アットウィキロゴ

「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - CoA編 ~その名は~-03

最終更新:

rumor

- view
だれでも歓迎! 編集

CoA編 ~その名は~


剣の刃渡り



天を衝くほどの威容。

孤峰アグリナウン

尾根筋を行くは、騎士に黒衣の女。
あのグリプス以降、大物との遭遇はなかったものの
幾度となく、モンスターとの戦闘となった。
だが、二人とも傷らしい傷はその体に残っていない。

「ここまで来ると流石に、厳しいな。」
「ええ、自然回復が全く働いていないわね。」
「この腕輪がなければ、逆に体力が削られていたところか。」

騎士は、左腕に嵌めた腕輪をこつりと軽く叩く。
"夏至の腕輪"
寒冷地帯におけるスリップダメージを著しく軽減するアイテムだ。
同じ効果を持つ"毛皮のマント"よりも重量が軽く、動きを制限することもない。
貴重なアイテムのひとつでもある。
また、砂漠や火山地帯などの灼熱地帯に対応する"冬至の腕輪"も存在する様だった。

「フクちゃんには本当に感謝しないといけないわね。」
「全くだ。」

今回の件で、金髪の騎士──ふっさんは、自身の所属するギルド"皇国騎士団"の
サブマスターであるフクちゃんから、多くの支給を受けていた。
ギルド員の証でもある群青の騎士服に白銀の軽鎧、大小二振りの西洋剣に夏至の腕輪。
JiLLの身に着けているもうひとつの夏至の腕輪、黒装束に投擲用の武具、消耗品などなど。
自分たちで持ち込んだものは、彼らが装備しているものの極一部だけである。

これらの物資がなければ、この道程を無事に進んでは来れなかっただろう。

そして、長い道のりの果て、彼らはついに孤峰の冠へと手を掛けようとしていた。

「どうやら、あそこの様だな。」
「ええ。」
「この"剣の刃渡り"の先に、ヤツがいる。」

両側の斜面が急峻な尾根のことを、登山用語では"痩せ尾根"と言う。
これにはいろいろな呼び方があり、"剣の刃渡り"もそのひとつである。

山歩きをする場合、尾根筋は位置が把握しやすく
コースがわかりやすいため、道としてよく使われている。
逆に、谷間に入ると見晴らしがきかず方向がわからなくなる上
滝や崖があって通れなくなることもあり、それらからの転落や滑落の危険性があることが多い。

孤峰とはいえ、山肌の崩れから小規模な谷の様な地形も現出していた。
故に、彼らは可能な限り尾根を選んで歩いてきたのである。
迷うことなく。
その、高き頂へと至る為に。

迷わずに済む反面、遮蔽物の少ない尾根筋を歩くという事は
相手に自分達の存在を知られる事と同義であった。
だが、彼らは最初から隠れるつもりなど無い、真っ向から対決すると決めていたのだ。

狭い尾根の先、上方に、岩に囲まれた平らな場所があるのが見えてくる。

空には雲ひとつなく、澄み切った綺麗な青空だった。
晴天であった為、実感は出来なかったが
雲の発生する標高よりも高い位置に来ているのは間違いない。

「戦う事になるのよね……」
「おそらくは……な。」
「今なら引き返せるわ。」
「JiLL……。」
「……言ってみただけ、気にしないで。」

JiLLの気遣いが、騎士の心を締め付ける。

「JiLL……君は戻ってもいいんだ。」
「なにを今更……馬鹿なことを言わないで。」
「俺には戦う理由がある。」
「私には戦う理由がないとでも?」
「……。」
「私はふっさんの背を守る、そう決めてるの。……ほら、理由はこれで十分でしょ?」
「……そんな事は……初めて聞いたよ。」
「そう?……ま、今さっき決めたのだから当然ね。」

今さっき決めたと言う。
背を守ると決めたと言う。
それは嘘だった。
最初から決めていたのだ。
このCoA世界へと入る、ずっと前から。
彼女はそういう人物だ。

「……仕方のないヒトだな、君も。」
「行きましょう。戦場へ。」
「ああ、行こう……だが、戦場へ行く前に、俺にも一言だけ言わせて欲しい。」
「何?」
「君が俺の背を守るというのなら、俺は君の盾となろう。」
「え?……あぁ、そう……わたし、ハハ……私、今なら死んでもいい……かも」

冗談とも本気とも、判断のつかない様な口調でJiLLは言う。
黒い布で覆われ、僅かに覗くは双眸のみ、故に表情は読めない。
だが、おろらく本気で言っている。
彼女はそういう人物だ。

「いや……生きて、そして帰ろう……二人で、な。」

無言で頷く女。
覆面から覗くは双眸のみ、それでも騎士には判った。
彼女は確かに、微笑んでいると。

登りきった先には、円形の広場があった。
正面奥には、石造りの巨大な座。

その巨大な座に見合う赤髭の男。
どっかりと腰を据え、肘掛へと頬杖をつき、侵入者を見据える巨漢がいる。

傲岸にして不遜な態度。

だが、それも当然といえた。
彼は、他者を敬う立場に無い。
彼は、他者から敬われる側の存在であるからだ。

それが、たとえ、紛い物であったとしても……
このCoA世界において、紛れも無く……

かの者は、雷の司にして、神。

「雷の司……"ウムボロドム"。」

神と騎士の視線がぶつかる。

「皇国騎士団がひとり、"芳情の騎士"……か……待ちくたびれたぞ。」

避けては通れない道がある。
避けては通れない戦いがある。

魂を削りあう死闘が、今、始まろうとしていた……



*


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー