「ただいま」
「…ただい、ま」
「…ただい、ま」
携帯電話の補充に出かけていた恵に付き合っていた辰也
教会に帰って来ると…ちょうど、誰も居ない
皆、出かけているようだ
誠は琴の発表会に出なければいけないとかで夕食をいらないと言っていた覚えがあるが…まぁ、他の皆も、デートなり何なりで出かけているのだろう
教会に帰って来ると…ちょうど、誰も居ない
皆、出かけているようだ
誠は琴の発表会に出なければいけないとかで夕食をいらないと言っていた覚えがあるが…まぁ、他の皆も、デートなり何なりで出かけているのだろう
もぞ、と恵が鞄から、ジャッカロープを出してやっている
…すぴすぴ、聞こえてくる小さな寝息
鞄の中で、眠っていたらしい
ごちゃごちゃと携帯電話が大量に入っている中に一緒に入っていて、よくあぁも熟睡できるものだ
慣れなのかもしれないが
恵はそんなジャッカロープを、そっとジャッカロープお気に入りのクッションの上に置いてやっている
…すぴすぴ、聞こえてくる小さな寝息
鞄の中で、眠っていたらしい
ごちゃごちゃと携帯電話が大量に入っている中に一緒に入っていて、よくあぁも熟睡できるものだ
慣れなのかもしれないが
恵はそんなジャッカロープを、そっとジャッカロープお気に入りのクッションの上に置いてやっている
「……今、誰も、いない?」
「そうみたいだな」
「そうみたいだな」
そうなると
今、自分は恵と二人きり……
…いや、ジャッカロープがいるし、携帯電話ごしにスーパーハカーが茶々を入れてくる可能性もあるのだが
とりあえずは、二人きりだ、うん
そう、考えると…辰也は、やや落ち着かない
それでも、出来うる限り、その追いつかない状態を、表に出さないようにはしているが…
今、自分は恵と二人きり……
…いや、ジャッカロープがいるし、携帯電話ごしにスーパーハカーが茶々を入れてくる可能性もあるのだが
とりあえずは、二人きりだ、うん
そう、考えると…辰也は、やや落ち着かない
それでも、出来うる限り、その追いつかない状態を、表に出さないようにはしているが…
「………?」
辰也の様子に、小さく首を傾げてくる恵
どうにも、恵に対しての隠し事は苦手だ
どうにも、恵に対しての隠し事は苦手だ
ハンニバルとの因縁の戦いが終わって、以降
いや、正確には、その戦いの最中に……恵から、想いを告げられて
それに対する、答えを……実のところ、辰也はまだ、しっかりと答えていない
あの時は、答えるどころではなかったし
あの後も、若干、ごたごたしてしまっていて
……今の今まで、答えられずにいるままだ
いや、正確には、その戦いの最中に……恵から、想いを告げられて
それに対する、答えを……実のところ、辰也はまだ、しっかりと答えていない
あの時は、答えるどころではなかったし
あの後も、若干、ごたごたしてしまっていて
……今の今まで、答えられずにいるままだ
早く答えるべきだ
伸ばし伸ばしにするべきではない
それは、わかっているというのに
伸ばし伸ばしにするべきではない
それは、わかっているというのに
(……まったく)
自分は、そこまで臆病だったのか
小さく、苦笑する
小さく、苦笑する
「何でもない。部屋、戻るか?」
「………ん」
「………ん」
辰也の言葉に小さく頷いた恵の手を引いていってやる
別に、手を引く必要性がない事はわかっているのだが……ほんのわずかでも、触れ合うことができるならば触れ合いたいと考えてしまう
別に、手を引く必要性がない事はわかっているのだが……ほんのわずかでも、触れ合うことができるならば触れ合いたいと考えてしまう
……汚れきった自分に、似合わぬ思考だと言う自覚はある
だが、どこまでも純粋な恵に引っ張られるように、恋など初めてだという子供のようになってしまう
だが、どこまでも純粋な恵に引っ張られるように、恋など初めてだという子供のようになってしまう
「……辰也」
「ん?」
「ん?」
部屋の、前で
恵が、ぽつりと声をかけてくる
恵が、ぽつりと声をかけてくる
「どうした?」
「……………ん」
「……………ん」
ぎゅう、と
問いかけには答えず…ただ、辰也の手を、しっかりと握ってくる恵
言葉少なな恵の思考を、その行動で判断する
…傍に、いてほしいのだろうか
自分に都合のいい解釈だと判断しつつ、今度は逆に恵に手を引かれるようにしながら、恵の部屋に入る
問いかけには答えず…ただ、辰也の手を、しっかりと握ってくる恵
言葉少なな恵の思考を、その行動で判断する
…傍に、いてほしいのだろうか
自分に都合のいい解釈だと判断しつつ、今度は逆に恵に手を引かれるようにしながら、恵の部屋に入る
飾り気のない部屋
ただ、本の数は多い気がする……動物飼育系とか、動物の写真集系が
昨年、まだ、恵が女性の姿になりたての頃、恵の部屋に行った事がある、その時を思い出す
…まぁ、マッド達も全員ついてきていたが、あの時は
ただ、本の数は多い気がする……動物飼育系とか、動物の写真集系が
昨年、まだ、恵が女性の姿になりたての頃、恵の部屋に行った事がある、その時を思い出す
…まぁ、マッド達も全員ついてきていたが、あの時は
完全に、部屋に入ったところで
「……っと?」
ぽすんっ、と
恵に、抱きつかれた
恵に、抱きつかれた
一瞬、思考が停止する
うん、落ち着け
落ち着け、俺
うん、落ち着け
落ち着け、俺
そのまま、恵を抱きしめたくなる衝動を
ついでに、そのまま押し倒したくなる衝動を、押さえ込む
ついでに、そのまま押し倒したくなる衝動を、押さえ込む
「…ど、どうしたんだ?」
「…………ん」
「…………ん」
ぎゅうう、と
しっかり、しっかりと
細い腕が、辰也を抱きしめて、放さない
しばし、辰也にとって軽く生殺し状態が続く中
しっかり、しっかりと
細い腕が、辰也を抱きしめて、放さない
しばし、辰也にとって軽く生殺し状態が続く中
…ぽつり
恵が、口を開く
恵が、口を開く
「…ちゃんと、いる」
「………?」
「ちゃんと……辰也はここに、いる」
「………?」
「ちゃんと……辰也はここに、いる」
まるで、確認するかのように、ぽそぽそと呟いてくる恵
じっと、辰也を見上げてくる
じっと、辰也を見上げてくる
「…辰也、は…………いなくならない……よな…?」
確認するかのような、言葉
つきり、辰也は小さく心が痛む
つきり、辰也は小さく心が痛む
…ハンニバルとの、戦いの時には
ずいぶんと、恵を心配させてしまった
ずいぶんと、恵を心配させてしまった
「…いなくならねぇよ」
恐る恐る…恵の背中に、腕を回す
細い、小さな体
力を入れたら壊れてしまいそうなその体を、恐る恐る、抱きしめる
細い、小さな体
力を入れたら壊れてしまいそうなその体を、恐る恐る、抱きしめる
「………本当、か?」
「…あぁ」
「…あぁ」
あの時は、半ば死も覚悟していた
己の命と引き換えに、とも考えた
己の命と引き換えに、とも考えた
…だが
もう、死ねるものか
死ぬには、自分はあまりにも、未練を作りすぎた
もう、死ねるものか
死ぬには、自分はあまりにも、未練を作りすぎた
「………………惚れた相手を残して、いなくなるなんて………できるかよ」
こちらが、ただ、一方的に想っているだからなば、まだ、いい
だが
だが
「……俺みてぇな、汚れきった奴なんかを…………想ってくれる相手を残して、死ねるか」
「………………くけ」
「………………くけ」
かすかに、恵の頬が染まる
ぽふり、辰也の胸元に顔を押し付けてくる動作が、可愛らしい
ぽふり、辰也の胸元に顔を押し付けてくる動作が、可愛らしい
「………いいのか?俺が、お前を好きで」
「………ん…………………俺、も……………辰也、が、好きだから」
「………ん…………………俺、も……………辰也、が、好きだから」
ぼそぼそと、小さく答えてくる恵
もぞもぞと、再び顔をあげてきて
もぞもぞと、再び顔をあげてきて
「…辰也と、一緒がいい………辰也、の、隣が………いい。辰也と一緒じゃなければ………嫌だ」
「………そうか」
「………そうか」
ほんの、少し
抱きしめる力を、強める
抱きしめる力を、強める
「……ありがとうな、恵」
…ありがとう
自分などを、好きになってくれて
自分などを、好きになってくれて
「ずっと、俺の傍にいてくれ」
「…ん………傍に、いる」
「…ん………傍に、いる」
赤くなったまま、微笑む恵
その顔に、じっと見とれて
その顔に、じっと見とれて
……静かに、そっと
辰也は、恵と唇を重ね合わせたのだった
辰也は、恵と唇を重ね合わせたのだった
fin