィスプ』
近寄るな、追って来るなという明確な意思表示である
「随分と警戒するねぇ?」
「そりゃまあ、幹部級とその直属相手じゃ私みたいな下っ端じゃ警戒する程度じゃどうにもなりませんし」
「そういう事なら、私は担当側に味方するのが筋ね。あんたらの内部事情なんてこれっぽっちも知らないし。そこのスケベはむしろ殺したいし」
日本人形の菊花を抱え、ざわりと髪を蠢かせる繰
「……何かしたのか」
「残念ながら、まだなんだけどねぇ」
睨みつけてくる黒服Gに、苦笑を浮かべながら肩を竦めて見せる黒服H
「やめておけ」
「セクハラをか?」
「茶化すな。ここで無理に奪い取っても事が面倒になる」
「だからってなぁ、流石にアレをあいつらに預けとくのもまずかないか?」
「少なくとも所持している事は証言させられる奴がここにいるだろう。早めに手続きを踏めばこちらで押さえれる」
別に密談という様子でもなく、堂々と聞かれるままに言葉を交わす黒服Gと黒服H
「何、やらないの?」
「何だ、やりたかったのか?」
「あんたをブン殴れると思ってたのに肩透かしよ」
繰はくるりと踵を返し
「私はこのスケベは信用してないの。本部までは護衛がてらついていぶぷっ!?」
「何やってんですか! まだ『ウィル・オー・ウィスプ』解除してないのに私の方に歩いてきちゃダメですよ!?」
「私は平気だったけど、菊花が思い切り埋まるところだったわよ!? 無差別発動ならもうちょっと気ぃ遣いなさいよ!」
沼化した地面に足を取られ顔面から綺麗に転倒する繰と、慌てて能力を解除しアスファルトにめり込んだままの繰を助け起こすA-No.18782
「……さっきまでのマジな空気、何だったんだろうな」
「真面目にやってるつもりだったのか」
「割とな」
そんな騒がしい二人を置いて、やや呆れた様子の黒服二人はいつの間にかその場から姿を消していたのだった
穴だらけになった腕に『蝦蟇の油』を塗られながらも、態度は変わらず悪いままの宮定繰
「かといって、ここまで重傷だと病院に行くにも都合が悪いですから。妙な噂が立っては『組織』としても問題です」
A-No.18782は、繰と彼女に薬を塗る黒服Gから微妙に間合いを取っている
「警戒しなくても無理矢理奪うような真似はしない」
大柄で強面な外見に似合わず、繊細な手付きで繰の手当てを済ませていく黒服G
『組織』の内部派閥など知らない繰は、二人のやり取りについては全く理解できていなかった
「ねぇ……あんたら仲悪いの?」
余りにもド直球な質問が繰の口から零れ落ちるが、黒服GもA-No.18782もそれぞれ沈黙を守っていた
何やら重苦しい空気をこれっぽっちも理解せず、沈黙に首を傾げる繰
「……終わったぞ。他に痛む所が無いか?」
「別に。元々治療なんていらないのよ」
包帯の巻かれた腕を曲げ伸ばししながら、ふんとそっぽを向く繰
「どうであれ怪我を治して貰ったんですからお礼ぐらい言いましょうよ」
「私は頼んでないもの。このぐらいの怪我で困りゃしないわよ」
肩を竦めて見せるA-No.18782だが、黒服Gは気にした様子も無く治療に使っていたものを片付ける
そして、丁度治療が終わったタイミングで、何食わぬ顔で戻ってくる黒服H
何十人の分身を操る敵と戦ってきたとは思えない、いつもと変わらぬ様子でだ
「ちっ、死ねば良かったのに」
「お仕事仲間なんですから、そんな事を言っちゃいけませんよもう」
吐き捨てるような声ですこぶる物騒な事を呟く繰を、A-No.18782が笑顔のまま嗜める
「お疲れ様でした。それでは我々はこれで撤収します。道中、残党がいないか確認しつつ本部へ帰還しようと思いますので」
「という事はだ。それ、置いていくつもりは無いって事で良いんだな?」
A-No.18782の抱えた小さな壷、『蟲毒』が満たされた最悪に近い呪物
それを見咎めて黒服Hが声を掛け、A-No.18782はそれまでの笑顔を僅かに苦笑に歪める
「勘弁して貰えませんかね? うちの上司、怒ると怖いんで」
ぽつぽつと浮かび上がる蒼白い鬼火、『ウィル・オー・ウィスプ』
近寄るな、追って来るなという明確な意思表示である
「随分と警戒するねぇ?」
「そりゃまあ、幹部級とその直属相手じゃ私みたいな下っ端じゃ警戒する程度じゃどうにもなりませんし」
「そういう事なら、私は担当側に味方するのが筋ね。あんたらの内部事情なんてこれっぽっちも知らないし。そこのスケベはむしろ殺したいし」
日本人形の菊花を抱え、ざわりと髪を蠢かせる繰
「……何かしたのか」
「残念ながら、まだなんだけどねぇ」
睨みつけてくる黒服Gに、苦笑を浮かべながら肩を竦めて見せる黒服H
「やめておけ」
「セクハラをか?」
「茶化すな。ここで無理に奪い取っても事が面倒になる」
「だからってなぁ、流石にアレをあいつらに預けとくのもまずかないか?」
「少なくとも所持している事は証言させられる奴がここにいるだろう。早めに手続きを踏めばこちらで押さえれる」
別に密談という様子でもなく、堂々と聞かれるままに言葉を交わす黒服Gと黒服H
「何、やらないの?」
「何だ、やりたかったのか?」
「あんたをブン殴れると思ってたのに肩透かしよ」
繰はくるりと踵を返し
「私はこのスケベは信用してないの。本部までは護衛がてらついていぶぷっ!?」
「何やってんですか! まだ『ウィル・オー・ウィスプ』解除してないのに私の方に歩いてきちゃダメですよ!?」
「私は平気だったけど、菊花が思い切り埋まるところだったわよ!? 無差別発動ならもうちょっと気ぃ遣いなさいよ!」
沼化した地面に足を取られ顔面から綺麗に転倒する繰と、慌てて能力を解除しアスファルトにめり込んだままの繰を助け起こすA-No.18782
「……さっきまでのマジな空気、何だったんだろうな」
「真面目にやってるつもりだったのか」
「割とな」
そんな騒がしい二人を置いて、やや呆れた様子の黒服二人はいつの間にかその場から姿を消していたのだった