……子供は、泣く事はなかった
泣いても、どうにもならないというように
何が起きてもただ耐え続け、誰にも訴えもしなかった
そうする事で、誰かに迷惑がかかる
それを、理解しているかのように
泣いても、どうにもならないというように
何が起きてもただ耐え続け、誰にも訴えもしなかった
そうする事で、誰かに迷惑がかかる
それを、理解しているかのように
「………」
夜
学校での出来事を思い出し、眠れずにいた子供
ぺたぺたと、自分の部屋を出て、縁側に向かう
そこで、眠たくなるまで、月でも眺めていようかと考えたのだ
……酷く子供らしくない、若干、年寄りじみた考え方だが、この子供にとっては、それが酷く落ち着くのだ
学校での出来事を思い出し、眠れずにいた子供
ぺたぺたと、自分の部屋を出て、縁側に向かう
そこで、眠たくなるまで、月でも眺めていようかと考えたのだ
……酷く子供らしくない、若干、年寄りじみた考え方だが、この子供にとっては、それが酷く落ち着くのだ
ぺたぺたと
家族を起こさないよう、縁側に向かうと
家族を起こさないよう、縁側に向かうと
「……ぁ」
「お?…どうした、眠れねぇのか?」
「お?…どうした、眠れねぇのか?」
そこには、先客がいた
家族ではない
父親の部下でもない
家族ではない
父親の部下でもない
……だが、子供は、その人物を知っていた
以前にも、こうやって…縁側で、顔をあわせた事が、ある
以前にも、こうやって…縁側で、顔をあわせた事が、ある
「…また、来ていたのか?」
「あぁ。ここの酒はなかなか美味いからな」
「あぁ。ここの酒はなかなか美味いからな」
盃に酒を注ぎ、くっくと笑う、その男
時折、こうやって子供の家に上がりこみ、酒を飲んでいる
多分、父親の知り合いなのだろう、と子供は考えていた
名前も知らない相手だが……この男の傍にいると、何だか落ち着くのだ
時折、こうやって子供の家に上がりこみ、酒を飲んでいる
多分、父親の知り合いなのだろう、と子供は考えていた
名前も知らない相手だが……この男の傍にいると、何だか落ち着くのだ
ぺたぺたと、子供は男の傍まで近づいて………ぺとし、隣に座る
「どうした?おっかねぇ夢でも見たか?」
「………別に」
「………別に」
短く答える子供
愛想のカケラもなく、子供らしさも薄いその返事にも、男は笑うだけだ
愛想のカケラもなく、子供らしさも薄いその返事にも、男は笑うだけだ
「相変わらずだな。子供は子供らしく、もっと笑ったり泣いたりしてもいいんだぞ?」
「……泣いても…………誰かに、迷惑をかけるだけだ。迷惑がかからなくとも……………それで、誰かが助けてくれる、訳でもない」
「……泣いても…………誰かに、迷惑をかけるだけだ。迷惑がかからなくとも……………それで、誰かが助けてくれる、訳でもない」
淡々と、そう答える子供
その表情は、暗い
ただ、庭の池に映る月を、静かに、静かに見つめている
その表情は、暗い
ただ、庭の池に映る月を、静かに、静かに見つめている
「そうか?お前さん、人前で泣いた事は?」
「………ある」
「赤ん坊の頃に、ってか?」
「…………」
「図星かよ」
「………ある」
「赤ん坊の頃に、ってか?」
「…………」
「図星かよ」
物心ついた頃には、人前で泣かないようになっていた
泣いたら、周りに迷惑がかかる
周囲が、必要以上に過剰に心配してきてしまう
心配させたくない
迷惑をかけたくない
泣いたら、周りに迷惑がかかる
周囲が、必要以上に過剰に心配してきてしまう
心配させたくない
迷惑をかけたくない
だから、抱え込んでしまう
己の学校での現状を、誰にも相談できぬまま
抱え込み、ただ、耐え続け
そして、心を磨耗させ、子供らしさを失っていく
己の学校での現状を、誰にも相談できぬまま
抱え込み、ただ、耐え続け
そして、心を磨耗させ、子供らしさを失っていく
男は、その子供をどこか困ったように見つめた
かつての友であり、己の「契約者」であった男を思い出させる子供
……そんな子供に、手を差し伸べてやりたいと考えながらも……彼は、必要以上に、この子供に干渉できなかった
「契約」もしていないのに……必要以上に、「人間」に関わるべきではない
人間ではないこの男は、そう考えていたから
かつての友であり、己の「契約者」であった男を思い出させる子供
……そんな子供に、手を差し伸べてやりたいと考えながらも……彼は、必要以上に、この子供に干渉できなかった
「契約」もしていないのに……必要以上に、「人間」に関わるべきではない
人間ではないこの男は、そう考えていたから
しかし
それでも、男はほんの少し、子供に手を差し伸べてやりたいと、そう考えた
せめて
もう少し、この子供に……子供らしい顔をして欲しいと、そう考えた
それでも、男はほんの少し、子供に手を差し伸べてやりたいと、そう考えた
せめて
もう少し、この子供に……子供らしい顔をして欲しいと、そう考えた
だから
今宵も、男は子供に干渉してしまう
今宵も、男は子供に干渉してしまう
「……仕方ねぇな…………ほら、そんな暗い顔すんな。酒が不味くなる………そうだな、また、この家のご先祖様の話、してやろうか?」
「!」
「!」
っぱ、と
子供の顔に、明るさが見えた
子供の顔に、明るさが見えた
子供が、男を父親の友人だと判断したのは、この影響もあった
男は、この家の先祖に……明治の時代、この家を栄えさせた存在の事を、よく知っていて、子供に話してくれたのだ
子供は、その話を聞くのが好きだった
だから
男は、この家の先祖に……明治の時代、この家を栄えさせた存在の事を、よく知っていて、子供に話してくれたのだ
子供は、その話を聞くのが好きだった
だから
「……8代目様の話、してくれるのか?」
「あぁ。さぁて、今日はどの話をしようか……」
「あぁ。さぁて、今日はどの話をしようか……」
男は、子供に語る
子供の先祖の話を
かつて、自分と契約していた男の話を
子供の先祖の話を
かつて、自分と契約していた男の話を
男の名は、ぬらりひょん
妖怪と呼ばれる存在
ぬらりくらりと、現代の世でも生き続け、こうやって、時折かつての契約者の家に上がりこんでは勝手に酒を飲み
妖怪と呼ばれる存在
ぬらりくらりと、現代の世でも生き続け、こうやって、時折かつての契約者の家に上がりこんでは勝手に酒を飲み
…そして
知り合ってしまった、自分に気付いてしまった、かつての契約者の子孫である子供と、語らいあっていた
知り合ってしまった、自分に気付いてしまった、かつての契約者の子孫である子供と、語らいあっていた
ぬらりひょんは、気付かない
自分が、この子供に干渉した事が
自分が、この子供に、かつての契約者の話を……この家の、先祖の話を語って聞かせた、その事が
自分が、この子供に干渉した事が
自分が、この子供に、かつての契約者の話を……この家の、先祖の話を語って聞かせた、その事が
そう遠くない未来、子供の決断に影響を与えてしまう事実を
気づく事が、できなかったのだ
気づく事が、できなかったのだ
終