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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 三面鏡の少女-64

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Elfriede

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三面鏡の少女 64


黒服となって『組織』に所属するようになって数ヶ月
手塚星は人間だった頃から馴染みの弁当屋で買った弁当を片手に、鼻歌混じりで公演のベンチに腰を下ろした
逢瀬佳奈美を見守るという仕事も、広瀬宏也が彼女と一緒の間は割と任せっ放しである
別に彼を信頼し切っているわけではなく、どちらかというと佳奈美に気を遣って第三者の目を遠慮しているだけなのだが
ともあれ彼は、佳奈美に影響が無い事件にはこれっぽっちも興味は無く、ぶらぶらと学校町をうろついている日々を過ごしていた
まあそれでも一応は町の巡回、ひいては抑止力という役目は果たしているのだが
「あれ、またあの子だ」
いつものんびり弁当を食べている公園に入り、ふと目をやった先にいたのは、公園の水飲み場で水を飲んでいる少女
ここ数日、公園でだらだらしているとよく見掛けるその少女は、いつも水を飲んでいる姿ばかりである
「んー、なんか変な都市伝説に憑かれてたりすんのかな?」
自らが持つ能力を使えばその素性ぐらいなら簡単に把握できるのだが、緊急時以外の能力の濫用は上司に禁止されている
星は弁当を片手に少女に近付くと、無心に水を飲む少女をじっと見詰める
その視線に気付いたのか、少女は水を飲む手を休めて顔を上げる
「どうしましたか? お水を飲むのでしたらどうぞ」
「いや、そうじゃないんだけどね。君さ、いつも見掛けるからちょっと気になって」
丁寧な態度とは裏腹に、顔色の悪さを隠せていない少女の姿は、健気さを通り越して痛々しい
「日本人じゃないみたいだけど、何処の子? 生水ばっかり飲んでるとお腹壊すよ?」
「身元を探られました。学生ぐらいに見えましたが警察の関係者なのでしょうか? でも私は正規の手続きで入国しているのデス」
「いやいや、警察とかじゃないから俺。本当にちょっと気になっただけだから」
荷物からごそごそとパスポートを取り出す少女を、星は慌てて制する
その折に、片手に持ったままだった弁当の香りが、ふわりと少女の鼻をくすぐった
それを察知して即座にぐくぅ、きゅるきゅると自己主張をする少女のお腹
「お腹空いてるのか?」
「ち、違います! そもそも暴食は大罪であり、それに耐える事は神の与えたもうた試練で」
星は呆れたような顔でその場に屈み込むと、手提げ袋から弁当を取り出してその蓋を開ける
解放された湯気が、鶏の唐揚げの油の甘みと香辛料の香り、そして温かいご飯の香りを巻き上げて少女を誘惑するように躍り上がる
それに呼応して、食物を求めるべくお腹と唾液が少女の意思を無視して全力で主張し始める
「誘惑がっ!? 悪魔の誘惑がっ!」
「俺は悪魔とかじゃないから。別にこれ食べたからって魂寄越せとか言うわけじゃないし」
そう言うと星は、弁当を片手にしたまま反対の手で少女の身体をひょいと抱え上げる
感じるのは彼女の手荷物の重さと、想像以上に細く軽い少女の身体の重さ
神が悪魔がと喚きながら暴れる少女をベンチまで運ぶと、そのままそこに座らせて膝の上に弁当を置く
「はい」
「むぅ」
プラスチックのフォークを手渡され、それでも唐揚げ弁当を前に微動だにしない少女
「しかしやはり、これはあなたのご飯であって、私が食べるべきではないのデス」
「じゃあ、君が食べるべきご飯は今までどうなってきたの?」
う、と少女が言葉に詰まる
本来なら少女の食欲を満たすための食料を得る金銭は、概ね募金箱に消えている
路上で募金活動を行っている事などは稀ではあるが、彼女が買い物をするコンビニのレジ前にには必ずと言っていい程に募金箱が設置されているからだ
「冷める前に食べないと、折角美味しいご飯を作ってくれた人に悪いよ? そこの弁当屋のおばちゃん、すっげえ良い人なんだから」
その言葉に、やっと意を決したように唐揚げを一つ口に放り込む少女
もきゅもきゅとその食感と味を確かめるように噛み締めて、ほろりと涙を零した
「美味しいデス」
「ん、良かった良かった。お腹がびっくりしないようにゆっくり食べなよ?」

―――

空になった容器を袋に入れて、きゅっと口を縛ってゴミ箱に放り込む
「警察とかじゃないって言ったけどさ。俺は一応、この町の見回りとかしてるんだけど」
お腹も落ち着いた様子の少女に、ゴミ箱の傍らで星は語る
「どの辺に住んでるの、君? 少なくともホテルとか旅館じゃないよね」
「神の与えたもうた安息の地があります」
「野宿とかしてないよね?」
「ちゃんとテントを用意してありますから大丈夫デス」
「テントかぁ……」
この町の野良犬は、野良というより放し飼いの飼い犬状態なのでさほど心配は無い
だが野良犬より厄介な、獰猛な都市伝説や変態には事欠かないのが学校町である
「めんどくさいからって『組織』で寝泊りしてないで、住むとこ確保しとけば良かったな」
「何か言いましたか?」
「いや、こっちの事」
星は微笑を浮かべると、少女の頭をぽんぽんと撫でる
「俺はこの町でいつも見回りしてるし、多分『近いうちにまた会えるから』。またね」
「はい、ご馳走様でした。お弁当、美味しかったデス。あなたに神のご加護がありますよう」
丁寧に礼を述べて去っていく少女
星はさほど世界に影響のない程度の『言葉を現実にする』能力を発動させて、彼女との繋がりを保っておく
「なーんか厄介事を起こしそうだし、とりあえずは監視対象かな? まー上への報告は何かあってからで良いか」
『組織』の内情にも疎い少年の気紛れが、これからどんな影響を及ぼすかは
神のみぞ知る事であった


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