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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 首塚-75

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 ……ちゃぷり
 暗闇の中、岩に囲まれたその空間
 水の中、浮かぶ人影一人


 …「首塚」首領、平将門だ
 鎧を脱ぎ去り、軽装にて水に浮かび、静かに目を閉じている


 どろり
 どろり、どろり、どろり
 その、体から…何か、どす黒いものが、水へと滲み出ていっている
 水に浮かぶ将門の顔には、かすかに苦悶の色が浮かんでいる



「…無茶をしたものだな」

 静寂な空間に、響いた声
 ふっ、と将門は重い瞼を開き、声の方向へと視線を向けて
 …にやり、笑う

「…これはこれは、道真公。それに、鼠僧までここに来るとは……珍しい」

 菅原道真
 将門と同じ祟り神であり、今は学問の神としても知られる存在
 その肩に、ちょろり、大きな体の鼠が乗っている

 …俗に、鉄鼠と呼ばれる存在だ
 人間であった頃の名前は頼豪阿闍梨…彼もまた、祟り神の一種だ
 道真の肩に乗った鉄鼠は、水に浮かぶ将門を、どこか物珍しげに見下ろした

「珍しい、か……こちらの台詞よ。お前がそのような状態に陥るなど、何があった?」
「…何。大陸の連中の蟲毒の解除に…少し、手間取っただけよ」

 水に浮かび…体に入り込んだ蟲毒の毒を、水へと溶け出させて浄化しながら、将門は小さく笑う


 …学校町に展開されていた、「アメリカ政府の陰謀論」所属の中華黒服達が張っていた蟲毒の結界
 それを、解除した反動だ
 術式を読み解いて解除したとは言え、あの手のものを破るのに、何の反動もない、という訳がない
 蟲毒の結界を解いた時…その、毒が
 僅かに、将門に流れ込んだのだ
 毒は、僅かながらも、将門と言う存在を蝕む
 将門は、それを輩出し浄化している最中という事だ


「それだけか?」

 静かに
 静かに、道真が将門に、そう問い掛ける

「蟲毒の解除の反動……お前の体にたまったその毒は、それだけのせいではあるまい……何をした」
「………道真公には、敵わぬな。どうせ、わかっておるのだろう?」

 くっく、と笑う将門
 道真は、その将門の言葉に、答える

「……学校町の…「怪奇同盟」の、盟主であったか………彼女が背負うはずだった毒、お前が請け負ったのだな?」

 …道真の、言葉に
 将門は、笑う事で肯定した


 蟲毒を解除した、その瞬間
 溢れかえった毒が、学校町と深い繋がりを持つ盟主にまで降りかかりそうになった
 ……その、毒を
 将門は、盟主に届く前に…全て、自分で受け止めたのだ


 知っている
 わかっている
 盟主が、あの程度の毒で命を落とす事がない事を
 あの程度の毒に、盟主が負けるはずがない事を
 盟主の強さを、将門は理解しているから

 だが
 それでもなお、将門は盟主を庇った
 たとえ、あの毒に盟主が負ける事がなかったとしても
 ただでさえ、体に毒がたまっていた影響が出ていた盟主
 あれ以上、彼女に毒を溜めたくは、なかった

 気に入った女が苦しむ姿を
 見たいはずが、ないのだ


「そこまで毒がたまれば、全て吐き出すのに時間もかかるだろうに」
「……なぁに…この程度の毒…そう、時間はかからぬわ」

 鉄鼠の言葉に、将門は笑い、答える
 この、日本最凶クラスの祟り神である自分が、この程度の毒の排出にそこまで時間がかかると思うか?と
 そうとでも、言うように

 将門の様子に、道真はため息をついた

「…とにかく、毒は完全に出しておけ。少しでも残っていては、どのような影響が出るかわからぬからな」
「……わかっておるさ」

 ゆっくりと、目を閉じる将門
 その体からは、黒い染みが溢れ続け、水へと溶け出し続けている
 それ全てが、将門が背負った蟲毒の毒

 …毒を排出するのを、邪魔する訳にも行くまい
 道真は鉄鼠を肩に乗せたまま、その空間を後にした


 「首塚」の、内部
 日本家屋を思わせるその空間を、道真は鉄鼠と共に、進む
 …しばし、進むと

「…うー」

 ひょこり
 小さな少年が、顔を覗かせた
 …将門の部下が一人の、鮫守 幸太だ
 じっ、と道真を見上げてくる

「どうした?」
「うー……将門様、苦しそうだった?……うー……」

 道真を見上げ、そう尋ねてきた幸太
 どうやら、将門の事が心配らしい

「あぁ、多少苦しいようだが……あの様子ならば、さほど時間をかけずに、回復できるだろう」
「うー?本当??」

 あぁ、と幸太に答えてやる道真
 鉄鼠も、それに続く

「あの様子なら、一週間程度で回復するかもな。ったく、あの落ち武者、相変わらず年々、力が増していってないか?」

 やや、ぼやきすら入っていた、その台詞
 その、言葉に


 ………きひひ、と
 幸太が、笑った


「…そうだろうね……だって、将門様は、今、学校町に執着しているから…………将門様だって、あの街の影響を受けないはずがないんだ」

 きひひひひひひ、と
 笑う様子は、酷く楽しそうだ

「だから、将門様はまだまだ、強くなるよ……………将門様は、強いから。誰にも負けない存在になっていくだろうね?」

 きひひひっ、と
 楽しそうに、楽しそうに、笑い続ける幸太

 その様子に、どこか薄ら寒いものを感じながら
 道真は、そっと、幸太に手を伸ばした

「…そうかもしれんな…………少年よ、将門が道を誤らぬよう……お前達が、どうか、支えてくれよ?」

 道真の、その言葉に

「うー??」

 ……と
 先ほどまでの、どこか不気味さすら感じさせる様子は、一瞬で消えて
 幸太は、無邪気に首をかしげる

「僕達が、将門様を支える?うー??」
「そうだ…幸い、今の将門には、お前たちのような良い部下が揃っている……以前のような目には、あってほしくもないしな」

 そっと、幸太を撫でる道真
 うーうー、と、幸太は道真の言葉を理解しているのかいないのか、曖昧な様子で無邪気に答える

「うー!将門様支えるー!責任じゅーだい、うーうー!!」
「あぁ…頼んだぞ」

 うーうー、楽しそうな幸太と別れる道真達
 …幸太の姿が、見えなくなったところで
 ぼそり、鉄鼠が呟く

「……末恐ろしいガキだ。将門め、随分な人材を集めているじゃないか」
「…これも、「組織」を祟る為……嫌な敵を作ったものだな、「組織」も」

 ほんの少し、「組織」に同情しながら
 道真は静かに、「首塚」を後にしたのだった





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