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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ドクター-79

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ドクター79


「無理、絶対無理。この町で隠密行動とか絶対無理」
「やる前から諦めるものではない。私は既に何年もこの町に潜伏しているぞ」
ホテルにほど近い駅前のファミリーレストランで、食後のコーヒーを前に語り合う『陰謀論』所属の黒服二人
一人は『アレクサンドリアの大灯台』アンネローゼ・ライツ
もう一人は『悪魔憑き』デイズ・スプリングス
前者は丈の短いTシャツとカットジーンズというラフな格好で、後者は上品で落ち着いた色味のダークブラウンのスーツを着込んでいる
傍から見れば商社マンの父と放蕩娘といった風情の外国人親子である
「あんたみたいに108体の悪魔の能力を自在に使えるわけじゃないんだからさー。ちょっと事件に巻き込まれて戦えばバレバレよ?」
「ある意味で懲罰的なものも兼ねているのだろう。ミスターの意向に背いて討伐対象を逃がしたそうではないか」
「……何であんたが知ってるのよ?」
「デビルイヤーは地獄耳、という奴だ。まあ実際は逃がそうとしたのは君の相棒で、巻き込まれて多数の死者が出るのを防いだのだろう? 私は君を評価するがね」
デイズはにやりと笑い、カップに残ったコーヒーを飲み干す
「テロリスト『グレムリン』に討伐依頼をした馬鹿は、きちんと処罰されたようだぞ。ネバダ州の派閥所属だそうだ」
「あー……本家『エリア51』にして『MIB』の総本山ね。そりゃ私みたいな半端黒服がやる事にちょっかい出してくるはずだわ」
「奴らはミスター直属の黒服に、何かと横槍を入れてくるからな」
そこまで喋ったところで、デイズの携帯がマナーモードで振動する
その着信を確認して、それまでの彼の悠々とした雰囲気があっさり消し飛んだ
額に脂汗を滲ませながら、やや震える手で通話ボタンを押す
「ぬぅ……も、もし」
《いつまで飯食ってんのよ! 明日以降の売り場会議あるからさっさと戻って来いって言ったでしょ!?》
テーブルを挟んで対面しているアンネローゼにも聞こえる、携帯電話の受信音量としてはおかしいレベルの声に、二人揃って思わず身を竦める
「いや、本社の人間がこちらに来ていて、会っていたものだから」
《支社長からはそんなの聞いてないわよ!? アポもないもんに付き合ってる暇あったらさっさと戻ってきなさい!》
ぷつんと通話が切れて、奇妙な沈黙が漂う
「……現地での任務に戻らなくてはいけないので、今回のところはこれで」
「……うん、忙しそうだしなるべく頼らないようにするから、その、まあ……頑張って」
何か一気に老け込んだような雰囲気を漂わせつつ、きちんと伝票は持って席を立つデイズ
そのしょぼくれた背中に、アンネローゼは哀れみの篭った視線を送っていた

―――

ファミレスを出て、ホテルへと戻る道
車通りも人通りも多いそんな場所で、アンネローゼは一人の少女に行く手を遮られた
「いきなり見つかったのも、こんな場所で仕掛けてくるのも予想外ね、『第三帝国』のトライレス教授」
「その呼び方、嫌いなんです。先生って呼んで下さいな? あと今日はご挨拶だけですよ」
「別に私はあなたの生徒じゃないし……挨拶だけってのも信用できないかな」
人通りを避けるように、裏路地へと駆け込むアンネローゼ
トライレスもまたそれを追うように駆け出し、人目が途切れたその瞬間
鎖の付いた鋼鉄の首輪が、がちんとアンネローゼの首を捕える
「挨拶から逃げるだなんて、躾のなってない子ですね?」
「挨拶だってする相手ぐらいは選ぶものじゃない?」
取り出したコンパクトミラーから熱線が己の首目掛けて放たれて、がっちりと填まり込んでいた首輪を融解させる
「相変わらずの出鱈目な火力と、それすらも無効化するエネルギー攻撃反射能力。隅々まで調べたいわね」
うっとりとした顔で頬を染めるトライレスに、アンネローゼはげんなりとした顔でコンパクトミラーを向ける
「挨拶だけじゃなかったの?」
「逃げたら追いかけて押し倒して一晩中快楽に溺れたくなるものじゃない?」
「後半が明らかにおかしいでしょ、それ……私も無闇な交戦はしたくないんだから、さっさと挨拶だけして帰ってくれる?」
「じゃあせめて、何であなたがこの町に居るのかぐらいは教えてくれないかしら」
「それはこっちの台詞。『顔無し(フェイスレス)』『名前無し(ネームレス)』『終わり無し(エンドレス)』の『トライレス』教授。物騒極まりない欧州の忌子あなたが何故ここにいるの」
やや挑発混じりのアンネローゼの言葉に、トライレスの顔から笑みが消える
「私の教え子が住む町に、たまたま遊びに来ただけですよ?」
「『組織』の連中がゴタゴタを起こしてる、その最中に?」
「あら、それは初耳。総統やエルフリーデに教えてあげなくちゃ」
わざとらしく驚きながら、それまでの少女らしい可愛らしい笑顔をにたりと歪める
「私を嫌いな名前で呼んだ事は、わざわざご忠告いただいた事で帳消しにしてあげましょう」
「そりゃどうも。ついでに早くこの場から消えてくれると嬉しいんだけど。あんたを始末できたら大手柄だけど、別の仕事で来てるんだからさ」
「あら怖い。それじゃあ始末されないうちに引き上げるとしましょうか。あなたと出会った事は秘密にしておくわ。その方が良いでしょう、お互いに」
トライレスはその場でくるりと回ると、ふわりと浮かんだスカートの裾を摘んで頭を垂れる
「それでは、ごきげんよう」
その言葉と同時に、狭い路地に大量の白いガスが溢れ出す
「あ、視界を遮るだけで身体に害はありませんからご安心を」
慌てて身を退けるアンネローゼを嘲笑うようなくすくすという笑い声が、真っ白い視界の向こうへと消えていった
肩口が焼け焦げぼろぼろになったTシャツ姿で、アンネローゼは溜息を吐いて天を仰いだ
「なんかここしばらく、こんなんばっかだなぁ……死兆星とか見えたらどうしよ」
そんな心配をする必要も無く、都市部から見える空は星などほとんど見える事は無い
「『第三帝国』も『組織』も全部潰れっちゃえばいいのに。もーめんどくさーい」
やたらと物騒な嘆きの声だけが、空しく路地へと消えていった


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