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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ドクター-78

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ドクター78


「お客さん、幽霊とか信じる方?」
白髪の混じった壮年の不動産屋は、にこにこと人当たりの良い笑顔のまま、はっきりとそう問い掛けてきた
向かいに座った金髪の女性は、どう答えれば良いものかと微妙な表情を浮かべている
「あの……そういう物件しか空いてない、という事ですか?」
「いやいや、そういう訳じゃないんですがね」
不動産屋の男は笑顔のまま、物件の資料をぽんぽんと積み重ねている
「過去何十年遡っても事件も事故も一つも無い土地で、まっさらな新築物件でも『出る』って泣きついてくるお客さんが多いんですよこの町。ですからまあ、苦手な人には隣町の支店紹介してるんですよね」
「はぁ……私は別にそういうのはあんまり気にした事は無いですけど。だからって事件や事故のあった部屋とかは嫌ですよ?」
「よっぽど安いのが良いとか言われないと、そういうのは出しませんねぇウチは」
そう言いながらも、詰んだ資料の三分の二程をずいと横に押し退けてしまう
「あ、あの!?」
「ああいや、実際に事件や事故があったわけじゃないんですがね。さっき言ったみたいにまっさらな新築でも『出る』なんて言われちゃった物件はそっち扱いになっちゃうんですよ。別の人が入ったら、ぱたりと出なくなる事の方が多いんですけどねぇ」
その言葉に、金髪の女性はただ苦笑いを浮かべるしか無かった

―――

ホテルのベッドの上で、金髪の女性――『陰謀論』所属の黒服女アンネローゼ・ライツは携帯を手にうつ伏せに倒れて大きく溜息を吐いた
「ねー、何でわざわざ部屋借りて住まなきゃいけないの? ホテル住まいでいーじゃーん」
《観光地でも何でも無い町だぞ? ホテル住まいなんか速攻目を付けられるに決まってんだろ》
携帯電話の向こうから聞こえてくるのは、気心の知れた相棒の声
《別に家賃は経費から出てるんだ。寝具以外の生活用品も明日には揃える。何の問題があるってんだ》
「家事めんどい」
《とことんダメ人間だなお前は》
「MIBに人間性求められてもなぁ」
《お前は元人間だろうが》
「そんなの関係無いもーん。ていうかなんであんた来ないのよ」
《潜入工作に俺みたいなのが行けると思うか?》
相方の黒服男、身の丈2メートルを超えるスキンヘッドの黒人男性である
いくら外見に頓着されない学校町でも目立つ事この上なく、更に筋肉質な体躯は別の意味でこの町で目立つのである
「まー久々に違う服着れるのは良いけどさー」
今の彼女の格好は、おおよそMIBとは思えないラフなもので、ボディラインを隠そうともしないカットジーンズと裾の短いTシャツという姿である
『陰謀論』所属の黒服の中で、数少ない海外潜入工作要員である彼女は、その服装を黒服に固定される事は無い
「『組織』の方は内輪揉めやらなんやらでドタバタしてるみたいだし。バレにくいのはいいけど巻き込まれたくないわねー」
《しばらくは大人しく引き篭もるか?》
「そうねぇ、ゴタゴタから身を隠してる間に撤退せざるを得ない状況に、ってのが一番かなぁ」
憂鬱そうに何度目かわからない溜息を吐いたところで、そのお腹がきゅうと空腹を自己主張する
《とりあえず晩飯ぐらい食ってこい。今日はまだ自炊じゃないだろ》
「聞こえるぐらい音大きかった!? というか自炊する気無いから! 美味しいお店探すもん!」
《わかったわかった。つーかいくら資金は国持ちだからって経費で落ちるまでは自腹だから気をつけろよ》
「ぐ、ぬぅ……安くて美味しい店探すもん」
《ともあれ、あんまりゴタゴタには首突っ込むなよ。仕事をやり遂げるにしても、ターゲットを見つけないようにするにしてもだ》
「はいはい、わかってますってばー」

―――

ホテルを出て数分後
つい先程までしていた会話の内容を反芻しながら、出くわした光景に頭を抱えていた
関わったもの以外を拒絶する、都市伝説独特の気配は人気の無い路地を覆い尽くしている
その気配は自分を拒絶している
つまり、それは誰かが襲われているという事である
「まいったなぁ……スルーしても良いんだろうけど」
くしゃくしゃと頭を掻きながらも、拒絶する気配を押し退けてずいと路地に踏み込み駆け出した
「初っ端からじゃ寝覚めが悪いわよね、やっぱし」
都市伝説の気配を感知するのは黒服の基本能力である
獲物を追い回しているのだろう、それなりの速度で移動しているらしくその姿はまだ見えない
追いつくとしたら、獲物を追い詰めたその瞬間だと想定される
両手にコンパクトミラーを握り、目標を捕捉した瞬間にその熱線を叩き込もうとした、が
「やば、増えた?」
新たに契約者の気配を感知して、即座に身を隠す
そして立て続けに聞こえる爆発音
物陰からそっと様子を窺うと、そこには頭部を吹き飛ばされて消滅する大蛇と、倒れている女性を前に何か頭を悩ませている少女の姿
「さて、あっちの女は毒にやられてるっぽい。助けたあの子は解毒の手は無いみたい。運ぼうとしてるなら治療のアテがあるって事よね……関わらなくて大丈夫かな?」
二人の様子を探りながら、アンネローゼは思い出したように空腹を訴える腹を宥めつつ、今後の活動の苦労を想像してげんなりとしていた


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