CoA編 ~その名は~
交渉、それぞれの想い
「皇国騎士団がひとり、"芳情の騎士"……か……待ちくたびれたぞ。」
"待ちくたびれた"と神は言った。
「へぇ……貴方、私たちが来ることを知っていたとでもいうの?」
「如何にも。」
「如何にも。」
ウムボロドムは知っていた。
彼らが来ることを知っていたのだ。
彼らが来ることを知っていたのだ。
「ヌシらが、ワシのことを探っているという情報は得ていた。」
「俺たちの動きは筒抜けだった……というわけか。」
「ガハハハハ! ワシはこれでも神でな! この世界での不審な動きや噂は全て耳にしておるわ!」
「俺たちの動きは筒抜けだった……というわけか。」
「ガハハハハ! ワシはこれでも神でな! この世界での不審な動きや噂は全て耳にしておるわ!」
見た目通りに豪快な笑い。
「どうやら、見た目と違って力任せの馬鹿ってわけでもなさそうね。」
「JiLL、言葉が過ぎるぞ。最初から戦うつもり、というわけではないんだ。」
「じゃあ、賢い神様にお話を聞いて貰いましょうか。」
「JiLL……。」
「JiLL、言葉が過ぎるぞ。最初から戦うつもり、というわけではないんだ。」
「じゃあ、賢い神様にお話を聞いて貰いましょうか。」
「JiLL……。」
騎士は女をたしなめるが、女は聞かない
JiLLが苛立つ理由は判っていた。
想像以上であったからだ。
ウムボロドムの放つ威圧感は、彼女の"意思"を挫きそうになる程であったのだ。
気を張り、虚勢を張り、どうにか立っていられる。
それほどまでの威圧感。
JiLLが苛立つ理由は判っていた。
想像以上であったからだ。
ウムボロドムの放つ威圧感は、彼女の"意思"を挫きそうになる程であったのだ。
気を張り、虚勢を張り、どうにか立っていられる。
それほどまでの威圧感。
「構わぬ。話してみよ。」
神は寛大であり、騎士は冷静であった。
騎士を支える、その類い稀なる"意思"の強さは
この世界に数多いる列強の士に比したとしても、特筆に価すると言えよう。
この世界に数多いる列強の士に比したとしても、特筆に価すると言えよう。
「単刀直入に言わせて頂くが、人間たちの魂をこの世界から開放して頂きたい。」
「できぬ。」
「それは、貴方にはその力、若しくは権限が無いという事か?」
「言えぬ。」
「だが、人間の魂を捕らえているのは貴方がた神であるはずだ。」
「如何にも。」
「では、せめて、これ以上の犠牲は出さないで頂きたい。」
「犠牲……だと?」
「ああ、犠牲だ。」
「できぬ。」
「それは、貴方にはその力、若しくは権限が無いという事か?」
「言えぬ。」
「だが、人間の魂を捕らえているのは貴方がた神であるはずだ。」
「如何にも。」
「では、せめて、これ以上の犠牲は出さないで頂きたい。」
「犠牲……だと?」
「ああ、犠牲だ。」
騎士の瞳には炎の様な揺らめきが宿っていた。
それは、深く、静かな怒り。
それは、深く、静かな怒り。
「貴方は見たことがあるか? 自分の子を、家族を、その魂を奪われ、嘆き伏す人間たちの姿を。」
赤髭の神は無言で受ける。
そして、騎士は続けて言う。
そして、騎士は続けて言う。
「確かにこのCoA世界は美しい。子供たちだけでなく大人たちの心を捉えるのも分かる。得るモノもあるのだろう。」
彼らは見てきた。
その眼で、自身の眼で、このCoAという世界を。
悪い世界ではないと、そう感じたことは紛れも無い事実。
その眼で、自身の眼で、このCoAという世界を。
悪い世界ではないと、そう感じたことは紛れも無い事実。
「だとしても、現実があるからそう思えるのではないのか、帰る場所があるからそう感じられるのではないのか。」
ウムボロドムは、眼を閉じ
「二度と戻れぬのではないかと、不安に押し潰されてしまった者さえいる。」
騎士の言葉を聞く
「彼らを還してやってくれ。それが出来ぬというのなら、せめて、これ以上は……頼む。」
そして言葉が終わり、ゆっくりと眼を開く。
「ヌシの言い分は分かった。」
「では」
「だが、きけぬ……ヌシの頼みはきけぬ。」
「何故だ!?」
「ワシにはワシの考えがある。」
「これ以上の犠牲を出そうというのか!」
「では」
「だが、きけぬ……ヌシの頼みはきけぬ。」
「何故だ!?」
「ワシにはワシの考えがある。」
「これ以上の犠牲を出そうというのか!」
騎士はかぶりを振るが、神は応えてはくれない。
「現実の世界に嘆く者がいるというのなら、その者たちも連れてくればよい。」
神には神の理論がある。
「帰れぬことを嘆く者がいるというのなら、皆がここへと移り住めばよい。」
決して相容れぬ理論がある。
「さすれば、誰もが救われよう。」
「馬鹿な……。」
「騎士よ、現実の世界では自由を得られぬ者もいるのだ。」
「……ウムボロドム……貴方は一体、何を。」
「"交渉"は終わりだ……ここからは、分かり易くいくとしようではないか。」
「馬鹿な……。」
「騎士よ、現実の世界では自由を得られぬ者もいるのだ。」
「……ウムボロドム……貴方は一体、何を。」
「"交渉"は終わりだ……ここからは、分かり易くいくとしようではないか。」
絶望的なまでの断絶が、そこにはあった。
「どうやら、"交渉"は決裂の様ね。」
「すまない、JiLL……俺はどうも、"交渉"が不得手らしい。」
「そんなことないわ、貴方はいつも時間をかけて説得してきたってこと……私、知ってるもの。」
「……JiLL。」
「口先だけの騙し合いには向いていないというだけよ。」
「すまない、JiLL……俺はどうも、"交渉"が不得手らしい。」
「そんなことないわ、貴方はいつも時間をかけて説得してきたってこと……私、知ってるもの。」
「……JiLL。」
「口先だけの騙し合いには向いていないというだけよ。」
そう言って彼女は肩を竦めた。
初め、威圧されていたJiLLであったが、既に普段の自分を取り戻していた。
初め、威圧されていたJiLLであったが、既に普段の自分を取り戻していた。
「さて……ワシはこう見えて、優しいところがあってな……」
「あら、本当ね……どう見ても優しそうになんて見えないもの。」
「……別れの挨拶くらい待ってやってもよいと……思っていたのだがな……」
「必要ないわ、私たちは生きて帰るのだし。」
「ふん、口の減らない小娘だ……後悔するでないぞ!!」
「私たちの話に乗らなかった事……後悔させてあげるわ!!」
「あら、本当ね……どう見ても優しそうになんて見えないもの。」
「……別れの挨拶くらい待ってやってもよいと……思っていたのだがな……」
「必要ないわ、私たちは生きて帰るのだし。」
「ふん、口の減らない小娘だ……後悔するでないぞ!!」
「私たちの話に乗らなかった事……後悔させてあげるわ!!」
酷烈な風と、峻烈な岩肌が、来る者を阻む。
そこには、ただ一つそびえる峰。
そこには、ただ一つそびえる峰。
孤峰は今、戦場となる。