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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 花子さんと契約した男の話-55

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 ---雨が、止まない
 止んでくれない

 止まないで欲しい
 そう思うのは、罪でしょうか?


「…止まないな」
「そ、そうね…」

 龍一の呟きに、相槌を返す彼女
 …緊張して、言葉がうまく出てこない

 本屋の軒先で、彼女はクラスメイトの獄門寺 龍一と、並んで立っていた
 空は、分厚い雨雲に覆われている
 雨が止みそうな気配はない

 夏休み期間中、塾の帰りに、たまたま本屋に立ち寄って
 そこで、たまたま、龍一と鉢合わせして
 …帰ろうとしたところで、たまたま、雨に降られた
 彼女は、たまたま、折りたたみ傘を家に忘れていていて
 龍一も、傘を持っていなくて
 …その、偶然の積み重ねが、今の状況

 その偶然の積み重ねに、彼女は小さく、感謝する

 会話は、そう、長く続いてはくれない
 ただ、雨の音が、聴覚を支配する

「……獄門寺君」
「…うん?」
「……獄門寺君、は……高校を卒業したら…どうするの?」

 会話のキッカケが欲しかった
 ただ、それだけ
 …話題を間違えた事を、すぐに後悔する

 彼女の問いかけに、龍一は、短く答えてきた

「…家を、継ぐ」
「お家を…?」
「あぁ……継ぐといっても、しばらくは親父の手伝いだけどな」

 それでも…大変なのだろうな、と思う
 龍一の家の家業がどんなものか、彼女は知らない
 けれど、あの個性的な人たちを纏め上げるのは、きっと、大変なのだろう

(………あれ?)

 …あれ?
 彼の家の家業など、彼女は知らない
 そのはず、なのに
 何故
 彼の父親の部下達が、個性的だと……知っていた?

「……委員長?」
「あ…御免、何でもないわ」
「…そうか…?…………委員長は、高校を、卒業したらどうするんだ?」

 …つきり
 小さく、胸が痛む

 …龍一は、家を継ぐという
 つまり、学校町に残るのだ

 けれど
 自分は

「…大学に、進むつもり。先生からも、この調子なら、推薦状とれるって…」
「……そうか…学校町を、離れるか」
「…………うん」

 そうだ
 自分は、大学に進む
 学校町には、今のところ、大学はない
 誘致するという話はあるらしいが…少なくとも、自分達が高校を卒業する頃には、まだ、ないだろう

 だから
 大学に進む、自分は
 必然的に、学校町から離れる事になる

 ……龍一と
 離れる事に、なってしまう

 つきん、つきん、と胸が痛む
 龍一も、大学に進学すると、答えてくれていれば
 …この痛みは、なかったのだろうか?

 ……龍一のせいにするのは、卑怯だ
 龍一が悪い訳ではない
 家を継ぐのだという龍一の選択肢は、彼なりに考え抜いた結果なのだから
 それに……自分が、口を出しては、いけない

「…委員長なら、いい大学に進めるだろ」
「……だと、いいんだけど」
「自信を持て。委員長は、頭がいいんだから」

 いっそ
 推薦状なんて、とれなければ
 学校町で就職する、と言う選択肢も、浮かんで
 そちらを選べたのだろうか
 そうすれば
 ……龍一と、離れずに、すんだのだろうか…?

「獄門寺、君」
「……?」

 彼女が名前を呼んだ事で、龍一が首をかしげる
 目元を覆うほどの長い前髪が、ぱさぱさと揺れた

「……あのね……私……」

 …この時
 自分が、何を伝えようとしていたのか
 彼女自身、よくわかっておらず

 ただ

「ん?龍一、何やってんだ?」
「!?」

 突然、龍一にかけられた声によって
 その答えは、さらに、わからなくなってしまった

「……翼さん?」

 龍一が、声の方向を向く
 つられるように、彼女もそちらを見ると…学園祭の時、姿を見かけた青年がいた

 金に染めた髪に、じゃらじゃらと身に付けたシルバーアクセサリー…その癖して、ピアスだけはつけていないのが若干不自然にも見える…、全体的に、「ちゃらちゃらしている」という印象を感じさせる、青年
 どう言う縁なのかは知らないが、龍一の知り合いらしい
 こんなちゃらちゃらとした印象の、派手な外見の青年と、真面目で、地味に振舞おうと心がけているように見える龍一という組み合わせが、酷く異質に思えたからこそ、よく覚えている

「雨宿りか?」
「はい……傘、ないんで。翼さんは?」
「ん、バイト行くところ」

 親しげに、龍一に声をかけている青年…翼、と言う名前らしい
 …龍一と、親しい様子が…少し、羨ましかった

「傘、使うか?」
「…翼さんが、濡れますよ」
「平気だって、バイト先すぐそこだし。そっちの子と一緒に入っていけばいいだろ?」

 ………
 …………
 ……………

 ……え??

 一瞬、己の思考が停止しかけた事を、彼女は自覚する

「…?委員長と、ですか?」
「あぁ。そっちの子、学園祭の時見かけたし、クラスメイトなんだろ?」
「………そう、ですが」
「そっちの子も、傘ないみたいだし。一緒に入っていって、送ってやればいいだろ?」

 待った
 少し、待って

 何か言いたいのだが…言葉が、うまく出てこない

 翼と呼ばれている、この青年の表情を、見るに
 特に、おかしな事を言っているとか、そう言う考えはないようだ
 多分、純粋に、一行に止む気配を見せない雨とか、止むまでここから身動きが取れないだろう龍一と彼女の事を、心配して言ってきてくれているようだ
 彼女が龍一に好意を抱いている事実に…………気付いている様子は、さっぱり、感じられない
 いや、もしかしたら、ほんの少しは感じ取っているのかもしれないが…そうだったとしても、二人の関係を進展させてやろう、とか、そう言った気遣いは苦手そうな印象を受ける

「いいから、ほら」
「あ…翼さ」
「返す気あるんだったら、爺ちゃんの家にでも預けといてくれよ。そうすれば、いつでもとりに行けるから」

 そう言って
 翼は、龍一に傘を押し付け、走り去ってしまった
 すぐ傍の、中華料理店に入っていく…あそこでアルバイトしているようだ

「………」
「………」

 傘を押し付けられた龍一は…困惑しているような、そんな様子で
 そんな彼の様子に、声をかけようとして…しかし、言葉が出てこない

「……委員長」
「あ、う、うん?」
「…傘、使うか?」

 そっと
 龍一は、彼女に傘を差し出してくる

「え、あ、で、でも…獄門寺君が、借りたんだから」
「…俺は、なくても大丈夫だから」
「で、でも……ほ、ほら、あの人、お爺さんの家に返しておいて、って言ったんでしょ?私、あの人のお爺さんの家、知らないから…」
「………」

 …とくん
 鼓動が高鳴るのを、自覚する

 一言
 ほんの、一言なのだ
 それを、口にする事が、できれば…

「そ、その……あ、あああ、あの人が、言ったみたいに…い、一緒の傘に、入ら、ない?」

 口に、して
 しかし、すぐに赤くなってしまう

 何を言ってしまっているのだ、自分は

「……肩、濡れるぞ?」

 彼女の言葉に
 龍一は、そう返してきた

「か、肩くらいなら、平気……獄門寺君、は、濡れるの、嫌?」
「……嫌ではないが」
「そ、それじゃあ」

 しつこいだろうか?
 変に思われてしまうだろうか?

 ばくばくと、鼓動が嫌に早い

 …しばし
 龍一は、傘と彼女を、交互に見つめてきて

「………」

 ばさり
 傘を広げる

「…ほら」
「え?」
「行くんだろう?」

 もう一人分
 入れるスペースを、作ってくれて

「あ、う、うん」

 赤く、赤くなったまま
 彼女は、龍一の隣に立った
 ゆっくりと歩き出した龍一の歩みに合わせて、歩き出す

 …雨音が、嫌に大きく感じる
 その他の音が、聞こえない
 聞こえるのは、雨音と、自分の鼓動と、自分達の足音だけ

「……委員長の家、こっちだよな?」
「う、うん」

 俯き、答える彼女
 赤くなった頬を、龍一に見られたくない
 見られたら、恥ずかしくて、照れくさくて…仕方ない

 俯いている事を、問い掛けられるのが、怖くて
 逃げるように、話題を出す

「…つ、翼さん、だっけ?………いい人、だね」
「……そうだな」

 彼女の言葉に
 龍一が、小さく笑ったように見えた

「…外見で、誤解されやすいが…………悪い人じゃあ、ない」
「そ、そうなんだ」
「……あぁ……………………あの人は、太陽みたいな人だから」

 そう口にした龍一の声には
 ほんの少し、憧れとか、羨望とか、そんな感情が、混じっているような気がして

 この偶然が積み重なった状況から、さらに、一歩、進めてくれた事には、感謝しつつも
 彼女は、あの青年の事が、酷く羨ましく感じられてしまうのだった







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