「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん、エピローグに至るまで-神智学協会-05

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『死霊を放った者にこの場所がばれているかもしれない』
 そう言って姉ちゃんは俺達を連れて近くの、いつか≪ドナドナ≫と戦うことになった公園に来ていた。
 フィラちゃんはぶっかけられた酒を服で拭ってやると、気絶したままのモニカを抱いて姉ちゃんに付いて来た。
 ただ、姉ちゃんを警戒してか、一応中立っぽい立場にあるTさんや俺を常に間に挟んでいる。
 あからさまに警戒されてる様子に、姉ちゃんは「参ったな」と笑いながら、石畳で舗装された公園の隅に置いてあるベンチに座るよう、俺達を促した。
「――さて、初見の者も多いことだし、先程はバタバタしていて出来なかった自己紹介でもしようか」
 そう言って姉ちゃんは地面に伏せたケウの背に座ってTさんをビシッ、と指さした。どうやら自己紹介しろと言う事らしい。
 どうでもいいけど俺もケウに座りたい。暖かそうだ。
「Tさんだ。この場で互いに知らない人間は師匠が先程狙っていた、そこのモニカという娘くらいだな」
 そう自己紹介にもなっていない自己紹介を簡単にして、Tさんはフィラちゃんを見た。
「紹介を頼めるか? 藤宮由実」
「ええ」
 フィラちゃんは名前で呼んでもらえた事に軽く感謝して、腕に抱いたモニカへと視線を落とした。ハニーブロンドの嬢ちゃんは、酒をぶっかけられて憑いていたらしい霊を祓われてからずっと穏やかな顔で眠っている。
「この子はモニカ・リデル。数年前に都市伝説に追われていた所を私が偶々助けたのよ。
 ただ、その時この子の両親も居たのだけど、私は戦闘能力はほとんどないし、二人とも相当な深手を負っていたから助けられなかった……」
 フィラちゃんは息を吐き出す。
「モニカに霊を憑けたのだとしたらきっとその時の人達ね」
「ではこの子が追われていた理由などは?」
「細かい事は何も分からないわ。モニカも知らないみたいよ」
 そう言って首を振ったフィラちゃんは、千勢姉ちゃんを見た。
「あなたは知っているの? それともあの時追ってきていた人たちの仲間?」
 険呑な気配を隠さないフィラちゃんの言葉に、姉ちゃんは首を左右に振って答えた。
「私はモニカを追っていた者達の仲間では無い。その者達とは、モニカに死霊を憑けていた者達の事だな」
「モニカは誰かに狙われてるって事か?」
「そうなる……えーと、馬鹿弟子の契約者、名前は?」
 あ、そういや名乗ってなかったっけ。
「俺は伏見舞。Tさんと、あとこのリカちゃんの契約者やってるよ」
「やってるの!」
「そうか、舞にリカちゃんか。良い名だ」
 姉ちゃんはうんうんと頷き、
「そうだな、モニカは狙われている。そしてその理由もある程度分かっている。色々と説明を重ねなければならないし、そのためにはそこで私を警戒しているフィラちゃんにも私の知り合いの所まで付き合ってもらう必要があるんだ。だから、まあ警戒を解く事も兼ねて、まずは色々と私の事を話そう」
 姉ちゃんは自分を示すように手のひらを胸に当てた。
 触れた胸が震動しているのが服越しにも分かって若干俺はむなしいものを覚えた。
「私は千勢。高坂千勢(たかさかちとせ)だ。一応≪組織≫とかいう集団のT№という部署でT№1という偉い人間をやっている。――とは言っても、もうT№には、形式的に一番偉いという事になっているT№0と、私しか成員は残っていないがな」
「≪組織≫の№持ちって事は、えーっと……千勢姉ちゃんも黒服なのか?」
 たしか前、Tさんに≪組織≫の黒服には番号が振られるという話を聞いた。
 でも、見た感じ千勢姉ちゃんの服装はそこら辺の繁華街で見かけるような普通のもので、黒いスーツとかじゃ無い。
「あー、私は黒服じゃあない。ただの人間で、契約者だ。T№の一番偉い奴と懇意でな。そいつに力を貸すには組織の成員としての名を持っていた方が都合が良かったんだ」
 そう言って千勢姉ちゃんはTさんを見た。
「で、私はそこの男、今はTさんと呼ばれている奴の後見人兼師匠だったわけだ」
 Tさんは頷き、
「俺も暫定的にT№に組み入れられていたという事だな。今では鬼籍入りしているだろうと思うが、師匠が俺を見ても大して驚いていなかったという事は、俺の生存は≪組織≫でも認識済みなのか?」
「いや、他の部署は知らんだろう。少なくとも組織単位ではお前は死んだ事になっている。D№の黒服が≪夢の国≫の騒動以降も隠しているようだし、馬鹿弟子、お前も≪組織≫に認識されんよう立ち回っていたのだろう?」
「一応はそうだが……」
 Tさんが若干目線を逸らした。おれもリカちゃんも苦笑する。
 いろいろな事件に首突っ込んでたからなぁ……。
「T№のお偉いさんは≪夢の国≫の件でお前を失った事に責任を感じていたらしくてな。≪夢の国≫の革命が起きた二年前の秋祭り、その時の情報をかき集めてお前がどうやら生存しているらしい事を掴んだようだ」
「そうか」
「ああ、だからいつかお前に会えると良いと思っていたが……いや、まさかこんなに早く会えるとはな。それもこんなかわいい娘をひっかけていたとは驚きだ」
 笑みに目を細めて千勢姉ちゃんは俺を見てきた。なんというか、こういうもの言いはちょっと照れる……。
「いや、まあなんつーか、ありがと」
「素直なのはいいことだな、うん。馬鹿弟子は拾った時からかわいげが無かったから新鮮だ」
 姉ちゃんは快さげに言って、自分が椅子にしている白い毛むくじゃらの獣の背をポンと叩いた。
「こいつはケウ、都市伝説≪ケサランパサラン≫だ」
「これが?」
「けさらんぱさらん? お兄ちゃんと同じ?」
 フィラちゃんとリカちゃんが同時に疑問した。
 話に聞くような≪ケサランパサラン≫とは大きさ、というかそもそも生物的に全然違いすぎる気がする。千勢姉ちゃんはもう一度ケウの背を叩き、
「けうけげん、という妖怪を知っているか? ケサランパサランの正体の一つと言われている妖怪なんだが、そいつは白いけむくじゃらの犬を巨大化したような獣の姿をしている。ちょうどケウのようにな」
「じゃあこのケウは≪ケサランパサラン≫の派生形、ということなの?」
「大体その認識で間違いないよ、フィラちゃん」
 千勢姉ちゃんは指で宙に『希有希見』と書いて、
「漢字ではけうけげんをこう書く。その姿を見る事は稀であるという、けうけげんの性質をそのまま示す名だな。そしてケウは馬鹿弟子のように幸せを招くことはできないが、姿を隠す、隠形の結界を張る事ができる」
「それでさっき人は来ないって千勢姉ちゃん言ってたのか」
「あまり大事にしてはあの死霊を放った者達に気付かれる恐れがあったからな」
 多少やり方が荒いのには目をつぶれ、と千勢姉ちゃんは小気味良く笑う。
「あなたが私達を襲ったのは、あの死霊が憑いている事に気付いていたからなの?」
「その通りだ」
「何故師匠が藤宮由実達の動きに気付く事ができたんだ?」
 Tさんが千勢姉ちゃんに訊く。
「師匠はモニカをずっと監視していたわけでもないのだろう? にも関わらず何故モニカの異常を感知できた? それに≪フィラデルフィア計画≫で空間を長距離跳躍する藤宮由実に追いつけた事も気になる」
 千勢姉ちゃんは「追及が厳しいな」と苦笑しながら、懐から小さな機械を取り出した。
「なんてことは無い。モニカのバイタルサインやら現在地やらを送信してくれる機械の受信機を確保していたからな。これに従って来ただけだ。
 ≪フィラデルフィア計画≫に追いつけたのは単に運がよかっただけだな。この近辺の適当な距離をあちこち跳んでたかと思ったら、途中から徒歩移動し始めただろう?」
 そう話を振られたフィラちゃんは頷きを返す。
「モニカが、≪首塚≫が持っている島から連れていってと言ってきて、この子がわがままなんて珍しかったからついOKしてしまったの。どこに行きたいのか訊くと『あっち』って言って具体的な場所を言ってくれないから何度も跳ぶ羽目になったけれど、最終的にここ、学校町のどこかに行きたいらしいってことは分かって、昼からずっと歩きまわっていたわ」
「あの≪道案内する死霊≫も具体的な場所までは指示出来なかったようだな」
「そんなことどうでもいいわよ。それよりいつの間にこの子に変な機械を取り付けたの?」
 責め問う口調に千勢姉ちゃんが待て待てと掌を突き出す。
「取り付けたのは私じゃない。数年前にモニカを追っていた者達の一派だ」
「またそいつらかぁ……」
 俺はため息交じりに言った。リカちゃんが頭上から問う。
「その人たちって、だれなの?」
「それは……」
「――それはワタシ達の事だな?」
 千勢姉ちゃんの言葉に被せるように男の声が届いて来た。
「なんだ?」
 振り向くと、そこには上背のある、異様な格好をした二人の男が居た。二人の内、異常に背の大きい方が続けて口を開く。
「戦場以来だな。鬼神よ」



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