…大丈夫
怖くなんてない
怖いものなんて、ないよ?
怖くなんてない
怖いものなんて、ないよ?
だって、この学校街に住んでいて
今更、怖いものなんてあるわけないじゃない?
今更、怖いものなんてあるわけないじゃない?
時刻は夕暮れ
裂邪は、デート…と、呼んでもよいものかどうか
ミナワと一緒に、学校街を歩いていた
お小遣いも出た後だし…ミナワに似合いそうだと思っていた髪飾りでも、プレゼントしようかと思っていたのだ
裂邪は、デート…と、呼んでもよいものかどうか
ミナワと一緒に、学校街を歩いていた
お小遣いも出た後だし…ミナワに似合いそうだと思っていた髪飾りでも、プレゼントしようかと思っていたのだ
南区の繁華街に向けて、二人でゆっくりと歩く
この辺りは人通りも少ないようで、とても静かだ
この辺りは人通りも少ないようで、とても静かだ
「ふぅ…この時間になっても、まだ暑いな」
「そうですね。だいぶ日が翳ってきた時間帯なのに、まだ暑さが残ってる感じがします…」
「そうですね。だいぶ日が翳ってきた時間帯なのに、まだ暑さが残ってる感じがします…」
何気ない事を話しながら、一緒に歩く
ただ、それだけで、こんなにも幸せ
愛しい相手と一緒にいると言う事は……ただ、それだけで、こんなにも幸せな事なのだ
裂邪は、それを実感する
ただ、それだけで、こんなにも幸せ
愛しい相手と一緒にいると言う事は……ただ、それだけで、こんなにも幸せな事なのだ
裂邪は、それを実感する
しばし、そうやって幸せを実感していたのだが
(………げ)
前方に見えた、その人影に
その幸せな気分が、やや、薄らいでしまう
その幸せな気分が、やや、薄らいでしまう
そこにいたのは、少年
小学校低学年か、それより幼い雰囲気の少年だ
うーうー、と歌でも口ずさんでいるように見える
小学校低学年か、それより幼い雰囲気の少年だ
うーうー、と歌でも口ずさんでいるように見える
裂邪は、以前、この少年と遭遇した事が、ある
…真夜中、「首塚」首領、将門と共に、いる姿を
どうやら、あの少年は「首塚」に所属しているらしい
ただ、それだけならばまだ良いのだが……裂邪は、あの少年が「変貌」した瞬間を、目の当たりにしている
今も見えているような、どこか無邪気な様子ではなく…外見に反して酷く大人びた、不気味さな得体の知れなさを感じさせる表情を
その姿は、将門から感じた威圧感とも何か違う、別の意味での恐怖に近い感情を感じさせるものだった
…真夜中、「首塚」首領、将門と共に、いる姿を
どうやら、あの少年は「首塚」に所属しているらしい
ただ、それだけならばまだ良いのだが……裂邪は、あの少年が「変貌」した瞬間を、目の当たりにしている
今も見えているような、どこか無邪気な様子ではなく…外見に反して酷く大人びた、不気味さな得体の知れなさを感じさせる表情を
その姿は、将門から感じた威圧感とも何か違う、別の意味での恐怖に近い感情を感じさせるものだった
「ご主人様?どうかなさったんですか?」
「……いや、何でもない」
「……いや、何でもない」
…あまり、関わりたくない相手だ
さっさと通り過ぎてしまおう
そう考え、やや早足になる裂邪
ミナワが慌てて、その後を追いかける
さっさと通り過ぎてしまおう
そう考え、やや早足になる裂邪
ミナワが慌てて、その後を追いかける
うーうーうー
楽しげな様子の少年
今のところ、裂邪達に気づいた様子はない
……今だ!!
裂邪は、今のうちに、さっさと通り過ぎようとして…
楽しげな様子の少年
今のところ、裂邪達に気づいた様子はない
……今だ!!
裂邪は、今のうちに、さっさと通り過ぎようとして…
「…うー、そっち、不吉」
「……っ!?」
突然の、少年の言葉に
思わず、足をとめてしまった
思わず、足をとめてしまった
「…不吉?」
きょとん、と
ミナワが、少年を見つめる
つられるように裂邪も少年に視線をやると……少年は、じっと、二人を見詰めてきていた
ミナワが、少年を見つめる
つられるように裂邪も少年に視線をやると……少年は、じっと、二人を見詰めてきていた
「不吉…?」
「うー…不吉、危ない。うーうー!!」
「うー…不吉、危ない。うーうー!!」
首をかしげたミナワに、続けてそういってくる少年
……不吉、だと?
一体、何が不吉だというのか
裂邪が、少年に尋ねようとした、その時
一体、何が不吉だというのか
裂邪が、少年に尋ねようとした、その時
………ガルルルル、と
聞こえてきた、うなり声
聞こえてきた、うなり声
さーーー……っと
裂邪は、血の気が引いていくような感覚を感じた
姿をあらわしたのは、両目がまるで紅茶皿のように大きな、一般的な固体よりも体が一回り大きな……黒い犬
何者かと戦闘した後なのだろうか、体のいたるところに火傷を負っている
裂邪は、血の気が引いていくような感覚を感じた
姿をあらわしたのは、両目がまるで紅茶皿のように大きな、一般的な固体よりも体が一回り大きな……黒い犬
何者かと戦闘した後なのだろうか、体のいたるところに火傷を負っている
主にイングランド北部に伝わる都市伝説、ガイトラッシュ
馬や犬など、身近な生物の姿で現れる存在だ
通常、静かに後をつけてくるが、恐怖に駆られて逃げ出すと突然襲い掛かってきたり、沼や溝に落とされ、死にいたる事もあるという
裂邪にとって不幸な事に、この固体は、たまたま犬の姿をとっていた
馬や犬など、身近な生物の姿で現れる存在だ
通常、静かに後をつけてくるが、恐怖に駆られて逃げ出すと突然襲い掛かってきたり、沼や溝に落とされ、死にいたる事もあるという
裂邪にとって不幸な事に、この固体は、たまたま犬の姿をとっていた
「い、いいいいい、犬………っ」
ミナワの前で、情けない姿を晒したくない
そうは思っても…身に刻まれたトラウマと言うものは、そう簡単に消えてくれるものではない
裂邪の思考を、恐怖が支配しはじめる
そうは思っても…身に刻まれたトラウマと言うものは、そう簡単に消えてくれるものではない
裂邪の思考を、恐怖が支配しはじめる
「ご、ご主人様…大丈夫です、お守りします!」
けなげにも、裂邪を護るように、前に立つミナワ
彼女は、裂邪のトラウマを理解してくれているから
だから、裂邪を、犬というトラウマから、護ろうとしてくれる
彼女は、裂邪のトラウマを理解してくれているから
だから、裂邪を、犬というトラウマから、護ろうとしてくれる
攻撃のために、しゃぼん玉を出そうとするミナワ
だが
だが
「…うー、大丈夫」
再び、少年が小さく呟いた
え?と、思わず動きがとまるミナワ
そして
え?と、思わず動きがとまるミナワ
そして
……きゃいん!?と
ガイトラッシュが、恐怖を感じたような声をあげた
直後……ガイトラッシュの、体が
じゅうううううう……と、焼け焦げはじめる!
ガイトラッシュが、恐怖を感じたような声をあげた
直後……ガイトラッシュの、体が
じゅうううううう……と、焼け焦げはじめる!
「幸太!無事か!?」
「…うー!ステーキのお兄ちゃん!」
「…うー!ステーキのお兄ちゃん!」
前方の道から…金髪によく日焼けした肌の、シルバーアクセサリーをじゃらじゃらと身につけた、チャラけた格好の青年が駆けつけてきた
慌てて幸太に駆け寄り、庇うようにガイトラッシュを睨みつける
慌てて幸太に駆け寄り、庇うようにガイトラッシュを睨みつける
「悪い!お前のとこまで逃がしちまった」
「うー、僕達だいじょーぶ!うー!!」
「うー、僕達だいじょーぶ!うー!!」
うーうー、と青年の言葉に、元気に答える少年
幸太という名前らしいその少年の言葉に、青年がほっとした表情を浮かべて
…この場に、幸太の他にも、裂邪やミナワの姿がある事を確認すると
厳しい表情で、ガイトラッシュを鋭く睨んだ
幸太という名前らしいその少年の言葉に、青年がほっとした表情を浮かべて
…この場に、幸太の他にも、裂邪やミナワの姿がある事を確認すると
厳しい表情で、ガイトラッシュを鋭く睨んだ
「…この野郎、子供ばっかり狙いやがって!」
ぎゃん!?と
苦しむガイトラッシュ
その体は、どんどん、どんどん、焼け焦げていっている
苦しむガイトラッシュ
その体は、どんどん、どんどん、焼け焦げていっている
裂邪とミナワは知らない事だが、この青年は都市伝説契約者で……契約都市伝説は「日焼けマシンで人間ステーキ」
視線だけで相手を焼き殺す事もできる、殺傷力の高い都市伝説だ
その能力が、容赦なくガイトラッシュに発揮される
視線だけで相手を焼き殺す事もできる、殺傷力の高い都市伝説だ
その能力が、容赦なくガイトラッシュに発揮される
…大して、時間もたたずに…ガイトラッシュは、黒こげになって
まるで、最初から存在していなかったかのように、消えうせた
まるで、最初から存在していなかったかのように、消えうせた
ふぅ、と体の力を抜く青年
くるり、裂邪達に向き直る
くるり、裂邪達に向き直る
「お前ら、大丈夫か?」
「え……あ、は、はい」
「え……あ、は、はい」
こくり、頷くミナワ
犬が消えた事で精神的余裕が戻り、裂邪もこっくりと頷いた
…そして、警戒するように、ミナワの前に立つ
犬が消えた事で精神的余裕が戻り、裂邪もこっくりと頷いた
…そして、警戒するように、ミナワの前に立つ
「…助けてくれた事は、感謝する……あんたも、都市伝説契約者か」
「ん?お前らも契約者か?」
「ん?お前らも契約者か?」
きょとん、と裂邪を見つめてくる青年
…青年は、だいぶ背が高い、180cm以上あるのではないだろうか
見下ろされているその状態が、裂邪は若干、気に食わない
…青年は、だいぶ背が高い、180cm以上あるのではないだろうか
見下ろされているその状態が、裂邪は若干、気に食わない
「うー、このおにーちゃん、獏の契約者ー!」
「獏?…あぁ、夢を食べる…」
「…それだけじゃない、ね。多重契約者なんだ」
「獏?…あぁ、夢を食べる…」
「…それだけじゃない、ね。多重契約者なんだ」
じ、と
幸太が、裂邪を見つめる
幸太が、裂邪を見つめる
一瞬
ほんの、一瞬だけ
その表情が……以前、裂邪と獏の前で見せた、不気味なものに、変わった
ほんの、一瞬だけ
その表情が……以前、裂邪と獏の前で見せた、不気味なものに、変わった
しかし、その変化は本当に一瞬で
裂邪がそれに気づいた直後、ミナワに気づかれる直前に、元に戻る
裂邪がそれに気づいた直後、ミナワに気づかれる直前に、元に戻る
「うー、そっちのおねーちゃん、都市伝説ー!おにーちゃんはおねーちゃんと契約してる。うーうー!」
「え…わ、わかるんですか?」
「こいつ、そういう勘はいいんだよ」
「え…わ、わかるんですか?」
「こいつ、そういう勘はいいんだよ」
よしよし、と幸太を撫でている青年
うーうー、と幸太は嬉しそうだ
うーうー、と幸太は嬉しそうだ
ひょい、と
青年は、幸太を片腕で抱き上げる
青年は、幸太を片腕で抱き上げる
「怖い目にあわせて、悪かったな。この街は都市伝説が異様に多いから……それに、都市伝説や都市伝説契約者同士は、お互いに接触しやすいから。気をつけろよ?」
「うー、都市伝説や契約者は引かれ合うー」
「……もし、機会があったら。そして、もし「組織」なんてものに、追われる事があったら…「首塚」に接触しな。俺達が、護ってやるから」
「うー、都市伝説や契約者は引かれ合うー」
「……もし、機会があったら。そして、もし「組織」なんてものに、追われる事があったら…「首塚」に接触しな。俺達が、護ってやるから」
そういって、青年は幸太を抱き上げたまま、歩き出した
うーうー、とご機嫌そうな幸太
以前見た不気味な印象と、今の印象は、とてもではないが一致しない
うーうー、とご機嫌そうな幸太
以前見た不気味な印象と、今の印象は、とてもではないが一致しない
……嵐がさって
改めて、裂邪はほっとする
改めて、裂邪はほっとする
「…ごめんな、ミナワ。また、格好悪いところ見せて…」
「そんな事、ありませんよ」
「そんな事、ありませんよ」
きゅ、と
裂邪の手を握るミナワ
その手の感触に、裂邪は癒されて
裂邪の手を握るミナワ
その手の感触に、裂邪は癒されて
……再び接触した、「首塚」の構成員
「首塚」との奇妙な縁に、かすかに得体の知れないものを感じたのだった
「首塚」との奇妙な縁に、かすかに得体の知れないものを感じたのだった
fin