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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 花子さんと契約した男の話-20

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 【♪~Il giudizio finale sta per essere emesso ~♪】

 気だるい、憂鬱さすら感じる、月曜の朝
 朝食を作っていた弟の携帯に、何やら着信が入った
 弟は朝食を作りながら、その電話に対応している

「あ、どうしたの?………え?………うん……………うん、わかった」

 一瞬、面倒そうな顔をして
 しかし、何やら了承して、電話を切っている
 …また、ブログを本にするとか言う話でも来たのだろうか
 時折、担当の人間と話してでもいるのか、黒スーツの男と話している様子を見るが…

「はい、兄さん。朝食できたよ」
「…あぁ」

 いただきます、と朝食に手をつける
 炊き立ての白米に、具沢山の味噌汁。焼き魚、漬物、ほうれん草のお浸し
 弟がきてからの、いつも通りの朝食

「ね、兄さん」
「…どうした」

 その、朝食の最中
 弟が、何やら話し掛けてきた

スパニッシュフライ、って聞いた事、ある?」
「…イモリの黒焼きの親戚だろう」

 味噌汁を啜りつつ、答える
 厳密に言うと違うが、その伝えられる伝説は同じようなものだ
 大航海時代だかにはやったものだったような

「うん、それなんだけど…最近、学校町で目撃情報があるんだって」
「…串焼き状態で、か?」
「ううん。焼かれた姿の癖に飛んでるのが」

 何故飛ぶ
 焼かれた状態の癖に何故飛ぶ
 都市伝説だから、何でもありと言えばなんでもありなのだが

「関わらなければ、害はないだろ」
「…うん、そうだよね」

 俺の言葉に、弟は納得したように笑った
 が、少し心配そうな表情で、続けてくる

「でも、こっちが関わる気がなくても、向こうから飛び込んでくるかもしれないから…兄さん、気をつけてね?」
「……わかったわかった」

 相変わらず、心配性な奴だ
 都市伝説とは言え、弟の話を聞いた限りでは、姿は蝿
 ヘタをしたら、普通の蝿と同じ対処でどうにかなるだろう

 そう考えて、この時は、特別深くは対処法は考えなかった


 この時は、まだ



「すぱにっしゅふらい、ですか?」
「何それー?」

 かっくん
 俺の膝の上の花子さんが、首をかしげている
 俺だって、首を傾げたい
 何だ、それは
 フライって言うくらいから、蝿系の都市伝説か?

「…イモリの黒焼き、って聞いた事あるか?」
「あ、それなら何とか」

 某国営テレビの教育枠で流されているアニメで見たことがある
 確か、惚れ薬の一種だ
 惚れ薬、というか、媚薬と言うか…
 …そういえば、イモリの黒焼きも、都市伝説に含まれるんだろうか?

「いもりのくろやき、ってな~に?」
「…え~と、その」

 …うん、その
 花子さんに、どう説明したらいいのやら
 いや、惚れ薬、まではまだ何とか説明できるさ
 …だが
 媚薬なんて部分、説明できるかっ!!
 お子様に説明なんぞできるかっ!!
 俺はそんな汚れた思考は持ち合わせていないっ!!!!
 悩んでいる俺の様子に、花子さんはみゅ?と首を傾げてきて
 不良教師は、そんな俺に救いの手も差し伸べず、続ける

「スパニッシュフライの効能事態はイモリの黒焼きと一緒だ。学校町で目撃例があるそうだ。一応気をつけろよ」
「はぁ…」

 気をつけろ、と言われても
 どう、気をつけたらいいのだろう?
 ひとまず、不良教師が説明してくるには…スパニッシュフライとは、焼かれた蝿の串焼き、らしい
 はるか昔、都市伝説的に語られたそれが、なぜか焼かれた蝿の姿で、学校街に出没しているとの事だ
 焼かれた蝿の姿で、効能はイモリの黒焼きと同じ…
 ……粉末状態なら、ともかく
 黒こげの蝿なんざ、好んで口に入れるやつはいないと思うのだが

「蝿を見かけたら、気をつければいーの?」
『多分、それで大丈夫なんじゃないでしょうか?』

 カタカタ、骨を鳴らしながら、白骨標本が茶を出してくれた
 礼を言って、口に含む

 …なお、人体模型は「鬱陶しいから」と言う理由で、この化学準備室じゃなくて、化学実験室の方に追いやられている
 うん、四六時中踊り続ける人体模型なんざ、正直鬱陶しい

「契約者がいるかどうかもわからんしな。何を警戒したらいいのかどうかはイマイチわからんが…」

 言いながら、不良教師がタバコに火をつけようとした…
 その時

 ばたん、と
 化学準備室の扉が開いた

 …ヤバっ!?
 誰か生徒か先生がきたか!?
 慌ててそちらに視線を向けて…なんだ、と力が抜ける

「どうしたんだよ」

 そこにいたのは人体模型
 一通り踊って、満足したのだろうか?

 ……が
 若干…様子が、おかしいような

「………?」

 やや、警戒するように、不良教師が人体模型を見やる
 俺も、若干、身構えて…

 そんな、一瞬張り詰めた状況の、中
 す、と人体模型は俺に近づいてきて

「み?」

 ……す、と
  首をかしげている花子さんの前に、跪いた

『いやー、ホンマ可愛いなぁ、花子さんは。どや、わてのお嫁さんにならへんかー?』
「……み??」

 …………
 ………………

 とりあえず
 俺はそっと、花子さんを膝から下ろして立ちあがった
 すっく、と不良教師も立ち上がり、すたすたと人体模型に近づき

「「っそぉい!!!」」

 っが!!!!

『どわ~~~~~~~っ!!!!!?????』

 俺と不良教師による、容赦ないダブルパンチが、人体模型をぶっ飛ばした!!!
 っどが!!!と、人体模型は化学準備室の壁に後頭部を打ち付ける!!!

「いきなり何を言ってるか、このグロ人体模型!!ロリコンのダークサイドに堕ちたかっ!?」
「言っておくが、これ以上変態レベルをあげるようだったら、お前との契約破棄も視野に入れるぞ」

 まったく!
 いきなり唐突に花子さんをくどくとか何やってんだ、この人体模型は!
 変態だとは思っていたが、ただ変態なだけじゃなくてロリコンだったとは!?

 俺達の叫びに人体模型は答えず
 …代わりに

 ぷぅん、と
 人体模型の口から…何かが、飛び出てきた

「……へ?」

 何だ、あれは
 随分と小さくて、黒くて…

『……蝿?』

 ぽつり
 それを見て、白骨標本が呟いた
 …そうだ
 蝿だ
 小さくて、随分と黒い
 …いや、むしろ、黒こげな……!?

「ス、スパニッシュフライ!?」
「…言ったそばから、来たか」

 ぷぅん
 それは、静かに、力なく飛んでいる
 おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい
 言ったそばから出てくるとか、どんなライトノベルだよっ!?
 ぷぅん、ぷぅん
 それは、静かに化学準備室内を飛び回る

『ど、どうしましょう』

 わたわたわたわた
 かちゃかちゃあわあわ慌てる白骨標本
 い、いや、どうしましょうと言われても

「は、花子さん。とりあえず、アレに近づくなよ?」
「う、うん」

 ひとまず、花子さんを背後に庇う
 …あれは、人体模型の口から出てきた
 そして、多分…人体模型は、あれが口に入っていたから、さっきのような行動をとったのだろう
 そこから考えるに…あのスパニッシュフライは、他者の体内に入って、その語られる伝説の効能を発揮する
 人体模型が化学準備室に入って、多分、最初に見たのが花子さんだったのだろう
 だから、あぁなったのだ
 白骨標本を見ていたら、そっちに同じ事をしただろう
 多分、同性相手なら効果は発揮しないと思う…
 と、言うか、思いたい
 万が一、人体模型なんぞに言い寄られたらショックで死ぬわっ!!

「…まぁ、蝿は蝿だよな」
「そうですよね」

 ぷぅん、ぷぅん
 スパニッシュフライは、静かに飛び回る
 まるで、次の獲物を物色するように
 ぷぅん、ぷぅん、と

 そうだ
 蝿は蝿である
 普通に、叩き殺せるんじゃないだろうか?
 …多分、だけど

 ……ぷぅぅん
 飛び回るのにも、飽きたのか
 …スパニッシュフライが、突進してくる!!

「っ!!」

 口を閉じる
 口から侵入されたら、厄介だ

 ぷぅぅぅん
 どうやら、口以外からは侵入できないようだ
 俺に侵入しようとしていたスパニッシュフライは、くるり、俺の前でUターンする

 ぷぅぅぅぅぅん
 今度は、不良教師に近づいて…
 …やはり、口を閉じられていて
 侵入できずにUターン

 ぷぅうぅううんん…

『きゃっ!?』

 迫ってこられて、わたわたする白骨標本
 スパニッシュ・フライは、白骨標本の口に侵入して…

 ……ぷぅぅん
 普通に、首へと繋がる辺りの穴から、でてきた

 ……うん、まぁ
 白骨標本の体内に入るとか、できないよな
 むしろ、体内、ないよな
 うん、と俺は思わず納得してしまった

「………」

 くいくい
 花子さんが、俺の服の裾を引っ張ってきた
 どうするの?とでも言いたいのだろう
 一応、花子さんも口を閉じたままだ

 うん、まぁ
 倒すべきだろう

 すちゃ、と
 俺は、鞄から適当なノートを取り出し、くるりと丸めた
 不良教師も、そこらにあったスリッパを手に取る

 …ッブブブブブブブブブ!!!
 危険を感じたのだろう
 スパニッシュフライは、くるり、身を翻し

「……っあ!!??」

 ぷぅぅん!!
 羽音を立てながら、窓の隙間から逃げていってしまった
 流石に、窓から追いかけるとか出来ない

「…行っちゃった?」
「まぁ…逃げられたな」

 ヤバイ
 どうしたら、いいのだろう
 ごそ、と
 不良教師は、一旦閉まっていたタバコをもう一度取り出すと、それに火をつけて、呟く

「俺達に害がなければ、放っておいてもいいんじゃないのか?」

 ………
 …………
 ……………

 え?
 いいのか、それ

『あ、あの、そ、それでいいんですか?』
「人が死ぬとかその手の能力でもないしな。問題ないだろ」

 いいのか?
 本当にいいのか!?
 確かに、実害なければほっときたいってか、関わりたくないけど

「けーやくしゃ?ほっといて、大丈夫なの?」

 かっくん
 愛らしく、首を傾げてきた花子さん
 その花子さんを、じっと見つめて…

「…うん、多分大丈夫だわ」

 と、そう答えて
 ぽん、と花子さんの頭を撫でてやったのだった


 人体模型が気絶したままの化学準備室には
 ひとまず、平和が戻った





  …しかし、スパニッシュフライはまだ生きている!
  学校町内を飛び回っている!!
  って言うか、一匹だけなのかどうかも危ういぞ!!

  このスパニッシュフライが、また何か騒ぎを起こすかもしれないが
  それはまた、別の話……


 おわっちまえ






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