そして運命の日の明朝。 自動車のエンジン音が、明るくなりかけた朝の空に響く。
(黄昏母>気をつけてね。
(黄昏父>あぁ。 正義、母さんを困らせちゃダメだぞ?
(正義>うん! お母さんはボクに任せて!
あ・・・お兄ちゃんもお父さんを困らせたらダメだからね。
(裂邪>ヘィヘィ・・・
(黄昏父>あぁ。 正義、母さんを困らせちゃダメだぞ?
(正義>うん! お母さんはボクに任せて!
あ・・・お兄ちゃんもお父さんを困らせたらダメだからね。
(裂邪>ヘィヘィ・・・
ブロロロロ... 自動車が出発した。 既に機嫌の悪かった裂邪だが、さらに機嫌が悪くなる。
(裂邪>(あ~ぁ、出発しちゃったよ・・・さらば、俺の世界征服の夢・・・)
(黄昏父>寂しいか?
(黄昏父>寂しいか?
父が話を持ち出した。 叱る以外では、癌が自然に完治するぐらい非常に珍しいことである。
(裂邪>ま、まぁね。この町にも思い出はあるし。(どうかしたのか親父?)
(黄昏父>そうだろうな。この町はお前が生まれて、正義が生まれて、そして育った町だからな。
(黄昏父>そうだろうな。この町はお前が生まれて、正義が生まれて、そして育った町だからな。
そういった後、暫く間をおいて、また父が口を開いた。
(黄昏父>―――今まですまなかった。
(裂邪>っ!? な、何さいきなり?
(黄昏父>俺は、お前に立派な兄になってもらいたかった。
だが、いつの間にかお前に強く当たるようになってしまって・・・父親として失格だ。
(裂邪>・・・んなことねぇよ。確かに俺は父さんに褒められた事も少なかったし、
愛情が偏ってるって感じたこともあった。
だけど、その度に俺は耐えて、耐えまくって、いつの間にか精神ばっかり強くなっちまった。
俺を強く育ててくれたのは、紛れもなく父さんだよ。
(黄昏父>裂邪・・・
(裂邪>「ライオンは我が子を崖に突き落とす」っていうし。てか、無視され続けるよりマシ―――
(黄昏父>ありがとう・・・お前、本当に強くなったな・・・
(裂邪>っ!? な、何さいきなり?
(黄昏父>俺は、お前に立派な兄になってもらいたかった。
だが、いつの間にかお前に強く当たるようになってしまって・・・父親として失格だ。
(裂邪>・・・んなことねぇよ。確かに俺は父さんに褒められた事も少なかったし、
愛情が偏ってるって感じたこともあった。
だけど、その度に俺は耐えて、耐えまくって、いつの間にか精神ばっかり強くなっちまった。
俺を強く育ててくれたのは、紛れもなく父さんだよ。
(黄昏父>裂邪・・・
(裂邪>「ライオンは我が子を崖に突き落とす」っていうし。てか、無視され続けるよりマシ―――
(黄昏父>ありがとう・・・お前、本当に強くなったな・・・
父の言葉を聞いて、照れくさそうに窓の外を見る裂邪だった。
暫くして、学校町東地区―――
(裂邪>ぅわお! デカッ! こんないい家よく見つかったな。
(黄昏父>署に用意してもらったんだ。荷物は父さんが入れておくから、
お前は探検にでも行ってきなさい。
(裂邪>中学1年生になる息子に町の探検させるのかよ;
(黄昏父>嫌ならいいぞ? この重い荷物を運んでもらうがな。
(裂邪>いってきま~す。
(黄昏父>ハハハw 昼には帰るんだぞ?
(黄昏父>署に用意してもらったんだ。荷物は父さんが入れておくから、
お前は探検にでも行ってきなさい。
(裂邪>中学1年生になる息子に町の探検させるのかよ;
(黄昏父>嫌ならいいぞ? この重い荷物を運んでもらうがな。
(裂邪>いってきま~す。
(黄昏父>ハハハw 昼には帰るんだぞ?
(裂邪>さて、私、黄昏裂邪! 都市伝説の聖地「学校町」にやって参りましたぜ!
(シェイド>見レバワカル。ココガ学校町カ・・・デ、サッキハカナリ湿ッポソウダッタガ?
(裂邪>なんだ、聴いてたのか。
(シェイド>マァナ。 シカシ、オ前モ世界征服ヲ諦メル時ガキタカ―――
(裂邪>ハァ!?何言っちゃってんの?前に理由話したけど、
親父と仲悪いから世界征服したかったなんて言ってないぞ?
(シェイド>ソ、ソウナノカ・・・何故カ安心シタガ、ドコカ残念ダ・・・
(シェイド>見レバワカル。ココガ学校町カ・・・デ、サッキハカナリ湿ッポソウダッタガ?
(裂邪>なんだ、聴いてたのか。
(シェイド>マァナ。 シカシ、オ前モ世界征服ヲ諦メル時ガキタカ―――
(裂邪>ハァ!?何言っちゃってんの?前に理由話したけど、
親父と仲悪いから世界征服したかったなんて言ってないぞ?
(シェイド>ソ、ソウナノカ・・・何故カ安心シタガ、ドコカ残念ダ・・・
とその時。「キャー!」とどこからか少女の叫び声。 意外に近い。
(シェイド>都市伝説ダナ。
(裂邪>行くぞ!
(裂邪>行くぞ!
シェイドの道案内の通りに暫く走ると、幼稚園ぐらいの少女が、
緑色のクネクネした人型の「何か」に襲われていた。
緑色のクネクネした人型の「何か」に襲われていた。
(裂邪>な、なんだありゃ!?
(シェイド>少女ノ方ハワカランガ、緑ノ方ハ恐ラク「ゴム人間」ダナ。
(裂邪>「ゴム人間」?えらくマイナーな―――待て、あのコも都市伝説か?
(シェイド>アァ。 ドチラカラ片付ケル?
(裂邪>「どちらから片付ける」ぅ!? 「どちら」って何だ!? 目標は一つしかねぇだろ!
(シェイド>ム?一ツ―――ア、ソウカ。
(シェイド>少女ノ方ハワカランガ、緑ノ方ハ恐ラク「ゴム人間」ダナ。
(裂邪>「ゴム人間」?えらくマイナーな―――待て、あのコも都市伝説か?
(シェイド>アァ。 ドチラカラ片付ケル?
(裂邪>「どちらから片付ける」ぅ!? 「どちら」って何だ!? 目標は一つしかねぇだろ!
(シェイド>ム?一ツ―――ア、ソウカ。
(少女>いやぁ・・・来ないで!
(ゴム人間>ゲヘヘヘ、お嬢ちゃん、今ラクにしてあげるから―――
(裂邪>こぉんのド変態がぁ!
(ゴム人間>ゲヘヘヘ、お嬢ちゃん、今ラクにしてあげるから―――
(裂邪>こぉんのド変態がぁ!
裂邪は久々のメガトンキックをゴム人間に食らわせる。
流石はゴム、しなやかに伸びた後、まっすぐ遠くに飛んでいった。
流石はゴム、しなやかに伸びた後、まっすぐ遠くに飛んでいった。
(裂邪>ヒハハハハ、よく飛ぶねぇ~。 ん゛ん(咳払い)、お嬢さん、お怪我は?
(少女>あぁ、はい、大丈夫です。 あの・・・ありがとうございます。
(裂邪>お礼なら後で。今からヤツを消してやるんで!
(少女>あぁ、はい、大丈夫です。 あの・・・ありがとうございます。
(裂邪>お礼なら後で。今からヤツを消してやるんで!
吹っ飛んだゴム人間がクネクネしながら戻ってきた。
(ゴム人間>効かんねぇ、「ゴム」だから―――ん? そいつはシャドーマン・・・
まさかお前、黄昏裂邪!?
(裂邪>ほぇ? 意外や意外。 この俺の名がまさか学校町にまで届いているとは。 光栄だねぇ。
(ゴム人間>バカな!あれは『田舎で都市伝説狩りをしている』という都市伝説だったはず!
(裂邪>俺都市伝説扱い!? はらわたが煮えくり返っちまいそうだぜ。
シェイド!『シャドークロー』!
(シェイド>了解シタ。
まさかお前、黄昏裂邪!?
(裂邪>ほぇ? 意外や意外。 この俺の名がまさか学校町にまで届いているとは。 光栄だねぇ。
(ゴム人間>バカな!あれは『田舎で都市伝説狩りをしている』という都市伝説だったはず!
(裂邪>俺都市伝説扱い!? はらわたが煮えくり返っちまいそうだぜ。
シェイド!『シャドークロー』!
(シェイド>了解シタ。
その直後、シェイドが黒い爪状のものになり、裂邪の右腕に装備される。
(ゴム人間>な!? なんだそれはぁ!?
(裂邪>『シャドークロー』だ。知ってるか?
「影はどんな形にもなる」、ある漫画家のお陰でそんな定義が生まれたのさ。
(シェイド>(丁度良ク相手ガゴム人間ダナ。)
(少女>か・・・かっこいい・・・
(ゴム人間>・・・フン、だが遠くから攻撃すれば問題ない!
(裂邪>『シャドークロー』だ。知ってるか?
「影はどんな形にもなる」、ある漫画家のお陰でそんな定義が生まれたのさ。
(シェイド>(丁度良ク相手ガゴム人間ダナ。)
(少女>か・・・かっこいい・・・
(ゴム人間>・・・フン、だが遠くから攻撃すれば問題ない!
ゴム人間が強く腕を引き、拳を前に突き出す。すると、例の海賊漫画のように腕が伸びる。
(裂邪>あ、想定外だった。
(シェイド>何ッ!?
(シェイド>何ッ!?
(裂邪>―――ん・・・れ?
裂邪はゆっくりと目を開ける。 虹色に輝く薄い膜の球体が、緑の拳をプヨン、と弾いていた。
(裂邪>・・・何これ?
(少女>あの、大丈夫ですか?
(少女>あの、大丈夫ですか?
ふと裂邪は少女を見る。 彼女の手には、ストローがしっかりと握られていた。
(裂邪>・・・もしかして、「シャボン玉」?
(少女>あ、はい。 私、童謡の「シャボン玉」の都市伝説なんです。
(ゴム人間>クッ・・・そうだったのか!
(裂邪>(あいつも知らなかったようだな。動揺してる今がチャンス)よし、ありがとう!
(少女>あ、はい。 私、童謡の「シャボン玉」の都市伝説なんです。
(ゴム人間>クッ・・・そうだったのか!
(裂邪>(あいつも知らなかったようだな。動揺してる今がチャンス)よし、ありがとう!
裂邪はシャボンの膜を破り、左手でゴム人間の腕を掴む。
ゴムの性質により、腕は縮み、ゴム人間は裂邪の元へ。
ゴムの性質により、腕は縮み、ゴム人間は裂邪の元へ。
(ゴム人間>し、しまっ―――
(裂邪>ヒィ~ッハァ!
(裂邪>ヒィ~ッハァ!
裂邪は右手の爪でゴム人間の頭を鷲掴み、アスファルトに顔面をぶつける。大量の血が流れ出た。
(ゴム人間>グアァ!? なんで・・・ゴムなのに!?
(裂邪>『シャドークロー』は触れた相手の能力を一時的に無力化する能力がある。
あと、何かの隙間があったら、こんなことも。
(裂邪>『シャドークロー』は触れた相手の能力を一時的に無力化する能力がある。
あと、何かの隙間があったら、こんなことも。
そう説明した後、ゴム人間を近くの塀の割れ目に押さえつける。
緑のゴムのボディが、掃除機で吸われるように引っ張られている。
緑のゴムのボディが、掃除機で吸われるように引っ張られている。
(ゴム人間>グエェェェ・・・だ、だずげで・・・
(裂邪>悪いな。消すつもりはなかったが、これもまためぐり合わせ・・・恨むなよ。
(裂邪>悪いな。消すつもりはなかったが、これもまためぐり合わせ・・・恨むなよ。
ゴム人間は隙間に完全に吸われ、安堵の表情を浮かべる少女。だが、シェイドはどこか気がかりだった。
(シェイド>(「悪いな」?「消すつもりはなかった」?「恨むなよ」?
コイツ今マデソンナコト言ッテイタカ?)
(裂邪>おっと、もうこんな時間か。 シェイド、帰るぞ。
(シェイド>ッ! ア、アァ。
コイツ今マデソンナコト言ッテイタカ?)
(裂邪>おっと、もうこんな時間か。 シェイド、帰るぞ。
(シェイド>ッ! ア、アァ。
シェイドが元の姿に戻り、家路をたどろうとすると、目の前に瞳をきらめかせる少女が立ちふさがる。
(少女>あ、あの・・・
(裂邪>はい?
(少女>も、もしよかったら・・・け、契約してもらえないでしょうか?
(裂+シェ>ハイ!?
(裂邪>はい?
(少女>も、もしよかったら・・・け、契約してもらえないでしょうか?
(裂+シェ>ハイ!?
流石の急展開に驚きを隠せない2人。 少女はさらに続ける。
(少女>き、急にごめんなさい! 実は私、最近この町で生まれたばかりで、
他の都市伝説に襲われては逃げての繰り返しで・・・
私にやさしくしてくれたのは、あなたが初めてなんです!
あなたに契約してもらえなかったら、私・・・
他の都市伝説に襲われては逃げての繰り返しで・・・
私にやさしくしてくれたのは、あなたが初めてなんです!
あなたに契約してもらえなかったら、私・・・
涙を浮かべる少女。 汚れ、迷い、そして偽りのない涙だった。
裂邪は一瞬その澄んだ瞳に見惚れてしまった。
裂邪は一瞬その澄んだ瞳に見惚れてしまった。
(裂邪>え、ど、どうしようかな・・・べ、べつに良―――
(シェイド>[待テ裂邪! 多重契約ハ何カト「デメリット」ガ多イトキク。
コノ娘ニハ申シ訳ナイガ、断ッタ方ガ身ノ為ダ!]
(裂邪>[そ、そうか。残念だが・・・]ご、ごめんなんだけd―――
(少女>あ、この姿はイヤですか? 年頃の女の子の方が好きですよね?
私、子供の女の子だったらどんな姿にでもなれるんです!
(シェイド>(イヤ何デ? 「シャボン玉」ノ有名ナ都市伝説ト大キク変ワッテシマウゾ?
ドウイウ辻褄合ワセナンダ?)
(シェイド>[待テ裂邪! 多重契約ハ何カト「デメリット」ガ多イトキク。
コノ娘ニハ申シ訳ナイガ、断ッタ方ガ身ノ為ダ!]
(裂邪>[そ、そうか。残念だが・・・]ご、ごめんなんだけd―――
(少女>あ、この姿はイヤですか? 年頃の女の子の方が好きですよね?
私、子供の女の子だったらどんな姿にでもなれるんです!
(シェイド>(イヤ何デ? 「シャボン玉」ノ有名ナ都市伝説ト大キク変ワッテシマウゾ?
ドウイウ辻褄合ワセナンダ?)
そもそも「シャボン玉」は、
『作詞者の子供が生まれてまもなく死んでしまった為、その様を「シャボン玉」にあてた』とされている。
つまり、この少女が幼稚園児の姿でいる事自体がつっこみどころなのだが。
『作詞者の子供が生まれてまもなく死んでしまった為、その様を「シャボン玉」にあてた』とされている。
つまり、この少女が幼稚園児の姿でいる事自体がつっこみどころなのだが。
(裂邪>いや、そういうわけじゃ―――
ドロンッ!
幼稚園児のような姿だった少女は、一瞬で小学校高学年ほどの少女に変わった。
それと同時に、裂邪の目の色も一瞬で変わった。
それと同時に、裂邪の目の色も一瞬で変わった。
(少女>あ、ご、ごめんなさい!
同い年ぐらいにするはずだったんですが・・・もうちょっと歳を―――
(裂邪>いやいい! それでいい! 契約するからずっとその姿で俺のそばにいてくれ!
(シェイド>裂邪貴様ァァァァァァァ!?
同い年ぐらいにするはずだったんですが・・・もうちょっと歳を―――
(裂邪>いやいい! それでいい! 契約するからずっとその姿で俺のそばにいてくれ!
(シェイド>裂邪貴様ァァァァァァァ!?
とうとう本性を見せた裂邪。 しかし少女はどこまでも純粋だった。
(少女>ありがとうございます!・・・お役に立てないかも知れませんけど・・・
(裂邪>んなことないって! さっきも俺の事守ってくれたじゃん!
最高のパートナーになるよ!えっと・・・名前とかある?
(少女>いえ、ありません。
(裂邪>んなことないって! さっきも俺の事守ってくれたじゃん!
最高のパートナーになるよ!えっと・・・名前とかある?
(少女>いえ、ありません。
暫く悩む裂邪。 その後、「そうだ」と呟いて、ポン、と両手を叩く。
(裂邪>『水泡』って書いて『ミナワ』って読むんだが、どう?
(少女>ミナワ・・・素敵な名前です!
(裂邪>決まりだな。 ミナワ、今日からお前は俺の2人目のパートナーだ!
(ミナワ>い、命を救ってくれた上に名前まで・・・私、一生お付き合いします! ご主人様♪
(少女>ミナワ・・・素敵な名前です!
(裂邪>決まりだな。 ミナワ、今日からお前は俺の2人目のパートナーだ!
(ミナワ>い、命を救ってくれた上に名前まで・・・私、一生お付き合いします! ご主人様♪
『ご主人様』。 その言葉が裂邪の心に深く突き刺さった。
と同時に、彼の心のシャボン玉が弾けたようだった。
と同時に、彼の心のシャボン玉が弾けたようだった。
(裂邪>(・・・メイドとか全ッ然興味なかったのに・・・
なんで今はこんなに清々しいんだろう・・・)
(シェイド>(・・・駄目ダコイツ、早ク何トカセネバ・・・)
(裂邪>よし、帰るぞシェイド!ミナワ! 今夜親父が寝た後に軽く宴会だぁ!
(シェイド>了解シタ。
(ミナワ>はい、ご主人様♪
なんで今はこんなに清々しいんだろう・・・)
(シェイド>(・・・駄目ダコイツ、早ク何トカセネバ・・・)
(裂邪>よし、帰るぞシェイド!ミナワ! 今夜親父が寝た後に軽く宴会だぁ!
(シェイド>了解シタ。
(ミナワ>はい、ご主人様♪
...END