アットウィキロゴ

「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 花子さんと契約した男の話-53

最終更新:

guest01

- view
だれでも歓迎! 編集
 ……子供は、泣く事はなかった
 泣いても、どうにもならないというように
 何が起きてもただ耐え続け、誰にも訴えもしなかった
 そうする事で、誰かに迷惑がかかる
 それを、理解しているかのように

「………」

 夜
 学校での出来事を思い出し、眠れずにいた子供
 ぺたぺたと、自分の部屋を出て、縁側に向かう
 そこで、眠たくなるまで、月でも眺めていようかと考えたのだ
 ……酷く子供らしくない、若干、年寄りじみた考え方だが、この子供にとっては、それが酷く落ち着くのだ

 ぺたぺたと
 家族を起こさないよう、縁側に向かうと

「……ぁ」
「お?…どうした、眠れねぇのか?」

 そこには、先客がいた
 家族ではない
 父親の部下でもない

 ……だが、子供は、その人物を知っていた
 以前にも、こうやって…縁側で、顔をあわせた事が、ある

「…また、来ていたのか?」
「あぁ。ここの酒はなかなか美味いからな」

 盃に酒を注ぎ、くっくと笑う、その男
 時折、こうやって子供の家に上がりこみ、酒を飲んでいる
 多分、父親の知り合いなのだろう、と子供は考えていた
 名前も知らない相手だが……この男の傍にいると、何だか落ち着くのだ

 ぺたぺたと、子供は男の傍まで近づいて………ぺとし、隣に座る

「どうした?おっかねぇ夢でも見たか?」
「………別に」

 短く答える子供
 愛想のカケラもなく、子供らしさも薄いその返事にも、男は笑うだけだ

「相変わらずだな。子供は子供らしく、もっと笑ったり泣いたりしてもいいんだぞ?」
「……泣いても…………誰かに、迷惑をかけるだけだ。迷惑がかからなくとも……………それで、誰かが助けてくれる、訳でもない」

 淡々と、そう答える子供
 その表情は、暗い
 ただ、庭の池に映る月を、静かに、静かに見つめている

「そうか?お前さん、人前で泣いた事は?」
「………ある」
「赤ん坊の頃に、ってか?」
「…………」
「図星かよ」

 物心ついた頃には、人前で泣かないようになっていた
 泣いたら、周りに迷惑がかかる
 周囲が、必要以上に過剰に心配してきてしまう
 心配させたくない
 迷惑をかけたくない

 だから、抱え込んでしまう
 己の学校での現状を、誰にも相談できぬまま
 抱え込み、ただ、耐え続け
 そして、心を磨耗させ、子供らしさを失っていく

 男は、その子供をどこか困ったように見つめた
 かつての友であり、己の「契約者」であった男を思い出させる子供
 ……そんな子供に、手を差し伸べてやりたいと考えながらも……彼は、必要以上に、この子供に干渉できなかった
 「契約」もしていないのに……必要以上に、「人間」に関わるべきではない
 人間ではないこの男は、そう考えていたから

 しかし
 それでも、男はほんの少し、子供に手を差し伸べてやりたいと、そう考えた
 せめて
 もう少し、この子供に……子供らしい顔をして欲しいと、そう考えた

 だから
 今宵も、男は子供に干渉してしまう

「……仕方ねぇな…………ほら、そんな暗い顔すんな。酒が不味くなる………そうだな、また、この家のご先祖様の話、してやろうか?」
「!」

 っぱ、と
 子供の顔に、明るさが見えた

 子供が、男を父親の友人だと判断したのは、この影響もあった
 男は、この家の先祖に……明治の時代、この家を栄えさせた存在の事を、よく知っていて、子供に話してくれたのだ
 子供は、その話を聞くのが好きだった
 だから

「……8代目様の話、してくれるのか?」
「あぁ。さぁて、今日はどの話をしようか……」

 男は、子供に語る
 子供の先祖の話を
 かつて、自分と契約していた男の話を


 男の名は、ぬらりひょん
 妖怪と呼ばれる存在
 ぬらりくらりと、現代の世でも生き続け、こうやって、時折かつての契約者の家に上がりこんでは勝手に酒を飲み

 …そして
 知り合ってしまった、自分に気付いてしまった、かつての契約者の子孫である子供と、語らいあっていた


 ぬらりひょんは、気付かない
 自分が、この子供に干渉した事が
 自分が、この子供に、かつての契約者の話を……この家の、先祖の話を語って聞かせた、その事が



 そう遠くない未来、子供の決断に影響を与えてしまう事実を
 気づく事が、できなかったのだ









タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー