三面鏡の少女 75
むせ返るような、甘ったるいアルコール臭
ワインでずぶ濡れになったニーナは、ふらふらと戦闘の現場を離れていた
もっとも、ずぶ濡れの服から滴り落ちたり、ぎっちぎっちと水分を踏む嫌な感触のする靴から溢れたりするワインが、道標のように地面を塗らしているのだが
ともあれ激しい運動の直後、気化したアルコールが全身から立ち込める状況の中、着実に酔いが回ってきている
体温は上昇し、視界はぐるぐる回り、経験した事の無い酩酊感が全身を駆け巡る
「……あふぅ」
歩くどころか立っているのも辛くなり、電柱にすがり付いてそのままへたり込んでしまう
そんな彼女の元へ、ふらりと現れる黒服の少年、手塚星
何か空から降ってきたかのように現れたが、酩酊状態のニーナにはよくわからない
「何やってんだよ、まったく」
全身ずぶ濡れのニーナを躊躇無く抱き上げると、立ち込めるワインの香りに眉を顰める
「ちょっとした事で力使うと、また怒られるしな。とりあえず帰って風呂にでも放り込むか……酒臭い程度なら誤魔化しようが」
「うぷ」
「ん?」
所謂お姫様抱っこ状態のニーナが、星の黒スーツの襟元にしがみつくように身体を寄せて
「おえー」
吐いた
「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
手塚星
まだそう長くはない人生だが、ほぼ初めてのマジツッコミだった
ワインでずぶ濡れになったニーナは、ふらふらと戦闘の現場を離れていた
もっとも、ずぶ濡れの服から滴り落ちたり、ぎっちぎっちと水分を踏む嫌な感触のする靴から溢れたりするワインが、道標のように地面を塗らしているのだが
ともあれ激しい運動の直後、気化したアルコールが全身から立ち込める状況の中、着実に酔いが回ってきている
体温は上昇し、視界はぐるぐる回り、経験した事の無い酩酊感が全身を駆け巡る
「……あふぅ」
歩くどころか立っているのも辛くなり、電柱にすがり付いてそのままへたり込んでしまう
そんな彼女の元へ、ふらりと現れる黒服の少年、手塚星
何か空から降ってきたかのように現れたが、酩酊状態のニーナにはよくわからない
「何やってんだよ、まったく」
全身ずぶ濡れのニーナを躊躇無く抱き上げると、立ち込めるワインの香りに眉を顰める
「ちょっとした事で力使うと、また怒られるしな。とりあえず帰って風呂にでも放り込むか……酒臭い程度なら誤魔化しようが」
「うぷ」
「ん?」
所謂お姫様抱っこ状態のニーナが、星の黒スーツの襟元にしがみつくように身体を寄せて
「おえー」
吐いた
「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
手塚星
まだそう長くはない人生だが、ほぼ初めてのマジツッコミだった
―――
「……うーん、ここは何処デスか?」
記憶が曖昧な中、ニーナは見慣れぬ光景に首を傾げていた
「あんな格好じゃ帰れないから、手近にあったとこに入ったんだけどな」
ざばざばとスーツにシャワーでお湯を掛けて汚れを落としている星と、まだぼんやりとした様子のニーナ
「とりあえず、酔いっ放しじゃしょうがないから大雑把にシャワーで流したけど。後はちゃんと自分で洗えよな」
スーツの染みを気にしながらも、ニーナに背を向けたままお湯が出っ放しになったシャワーのノズルを手渡す
「とりあえず着替えを調達してくるから、風呂は済ませておけよ」
「うー……よくあの有様で入れる宿泊施設があったデスね」
「受付が自動販売機みたいで無人だったからな」
濡れた裸足でぺたぺたと浴室を出ていく星
その姿がニーナからも良く見える
というか浴室とベッドルームの仕切りがガラス張りだった
「変な作りデス。緊急時の様子が判る介護用の施設なんでしょうか」
「受付も受付だし、訳有りの人間が使うんじゃないのか? 護送中の人間を監視しなきゃいけないとか」
星がマニュアルを見ながら壁に据え付けられたパネルを操作すると、浴室の仕切りが一瞬で曇りガラスになる
「覗いたりしないから、ちゃんと頭とか耳とか洗えよ。随分流したとはいえ、まだ酒臭いからな」
部屋の鍵をポケットに捻じ込んで、上着を脱いだワイシャツ姿で部屋を出る星
「それにしても……『ニーナは危険には出会わない』ように仕込んだはずなんだけどな。俺の能力が甘かったか、それを簡単にぶち抜ける強い相手だったのか。単にワインぶっかける通り魔みたいなのは危険と認識されなかったのか」
事情を知らないままだが、ニーナを問い質しても大した事でなければ話さないだろうし、危険な事であれば巻き込まないようにと尚更話さないだろう
「まー無理矢理聞き出しても仕方ないし。そのうち巻き込まれりゃ嫌でも解るか」
普段の巡回は控えて、出来るだけ彼女と一緒に居よう
「そういやいつもシスターみたいな服ばっかりだし。変なのに狙われてるなら変装の意味合いも含めて、ちょっと可愛いのでも選んでみるかな」
そんな事を考えながら、『ご宿泊』で部屋を取ったラブホテルを出て、服の調達に向かう星であった
記憶が曖昧な中、ニーナは見慣れぬ光景に首を傾げていた
「あんな格好じゃ帰れないから、手近にあったとこに入ったんだけどな」
ざばざばとスーツにシャワーでお湯を掛けて汚れを落としている星と、まだぼんやりとした様子のニーナ
「とりあえず、酔いっ放しじゃしょうがないから大雑把にシャワーで流したけど。後はちゃんと自分で洗えよな」
スーツの染みを気にしながらも、ニーナに背を向けたままお湯が出っ放しになったシャワーのノズルを手渡す
「とりあえず着替えを調達してくるから、風呂は済ませておけよ」
「うー……よくあの有様で入れる宿泊施設があったデスね」
「受付が自動販売機みたいで無人だったからな」
濡れた裸足でぺたぺたと浴室を出ていく星
その姿がニーナからも良く見える
というか浴室とベッドルームの仕切りがガラス張りだった
「変な作りデス。緊急時の様子が判る介護用の施設なんでしょうか」
「受付も受付だし、訳有りの人間が使うんじゃないのか? 護送中の人間を監視しなきゃいけないとか」
星がマニュアルを見ながら壁に据え付けられたパネルを操作すると、浴室の仕切りが一瞬で曇りガラスになる
「覗いたりしないから、ちゃんと頭とか耳とか洗えよ。随分流したとはいえ、まだ酒臭いからな」
部屋の鍵をポケットに捻じ込んで、上着を脱いだワイシャツ姿で部屋を出る星
「それにしても……『ニーナは危険には出会わない』ように仕込んだはずなんだけどな。俺の能力が甘かったか、それを簡単にぶち抜ける強い相手だったのか。単にワインぶっかける通り魔みたいなのは危険と認識されなかったのか」
事情を知らないままだが、ニーナを問い質しても大した事でなければ話さないだろうし、危険な事であれば巻き込まないようにと尚更話さないだろう
「まー無理矢理聞き出しても仕方ないし。そのうち巻き込まれりゃ嫌でも解るか」
普段の巡回は控えて、出来るだけ彼女と一緒に居よう
「そういやいつもシスターみたいな服ばっかりだし。変なのに狙われてるなら変装の意味合いも含めて、ちょっと可愛いのでも選んでみるかな」
そんな事を考えながら、『ご宿泊』で部屋を取ったラブホテルを出て、服の調達に向かう星であった