しとしとと、雨が降っている
そんな暗い夜の街を、一人の青年が歩いていた
その肩には、小さな小鳥が止まっている
そんな暗い夜の街を、一人の青年が歩いていた
その肩には、小さな小鳥が止まっている
「今日も見つからなかったか…」
小さく、ため息をつく青年
肩の小鳥が、青年を慰めるように、小さく囀った
その囀りに、青年は小さく笑みを浮かべるが…その笑みは、まるですぐにでも消えてしまいそうな、儚さを連想させる
肩の小鳥が、青年を慰めるように、小さく囀った
その囀りに、青年は小さく笑みを浮かべるが…その笑みは、まるですぐにでも消えてしまいそうな、儚さを連想させる
しとしと、しとしとと
雨降る中、青年はこの街で借りている住居に帰ろうとして…
雨降る中、青年はこの街で借りている住居に帰ろうとして…
「………?」
…道の、隅に
座り込んでいる少女の姿を見つけた
しとしと、しとしとと雨が降る中、傘もさしていない
着ている服は、酷くボロボロだ
座り込んでいる少女の姿を見つけた
しとしと、しとしとと雨が降る中、傘もさしていない
着ている服は、酷くボロボロだ
青年は、その少女を心配して駆け寄った
そっと、少女に傘を差し出す
そっと、少女に傘を差し出す
「どうしたんだ?……具合でも、悪いのか?」
慣れぬ日本語で、青年は少女に話し掛ける
元々、母国語でも口が悪い方だが、日本語で話しても、若干、ぶっきらぼうな話し方になってしまっている
このような話し方で、少女を怯えさせはしないか、青年はそれを心配した…元々目つきが若干鋭いせいで、初対面の子供には警戒されがちなのも自覚しているから、余計に
元々、母国語でも口が悪い方だが、日本語で話しても、若干、ぶっきらぼうな話し方になってしまっている
このような話し方で、少女を怯えさせはしないか、青年はそれを心配した…元々目つきが若干鋭いせいで、初対面の子供には警戒されがちなのも自覚しているから、余計に
しかし、青年のその心配は杞憂に終わる
なぜなら
なぜなら
「………っ!?」
少女が顔をあげる
そこには、刃物で無数の傷をつけられたかのような……醜い、ぐちゃぐちゃの顔があった
がし、と、その少女が乱暴に青年の腕を掴む
そこには、刃物で無数の傷をつけられたかのような……醜い、ぐちゃぐちゃの顔があった
がし、と、その少女が乱暴に青年の腕を掴む
青年の肩の小鳥が、警告を発するように鋭く鳴いたが……遅い
青年の体はアスファルトの地面に引きずり倒された
その拍子に肩の小鳥が飛び立ち、持っていた傘が地面を転がる
青年の体はアスファルトの地面に引きずり倒された
その拍子に肩の小鳥が飛び立ち、持っていた傘が地面を転がる
少女は、そのまま青年の体を引きずりまわそうとした
それが、己の役目だから
己が生まれた「噂話」で、自分はそう語られているから
本来、ターゲットとする年齢よりもずっと上だが、問題ない
自分は、ただ、殺すだけなのだから
それが、己の役目だから
己が生まれた「噂話」で、自分はそう語られているから
本来、ターゲットとする年齢よりもずっと上だが、問題ない
自分は、ただ、殺すだけなのだから
少女の、その目的は……達せられる事は、ない
なぜならば
なぜならば
「ったぁ!!」
何者かが放った攻撃が
少女の体を弾き飛ばし、青年を解放させたからだ
少女の体を弾き飛ばし、青年を解放させたからだ
体を強かに打っていた青年だが、痛みにうめくこともなく、顔をあげ、立ち上がる
…青年を救ったのは、少年だった
青年より、やや背の低い少年
どこか、猫のを連想させるしなやかな動きを見せる
青年より、やや背の低い少年
どこか、猫のを連想させるしなやかな動きを見せる
「ん、間に合ったみたい」
その口から漏れ出す声は、少年のものでありながら、どこか、少女的な印象を感じさせる
……少年の名前は、橘野 悠司
「組織」所属の契約者……「獣憑き」の、契約者である
「組織」所属の契約者……「獣憑き」の、契約者である
今、表に出ているのは、彼と契約している存在の一人、「猫憑き」のミズキだ
柔軟性と敏捷性に優れ、猫故に夜目が利く
しとしとと雨が降る中、ターゲットに襲われている青年を見つけ、素早く助けに入ったのだ
柔軟性と敏捷性に優れ、猫故に夜目が利く
しとしとと雨が降る中、ターゲットに襲われている青年を見つけ、素早く助けに入ったのだ
「…邪魔、しないで…」
ゆらり
少女が、鋭い目つきでミズキを睨んだ
憎悪が、叩きつけられる
少女が、鋭い目つきでミズキを睨んだ
憎悪が、叩きつけられる
「駄目、そうはいかないよ、ひきこさん」
少女…ひきこさんに、そう告げるミズキ
悲劇から生まれたと言われるひきこさん
交渉の余地が存在する個体もいない訳ではないが………このひきこさんは、違う
本来のターゲットである傘を差した子供だけでなく、大人まで狙うようになってしまっている時点で………もう、手遅れ
その壊れきった心は、元に戻らない
…退治するしか、ないのだ
悲劇から生まれたと言われるひきこさん
交渉の余地が存在する個体もいない訳ではないが………このひきこさんは、違う
本来のターゲットである傘を差した子供だけでなく、大人まで狙うようになってしまっている時点で………もう、手遅れ
その壊れきった心は、元に戻らない
…退治するしか、ないのだ
「………引きずり殺させろぉおおおおおおお!!!!!!」
叫び、ミツキに飛び掛るひきこさん
ひらり、華麗な動きで、ミズキはそれを避けてみせる
ひらり、華麗な動きで、ミズキはそれを避けてみせる
「ん~…思ったより早いなぁ、ちょっと面倒かも………あー、もう、タイガ、黙っててよ。あたしじゃないと、対処が難しいスピードだってば」
他の人格であるタイガの主張に軽く文句をいいつつ、ミズキはひきこさんを睨みつけた
そう、思った以上に、相手のスピードが速い
ひきこさんと言えば怪力がまず思い浮かぶが、この個体はさらに、スピードまで身についてしまっている
そう、思った以上に、相手のスピードが速い
ひきこさんと言えば怪力がまず思い浮かぶが、この個体はさらに、スピードまで身についてしまっている
これは、ちょっと…対処が、難しいかもしれない
ミズキが、相手の隙を伺おうとした、次の瞬間
ひきこさんは、信じられない程の瞬発力で、一瞬でミズキと距離を詰めてきた
……避けきれないほどじゃない!
ミズキは、再びひきこさんから距離をとろうと……
ミズキが、相手の隙を伺おうとした、次の瞬間
ひきこさんは、信じられない程の瞬発力で、一瞬でミズキと距離を詰めてきた
……避けきれないほどじゃない!
ミズキは、再びひきこさんから距離をとろうと……
「-------動くなっ!!!」
その場に、響き渡った声
一瞬、ミズキとひきこさんの動きが……空気をかすかに振動させる程の気迫の篭ったその声に、止まった
直後、ひきこさんの体は、つい先ほどミズキが助け出した青年によって、殴り飛ばされる
アスファルトの塀に叩きつけられ、塀をわずかに砕きながらも、ひきこさんの闘志は、殺意は、衰える様子はない
…だが……もはや、致命的な隙が、出来てしまっていた
一瞬、ミズキとひきこさんの動きが……空気をかすかに振動させる程の気迫の篭ったその声に、止まった
直後、ひきこさんの体は、つい先ほどミズキが助け出した青年によって、殴り飛ばされる
アスファルトの塀に叩きつけられ、塀をわずかに砕きながらも、ひきこさんの闘志は、殺意は、衰える様子はない
…だが……もはや、致命的な隙が、出来てしまっていた
「……もらったぁ!!」
ミツキと人格を交代したタイガが、表に出て
その必殺の一撃が、ひきこさんに叩きつけられた
その必殺の一撃が、ひきこさんに叩きつけられた
「が………!?」
驚異的な身体能力を得た代償だったのだろうか
そのひきこさんの肉体は、都市伝説特有の丈夫さは所有しておらず、人間の少女とさほど変わりのないもので
………その体はタイガの一撃によって、あっさりと活動を停止し……光の粒子へと変わって、雨の中、輝きながら消えていった
そのひきこさんの肉体は、都市伝説特有の丈夫さは所有しておらず、人間の少女とさほど変わりのないもので
………その体はタイガの一撃によって、あっさりと活動を停止し……光の粒子へと変わって、雨の中、輝きながら消えていった
「………っふぅ」
体の支配権が、悠司に戻る
とたん、激しい疲労感と筋肉痛に襲われたが、悠司は必死にそれに耐えた
自分が助けた、同時に、助けられた青年に視線を移す
とたん、激しい疲労感と筋肉痛に襲われたが、悠司は必死にそれに耐えた
自分が助けた、同時に、助けられた青年に視線を移す
「あの…大丈夫、ですか?」
そう声をかけてから、相手の青年がどう見ても西洋人である事から、英語で言えば良かったか…と、後悔する
が、先ほど、日本語で「動くな」と叫んでいた事を思い出し、考え直す
事実、悠司の言葉は、青年にきちんと通じていた
が、先ほど、日本語で「動くな」と叫んでいた事を思い出し、考え直す
事実、悠司の言葉は、青年にきちんと通じていた
「あぁ、俺は大丈夫だが……お前こそ、大丈夫か?」
青年は、むしろ、悠司に気遣うような視線を向けてきた
悠司が隠そうとしている疲労感と筋肉痛を、見抜いたようだ
心配そうに、悠司に近づいてくる
悠司が隠そうとしている疲労感と筋肉痛を、見抜いたようだ
心配そうに、悠司に近づいてくる
「い、いえ、僕は大丈夫ですから…」
「……疲労が蓄積しているように見える。体に負担がかかっているな」
「……疲労が蓄積しているように見える。体に負担がかかっているな」
そっと、青年が悠司に手を差し出す
…ぽぅ、と
悠司は、自分の体が光に包み込まれたような気がした
…ぽぅ、と
悠司は、自分の体が光に包み込まれたような気がした
「え……」
(やだ、ちょっと何これ?)
(こいつ、主に何をする気だ!?)
(落ちついて、ミズキ。タイガも、落ち着きなさい……害はないようです)
(やだ、ちょっと何これ?)
(こいつ、主に何をする気だ!?)
(落ちついて、ミズキ。タイガも、落ち着きなさい……害はないようです)
ミズキとタイガが警戒するが、しかし、タマモの言う通り…悠司の体に、害はない
どころか…能力使用の代償としての疲労感と筋肉痛が、嘘のように引いていく
暖かく、優しく、やわらかく包み込まれているような、そんな錯覚
どころか…能力使用の代償としての疲労感と筋肉痛が、嘘のように引いていく
暖かく、優しく、やわらかく包み込まれているような、そんな錯覚
青年が、そっと、悠司に掲げていた手を引いた時
悠司の疲労感と筋肉痛は……完全に、消えていた
悠司の疲労感と筋肉痛は……完全に、消えていた
「……痛みや不快感はないか?」
「あ、はい」
「…良かった」
「あ、はい」
「…良かった」
ほっとしたように、青年が笑う
…酷く、寂しい笑い方をする人だな、と悠司は感じた
目の前にいるのに、すぐにでも消えうせてしまいそうな、そんな印象を覚える
…酷く、寂しい笑い方をする人だな、と悠司は感じた
目の前にいるのに、すぐにでも消えうせてしまいそうな、そんな印象を覚える
「あなたも、都市伝説契約者、ですか…?」
「…?あぁ、そうか、この国では、「トシデンセツケイヤクシャ」という言い方をするのか……そうだ。さっきの、お前の動きもそうか?」
「はい」
「…?あぁ、そうか、この国では、「トシデンセツケイヤクシャ」という言い方をするのか……そうだ。さっきの、お前の動きもそうか?」
「はい」
頷く悠司
青年は「組織」の人間ではないようだが、明らかに、都市伝説契約者であるようだ
悠司の疲労感と筋肉痛を消して見せたところを見ると、貴重な治療系の都市伝説だろうか
青年は「組織」の人間ではないようだが、明らかに、都市伝説契約者であるようだ
悠司の疲労感と筋肉痛を消して見せたところを見ると、貴重な治療系の都市伝説だろうか
悠司が、そんな事を考えていると
「……すまない。そして、ありがとう」
と
青年が、そう、悠司に告げた
青年が、そう、悠司に告げた
「……え?」
きょとん、と
思わず、悠司は青年を見つめてしまう
思わず、悠司は青年を見つめてしまう
今
青年は、何と?
青年は、何と?
「俺が、この国の怪異に詳しくなかったばかりに、危険な事に巻き込んだ。すまない………助けてくれて、ありがとう」
改めて、悠司への謝罪と、感謝の言葉を口にする青年
…悠司は、「組織」の仕事でもって、ひきこさんと戦った
たとえ、青年が襲われていなくとも、あのひきこさんとは戦闘する事が確定していたのだから、青年が、悠司がひきこさんと戦闘状態に陥った原因になったと、謝罪してくる必要性はない
それどころか……感謝の言葉、まで
…悠司は、「組織」の仕事でもって、ひきこさんと戦った
たとえ、青年が襲われていなくとも、あのひきこさんとは戦闘する事が確定していたのだから、青年が、悠司がひきこさんと戦闘状態に陥った原因になったと、謝罪してくる必要性はない
それどころか……感謝の言葉、まで
「…?どうした?」
悠司の様子に、小さく首をかしげる青年
悠司は慌てて顔をあげる
悠司は慌てて顔をあげる
「い、いえ、何でもないです」
「そうか…?」
「そうか…?」
…ぱたぱたと、小鳥が青年の肩に戻ってきた
………小鳥が、悠司をじっと見つめる
………小鳥が、悠司をじっと見つめる
「…俺は、カイン。カイン・ディーフェンベーカーだ。お前は?」
「あ……ぼ、僕は………」
「あ……ぼ、僕は………」
…これが、橘野 悠司と、「教会」所属の契約者、カイン・ディーフェンベーカー司祭との、出会い
それが、彼らの運命にどのような影響を与えるのか
それは、まだ、誰にもわからない
それが、彼らの運命にどのような影響を与えるのか
それは、まだ、誰にもわからない
to be … ?