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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ドクター-76

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ドクター76


『アメリカ政府の陰謀論』の執務室
その都市伝説そのものであるジョン・スミス
彼は今電話中であり、その相手は日本の『学校町』で活動している腹心の黒服、『悪魔憑き(ディアボロス)』デイズ・スプリングスだった
《造反者については現地勢力により駆逐を完了。逃亡を図った者も一通り処分致しました》
「ご苦労。現地の『第三帝国』内の情報提供は奴らに代わり君が受け持ちたまえ」
《了解致しました。では情勢の変化があり次第、また報告を》
デイズがそう言いかけた、その背後でいきなりドアを蹴破るような音が響き渡った
《あんたまた売り場にいないと思ったらこんなところで私用電話!? そういうのは休憩時間に済ませとけって何度も言ってんでしょうが!》
《いやこれは本社への定時連絡で》
《業務時間外か休憩時間に変更して貰いなさいそんなもん! 今の時間、どんだけ売り場が忙しいと思ってんの!》
しばらく揉み合うような雑音が入った後、受話器から聞こえてきたのはデイズの声ではなく、いきなり割り込んできた女性の声だった
《どういう意図でこの人をうちの店に送り込んできたかは知りませんが! 真面目に仕事しないんだったら送り返しますからね!》
流暢な英語で一方的にそう告げられ、ぷつりと通話は途絶えてしまった
ジョン・スミスはしばしの沈黙の後、そっと受話器を置いて煙草に火を点けた
「どこの業界も女は怖いものだ」
「そんなものですか」
執務室の入り口から数歩のところに立った黒服女は、気だるそうに言葉を返す
「そんなに離れてないで近くで話を聞きたまえ」
「いえ、煙草の煙が嫌いなだけですんでお気遣いなく」
「……うちの女性職員は揃って煙草嫌いだな」
「アメリカに限らず先進国では喫煙は自己管理ができてないという印象があるからではないでしょうか」
単に元彼が煙草が嫌いだったという理由で煙草が嫌いな女黒服は、そんな様子など微塵も見せずに淡々と返す
「まあそれは置いておこう。今回君を招集したのは……しばらく前の『ウィンチェスター・ミステリー・ハウス』の件だ」
「その件が何か」
「我々に従わない場合は抹殺を。そう命じたはずではなかったかね?」
「生憎と、私はその辺細かい話を聞いてなかったもので。逃がしてしまったのも相棒の独断ですし」
「その後の、別のエージェントによる処分をターゲットが免れたのは君の判断だそうだが」
「お言葉ですが。私は多くのアメリカ国民を巻き込むであろう事を予測できたために、やむなく行動したまでです。一つの都市伝説を処分するために多くの国民を犠牲にすれば、また別の都市伝説を生み出しかねません」
よくもまあ、スラスラこんな言葉が出てくるものだ
黒服女は自分の事ながら半ば呆れ気味に自重の笑みを浮かべる
「よく口が回るな、私を前にして」
「事実ですから」
「それにしては、取り逃がした少女の追撃任務を頑なに拒んでいるようだが?」
「有名ではないですか、『学校町』は。あんなところへ暗殺任務で行くなんて無駄死にもいいところです。あのチャイニーズ達ですら企みは露見して全滅したのでしょう?」
「だからこそ……そろそろ釘を刺しておきたいのだがね」
短くなった煙草が、灰皿に押し付けられる
「『命令』、されたいのかね?」
その言葉に、黒服女は小さく溜息を吐き、渋々といった声で命令を反復した
「了解しました。これより国外逃亡した抹殺対象の追撃任務に移ります」

―――

「あーもー、めんどくさーい」
ガタガタと車体を揺らし、人気の無い田舎道を走る一台の車
その助手席で缶コーヒーを啜りながら黒服女は何度繰り返したか判らない言葉を発する
「暗殺なら暗殺らしい能力の奴を送り込めばいいのに。私みたいな『世界の七不思議』級のド派手な能力でどうしろってのよ」
「行くだけ行って無理でしたでどうにか誤魔化すしかないだろ」
同じ愚痴を繰り返す相棒に、運転席の黒服男は同じ返答を繰り返す
気だるい時間が過ぎていった最中、ふと黒服男が訝しげに眉を顰める
対向車もいない田舎道、それなりにアクセルを踏み込んでいるにも関わらず車の速度はじわじわと落ちていく
「んん? UFOはその辺飛んでねぇよな?」
「いたとしてもアメリカ国内で私達に仕掛けてはこないでしょ、いくらなんでも」
二人が周囲の気配を探ろうとした、その瞬間
突然車のボンネットが開き、そこから体長50cm程の小鬼が数匹飛び出して行った
「グレムリンだと!?」
「あいつらって飛行機専門じゃなかったっけ? てー事は、契約者がいるのかな」
「くそっ、この車は気に入ってたんだがな」
黒服二人が飛び降りるのと同時に、車はフロントから火を吹いて路肩に転げ落ちてしまう
すぐに体勢を立て直し、黒服男は折り畳まれた1ドル紙幣を、黒服女はポケットミラーを取り出すが
取り出したそれは、バラバラに千切れ、砕けていた
「道具が媒介の能力ってのはモロいねぇ」
無数の小鬼を従え現れたのは、路地裏でドラッグでも売ってるのが似合いそうな不健康そうな青年
「よう、会いたかったぜぇ?」
怨みたっぷりの視線で睨みつけてくる青年に、黒服男は黒服女の方を見てぼそりと呟く
「誰だ?」
「知らない」
「待てコラァ!?」
素っ気無いリアクションに、青年はこめかみに血管を浮かばせて怒鳴る
「俺の仕事を邪魔しといてその態度か!? 折角落とした飛行機が無人で、誰も死んでねぇとかなぁ!」
「アレってうちのエージェントがやったんじゃねぇのか?」
「ボスはそう言ってたけど?」
「頼まれたんだよ、手前ぇらみたいな黒いのに! やるだけやらせといて失敗したから金は払わねぇ、その上テロリスト扱いで指名手配しやがって! 罠か! ハメやがったのか!」
「そんな仕事引き受ける方が悪ぃじゃねぇか、バカか」
「金払うから死ねって言われたら死ぬようなバカよ、これ」
呆れた黒服二人に、青年はぷるぷると震えながら手にした武器、短機関銃を構える
「手前ぇらの能力は調べがついてんだ。後はまあ、死ぬような事をすりゃ死ぬって事もな」
「あのねぇ、人を殺しに来たら殺されても文句言えないよ?」
黒服女はポケットから別の鏡を取り出そうとするが
「何も使わせねぇよ」
青年が従えた小鬼がキィキィと鳴き声をあげると、手の中で鏡がぱきんと割れてぼろぼろに崩れ落ちてしまった
「俺の『グレムリン』は、道具なら何でも狂わせたり破壊したりする事ができる。あんたら二人の能力じゃあ……これにゃあ対抗できねぇよな?」
言うが早いか、黒服女のサングラスが砕け、タイピンやカフスが崩れ落ち、ボタンが一つ残らず弾け飛ぶ
「光を反射するモンが無きゃ、何もできねぇんだろ? そっちの野郎はドル紙幣だったな」
青年の言葉に、ポケットの中からボロボロになったドル紙幣を掴み出し、舌打ちする黒服男
「100ドルぐらい常備してんだぞ手前ぇ。弁償しろ」
「これからくたばるのに、金の心配なんざいらねぇだろ!」
引き金に掛かった指に力が入ろうとしたその時
青年はとっさに身を伏せた
その頭上を二条の熱線が通り過ぎたかと思うと、その先にあった交通標識を爆散させた
「なっ……光を反射するようなもんは全部ブッ壊したはず!?」
「うわ、やっぱ外したかー……これ、狙い付けにくいのよね、視界塞がるから」
熱線を放ったのは、黒服女の二つの瞳
「わざわざ銃なんか持ってくるって事は、『グレムリン』は直接攻撃には使えないんでしょ? んでもってさっきの話から察するに、目ん玉は抉れないわよねー」
「だからって、当たりもしねぇ攻撃は怖かねぇよ!」
「そうねぇ、そこそこ大きい反射物じゃないと熱線自体が小さいし」
そう言って黒服女は目を瞬かせながら、傍らに立つ黒服男の襟首を掴む
「おい、何を」
「いやー、今までやった事無かったしやる必要も無かったんだけど。いっぺんやってみたかったのよね」
黒服男の頭をヘッドロックのように抱え込み、ぴたりと青年に向けて狙いを定める
「ちょ……まさか……そんなんアリなのかよ!?」
「光が反射するなら何でもアリ♪」
黒服男のスキンヘッドが、まるで太陽のような光を放ち
青年と小鬼達を丸ごと薙ぎ払った

―――

燃え尽きてスクラップとなった車と焼け野原という、爆撃でも受けたかのような光景
辛うじて人の形を留めていた消し炭をくしゃりと踏み潰し、黒服女は溜息を吐く
「ご丁寧に携帯まで壊してくれちゃって」
「こりゃあ電話を借りれるところまで歩くしかないな」
「しまった、程々にぶちのめして携帯なりお金なり巻き上げれば良かった」
「俺なら鉛弾たらふく喰らった程度じゃ死なねぇのに、先走るからだ」
「それはそれで痛いでしょ?」
「まあな」
黒服男は煙草を取り出し火を点けようとして、ライターが無くなっている事に気付く
「やーいやーい」
「ガキか」
煙草をポケットに捻じ込み、大仰に溜息を吐く黒服男
「ともあれ、早いとこお前を空港まで連れていかねぇとな。金と服も調達しなきゃいかん」
「日本行き、そんなに急がなきゃダメなの? むしろ行きたくないんだけどなぁ」
「向こうの『組織』が丁度ゴタついてるらしくてな。潜り込むなら今のうちだそうだ。誤魔化したいなら誤魔化せるうちになんとかしてこい」
「気が重いなーもう」
ベルトの留め金が壊れずり下がるズボンを押さえながら頭を悩ませる黒服女
一度は救った少女の命を再度狙う事や、どう活動し場合によってはどう誤魔化すか
それらよりも彼女の頭を占めているのは、かつての恋人と出会ってしまったらどうするか、ただそれだけであった


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