----っふ、と
視界に、小さな蜘蛛の姿が、映った時
来たか、とサンジェルマンは、己の予感が当たった事に、小さく苦笑した
視界に、小さな蜘蛛の姿が、映った時
来たか、とサンジェルマンは、己の予感が当たった事に、小さく苦笑した
「来ましたか、イクトミ」
「………」
「………」
サンジェルマンから、少し離れた位置で
小さな蜘蛛は、イクトミへと姿を変えた
ゆらゆらと、蜘蛛の足のような髪が揺れている
小さな蜘蛛は、イクトミへと姿を変えた
ゆらゆらと、蜘蛛の足のような髪が揺れている
「…………警告は、した」
…普段の、軽薄な様子とは違う
そこにいるのは、神
破滅のメッセンジャーとしての神の側面を出した、イクトミ
はるか高みから見下ろされているような、そんな錯覚を覚える
そこにいるのは、神
破滅のメッセンジャーとしての神の側面を出した、イクトミ
はるか高みから見下ろされているような、そんな錯覚を覚える
「わかっていますよ。だからと言って、私が諦めない事は知っているでしょう?」
「…ラプラスの悪魔の予知を聞いて、自暴自棄にでもなったか」
「………いつの間に覗いていたんです?まったく、趣味が悪いですね。私に惚れましたか?」
「いや、それはない」
「…ラプラスの悪魔の予知を聞いて、自暴自棄にでもなったか」
「………いつの間に覗いていたんです?まったく、趣味が悪いですね。私に惚れましたか?」
「いや、それはない」
素晴らしいまでに即答された
その瞬間だけ、イクトミが、常日頃見せていた軽い調子に戻る
……しかし、次の瞬間には、また、神としての顔に戻ってしまった
その瞬間だけ、イクトミが、常日頃見せていた軽い調子に戻る
……しかし、次の瞬間には、また、神としての顔に戻ってしまった
似合わない、と正直にサンジェルマンは考える
神としての神々しさを、威厳を兼ね備えたイクトミなど…………らしくない
あぁ、だからこそ、この蜘蛛神は「神でなどいたくない」と漏らしていた事があったのか
己には似合わないと、己らしくないと自覚して
しかし、その側面すらも、確かに自身の一面であると、嫌でも理解してしまっていて
…結局、彼は神でいたくなどないのだろう
ただのトリックスターでいたい
それが、このイクトミの願いなのだ
神としての神々しさを、威厳を兼ね備えたイクトミなど…………らしくない
あぁ、だからこそ、この蜘蛛神は「神でなどいたくない」と漏らしていた事があったのか
己には似合わないと、己らしくないと自覚して
しかし、その側面すらも、確かに自身の一面であると、嫌でも理解してしまっていて
…結局、彼は神でいたくなどないのだろう
ただのトリックスターでいたい
それが、このイクトミの願いなのだ
「さて……あなたは、警告を無視して私を消しにきましたか?」
「………」
「………」
イクトミは答えない
いや、小さく……首を、左右に振ったように見えた
無表情にサンジェルマンを見据える
いや、小さく……首を、左右に振ったように見えた
無表情にサンジェルマンを見据える
「…………人の子よ」
そして
サンジェルマンに、問い掛けてくる
サンジェルマンに、問い掛けてくる
「お前には、神の領域に踏み込んだと言う自覚がある。何をもって、神の領域に踏み込んだと考える?」
「…?死者を蘇らせる……その事では、ないのですか?」
「…?死者を蘇らせる……その事では、ないのですか?」
死者を蘇らせる
人の手の届かぬ領域
人には禁じられた領域
そこが、神の領域ではないのか?
人の手の届かぬ領域
人には禁じられた領域
そこが、神の領域ではないのか?
「…………否。死者蘇生は時として神にすら手の届かぬ領域。神にすら叶わぬ願い。神にも完全には手が届かぬ、未開の領域也」
「あなた方神にも…手が届かない、と?」
「神は万能に非ず。我ら神は、人の子達の想いより生まれし存在。人の子らを、我らを、真に生み出せし創造者より下級の存在。創造者達の箱庭に囚われている限り、我ら神は永遠に万能になどなり得ぬ」
「あなた方神にも…手が届かない、と?」
「神は万能に非ず。我ら神は、人の子達の想いより生まれし存在。人の子らを、我らを、真に生み出せし創造者より下級の存在。創造者達の箱庭に囚われている限り、我ら神は永遠に万能になどなり得ぬ」
イクトミが…酷く、疲れた表情をしているように、見えた
疲れきっているように、見えた
何かに抗おうとして、疲れきり、しかし、諦めようとはしていない
疲れきっているように、見えた
何かに抗おうとして、疲れきり、しかし、諦めようとはしていない
「死者蘇生を願い、生命創造を成し遂げたお前が、神の領域に踏み込んだと考えているならば…………お前は、我ら神の本質も、創造者達の本質も、何も理解できていない」
「…私達に、理解でもされたいのですか?人の子などと呼んで、人間を見下している貴方方が?」
「………否。人の子らと我らでは、考え方があまりにも違いすぎる。理解できる者は理解した者は……我らへの領域へと、足を踏み入れる事になる。我らの罪を、人の子らには背負わせたくない」
「なら……あなたは、今。何故、私の前に現れたのです?」
「…私達に、理解でもされたいのですか?人の子などと呼んで、人間を見下している貴方方が?」
「………否。人の子らと我らでは、考え方があまりにも違いすぎる。理解できる者は理解した者は……我らへの領域へと、足を踏み入れる事になる。我らの罪を、人の子らには背負わせたくない」
「なら……あなたは、今。何故、私の前に現れたのです?」
今回、一体、イクトミが何を自分に言い放ちに来たのか
サンジェルマンには、理解できない
イクトミとの会話から真意を引き出そうとしたのだが……まるで、靄がかかっているかのように、はっきりとしないのだ
サンジェルマンには、理解できない
イクトミとの会話から真意を引き出そうとしたのだが……まるで、靄がかかっているかのように、はっきりとしないのだ
「……人の子よ。お前は、ラプラスの悪魔に、死を予知された。塵すら残らず消滅すると」
「………えぇ」
「我にも、お前のその破滅の未来が見える。もはや、どう足掻こうとも逃れられぬほどに、確定的に」
「…わざわざ、それを伝えに来たのですか?」
「否」
「………えぇ」
「我にも、お前のその破滅の未来が見える。もはや、どう足掻こうとも逃れられぬほどに、確定的に」
「…わざわざ、それを伝えに来たのですか?」
「否」
ならば、何だと言うのだ
「……人の子よ。我らよりさらに上、創造者達。その名を聞いて、どのように考えた?」
「…物語における、作者のような存在でしょう?私達は、所詮作者が描く物語の中の登場人物でしかありえない。よって、その創造者の望む物語から逃れる事などできない……あなたが言いたいのは、そんな事なんじゃないですか?」
「お前の喩えは、間違っていない。我らは所詮、創造者達の玩具。弄ばれ、使い捨てられるだけ」
「…物語における、作者のような存在でしょう?私達は、所詮作者が描く物語の中の登場人物でしかありえない。よって、その創造者の望む物語から逃れる事などできない……あなたが言いたいのは、そんな事なんじゃないですか?」
「お前の喩えは、間違っていない。我らは所詮、創造者達の玩具。弄ばれ、使い捨てられるだけ」
わざわざ
そんな絶望を叩きつけに来たとでも、言うのか
そんな絶望を叩きつけに来たとでも、言うのか
「…ラプラスの悪魔の予知も、我が見た未来も、全ては、創造者達の予定。確定事項。我ら神も、人の子らも、それからは逃れられぬ」
「なら…」
「………………だが。奇跡を起こせぬ訳ではない」
「なら…」
「………………だが。奇跡を起こせぬ訳ではない」
……ちゃぽん、と
小石が、落ちたような錯覚
波紋が、辺りに広がったような気がした
小石が、落ちたような錯覚
波紋が、辺りに広がったような気がした
「…この世界は、ただ一人の創造者に造られし世界にあらず。複数の創造者達と、物語の観客達に観測されし世界」
「複数…ですか?小説の形式で言うところの、シェアード・ワールドノベル……?」
「故に………一人の創造者が確定させた未来は、時として歪む。ラプラスの悪魔が予知しようとも。我が破滅の未来をみようとも…それがどれだけ確定的であろうとも、時として、あっさりと、それは覆される」
「複数…ですか?小説の形式で言うところの、シェアード・ワールドノベル……?」
「故に………一人の創造者が確定させた未来は、時として歪む。ラプラスの悪魔が予知しようとも。我が破滅の未来をみようとも…それがどれだけ確定的であろうとも、時として、あっさりと、それは覆される」
それに、と
無表情だったイクトミの顔に……苦笑しているような、呆れているような、そんな表情が、浮かんだ
無表情だったイクトミの顔に……苦笑しているような、呆れているような、そんな表情が、浮かんだ
「更に、創造者は気まぐれ也。己が確定させた未来であろうとも、時としてあっさりと切り捨て、覆す……たとえ、過去に過ぎ去りし時であったとしても、場合によっては抹消し、「なかった事」へと変えてしまう」
「……私が、助かる未来があるとでも?」
「限りなく、無きに等しい。だが、257万8917分の1の奇跡が起こらぬとも、限らぬ……最も、お前が行動を、思考を改めぬなら、向かう先は、ラプラスの悪魔と我が見た破滅の未来だろう」
「……私が、助かる未来があるとでも?」
「限りなく、無きに等しい。だが、257万8917分の1の奇跡が起こらぬとも、限らぬ……最も、お前が行動を、思考を改めぬなら、向かう先は、ラプラスの悪魔と我が見た破滅の未来だろう」
ここまで、話して
はぁ……と、イクトミが、大きくため息をついた
神々しい雰囲気が、一瞬で、消える
はぁ……と、イクトミが、大きくため息をついた
神々しい雰囲気が、一瞬で、消える
「……あぁ、もう!こう言うのは俺らしくないってんだよ!!そもそも、俺の言葉程度でこの変態が動くかってんだ。俺が小石を落とした程度じゃ、変わりゃしねぇ」
「じゃあ、どうして、こうやって告げに来たのですか」
「………こっちの領域に、踏み込みたくなくても踏み込んじまって。俺たちの絶望と罪を背負っちまった餓鬼の、真似。それだけだ」
「じゃあ、どうして、こうやって告げに来たのですか」
「………こっちの領域に、踏み込みたくなくても踏み込んじまって。俺たちの絶望と罪を背負っちまった餓鬼の、真似。それだけだ」
再び、イクトミがサンジェルマンを見据える
神としての神々しさを、その身にまとって
神としての神々しさを、その身にまとって
「……人の子よ。我が告げし事を、信ずるも信じまいも、お前次第。我の干渉は、ここまでだ」
っふ、と
イクトミの姿が、掻き消える
代わりに、そこにいるのは、小さな、蜘蛛
イクトミの姿が、掻き消える
代わりに、そこにいるのは、小さな、蜘蛛
『……あ、そうだ』
頭に、イクトミの声が、響く
『干渉はここまで、つっても、それはお前が死ぬ場合だ。生き延びた場合は別な。場合によっては、エーちゃん共々、お前をどうにかしなきゃいけなくなるから』
「何ですか、人に生きられるかもしれない希望を与えておきながら」
『いやぁ、俺、エーちゃんの味方だから。お前のやってる事、「組織」的にバリバリアウトだからさー。「アメリカ政府の陰謀論」みたく見られたら困るから』
「何ですか、人に生きられるかもしれない希望を与えておきながら」
『いやぁ、俺、エーちゃんの味方だから。お前のやってる事、「組織」的にバリバリアウトだからさー。「アメリカ政府の陰謀論」みたく見られたら困るから』
いつもの調子の声
その声が、ゆっくりと、遠ざかる
その声が、ゆっくりと、遠ざかる
『あばよ、サンジェルマン。安心しろ、お前が死んだらお前の酒は全部俺がもらってやるから』
「………意地でも生き延びたいですねぇ、それは」
「………意地でも生き延びたいですねぇ、それは」
まるで、酒の席のような軽口を叩き合って
…そして…イクトミの気配が、完全に消える
蜘蛛の姿も、何時の間にか見えなくなった
…そして…イクトミの気配が、完全に消える
蜘蛛の姿も、何時の間にか見えなくなった
波紋が、広がる錯覚
波紋を作られた錯覚
波紋を作られた錯覚
それが、いつまでも、きえなかった
to be … ?