「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - トイレの花子様-08c

最終更新:

hollow

- view
だれでも歓迎! 編集

トイレの花子様 08 その3


痛かった本当に痛かった。頭の中が真っ白にになるくらい痛かった。

男「花子様!花子様!!」

私はその声で眼を覚ます。薄く開けた目に映ったのは男だった。
ふいに抱きつきたい衝動に駆られるが、腕が上がらない。できるのは、泣き、痛みを訴えるだけだった。

男「ごめんなさい…ごめんなさい…ッ」

何か変な奴だが根は真面目な奴だ。どうせ何も出来なかったことを謝っているのだろう。
本当に馬鹿な犬だ。私はそこまで求めていない。傍に居てくれるだけで満足しているから。
でも、それを言葉にすることはできなかった。

花「抱っこしなさい…私は立てないから…。」

男にお姫様抱っこをさせる。

花「…くひんっ!ち、ちょっと、もっと静かに抱きなさいよ…痛いじゃない。」

痛む腕を男の首に回す。本当なら動かすと痛むので、したくは無いハズだが、それを我慢してでもそうしたかった。
あの激痛でどうかしてしまったのか、男に甘えてしまっている気がする。
下っ端は全滅していた。中には包丁の刺さっている死体もある。あのコが来たのか。
借りが一つできた、いつか返さなければ。だが、いまはそれよりも…

花「締めに取り掛かるわよ…」

男をマフィアのボスの方に向かわせる。終わらせよう。

達磨屋の契約をしたであろうマフィアのボスは、ここまで隙だらけで、歩を進めるもののボロボロの私達を攻撃してこなかった。
腕達も今は大人しくなっている。何を考えてるか分からない、それが不気味だった。
転がる達磨や下っ端なんかを踏まないように避けながら接近する。
結局、なにもされないまま近づくことができた。

マ「良いよーそういうの。ボロボロの美少女、愚直な少年、その2人が支えあう!感動的じゃないか!!
  こういうの本当に大好きだよ。心が踊るようだ。」
マ「でもね、僕はそれを、じっくりと!一方的に!圧倒的に!精神的に!肉体的に!猟奇的に!芸術的に!
  死の方がずっとラクだと思える苦痛を与えて壊すのがもっと大好きなんだ!!!!
  かつ死を赦さず、幸せ【だった】時間を引きずらせ、生き地獄から逃れられずに苦しむのを見るのはもう…
  考えただけでイってしまいそうだ!!!!」
マ「そう、だからチャンスにも攻撃せずに近寄らせたんだ。僕の望む光景を近くでしっかりと見たいからねぇ!
  気高く美しいキミが心身共に壊れるのが見れるなら、部下500人の命なんて安い、タダ同然だ!!
  花は散り際がもっとも美しい…奇しくも【花】を冠する名前のキミが美しく散る様を見せておくれ!!!」

元は美人であっただろう達磨を両脇に配したこの屑はそう言葉を吐いた。

疑問が三つある。
一つ、パシリが全滅してもこの余裕は何だ?動けないとはいえ、私はアレだけ多くのパシリを片付けた。
   遠隔操作系の技も見せた。いくら私が動けなくとも、警戒して然るべきだろう。
二つ、コイツの契約したのはどちらのタイプの都市伝説なのか。
   私や口裂け女、人面犬等のような【存在】と契約したのか?
   逢魔ヶ刻のような【現象】と契約したのか?
三つ、メイドはどうした?さっきから援護がない気がするが…

1つめだけはすぐに分かった。
私が、私たちが攻撃を避けていた、本来被害者の達磨達、切り離された手足、それが宙を舞い襲い掛かってくる。
マフィア本人はいまだに動こうとしない。しかし、達磨達に阻まれ攻撃はできない。
ただの変態趣味で近寄らせたワケではなかったことに気づく。
マフィアの位置は倉庫の最も奥、入り口側のメイドからの援護と私たちの逃亡が最もしにくい位置。
動きがそこまで速くないのが救いだが数が多すぎる。

花「単刀直入に言う。私たちは終わりか?」
男「NO。根拠は無いけど生き残ります。」

根拠なしか。それじゃあ生き残れないんじゃないの?

ふと違和感に気づく。さっきまでは痛みでハッキリしなかった意識が、妙に冴えている。
そして、身体が熱い。胸がドキドキする。苦しい。
過剰な痛みでこうなるのは聞いたことがあるし、男に抱かれているせいではないだろう。
気持ちが異常に高ぶるのを感じる。
痛みがあるのは分かるが、気にならない。異常な高ぶりに痛みは意識の奥に押しやられる。
さっきまで動かなかった手足に力が入る。立てる。
経験の無い状態に驚きを感じる。同時に、自分を第三者視点で見ていることに気づく。

花「フフッ♪イケルワ…」

再び両手に長く白い鞭を手に取る。
襲い掛かられるとはいえ、被害者である達磨達に何の躊躇なく鞭を振るい、砕け散らす。
足元にまとわり付いてくるものは蹴散らし、踏み潰す。
絶え間ない血しぶき、肉をつぶし、骨を砕く感触。良いものではない。
そう思うのだが、それが気分をより高揚させる。
ごめんなさい。でも私たちは死にたくないし、せめて終わらせてあげる。そう思っているハズなのに…
花「アハハハハハハハハハハ!あはっあはは!あはははははははははははははははは!!!!!」
狂気の高笑い。自分が自分じゃないみたいだ。止めたくても止まらない。やめて欲しくてもやめてくれない。
こんなの、私じゃない。こんな、こんなバケモノ…私じゃない…わたしじゃ…。
やっと身体が私の願いを聞いて攻撃を止めた、しかしもう遅かった。

襲い掛かってきた達磨達や手足は残らず肉塊にされ、すでに倒れていたパシリ達の身体まで、残らず赤くドロリとしたモノにされていた。
ほとんど全身を返り血に濡らし、その血の海の真ん中に立つ私の身体。
私のコントロールを受け付けるようになったハズの身体。そのハズなのに…

 ・ ・ ・ ・ ・

花「あはっ♪あははは♪」

涙を流しながら無邪気に笑う。そして、その血の海の真ん中をマフィアに向かって歩く。

ファッションモデルか何かのように血の海を歩いて行き、再びマフィアと対峙する。

花「今度こそ終わりかしら?」
マ「いやぁ、まいったねぇ。僕の完敗だよ。もう僕とこのコだけだよ。」

そういってお気に入りらしい達磨をなでる。まだ焦る気配がない。

マ「これだけの事をやってのけるなんて、やっぱりバケモノだね。」

明らかに分かって言っている。花子様の禁句だと分かって。
最近の花子様はバケモノ呼ばわりされるのを極端に嫌う。時には気を失うほどに。
思わず花子様を見る。しかし、予想に反した表情だった。
笑っている。これ以上ないほどに妖美で艶やかに、背筋が凍るような笑顔。

 ・ ・ ・ ・ ・

花「私がバケモノ呼ばわりされるの嫌いだってよく分かったわね。まぁ、カマかけたのかもしれないけど。
  …そうね、たしかにバケモノね。でも、とりあえず今はそんなに嫌じゃないわ。」
マ「それは心までバケモノになちゃったってことかな?」
花「そうかもしれないわね。でも大丈夫なのよ、【気づいた】から。」
マ「ほほー、一体何に気づいたのかな?」
花「教えてあげない。人間のクセに人外の行いをして平気でいられるお前が知ってもいみないでしょ?」
マ「それは残念だ。」

自分でも驚いた。バケモノと呼ばれて平気でいられることに。
ついさっきまで自分のやっていることに嫌悪していたのに。
ナゼかは分からない。でも、全てが繋がるのを感じる。
バケモノの行いに高ぶる私、その行いに苦しむ私、自分が人外だと認める私、人外だと認めたくない私。
バラバラだった私がある種の収束を見せた。

 ・ ・ ・ ・ ・

花「もう終わらせて良いかしら?言うまでもないけど、私には勝てないわよ?」
マ「そうだね、いくら僕がマフィアのボスでもキミには勝てないね。」
マ「でも、キミの【大事な】相方はどうかな?」
花「ッ!?」
素早く俺に向けられた銃口。響く銃声。
男「ッ痛!」
咄嗟に花子様が蹴り飛ばしてくれたが、右肩を打ち抜かれる。
マフィアはしてやったりとニヤついている。
マ「タダでは※されないよ。どうだい?つらいだろう?大事なパートナーが傷つく様に苦しめ!!」

花「…け。」

マ「ん?なんだい?相方をやられてそんなにショックかい?」

花「跪け!!!!!!!!!」

赤く染まった鞭で、マフィアの膝を破壊する。ガクリと崩れ、言われた通りの格好になるマフィア。

花「私の大事な下僕を傷つけた事を謝れ!!!!!」
マ「謝っても赦さないんだろう?」
花「私は勿論赦さないわ。でも、…男に謝れ!!!」
マ「ずいぶんと下僕に優しい女王様だね。」

花「いいから謝れつってんだろ!!!!!!!!!!!!」

眼を見開き、怒鳴りつける花子様。
生物・非生物、物質・非物質、有形・無形を問わず震え上がらせかねない。
俺のためにここまで?そして失血で、俺の意識もここまで…。

 ・ ・ ・ ・ ・

なぜここまで腹が立ったのか分からなかった。
なぜ声を荒げたか分からなかった。でもそうせずにいられなかった。
そしてその怒りを集中させる。
さっきのが広範囲を強力に照らすライトなら、ここからはレンズで集められ一点を焼く光のように。

いつもの表情の中に、激情を高密度に圧縮して振舞う。

マ「どうやら気を失ったみたいだよ。これでは謝れないね。」
花「謝るまでは※してあげないわ。でもアナタ、絶対に謝りそうに無いから、痛みをもって償わさせるしかないわ。」
右肘辺りを踏み砕く。
花「次は左よ。アンタの好きな達磨さんみたいになっちゃえば良いわ。」
マ「あいにく、コイツとの契約で、四肢の痛みを感じないんでね。いくら手足を痛められても平気なんだ。」
めきょ!と左腕も踏み砕く。
花「そう?じゃあこうすれば良いかしら?」
マフィアの鼻っ面を蹴り上げる。そして転がる。
花「だーるまさんが、こーろんだ♪痛くても動いちゃだめよ、鬼に食われちゃうわよ?」

花「そう…契約が無くなって…麻酔が切れたように痛みが襲ってもね。」

私はそう言って、マフィアのお気に入りらしい達磨に向かう。

花「貴女が、この屑と契約しているんでしょう?」

ダ「いつから気づいていたんです?」
花「さっきこの屑【コイツとの契約】って言ったじゃない?気付かない方がおかしいわ。」
ダ「あーあ、バレちゃったか。残念。」
花「貴女の悲運には同情せざるを得ないわ。他人を巻き込みたくなるのも当然だわ。」
この子の経験を考えた時、さっきまでのように振舞えなくなった。

ダ「もう、前置きは良いから、はやく※して。
  この状況から逆転は無理。これ以上仲間を増やせないならこの身体でいることをさっさと辞めたいんだ。」

ダ「私はね、コイツが憎かった。私をこうしたコイツが。舌でも噛み切って死のうかと思った。
  でも、私は他の達磨被害者とは違った。なぜか分かった。都市伝説として特殊な力を持ったことが。
  だから、こんな稼業をするコイツに組して、他人をどんどん同じ目に合わせて社会に復讐しようって思ってたんだ。
  それが出来なくなったなら、最期に最大の復讐。
  コイツに同じ痛みを与えてやりたい。
  だから…ね。お願い。」

花「何か…言いたいことは?」

ダ「今言うことは何も無いわ。早く生まれ変わって、そっちで喋りたいから。」
花「そう…。今度は普通だと良いわね。」

できるだけ痛くないように、私はそのコの頭を瞬間的に砕け散らせた。
屑は激痛にもがき始めた。

花「だーるまさんがころんだ…動いちゃダメって言ったでしょ?」

マ「鬼さんに…食べられちゃうかな?」

花「鬼さんは気まぐれだから、アナタを苦しめる事にしたのよ。
  最期の時までそうしていなさい。」

屑に踵を返し、男をおんぶして倉庫の入り口に向かう。
後ろからは苦痛にもがき、だが狂気の笑い声を上げているのが聞こえる。
花「男、死んだらブッ※すわよ…」
外にいたメイドに男の治療や家庭への言い訳なんかを頼み、学校に帰る。

…少し、1人になりたい。いろいろと考えたいことがある。



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー