一度は、諦めてしまった
何百年も、時間をかけておきながら
掴み取る事ができず、いじけて諦めてしまった
何百年も、時間をかけておきながら
掴み取る事ができず、いじけて諦めてしまった
……けれど、もし
もし、もう一度
それを、掴み取るチャンスが訪れたならば
それを掴み取る権利が、果たして、自分にあるのだろうか?
もし、もう一度
それを、掴み取るチャンスが訪れたならば
それを掴み取る権利が、果たして、自分にあるのだろうか?
「……これが、都市伝説を人間化する研究に使えそうな資料じゃ」
データチップをドクターに手渡すヘンリエッタ
ドクターは、確かにそれを受け取り、小さく微笑む
ドクターは、確かにそれを受け取り、小さく微笑む
「確かに受け取った…しかし、いいのかい?こちらにデータを提供しても」
「…構わぬ。そもそも、その約束で、逢瀬 佳奈美を匿ってもらったのじゃからな」
「…構わぬ。そもそも、その約束で、逢瀬 佳奈美を匿ってもらったのじゃからな」
ハンニバルとの騒動の間、宏也は「第三帝国」に、佳奈美を匿ってもらっていた
その、条件は…ヘンリエッタの、都市伝説を人間化する為の、人間に戻すための研究のデータの引渡し
当然、ハンニバルの研究所から、持ち出したデータもある
それを条件に、宏也は佳奈美の保護を約束させたのだ
もちろん、ヘンリエッタの許可はとっている
ジェラルドは渋ったが、ヘンリエッタが認めたならば、ジェラルドはそれを認めざるを得ない
その、条件は…ヘンリエッタの、都市伝説を人間化する為の、人間に戻すための研究のデータの引渡し
当然、ハンニバルの研究所から、持ち出したデータもある
それを条件に、宏也は佳奈美の保護を約束させたのだ
もちろん、ヘンリエッタの許可はとっている
ジェラルドは渋ったが、ヘンリエッタが認めたならば、ジェラルドはそれを認めざるを得ない
データを受け取ったドクターに、ヘンリエッタはっふ、と笑ってみせる
「……お前は、妾が数百年をかけ、諦めてしまった事を、人の身で成し遂げたのじゃ……お前のような研究者であれば、安心して、データを提供できる」
「まだ、問題点も多いがね」
「だからこそ、さらに研究を進めるのであろう?ならば、妾はそれに協力しよう」
「まだ、問題点も多いがね」
「だからこそ、さらに研究を進めるのであろう?ならば、妾はそれに協力しよう」
そして、と
少し伏目勝ちになって、続ける
少し伏目勝ちになって、続ける
「もし……許されるならば、妾にも、その研究を、手伝わせてほしい。共に、研究を進めさせてほしい………一度は諦めておきながら、身勝手と思うじゃろうが…」
「……本当は、諦め切れなかったのだろう?諦めて、しかしそれでも、君は人に戻る方法を求め続けたのだろう?」
「……本当は、諦め切れなかったのだろう?諦めて、しかしそれでも、君は人に戻る方法を求め続けたのだろう?」
ドクターの、言葉に
ヘンリエッタは、こくりと頷いた
ヘンリエッタは、こくりと頷いた
「…そうじゃ。未練がましい、といわれればそこまでじゃが。妾は、人間に戻りたい。ジェラルドを、宏也を…人間に、戻したいのじゃ」
ヘンリエッタの、その言葉に
ヘンリエッタの背後に付き従っていたジェラルドが…ほんのわずか、表情を緩めたのを、ドクターは確かに見た
ジェラルドの、ヘンリエッタへの忠誠心を…そして、ヘンリエッタの、ジェラルドへの想いを、その一瞬で、感じ取る
ヘンリエッタの背後に付き従っていたジェラルドが…ほんのわずか、表情を緩めたのを、ドクターは確かに見た
ジェラルドの、ヘンリエッタへの忠誠心を…そして、ヘンリエッタの、ジェラルドへの想いを、その一瞬で、感じ取る
「構わない。君には、僕にはない経験の積み重ねが、知識の蓄積がある……共に、研究を進めていこう」
そっと、手を差し出すドクター
ヘンリエッタは、一瞬戸惑いながらも…その手を、とった
ヘンリエッタは、一瞬戸惑いながらも…その手を、とった
嘆き続けた少女は、ようやく嘆きの森を抜け出した
一度掴み損ねたものを、再び掴もうと、彼女はまた、足掻きだす
一度掴み損ねたものを、再び掴もうと、彼女はまた、足掻きだす
けれど
今度は、一人ではない
あがく彼女のその指先に
つかむべきものは、すでに触れ始めている
今度は、一人ではない
あがく彼女のその指先に
つかむべきものは、すでに触れ始めている
嘆きの森は、もう、二度と
彼女を飲み込むことは、できないのだ
彼女を飲み込むことは、できないのだ
fin