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連載 - 三面鏡の少女-65

最終更新:

Elfriede

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三面鏡の少女 65


ふと気が付くと、部屋が薄暗い気がする
幾度となく重なり合う唇と離し、汗ばみ上気した顔でぼんやりと状況を思い出す
傍らに置いた携帯電話に手を伸ばし、ぱこりとそれを開いたところで逢瀬佳奈美の心臓は跳ね上がった
「宏也さんっ! 時間ものっそい過ぎてるよ!?」
そう言われて時計を見た宏也は、珍しく「やっちゃったZE☆」と言わんばかりの表情で佳奈美に愛想笑いを返す
「いやぁ、久々な上にいつもと違う格好で歯止めが利かなかった」
「んにゃー!? スカート皺になってるー! 首筋とか胸元の跡がー!? ルージュすっかり取れてるしー!」
見る人が見なくても何をやってたかバレバレな有様に、なんとか取り繕うと必死に身形を整えようと四苦八苦
「元々色味が薄いルージュだったし食事後に拭いた事にすればいいだろ。そっちの跡はファンデーションで誤魔化せ。皺は、どうせもうじき終わるし暗けりゃバレないって」
「遅い時点でバレバレだと思うけどね!? ふにゃっ……」
「どうした」
何やら凄く微妙な顔をした佳奈美に、何となく察しはついてる宏也が尋ねる
「下着が濡れてて気持ち悪い……ミニだから見えたら困るし」
「こんな事もあろうかと、替えの下着は用意してある。ほれ、ウェットティッシュもあるぞ」
「どんな事があろうと思ってたのかな宏也さん!? というかこれあたしの持ってるのと一緒だけど何で知ってるの!?」
「知ってるも何も、佳奈美の部屋から持ってきたものだしな」
「いつの間にー!?」
「前にご両親が留守の時に部屋で色々した時にだが」
「色々問い詰めたいけど、早くクラスの方に戻らなきゃ! 宏也さん、こっち見ちゃダメだからね!」
「下着の履き替えより凄いものを見て凄い事をしてたはずなのに、何で見ちゃいけないのか理不尽だとは思わないか?」
「そういう事してる時としてない時の温度差! 判ってて言ってるよね宏也さん!?」
「ああ、何て言うか……佳奈美のリアクションがいちいち可愛くてな。また理性が獣性に負けそうだ」
「堪えてくれないとあたしの高校生活が割とアレな事になっちゃうから!」
その後、黒服としての情報隠蔽工作を駆使した保健室ベッドの手直しや、佳奈美の身繕いで多少の時間を消費し
「じゃ、俺は校門のとこで待ってるから。帰りも送って行くな」
「うん、それじゃまた後でね!」
慌ただしくも、なんだかんだできっちりと笑顔で手を振ってくれる佳奈美に、宏也はややにやつきを隠せないのであった

―――

「ごめん、遅くなっちゃった!」
息を切らせて控え室に飛び込んできた佳奈美に、その場にいた女子一同は思わず顔を見合わせる
「いやむしろ早かったかな?」
「というか佳奈美のシフト、ちゃんと空けておいたよね?」
「うん、佳奈美の彼氏さん着た時に速攻で再調整したもん」
「というわけで遅れた心配はしなくて良いよ? 二日目とか彼氏さん来ないならちょっと長めに出てくれればいいから」
気楽な様子のクラスメイト達に、佳奈美は大きく息を吐いてその場にへたり込んだ
「まー遅れて悪かったと思ってるなら」
「今まで何してたかお話しようかー」
「大丈夫、他言無用にしてあげるから」
「絶対秘密にならない! どっかから漏れるでしょこのクラスだと!?」
「信用しなさい、私達の口は二枚貝のように固いわ」
「焼いたらぱっくり開くって事だけどね」
「ダメじゃないそれー!?」
結局、冗談七割本気三割ぐらいだったクラスメイト達の執拗な追及に屈する事無かったのだが
「まあ大体想像つくけどね?」
「その上で見れば隠してるとこなんてバレバレだし。休憩前と比べてやけに綺麗になってるルージュとか不自然なファンデの痕跡とか」
「うぐっ……」
「私も彼氏欲しいー。佳奈美、ちょーだーい」
「あげないよっ!?」
例年より色々な意味で濃い密度の学園祭の一日は、こうして過ぎ去っていったのだった


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