「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ビター・スウィート・ビターポイズン-11b

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だれでも歓迎! 編集
 ……自分に、家族がいるなど
 兄弟が、存在するなど
 ……考えた事も……なかった

 母親の事がわかった
 それだけでも、十分だった

 ………だが
 あの、小さな老女の姿をした都市伝説が、消滅した後
 自分の兄だと言う存在の今の居場所を、そして、現状を知らされた
 H-No.1…ハンニバルと名乗っていたその相手に、捨て駒同然の扱いをされ、意識の戻らない状態
 …「組織」に所属している存在だと言う話も、聞いた
 「組織」は好きじゃない 
 自分とククージィにとって敵だし…あの優しいスウィート・ポイズンを、いつ遣い潰すかもわからない「組織」が、自分にとって味方になるはずもない
 自分達を助けてくれた、光を操る黒服が、スウィート・ポイズン同様、特別なだけ
 それ以外の「組織」は……敵でしか、ない
 だから、その「組織」所属の兄とて………自分にとって、味方であるとは、限らない
 恐らくは、あちらも……こちらについて、知らないだろうから

 それでも
 一目、その姿を見たいと感じてしまった、自分は
 そこまで、家族という存在に飢えていたのだろうか?


(……贅沢だな)

 自身の考えに、祐樹はこっそりと苦笑する
 自分は、ククージィという家族を手に入れていたと言うのに
 それでもなお、家族を求めると言うのか

「祐樹?どうした?」
「…いいや、別に」

 病院を出て、すぐ
 あの、どこか軽薄さと残酷さを感じさせる黒服に教えられた場所へ向かうべく、北区に向かう祐樹とククージィ
 その間考え込んでいた祐樹にククージィが声をかけたが、祐樹は曖昧にごまかす
 ……祐樹の考えを、大体ククージィはわかっていて、あえてそれ以上は尋ねない
 祐樹はもっと我侭になってもいいと、ククージィは常々考えていたのだから
 肉親がいない事を、どこまでも悲観的に考え、斜に構えた性格に育ってしまった祐樹
 …そこに、少しでも光がさしてくれたのなら、ククージィは満足なのだ

 …向かう先は、北区の小さな診療所
 が、そこに向かう最中…まだ、さほど病院から、離れていない位置で

「………ぁ」
「やぁ、祐樹君」

 …見知った顔に、出会った
 GW中の花見の時、ククージィとはぐれてしまっていた時、力を貸しくれた三人の内の、二人

「…あの時の………確か…」
「坂原 想軌だ」
「菅野 紗江良ですぅ」

 親切にしてくれた相手だ、顔も名前も、覚えている
 ……何故だろうか
 二人がこちらを見て、ややほっとしたような表情をしたのは

「無事だったのか」
「……?」

 想軌の言葉に、祐樹は小さく首をかしげた
 …どう言う事だ?
 この二人は……こちらが、どう言う状態に陥っていたのか、知っている…?

「病院の方が、何か騒がしかったみたいだからな。病院の門から出てきた姿を見たから、怪我の一つでもしているかと思ったが…無傷のようだな」

 …ククージィに庇われていたおかげで、祐樹は無傷だ
 ククージィも、軽い怪我は負ったものの、既に傷は再生している
 見た目には、二人とも無傷に見えるだろう
 混乱させるのも悪いと思い、あぁ、と祐樹は頷いて見せた

「……すまない、急いでいるから……」
「あぁ、それは見た様子でわかる……だが、少し、待ってほしい」

 急いで立ち去ろうとした祐樹を、想軌が呼び止める
 そして、こう告げる

「…門条 天地、と言う青年を知っているだろうか?」
「………っ!」

 想軌の、言葉に動揺を隠せない祐樹
 その祐樹に代わって、ククージィが想軌に対応する

「……はて?その青年をわしらが知っていたとして、それがお前さん達に関係があるのかの?」
「えっと…私達、その天地さんと、知り合いなんですよぉ」
「連絡がとれなくなっていてな、心配で」

 紗江良の言葉に、想軌が続く
 …祐樹は、二人のその言葉で、納得した
 彼はどうにも、一度信用した相手には、若干、判断が甘いところがある
 ……この二人が「組織」所属である可能性を、完全に失念していた

「…知っている、今から…会いに行く」
「本当ですかぁ?」
「あぁ」
「なら、一緒に行っても構わないだろうか」

 想軌の言葉に、頷く祐樹
 ククージィは、かすかに想軌達を警戒しているようだったが……祐樹に害が無ければよい、と判断したのか
 いざとなれば、自分が始末すればよいと思ったのか
 口をはさんでくることは、なかった



 そして…日も傾ききった頃に到着した、北区 診療所
 そこを訪れた祐樹達を出迎えたのは、どこか凛々しさも感じさせる美しい女性、ドクター

「あぁ、広瀬 宏也から連絡は聞いている……が、そちらの男女は?」

 やや、警戒している様子のドクター
 祐樹が、想軌達について説明しようとした、その時

「………夜分遅くに、申し訳ない」

 ……ぬぅ、と
 祐樹達の背後に……一人の男性が、近づいてきた
 50代程の男性だ。灰色のコートを身に纏い、サングラスをかけている
 …その、サングラスの下の目は……金色のように、思えた

 想軌が、その姿にややぎょっとする
 祐樹とククージィは知らないが、想軌は「組織」の一員として、その顔を把握していたからだ
 ……朝比奈 秀雄
 何故、この人物が、今、ここに

「…ここに、門条 天地という青年が、いるはずだが」
「……ふむ?」

 秀雄の言葉に、警戒を強めるドクター
 だが

「…彼について、問題はない。僕が保障する。彼は、あなた方にも、天地にも、害は与えない」

 ふらり、と
 秀雄の背後から現れた少女…否、青年
 長い薄い茶色の髪をしたその青年は、どうやらドクターとは顔見知りらしい
 ほんの少し、ドクターが警戒心を薄める

「…君が一緒とは。この男性は、門条 天地のどのような知り合いなのかね?」
「………昔の……友人、の、息子だ」

 友人、と口にした時、秀雄がやや、苦しげな表情をしたのだが……その真意はこの場にいる誰もが、理解できないだろう
 いや、紗江良は、女の勘で、それに気づいた
 …昔の、想い人の、息子
 朝比奈 秀雄が、門条 晴海を好いていたであろう事を、紗江良はしっかりと感じ取っていたから

 …やれやれ、と小さく苦笑するドクター
 こんな夜分に、こんなにも訪問客が訪れるとは
 それも、全て門条 天地目当てで
 まだ、目を覚ましてはいない
 だが、顔を見せるくらいなら…
 …ドクターは、そう判断した


 だが
 この場にいる、全員が
 ここで、天地に会う事は、叶わない
 なぜならば


「ッド、ドクター!」
「ミツキ?どうした?」
「…か、患者が!!」

 ミツキのただならぬ様子に、この場にいる全員が……嫌な予感を、覚えた
 ミツキが飛び出してきた病室
 その部屋の窓は……開け放たれていた
 外から入り込む風が、カーテンを揺らす


 その寝台の上で横たわっていたはずの、天地の姿は
 その部屋から、完全に消失していたのだった




to be … ?




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