「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - マッドガッサーと愉快な仲間たち・決戦以降-20n

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 …空気が、わずかに張り詰めている
 それをはっきりと感じ取り、祐樹はやや困惑していた

「………よりによって、どうしてお前なんだ」
「うるさい。俺だって、どうせ弟ならお前よりかはマシな奴が良かった」

 …バチバチと、軽く火花が散っているような
 そんな、錯覚
 祐樹の前には、二人の青年がいる

 広瀬 辰也と、門条 天地
 祐樹と同じ、門条 晴海の、遺児……祐樹にとっては、兄にあたる二人
 祐樹としては、自分には既にいないと思っていた血の繋がった家族が生きてくれていた
 それだけで満足であり、こうやって互いに兄弟であると認識しあえるなど、とても嬉しい事なのだが
 ……この二人、以前からの顔見知りであり、しかも、あまり仲は良くないようで
 兄弟だ、と認識しあっても、あまり嬉しくないのだろうか、この反応
 特に、天地の辰也への敵対意識が、強いように見えた
 辰也から天地へは、そうでもないように見えるのだが…

「……君達、祐樹が困惑しているゆえ、その睨みあいをやめたまえ」

 そんな状況で、苦笑しての声
 直希だ
 天地に付き添って着いてきているこの青年は、祐樹にとっても顔見知りだった
 ククージィが営んでいる雑貨屋の、常連なのだ
 ……声をどこか別の場所で聞いた事があるような気がするのだが、祐樹はそれを思い出せない
 実際のところ、直希が、祐樹に都市伝説退治関連の仕事を依頼してきている「仲介者」なのだが、祐樹はそれに気づいていないのだ

 直希の言葉に、ひとまず、天地と辰也の間の緊迫感が、若干薄まった
 …三人にとっての共通の知り合いである直希がこの場に来た事は、決して間違いではなかったらしい

「でも、直希。よりによって、こいつと血が繋がっているなんて」
「僕から見れば、君達はそれなりに似ているように見えるがね……もちろん、祐樹も含めて」

 ちらり、直希に視線を向けられる
 どうしたらよいのかわからず、ひとまず祐樹は、辰也と天地に視線をやった
 今は髪型のせいもあってか、特別似ているとは言えないかもしれないが……二人は、確かに似ていると思う
 兄弟だ、と言われれば、納得するほどに

「天地、君とて、家族が見つかったこと事態は、喜ばしいのだろう?」
「…………まぁ、その」

 直希の言葉に、視線を彷徨わせる天地
 そんな天地の様子に、直希はふむ、と頷いて

「なるほど。兄弟が見つかったのは喜ばしいが、素直に表せない。これがツンデレか」
「「「それは違う」」」

 直希の、どこか……いや、思いっきりはずれたその意見に
 三人の突っ込みが、ほぼ同時に炸裂して
 むぅ?……と、直希は首をかしげたのだった



「……すまない、遅れた」

 がちゃり
 直希の冗談(いや、本人は至極真面目に言っていたのだが)で場が和んだところで……場に、朝比奈 秀雄が到着した
 そもそも、祐樹達が集まったのは、朝比奈に呼ばれたからだ
 ………彼らの母親、門条 晴海の
 最期の言葉を、聞くために

「いや、問題ねぇよ……っつか、大丈夫なのか?あの戦いの後、倒れたって翼から聞いたが」
「………問題ない…………………あれは、私への、罰だからな」

 辰也の言葉に、やや、遠い目をして答えた朝比奈
 ………別に、ハンニバルとの戦闘でのダメージが原因で、倒れた訳ではない
 妻の手料理が原因で倒れただけなのである
 いかに、「黄金伝説」のドラゴンの一匹と契約しているとは言え、内蔵系統は特別強化されている訳ではないのだ

 ……朝比奈は、ゆっくりと、辰也、天地、祐樹の三人を見回した
 三人とも、晴海に似ているか、と言われれば、そう言う訳ではない
 しかし…………どこか、面影を感じさせられた

「…あんたが、俺達の…………母親の、最期を看取ったのか」
「………あぁ」

 天地の言葉に、短く答える朝比奈


 ……死にいく姿を、ただ、見ている事しかできなかった
 その最期の言葉を聞き届けることしか、できなかった

 せめて
 その言葉を、彼女の子供達に伝えてやる事が
 彼女の為に自分が出来る、最期の供養
 彼女の仇を討った後の、最後の役目


「…晴海は。お前達の傍に居続けられなかった事を、悔やんでいた」

 辰也を、「組織」の研究所に置き去りにせざるを得なかった事を
 天地を、産み落として間もなかった祐樹を、施設に置き去りにせざるを得なかった事を、悔やんでいた
 自分の子供を護ることすらできなかった己の無力さを嘆きながら、彼女は死んだ
 ……その死に顔を、朝比奈は決して、忘れる事はできない

 朝比奈の言葉に、祐樹はやや、バツの悪い顔をする
 …自分は捨てられたのだと、ずっとそう考えてきて
 自分を捨てた親を、憎んだ時期もあったのだ
 ……その考えが、見当違いであった事を……改めて、思い知らされる
 居たたまれなさから、視線を彷徨わせていると…辰也が、複雑そうな表情をしている事に、気づいた
 かすかに感じられる悲しみの感情に、祐樹は戸惑う

「……同時に。せめて、お前達には……幸せになってほしい、と願っていた」

 その戸惑いは続いた朝比奈の言葉で、打ち切られる

 せめて
 せめて、子供達には、幸せになってほしい
 …それが、死の間際の晴海の祈りだった

 本当ならば、都市伝説にも、「組織」にも、関わって欲しくなかったに違いない
 しかし、三人は既に、どうしようもないほどに都市伝説に関わってしまっている
 もう、そこから抜け出すことは、できない
 だから、せめて
 せめて……三人には、これからの未来、幸せになって欲しいと
 ……朝比奈も、そう願う
 都市伝説と関わった以上、三人には困難が待ち受けているだろう
 …それでも
 幸せを、つかめぬ訳ではないのだ

「……何か、困難なことに直面したならば………私も、力になろう。それが………お前達の母親を救えなかった私の、せめてもの、罪滅ぼしだ」

 淡々と、そう告げてきた朝比奈
 ……うつむいていた天地が、顔をあげる

「……なぁ」
「………?」
「…母さん、は………俺達、兄弟が、お互いを兄弟だ、と認識した事を……喜ぶ、だろうか?」

 ぽつり、ぽつりと口にした、天地の言葉に
 朝比奈は……………ほんのわずか、笑みを浮かべて

「………喜ぶ、だろう……できれば、お前達の仲がよければ特に、な」

 朝比奈の返答に、天地はほっとしたような顔をして
 …しかし、辰也を見て、複雑そうな、若干嫌そうな表情を浮かべる

「……そんなに、俺が嫌いか」
「うっせぇ…そう簡単に、割り切れないんだよ」
「…ガキの頃は兄ちゃん兄ちゃん言ってきた癖に」
「それは、俺が本当に何も知らなかったガキの頃の話だろっ!?10年以上も前の事だろうが!?」

 辰也の言葉に、力一杯反論する天地
 天地としては恥ずかしい記憶なのか、あまり触れられたくないらしい

「今まで、他人同士だと思ってきていたのだ。突然、無理に兄弟らしく振舞う必要もあるまい。ゆっくり、時間をかけて、兄弟らしくなっていけばいいだろう」

 これまで、口を閉じていた直希が、そう天地に声をかける
 う~…と、複雑そうな天地では、あるが
 …ちらり、祐樹に視線を向けてくる

「…祐樹 ペリシャ……で、いいんだよな?」
「あぁ……家名は、ククージィと生きると決めた時に、捨ててしまったから」
「そうか………その、よろしく、な」

 ややぎこちなく、手を差し出す天地
 祐樹は…恐る恐る、その手をとって

「………あぁ……よろしく、天地兄さん」

 と、小さく、そう答えた
 兄さん、と呼ばれた事が嬉しかったのか、天地がわずかに笑みを浮かべる
 続けて、祐樹は、辰也のほうを向いて

「……辰也、兄さんも……よろしく」

 と、手を差し出した
 辰也は、じっとその手を見つめてから……静かに、手をとった

「………あぁ、よろしく」

 と、そう口にした、辰也も
 こわばっていた顔に、わずかに笑みを浮かべていた


「………辰也」
「……?」

 ふと
 朝比奈が、辰也に声をかけた
 ぼそり、続ける

「…晴海は……特に、お前の事を気にかけて……そして、悔いていた」

 朝比奈の、その言葉に
 辰也はぴくり、小さく体を震わせた

「………お前を、「組織」の研究所に置き去りにせざるを得なかった事を………名前をつける事すら叶わなかったことを、悔やんでいた……お前は決して、晴海に見捨てられた訳では、ない」
「…そうか」

 …あの決闘場での、ハンニバルにかけられた言葉
 それによって辰也の中に生まれてしまっていた、「母親に見捨てられたのでは」と言う恐怖
 ……それが、薄らいでいく

「…それがわかって、良かった」

 ようやく、本当に心からの笑みを浮かべた辰也
 その様子に、朝比奈もほっとしたような表情を浮かべた



 ……哀れな実験の犠牲者の、三人の遺児達
 完全に、三人全員がわかりあえる日は、まだ先かもしれないが

 …しかし、それは
 決して、遠い未来では、ない





to be … ?





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