彼女、恵がその病院の最上階にたどり着いた時
その時には、もう、何もかも終わった後で
その時には、もう、何もかも終わった後で
……それでも、まだ
まだ、完全な手遅れでは、ない
まだ……辰也を助けられる
恵はそう、信じる事しか、願う事しか、今はできない
まだ、完全な手遅れでは、ない
まだ……辰也を助けられる
恵はそう、信じる事しか、願う事しか、今はできない
「…状況を、整理しようか」
ヘンリエッタが、ジェラルドの腕を縫い直している様子を見ながら…エーテルが、ぽつり、そう口にした
こちらの被害は、せいぜい細かい怪我程度ではある
佳奈美や愛華、美緒と言った非戦闘員は皆、無傷
こちらの被害は、せいぜい細かい怪我程度ではある
佳奈美や愛華、美緒と言った非戦闘員は皆、無傷
…だが
状況は、悪い方向に傾いていると、と言わざるを得ない
広瀬 辰也は、一人でハンニバルの元へと向かってしまった
いくら、対ハンニバルに向けて訓練をつんでいたとはいえ、一人で戦うなど、無謀すぎる
状況は、悪い方向に傾いていると、と言わざるを得ない
広瀬 辰也は、一人でハンニバルの元へと向かってしまった
いくら、対ハンニバルに向けて訓練をつんでいたとはいえ、一人で戦うなど、無謀すぎる
(…それに)
エーテルは、ヘンリエッタの傷が再生していない事が、気にかかった
ヘンリエッタは、吸血鬼だ
…多少の傷ならば、さほど時間をおかずに再生するはず
しかし、ヘンリエッタの体中の細かい傷が、再生する様子を見せないのだ
時刻は夕暮れ時、それも、だいぶ日が沈んできている時間帯
だというのに、傷の再生が始まらない…
ヘンリエッタは、吸血鬼だ
…多少の傷ならば、さほど時間をおかずに再生するはず
しかし、ヘンリエッタの体中の細かい傷が、再生する様子を見せないのだ
時刻は夕暮れ時、それも、だいぶ日が沈んできている時間帯
だというのに、傷の再生が始まらない…
(……お嬢さんの心が、そこまで弱ってるって事かよ……)
化け物
そう呼ばれる事が、彼女の心を削り続けている
そして、精神面の衰弱が、彼女の力を弱め続けているのだ
こんな簡単な傷すら再生できないほど、彼女は弱ってきてしまっている
ヘンリエッタが、それを自覚しているかどうかは、わからないが…
どちらにせよ…良い兆候ではない事は、事実
そう呼ばれる事が、彼女の心を削り続けている
そして、精神面の衰弱が、彼女の力を弱め続けているのだ
こんな簡単な傷すら再生できないほど、彼女は弱ってきてしまっている
ヘンリエッタが、それを自覚しているかどうかは、わからないが…
どちらにせよ…良い兆候ではない事は、事実
…まずはこの現状、どうするべきか
駆けつけてきた恵と何やら話している宏也に視線をやりつつ、エーテルは宏也に尋ねる
駆けつけてきた恵と何やら話している宏也に視線をやりつつ、エーテルは宏也に尋ねる
「…辰也は、間違いなくハンニバルやH-No.2の元に向かったんだろう…居場所を、辰也は把握しているのか?」
「……さぁな。多分、連中が使ってた研究所、そこにいくつかあたりをつけて、向かっていったんだろう」
「……さぁな。多分、連中が使ってた研究所、そこにいくつかあたりをつけて、向かっていったんだろう」
顔をあげ、そう答えた宏也
ハンニバル達が潜んでいるとしたら…もはや使用されてない「事になっている」研究所が、怪しい
元実験体である辰也は、その研究所の位置も把握しているのだろう
ハンニバル達が潜んでいるとしたら…もはや使用されてない「事になっている」研究所が、怪しい
元実験体である辰也は、その研究所の位置も把握しているのだろう
…そして
もうひとつ、気になることが
もうひとつ、気になることが
「…辰也は、「一人じゃない」と、そう言っていた……その意味は、わかるか?」
「…………………さぁてね?俺にはわからないな」
「…………………さぁてね?俺にはわからないな」
嘘だ
エーテルは、即座に判断する
辰也の言った「一人じゃない」の意味を…恐らく、かなり正確に宏也は把握している
その上で、この状況でなお、真実を隠そうとしている
…宏也が何を思って、そうやって真実を隠そうとしているのか、エーテルには判断がつきかねる
他にも、宏也にはこの状況下でなお、隠している事実があるのだ
せめて、その情報を開示してくれれば、少しは楽だろうに…
エーテルは、即座に判断する
辰也の言った「一人じゃない」の意味を…恐らく、かなり正確に宏也は把握している
その上で、この状況でなお、真実を隠そうとしている
…宏也が何を思って、そうやって真実を隠そうとしているのか、エーテルには判断がつきかねる
他にも、宏也にはこの状況下でなお、隠している事実があるのだ
せめて、その情報を開示してくれれば、少しは楽だろうに…
「エーテル」
「うん?」
「うん?」
エーテルが、考え込んでいると
ジェラルドの腕の接合を終えたヘンリエッタが、声をかけてきた
ジェラルドの腕の接合を終えたヘンリエッタが、声をかけてきた
「どうしたんだ?」
「……ハンニバルの、眼帯の下の、目。ハンニバルは、あれを「最強の目」と呼んでおるが………その「目」、どうにかできるやかもしれぬ」
「本当か?」
「……ハンニバルの、眼帯の下の、目。ハンニバルは、あれを「最強の目」と呼んでおるが………その「目」、どうにかできるやかもしれぬ」
「本当か?」
うむ、と頷くヘンリエッタ
…その表情は、暗い
…その表情は、暗い
「ハンニバルの奴らが使っていた…今では、もう使っていないはずの研究所、そのどこかで、「目」の本体を見つけることができれば、あれを封じる事はできる………エーテルよ、その役目を、妾に任せてはくれぬか?」
じ、と
ヘンリエッタが、エーテルを見上げる
その表情に、エーテルは悲壮な色を感じて
ヘンリエッタが、エーテルを見上げる
その表情に、エーテルは悲壮な色を感じて
「……エーテル……」
「…あぁ、わかってる。マクスウェル」
「…あぁ、わかってる。マクスウェル」
…ヘンリエッタを、その場所に一人で行かせては、いけない
エーテルはそう結論付ける
エーテルはそう結論付ける
今回の状況、恐らく、何かひとつでも、間違ったら
ヘンリエッタは、そのまま、命を落とすだろう
ヘンリエッタは、そのまま、命を落とすだろう
to be … ?