「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者-59t

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 一度は、諦めてしまった
 何百年も、時間をかけておきながら
 掴み取る事ができず、いじけて諦めてしまった

 ……けれど、もし
 もし、もう一度
 それを、掴み取るチャンスが訪れたならば
 それを掴み取る権利が、果たして、自分にあるのだろうか?



「……これが、都市伝説を人間化する研究に使えそうな資料じゃ」

 データチップをドクターに手渡すヘンリエッタ
 ドクターは、確かにそれを受け取り、小さく微笑む

「確かに受け取った…しかし、いいのかい?こちらにデータを提供しても」
「…構わぬ。そもそも、その約束で、逢瀬 佳奈美を匿ってもらったのじゃからな」

 ハンニバルとの騒動の間、宏也は「第三帝国」に、佳奈美を匿ってもらっていた
 その、条件は…ヘンリエッタの、都市伝説を人間化する為の、人間に戻すための研究のデータの引渡し
 当然、ハンニバルの研究所から、持ち出したデータもある
 それを条件に、宏也は佳奈美の保護を約束させたのだ
 もちろん、ヘンリエッタの許可はとっている
 ジェラルドは渋ったが、ヘンリエッタが認めたならば、ジェラルドはそれを認めざるを得ない

 データを受け取ったドクターに、ヘンリエッタはっふ、と笑ってみせる

「……お前は、妾が数百年をかけ、諦めてしまった事を、人の身で成し遂げたのじゃ……お前のような研究者であれば、安心して、データを提供できる」
「まだ、問題点も多いがね」
「だからこそ、さらに研究を進めるのであろう?ならば、妾はそれに協力しよう」

 そして、と
 少し伏目勝ちになって、続ける

「もし……許されるならば、妾にも、その研究を、手伝わせてほしい。共に、研究を進めさせてほしい………一度は諦めておきながら、身勝手と思うじゃろうが…」
「……本当は、諦め切れなかったのだろう?諦めて、しかしそれでも、君は人に戻る方法を求め続けたのだろう?」

 ドクターの、言葉に
 ヘンリエッタは、こくりと頷いた

「…そうじゃ。未練がましい、といわれればそこまでじゃが。妾は、人間に戻りたい。ジェラルドを、宏也を…人間に、戻したいのじゃ」

 ヘンリエッタの、その言葉に
 ヘンリエッタの背後に付き従っていたジェラルドが…ほんのわずか、表情を緩めたのを、ドクターは確かに見た
 ジェラルドの、ヘンリエッタへの忠誠心を…そして、ヘンリエッタの、ジェラルドへの想いを、その一瞬で、感じ取る

「構わない。君には、僕にはない経験の積み重ねが、知識の蓄積がある……共に、研究を進めていこう」

 そっと、手を差し出すドクター
 ヘンリエッタは、一瞬戸惑いながらも…その手を、とった





 嘆き続けた少女は、ようやく嘆きの森を抜け出した
 一度掴み損ねたものを、再び掴もうと、彼女はまた、足掻きだす

 けれど
 今度は、一人ではない
 あがく彼女のその指先に
 つかむべきものは、すでに触れ始めている


 嘆きの森は、もう、二度と
 彼女を飲み込むことは、できないのだ





fin




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