●
なんかきな臭い会話が進んでいると思ったら、いきなりTさんの師匠だって言う姉ちゃんとTさんが拳を真正面からぶつけ合った。
お互いに拳が砕けたんじゃねえかってくらい妙に鈍い音がして、次の瞬間にはもう二三撃、手やら足やらが飛んでいる。
「うわぁ、近付きたくねぇー……」
正直に心情を吐き出しながら俺はフィラちゃんとモニカに手振りで合図して、一緒に離れようと後退さる。
あの姉ちゃんがさっきフィラちゃんの鉄の箱を拳でブチ壊したってんなら、俺達みたいなノーマルな強度の人間じゃあ殴られたらトンデモ無い事になる。それに下手に近くに居るとTさんの邪魔にもなっちまう。
そう思って数歩退いた所で姉ちゃんの声がした。
「逃さんよ」
その声と同じタイミングで体に白い縄が巻きついた。
「んなっ!?」
「フィラちゃん……っ」
「っこの!」
いきなりの事に驚き、だけど咄嗟にマフラーに隠れていたリカちゃんに声をかける。
「リカちゃん頼む!」
「わかったの」
そう応えてマフラーから這い出たリカちゃんを、縄の塊の中から突然開いた大きな口が咥えこんだ。
「わわわわ……っ!」
いや、違う、これ縄の塊じゃねえ……っ!
リカちゃんを咥えこんだのは白い毛で全身を毛むくじゃらにした獣だった。
でかい、ともかくでかい。人が何人も乗れそうな感じだ。
――なんだコイツ!?
よく見ると、この獣の毛はわさわさ蠢いている。コイツの毛が俺達の体に巻きついているらしい。
「リカちゃんを離せやこらっ!」
「安心しろ、食べたりはせんさ。そいつはケウ、そいつが人が寄り付かない結界を張っているから人は来ないぞ。一先ず動くな。この戦いが終わるまでは――なっ!」
肉と肉がぶつかり合う鈍い音がまた響いて来た。
「ど、どうするの? フィラちゃん」
ケウの毛に巻きつけられたモニカの不安気な声に、フィラちゃんは身をよじって動こうとする。
「……だめね。Tさんがあの師匠だっていう女を止めてくれるのを期待するしかないわ」
「だな」
「だいじょうぶ、なの?」
「おう、Tさんはぜってぇ大丈夫だ」
だから、
「おいこらケウとかいう犬っぽい何か。リカちゃん離してくんね? よだれだらけになると流石にかわいそうなんだけど」
近くでねめつけて言ってみると、ケウは毛の奥に隠れた黒真珠みたいに黒い、意外にもつぶらな瞳で数秒俺の顔を見て、その後Tさんや姉ちゃんのいる方を向いてから、おもむろにリカちゃんを解放した。
「大丈夫かリカちゃん?」
「でろでろしてたの~」
リカちゃんが抱きついて来る。確かにでろでろだ。かわいそうに。
「ケウの毛で拭いてやろうなー」
そう言うと若干ケウが迷惑そうな顔をした気がした。きっと気のせいだろう。
「割と余裕そうじゃない、舞ちゃん」
「んー、なんつーのかな。この犬っころからはあんま殺気? なんかそれっぽい威圧感を感じねえからかな。それにあの姉ちゃんもTさんも戦っててどこか楽しそうってか、じゃれあい? そんな雰囲気だあるんだよなぁ……」
そのせいか、あんまり怖くはない。フィラちゃんは呆れたように俺を見てなにやら頷いた。
「流石はあのTさんの恋人ねえ」
「なんでフィラちゃんが知ってんだよ?!」
「え? 翼に聞いたのよ?」
そうか、チャラい兄ちゃんが下手人か……。
「……今度写真でもばらまいてやろうかなぁ」
「何か言った?」
「いや、何も?」
まあともかく、差し迫った身の危険は感じない。ならきっと大丈夫だろう。
そう思っていると、Tさんの光弾を避けた姉ちゃんがケウのすぐ横に降って来た。
「そうそう、とりあえず動かなければいい」
そう言うと姉ちゃんはケウの膨大な毛の中へと腕を突っ込んだ。しばらく何かまさぐるようにすると、「とっておきだぞ~」と言いながら1メートル位の長さの剣を抜きだした。
「すごい……」
モニカが呟くが俺も同意だ。なんだこの手品?
「……む」
剣を見たTさんがものすごく嫌そうな顔をする。
「さて、少し力入れてくか」
剣をぶんぶん振り回しながら姉ちゃんがどこか嬉しそうに言う。
「そうしよう」
Tさんが応えて、また二人が地面を蹴る。
お互いに拳が砕けたんじゃねえかってくらい妙に鈍い音がして、次の瞬間にはもう二三撃、手やら足やらが飛んでいる。
「うわぁ、近付きたくねぇー……」
正直に心情を吐き出しながら俺はフィラちゃんとモニカに手振りで合図して、一緒に離れようと後退さる。
あの姉ちゃんがさっきフィラちゃんの鉄の箱を拳でブチ壊したってんなら、俺達みたいなノーマルな強度の人間じゃあ殴られたらトンデモ無い事になる。それに下手に近くに居るとTさんの邪魔にもなっちまう。
そう思って数歩退いた所で姉ちゃんの声がした。
「逃さんよ」
その声と同じタイミングで体に白い縄が巻きついた。
「んなっ!?」
「フィラちゃん……っ」
「っこの!」
いきなりの事に驚き、だけど咄嗟にマフラーに隠れていたリカちゃんに声をかける。
「リカちゃん頼む!」
「わかったの」
そう応えてマフラーから這い出たリカちゃんを、縄の塊の中から突然開いた大きな口が咥えこんだ。
「わわわわ……っ!」
いや、違う、これ縄の塊じゃねえ……っ!
リカちゃんを咥えこんだのは白い毛で全身を毛むくじゃらにした獣だった。
でかい、ともかくでかい。人が何人も乗れそうな感じだ。
――なんだコイツ!?
よく見ると、この獣の毛はわさわさ蠢いている。コイツの毛が俺達の体に巻きついているらしい。
「リカちゃんを離せやこらっ!」
「安心しろ、食べたりはせんさ。そいつはケウ、そいつが人が寄り付かない結界を張っているから人は来ないぞ。一先ず動くな。この戦いが終わるまでは――なっ!」
肉と肉がぶつかり合う鈍い音がまた響いて来た。
「ど、どうするの? フィラちゃん」
ケウの毛に巻きつけられたモニカの不安気な声に、フィラちゃんは身をよじって動こうとする。
「……だめね。Tさんがあの師匠だっていう女を止めてくれるのを期待するしかないわ」
「だな」
「だいじょうぶ、なの?」
「おう、Tさんはぜってぇ大丈夫だ」
だから、
「おいこらケウとかいう犬っぽい何か。リカちゃん離してくんね? よだれだらけになると流石にかわいそうなんだけど」
近くでねめつけて言ってみると、ケウは毛の奥に隠れた黒真珠みたいに黒い、意外にもつぶらな瞳で数秒俺の顔を見て、その後Tさんや姉ちゃんのいる方を向いてから、おもむろにリカちゃんを解放した。
「大丈夫かリカちゃん?」
「でろでろしてたの~」
リカちゃんが抱きついて来る。確かにでろでろだ。かわいそうに。
「ケウの毛で拭いてやろうなー」
そう言うと若干ケウが迷惑そうな顔をした気がした。きっと気のせいだろう。
「割と余裕そうじゃない、舞ちゃん」
「んー、なんつーのかな。この犬っころからはあんま殺気? なんかそれっぽい威圧感を感じねえからかな。それにあの姉ちゃんもTさんも戦っててどこか楽しそうってか、じゃれあい? そんな雰囲気だあるんだよなぁ……」
そのせいか、あんまり怖くはない。フィラちゃんは呆れたように俺を見てなにやら頷いた。
「流石はあのTさんの恋人ねえ」
「なんでフィラちゃんが知ってんだよ?!」
「え? 翼に聞いたのよ?」
そうか、チャラい兄ちゃんが下手人か……。
「……今度写真でもばらまいてやろうかなぁ」
「何か言った?」
「いや、何も?」
まあともかく、差し迫った身の危険は感じない。ならきっと大丈夫だろう。
そう思っていると、Tさんの光弾を避けた姉ちゃんがケウのすぐ横に降って来た。
「そうそう、とりあえず動かなければいい」
そう言うと姉ちゃんはケウの膨大な毛の中へと腕を突っ込んだ。しばらく何かまさぐるようにすると、「とっておきだぞ~」と言いながら1メートル位の長さの剣を抜きだした。
「すごい……」
モニカが呟くが俺も同意だ。なんだこの手品?
「……む」
剣を見たTさんがものすごく嫌そうな顔をする。
「さて、少し力入れてくか」
剣をぶんぶん振り回しながら姉ちゃんがどこか嬉しそうに言う。
「そうしよう」
Tさんが応えて、また二人が地面を蹴る。
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剣を振りかぶって接近した千勢相手に、Tさんは先程千勢が殴ってひしゃげさせた≪フィラデルフィア計画≫の鉄の箱を投げつけた。
飛んでくる鉄の箱に対して千勢は剣を、その刃を立ててスイングする。
刃が鉄の箱を噛み、そのまま道路わきの壁へと鉄の箱を叩きつける。鉄の箱があっさり裁断されて壁にめり込んだ。
千勢は鉄箱の行く末を無視。間断無くTさんを狙おうとして、すぐ近くに迫っている光弾を見た。
身を捻ってそれを躱すと一撃目の軌道に隠れるようにもう一発光弾が飛来しているのが目に映る。
「――っ!」
地面を蹴って距離を取り、剣を叩きつける。切断された光弾は裂音と共に小規模な爆発を起こして散った。
「小細工をっ」
Tさんの気配が先程裁断した鉄の箱の方にあるのを気取る。そこへ向けて千勢は一足飛びに斬りかかった。
斬撃は容赦なく叩き込まれ、しかし剣は受け止められた。
金属がぶつかり合う高い音とそれらを打ち合わせる時に生じる反動を感じながら、千勢はTさんの手際の良さに感心した。
やはり、と心に前置きし、
「鍛錬は怠ってはいないか」
Tさんは≪ケサランパサラン≫への祈祷強化で硬度を千勢の振るう剣に耐えられるまで引き上げた≪フィラデルフィア計画≫の鉄箱の、その裁断された一部で剣を受けながら答える。
「まあな」
鉄片が強く払われて両者の距離が開く。
「勤勉結構。――では、ちょいと本気で潰しにいくぞ」
千勢は手を浅く広げ、宣言した。
「――私は、とても綺麗だ」
飛んでくる鉄の箱に対して千勢は剣を、その刃を立ててスイングする。
刃が鉄の箱を噛み、そのまま道路わきの壁へと鉄の箱を叩きつける。鉄の箱があっさり裁断されて壁にめり込んだ。
千勢は鉄箱の行く末を無視。間断無くTさんを狙おうとして、すぐ近くに迫っている光弾を見た。
身を捻ってそれを躱すと一撃目の軌道に隠れるようにもう一発光弾が飛来しているのが目に映る。
「――っ!」
地面を蹴って距離を取り、剣を叩きつける。切断された光弾は裂音と共に小規模な爆発を起こして散った。
「小細工をっ」
Tさんの気配が先程裁断した鉄の箱の方にあるのを気取る。そこへ向けて千勢は一足飛びに斬りかかった。
斬撃は容赦なく叩き込まれ、しかし剣は受け止められた。
金属がぶつかり合う高い音とそれらを打ち合わせる時に生じる反動を感じながら、千勢はTさんの手際の良さに感心した。
やはり、と心に前置きし、
「鍛錬は怠ってはいないか」
Tさんは≪ケサランパサラン≫への祈祷強化で硬度を千勢の振るう剣に耐えられるまで引き上げた≪フィラデルフィア計画≫の鉄箱の、その裁断された一部で剣を受けながら答える。
「まあな」
鉄片が強く払われて両者の距離が開く。
「勤勉結構。――では、ちょいと本気で潰しにいくぞ」
千勢は手を浅く広げ、宣言した。
「――私は、とても綺麗だ」
●
「……は?」
目に見えないオーディエンスに向かって手を広げているようにしか見えない千勢の様子に思わず反応した舞の声を余所に、二人は戦いを再開する。
両者の速度は目に見えて増していた。
「はあぁっ!? ちょ、なんか今の台詞おかしくね?! 相手に訊ねるべきじゃね?!」
「何を言っているのだ馬鹿弟子の契約者。私は綺麗だろう?」
そう言う千勢の口は裂けてなどいない。舞はそれを確認した上で、
「いや、まあ確かに綺麗だけどさあ、自分で宣言とかどうなんだよ!?」
「ふふ、私のような大和撫子では口が裂けてもあんな自己主張は出来ない――つまり」
Tさんとぶつかり合う。
「逆説的に口が裂けてるということだな!」
「んなのありかよっ!?」
舞の言葉を聞いて千勢は満面に笑顔を浮かべた。
Tさんは呆れ顔で、
「舞、聞き流せ。師匠の契約都市伝説は≪口裂け女≫ではない」
「じゃあ今の何!?」
千勢は首を傾げた。
「お茶目なイタズラ……?」
「言ってる本人が疑問形なのはどうなんだ……」
「いい性格してるなぁ姉ちゃん!」
舞の返答に千勢はうむ、と頷いた。
「逸材だな、ツッコミとして」
「ああ、芸人気質なんだろう」
尚も何事か言っている舞を無視して二人は更に速度を上げた。
目に見えないオーディエンスに向かって手を広げているようにしか見えない千勢の様子に思わず反応した舞の声を余所に、二人は戦いを再開する。
両者の速度は目に見えて増していた。
「はあぁっ!? ちょ、なんか今の台詞おかしくね?! 相手に訊ねるべきじゃね?!」
「何を言っているのだ馬鹿弟子の契約者。私は綺麗だろう?」
そう言う千勢の口は裂けてなどいない。舞はそれを確認した上で、
「いや、まあ確かに綺麗だけどさあ、自分で宣言とかどうなんだよ!?」
「ふふ、私のような大和撫子では口が裂けてもあんな自己主張は出来ない――つまり」
Tさんとぶつかり合う。
「逆説的に口が裂けてるということだな!」
「んなのありかよっ!?」
舞の言葉を聞いて千勢は満面に笑顔を浮かべた。
Tさんは呆れ顔で、
「舞、聞き流せ。師匠の契約都市伝説は≪口裂け女≫ではない」
「じゃあ今の何!?」
千勢は首を傾げた。
「お茶目なイタズラ……?」
「言ってる本人が疑問形なのはどうなんだ……」
「いい性格してるなぁ姉ちゃん!」
舞の返答に千勢はうむ、と頷いた。
「逸材だな、ツッコミとして」
「ああ、芸人気質なんだろう」
尚も何事か言っている舞を無視して二人は更に速度を上げた。
●
おお……っ!
千勢は軽口を叩きながら、本気で潰しに行くこちらの動きについて来ているTさんの姿に舌を巻いていた。
剣で攻め込むこちらに対し、Tさんは取り回しづらい鉄片を巧みに操り、刃が噛まないように防いでいる。
「私の斬撃を、後付けの加護が与えられただけのその鉄片で防ぐか!」
足を払おうとすれば察して身を退くし、それでも無理に踏み込もうとすれば光弾が喰らいついてくる。
≪ケサランパサラン≫の補助のせいで踏み込みの強度が一歩ごとに変わり、戦闘の拍子を掴むのが難しい。
近接戦闘で強引に畳みかけようにも、上手くはぐらかされてしまう。
無理を押して仕掛けようとすれば、Tさんの加護が邪魔をする。彼の纏う加護とは≪ケサランパサラン≫が招く幸せだ。偶然が作為を持って千勢の動きを妨げる。
これら全ての戦闘における技能は、千勢自身が教えたものだ。――しかし、
……研鑽を積んだか! 数年前、最後に手合わせをした時よりも強くなっている……!
その事実に彼を育て鍛えた者として誇らかな充実感を抱く。
……しかしこの馬鹿弟子、≪ケサランパサラン≫との契約過程で色々と視すぎたせいか、以前はどこか自身の命に無頓着な感があったが……今はそれが無いな。
それがTさんを強くしたのだろうと思い、そこまで彼を変えた理由を考える。
答えは考えるまでもなくすぐに出た。
――護る者を得たからだろうな。
契約者であろう少女の姿を視界の端に入れて、千勢は内心で自身の出した答えに頷く。
Tさんの≪ケサランパサラン≫は持ち主に幸福を運んでくるというものだ。護る者を得た事で幸せの基準が上昇したのだろう。件の少女は、この場においてTさんを信頼の目で追っている。
それを見て千勢は思う。
良好な関係なのだろう……。
うむ、と千勢は納得と満足と笑みを得る。
つまりは――――
「愛か!」
「愛だ!」
両者の叫びと剣と鉄板が激突した。
千勢は軽口を叩きながら、本気で潰しに行くこちらの動きについて来ているTさんの姿に舌を巻いていた。
剣で攻め込むこちらに対し、Tさんは取り回しづらい鉄片を巧みに操り、刃が噛まないように防いでいる。
「私の斬撃を、後付けの加護が与えられただけのその鉄片で防ぐか!」
足を払おうとすれば察して身を退くし、それでも無理に踏み込もうとすれば光弾が喰らいついてくる。
≪ケサランパサラン≫の補助のせいで踏み込みの強度が一歩ごとに変わり、戦闘の拍子を掴むのが難しい。
近接戦闘で強引に畳みかけようにも、上手くはぐらかされてしまう。
無理を押して仕掛けようとすれば、Tさんの加護が邪魔をする。彼の纏う加護とは≪ケサランパサラン≫が招く幸せだ。偶然が作為を持って千勢の動きを妨げる。
これら全ての戦闘における技能は、千勢自身が教えたものだ。――しかし、
……研鑽を積んだか! 数年前、最後に手合わせをした時よりも強くなっている……!
その事実に彼を育て鍛えた者として誇らかな充実感を抱く。
……しかしこの馬鹿弟子、≪ケサランパサラン≫との契約過程で色々と視すぎたせいか、以前はどこか自身の命に無頓着な感があったが……今はそれが無いな。
それがTさんを強くしたのだろうと思い、そこまで彼を変えた理由を考える。
答えは考えるまでもなくすぐに出た。
――護る者を得たからだろうな。
契約者であろう少女の姿を視界の端に入れて、千勢は内心で自身の出した答えに頷く。
Tさんの≪ケサランパサラン≫は持ち主に幸福を運んでくるというものだ。護る者を得た事で幸せの基準が上昇したのだろう。件の少女は、この場においてTさんを信頼の目で追っている。
それを見て千勢は思う。
良好な関係なのだろう……。
うむ、と千勢は納得と満足と笑みを得る。
つまりは――――
「愛か!」
「愛だ!」
両者の叫びと剣と鉄板が激突した。
●
Tさんのスイングした鉄板と姉ちゃんが叩き込んだ剣が激突する衝撃に身体が震える。
……が、そんな事よりもとりあえずあの師弟がいきなり口走ったこっぱずかしいワードについて俺は考える。
「あいつらいきなり電波な事口走る前にこっち見てたよな……」
ってことはあの発言は俺に関係のある事なのか? 戦ってる最中にどういう事を考えたら答えが愛になるのかよく分かんねえけど、きっとあの師弟には通じるもんでもあるんだろ……たぶん。
「戦いが止まったわね」
Tさんと姉ちゃんのこっぱずかしいワードをスルーしたフィラちゃんが呟く。
そう言えば最後の激突から何も音がしない。二人も、互いに武器をぶつけ合った衝撃で弾き飛ばされてからは動く気配が無い。
「……どうなっちゃったの?」
「お姉ちゃん?」
モニカとリカちゃんが状況を理解できずに問いかけてくるけど、正直俺にもよく分からん。
そのまましばらくお互いに睨み合っていた二人は、やがてどちらからともなく力を抜いて息を吐き出した。
姉ちゃんが剣をぶらぶら振りながら言う。
「色々と確認できた。もういい、満足した」
「では話す気になったのか?」
鉄板をそこら辺に放りだしながらTさん。
「ああ、いいだろう。しかしその前に――」
姉ちゃんが手を軽く振ってケウ、と呼びかけた。それと同時に俺達に巻きついている毛が解かれて、
「モニカ!」
「フィラちゃん!」
いや、モニカだけケウの毛に巻きつかれたまま、姉ちゃんの所に移動したケウと一緒に連れて行かれた。モニカはケウの毛に絡まれながらも身を守るように身体を丸めている。それに対して姉ちゃんは余裕の表情で対峙する。
「Tさん!」
「いや、大丈夫だ」
Tさんが答える横、姉ちゃんは懐から液体の入った瓶を一つ取り出して蓋を開け、
「厄介な死霊を祓っておこう」
モニカが焦ったように言う。
「私はあっちに行きたいだけなんだよ?」
「それが困るんだ」
「……っ、死ねばよかっタノニ……っ!」
「残念だったな」
突然おどろおどろしい声音で喋ったモニカへと瓶の中の液体をぶちまけた。
……が、そんな事よりもとりあえずあの師弟がいきなり口走ったこっぱずかしいワードについて俺は考える。
「あいつらいきなり電波な事口走る前にこっち見てたよな……」
ってことはあの発言は俺に関係のある事なのか? 戦ってる最中にどういう事を考えたら答えが愛になるのかよく分かんねえけど、きっとあの師弟には通じるもんでもあるんだろ……たぶん。
「戦いが止まったわね」
Tさんと姉ちゃんのこっぱずかしいワードをスルーしたフィラちゃんが呟く。
そう言えば最後の激突から何も音がしない。二人も、互いに武器をぶつけ合った衝撃で弾き飛ばされてからは動く気配が無い。
「……どうなっちゃったの?」
「お姉ちゃん?」
モニカとリカちゃんが状況を理解できずに問いかけてくるけど、正直俺にもよく分からん。
そのまましばらくお互いに睨み合っていた二人は、やがてどちらからともなく力を抜いて息を吐き出した。
姉ちゃんが剣をぶらぶら振りながら言う。
「色々と確認できた。もういい、満足した」
「では話す気になったのか?」
鉄板をそこら辺に放りだしながらTさん。
「ああ、いいだろう。しかしその前に――」
姉ちゃんが手を軽く振ってケウ、と呼びかけた。それと同時に俺達に巻きついている毛が解かれて、
「モニカ!」
「フィラちゃん!」
いや、モニカだけケウの毛に巻きつかれたまま、姉ちゃんの所に移動したケウと一緒に連れて行かれた。モニカはケウの毛に絡まれながらも身を守るように身体を丸めている。それに対して姉ちゃんは余裕の表情で対峙する。
「Tさん!」
「いや、大丈夫だ」
Tさんが答える横、姉ちゃんは懐から液体の入った瓶を一つ取り出して蓋を開け、
「厄介な死霊を祓っておこう」
モニカが焦ったように言う。
「私はあっちに行きたいだけなんだよ?」
「それが困るんだ」
「……っ、死ねばよかっタノニ……っ!」
「残念だったな」
突然おどろおどろしい声音で喋ったモニカへと瓶の中の液体をぶちまけた。
●
「――――――――ッ!!」
得体のしれない液体がモニカにかかった途端、モニカの言葉にならない叫び声のような悲鳴が上がった。
その声に含まれる苦痛の色に、顔色を失ってフィラちゃんが駆け寄る。
俺もそれについていきながらTさんに非難の目を向ける。
「なんで止めなかったんだよ!」
「止めない方がモニカの為だからな」
は?
ひとしきり叫んだ後、その場に倒れこんだモニカに近寄ってみると、やけい甘ったるい臭いが鼻についた。
「うわ、なんだこの甘ったるい臭い!?」
「酒だ。素材が少々特殊なようだがな」
そう言いながらTさんは姉ちゃんに訊ねる。
「何かが消滅して行ったな。霊でも憑いていたのか?」
「そのようだ。どうやらフィラちゃんを使って行き先を示していたようだし、あの捨て台詞。大方≪道案内する死霊≫といったところだろう」
「どういう事なの?」
地面に倒れたモニカの様子を調べていたフィラちゃんが、顔を上げて問いかけてくる。姉ちゃんは中身が半分ほどになった瓶を軽く呷った。
「馬鹿弟子が言った通り、これは酒だ。今のはただその娘に憑いていた死霊を祓っただけだよ。その娘のここ最近の言動に違和感を感じたりはしなかったか?」
「そういえば……」
フィラちゃんが心当たりがあるのかそう答えて俯く。姉ちゃんは酒を飲み干して、
「安心しろ。気絶はしているだろうが、その娘自身に別段問題は無い」
とりあえず何の影響もないと言う事が分かって安心したのか、フィラちゃんはその場に座り込んで呟いた。
「そんな、一体いつ憑かれて……」
「今まで≪首塚≫の保護地にいたのだろう? そこに居られると都合の悪い者達の仕業だろうな」
「え?」
フィラちゃんが首を傾げる。
「どういうこった?」
「詳しく話そうか……」
姉ちゃんはそう言って、剣をケウの毛の中に突っ込んだ。
得体のしれない液体がモニカにかかった途端、モニカの言葉にならない叫び声のような悲鳴が上がった。
その声に含まれる苦痛の色に、顔色を失ってフィラちゃんが駆け寄る。
俺もそれについていきながらTさんに非難の目を向ける。
「なんで止めなかったんだよ!」
「止めない方がモニカの為だからな」
は?
ひとしきり叫んだ後、その場に倒れこんだモニカに近寄ってみると、やけい甘ったるい臭いが鼻についた。
「うわ、なんだこの甘ったるい臭い!?」
「酒だ。素材が少々特殊なようだがな」
そう言いながらTさんは姉ちゃんに訊ねる。
「何かが消滅して行ったな。霊でも憑いていたのか?」
「そのようだ。どうやらフィラちゃんを使って行き先を示していたようだし、あの捨て台詞。大方≪道案内する死霊≫といったところだろう」
「どういう事なの?」
地面に倒れたモニカの様子を調べていたフィラちゃんが、顔を上げて問いかけてくる。姉ちゃんは中身が半分ほどになった瓶を軽く呷った。
「馬鹿弟子が言った通り、これは酒だ。今のはただその娘に憑いていた死霊を祓っただけだよ。その娘のここ最近の言動に違和感を感じたりはしなかったか?」
「そういえば……」
フィラちゃんが心当たりがあるのかそう答えて俯く。姉ちゃんは酒を飲み干して、
「安心しろ。気絶はしているだろうが、その娘自身に別段問題は無い」
とりあえず何の影響もないと言う事が分かって安心したのか、フィラちゃんはその場に座り込んで呟いた。
「そんな、一体いつ憑かれて……」
「今まで≪首塚≫の保護地にいたのだろう? そこに居られると都合の悪い者達の仕業だろうな」
「え?」
フィラちゃんが首を傾げる。
「どういうこった?」
「詳しく話そうか……」
姉ちゃんはそう言って、剣をケウの毛の中に突っ込んだ。