ドクター82
「あの野郎、何処へ消えやがった!?」
プールの周辺で慌てふためく、犬耳を生やしたメイドが一人
音だけでは地理まで把握できないため、暇な時は町のあちこちを散歩していた犬メイドことパスカル・ハドソン
その同行者であり護衛を自称する喧嘩馬鹿の武人がいつの間にか居なくなっている事に気付き、騒ぎになる前にと辺りを駆け回って探していたのだが
彼女の高性能な聴覚は銃声やら何やらをすぐに聞きつけ、その精神を諦めという毒で汚染する
呂布一人でも手に余るというのに、それが戦う相手を見つけたとなれば、それを止めるのは銃撃戦の真っ只中に飛び込む以上に危険である
「終いにゃ飯抜きにするぞ、何が飛将だあの鉄砲玉が!」
音のした方向に走ろうとしたその途端
そちらから現れた赤い影が一陣の風のようにその傍らを走り抜け
それが赤兎馬に乗って戦場を離脱した呂布だと気付くのに、数秒の時間を要した
「ちょ、待てコラ!? お前何やらかした!?」
そう声を上げた頃には、既に後姿どころか気配すら残っておらず
「路上で奇声を上げるな。というか何でお前まだ日本にいるんだよ」
呆れた様子の伊藤有羽と、ドクターを中心とした『第三帝国』の面々が何事かといった様子で集まってきていた
「有羽か……ここしばらく面倒な事ばっかり巻き込まれててな」
ぐったりと疲れ切った表情で、有羽の肩に縋り付く
「俺って何か悪い事でもしたかなぁ」
「『陰謀論』に引っ掛かって俺とマッドガッサー達にクソ迷惑掛けたな」
「厳密には俺のせいじゃないよなそれ!? ってそういやお前に見せたいものが……ってカメラのメモリ取り替えたんだったー!?」
落ち込み、激昂し、冷静になったかと思った直後に焦燥感一杯の声で叫ぶパスカル
「……うち、一応精神科も取り扱ってるから」
「嫌な心配の仕方するんじゃねぇよ!?」
哀れみを込めた顔と声で肩を優しく叩かれ、半泣きで怒鳴り返す
「つーかお前んとこのご一行が、何でこんな所にいるんだよ」
「というかむしろお前がどうしてこんな所にいるのかこっちが聞きてぇよ。プールの客引きにメイドを使うなんて聞いた事無いぞ」
「……という事は、プールに遊びに来た訳か?」
「子供達がメインだけどな」
ドクターの周りには、いつものエニグマ姉妹ことコンスタンツェとデリア、ウィンチェスターの少女ことメイ
それに加えて元・悪魔の囁きの沙々耶と、彼女達を楽しげに眺めるトライレスの姿があった
「看護婦二人はどうしたんだ?」
「ミツキはマスクをしてると泳げないから。メアリーは感染症の都市伝説だから自粛だそうで、診療所で急患対応の番をしてる」
実際のところは、花見で留守番をしていた有羽を遊びに行かせようと二人が画策のだが
「ところで……お前、今暇か?」
「何だ、ナンパか?」
「誘うのは俺じゃないがな」
「ちょっと待て、どういうことぉぅぁっ!?」
言うが早いか、いつの間にか背後に回り込んだドクターの手が、メイド服の上を滑らかに這い回る
「ふむ、これならメアリーの水着でサイズは合うな」
「いきなり身体中を撫で回すなっ!?」
「医者に触られるのを気にしてどうするのかね君は」
「触り方が医者じゃねぇんだよ今のは!?」
パスカルのツッコミもそこそこに、ドクターは笑顔で可愛らしいビキニの水着を取り出し、メイド服の上からあてがって見せる
「うちの華が二人ほど欠員していてな。暇なら少し遊んでいきたまえ、水着は色々取り揃えてある」
「いや、別に俺は暇なわけじゃ……」
がちん、と
音を立てて首に填まり込む鋼鉄の首輪
「はい?」
首輪から伸びた鎖を手に、トライレスが夏の高原のような爽やかな微笑みを向ける
「犬、メイド、ここまできたら首輪よね?」
「待てコラぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
問答無用でプールの入り口に引き摺られていくパスカルを、有羽は静かに十字を切って見送った
「いぬ、くびわ、わかる、です。でも、めいど、くびわ、どうして、です?」
「いいの、あなたはそういうのは知らなくて」
何だかんだでトライレスの毒牙を免れた沙々耶は安堵の溜息を漏らしつつ、傍らの少女があの連中に染まらないでいて欲しいと切に願うのであった
プールの周辺で慌てふためく、犬耳を生やしたメイドが一人
音だけでは地理まで把握できないため、暇な時は町のあちこちを散歩していた犬メイドことパスカル・ハドソン
その同行者であり護衛を自称する喧嘩馬鹿の武人がいつの間にか居なくなっている事に気付き、騒ぎになる前にと辺りを駆け回って探していたのだが
彼女の高性能な聴覚は銃声やら何やらをすぐに聞きつけ、その精神を諦めという毒で汚染する
呂布一人でも手に余るというのに、それが戦う相手を見つけたとなれば、それを止めるのは銃撃戦の真っ只中に飛び込む以上に危険である
「終いにゃ飯抜きにするぞ、何が飛将だあの鉄砲玉が!」
音のした方向に走ろうとしたその途端
そちらから現れた赤い影が一陣の風のようにその傍らを走り抜け
それが赤兎馬に乗って戦場を離脱した呂布だと気付くのに、数秒の時間を要した
「ちょ、待てコラ!? お前何やらかした!?」
そう声を上げた頃には、既に後姿どころか気配すら残っておらず
「路上で奇声を上げるな。というか何でお前まだ日本にいるんだよ」
呆れた様子の伊藤有羽と、ドクターを中心とした『第三帝国』の面々が何事かといった様子で集まってきていた
「有羽か……ここしばらく面倒な事ばっかり巻き込まれててな」
ぐったりと疲れ切った表情で、有羽の肩に縋り付く
「俺って何か悪い事でもしたかなぁ」
「『陰謀論』に引っ掛かって俺とマッドガッサー達にクソ迷惑掛けたな」
「厳密には俺のせいじゃないよなそれ!? ってそういやお前に見せたいものが……ってカメラのメモリ取り替えたんだったー!?」
落ち込み、激昂し、冷静になったかと思った直後に焦燥感一杯の声で叫ぶパスカル
「……うち、一応精神科も取り扱ってるから」
「嫌な心配の仕方するんじゃねぇよ!?」
哀れみを込めた顔と声で肩を優しく叩かれ、半泣きで怒鳴り返す
「つーかお前んとこのご一行が、何でこんな所にいるんだよ」
「というかむしろお前がどうしてこんな所にいるのかこっちが聞きてぇよ。プールの客引きにメイドを使うなんて聞いた事無いぞ」
「……という事は、プールに遊びに来た訳か?」
「子供達がメインだけどな」
ドクターの周りには、いつものエニグマ姉妹ことコンスタンツェとデリア、ウィンチェスターの少女ことメイ
それに加えて元・悪魔の囁きの沙々耶と、彼女達を楽しげに眺めるトライレスの姿があった
「看護婦二人はどうしたんだ?」
「ミツキはマスクをしてると泳げないから。メアリーは感染症の都市伝説だから自粛だそうで、診療所で急患対応の番をしてる」
実際のところは、花見で留守番をしていた有羽を遊びに行かせようと二人が画策のだが
「ところで……お前、今暇か?」
「何だ、ナンパか?」
「誘うのは俺じゃないがな」
「ちょっと待て、どういうことぉぅぁっ!?」
言うが早いか、いつの間にか背後に回り込んだドクターの手が、メイド服の上を滑らかに這い回る
「ふむ、これならメアリーの水着でサイズは合うな」
「いきなり身体中を撫で回すなっ!?」
「医者に触られるのを気にしてどうするのかね君は」
「触り方が医者じゃねぇんだよ今のは!?」
パスカルのツッコミもそこそこに、ドクターは笑顔で可愛らしいビキニの水着を取り出し、メイド服の上からあてがって見せる
「うちの華が二人ほど欠員していてな。暇なら少し遊んでいきたまえ、水着は色々取り揃えてある」
「いや、別に俺は暇なわけじゃ……」
がちん、と
音を立てて首に填まり込む鋼鉄の首輪
「はい?」
首輪から伸びた鎖を手に、トライレスが夏の高原のような爽やかな微笑みを向ける
「犬、メイド、ここまできたら首輪よね?」
「待てコラぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
問答無用でプールの入り口に引き摺られていくパスカルを、有羽は静かに十字を切って見送った
「いぬ、くびわ、わかる、です。でも、めいど、くびわ、どうして、です?」
「いいの、あなたはそういうのは知らなくて」
何だかんだでトライレスの毒牙を免れた沙々耶は安堵の溜息を漏らしつつ、傍らの少女があの連中に染まらないでいて欲しいと切に願うのであった