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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 恐怖のサンタ-a12

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uranaishi

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恐怖のサンタ 日常編 12


 山田家の朝は早い。
 どれくらい早いかと言えば、朝5時に起床してラジオ体操始めるおじいちゃんくらい早い。
 つーか、ぶっちゃけ早すぎる。

「…………ねみぃ」

 山田家一同の住居であるアパート前。
 俺は一人、ファッションセンスも何もないジャージ姿で凍えていた。
 ちらりと腕に巻いた時計を見れば、時刻は朝4時35分。おじいちゃんより早かった。
 まだ周囲の民家には、一つとして明りが灯っていない。
 太陽すらまだ出ていないこの時刻。光あるのは背後のアパートの二階。我が家くらいである。

「…………さみぃ」

 吐く息が白い。
 1月も後半になり、寒さもいよいよ本格的になってきている。
 いくら暖冬だ暖冬だと騒がれていても、寒いものは寒い。
 一応近代的な町並みではあるが、山々に囲まれた学校町の寒気は、一都市の比ではなかった。
 この町に住み始めてから、約一年と一ヶ月。
 二度目に体験するこの冬の寒さも、未だに慣れてはいない。
 後ニ、三回でも経験すれば慣れるのだろうか。慣れるといいな。

「…………ちょ、つーか遅くね? 俺風邪ひいちゃうよ? 俺風邪ひいて寝込んじゃうよ?」

 凍えるように呟いた独り言も、北風にさらわれて消える。
 辺りには人っ子一人おらず、待ち人も来ない。
 ……虚しかった。

「くそ……ウサギは寂しいと死んじゃうんだぞ」
「アァ? ソレコソ都市伝説ダロォガ」

 ――――辺りには自分一人だけだと思っていた所に、想定外の返事。
 また一人寒々しい独り言を呟いたつもりだっただけに、喜べばいいのか恥ずかしがればいいのか複雑な気分になる。
 声はジャージ上方、機能性を重視したはずの簡素な服にしては珍しい胸ポケットからだ。
 いつの間に潜り込んだのか、小さな黒い影が顔をちらりと外へ覗かせる。
 若干息苦しそうなのを見ると、少しの間そこに入り込んでいたのかもしれない。

「居たのかよ」
「ソリャ離レラレネェカラナァ。ツーカ、サッキカラテメェノへたれタ声ヤラ心ノ声ヤラガまじウゼェ」
「心の声は覗いちゃ駄目だろ……」 

 のっけから毒舌全開、舌も全開までチロチロと伸ばしているのが、胸ポケットの住人である。
 外から見た姿は子蛇。茶褐色の斑と赤い舌がなんとも愛くるしい、となぜかご近所さんで評判だったりする。俺には理解できないけれど。
 目とか属とかの詳しい事は不明。
 以前見たことのあるマムシみたいだなぁ、なんて思った事をそのまま言ったら怒られたので、多分マムシではない。

 ――――この一見するとただの子蛇な彼。これでも一応都市伝説である。
 都市伝説的には「イナジナリーフレンド(想像上の友達)」と呼ばれるらしいこの蛇を、俺は微妙な親しみと茶化し(比率1:9)を込めて「デビ田」と呼んでいる。
 え? デビ田の都市伝説としての能力?
 残念ながら無い。ちょっと前までは「悪魔の囁き」なんて格好いい感じの都市伝説だったのだが、今は落ちぶれて(本人的には「進化」して)そこに「在る」だけの存在である。

「いや、つーか居たんなら声かけろよ。何だかいたたまれないだろ、主に俺が」
「テメェノ都合ナンテ知ラネェヨ。ツーカイツマデ外デ突ッ立ッテルツモリナンダテメェ。寒ィダロォガ」
「いいじゃん! お前ポケットの中にいるからいいじゃん! 俺なんて外で一人寂しく凍えてるんだぞ……」
「馬鹿野郎。テメェガ寒ケリャ俺様モ寒ィンダヨ、くそガ。忘レタノカ」

 ……訂正。デビ田にも一つだけ、全く無意味な能力がある。
 曰く「感覚の共有」。
 「悪魔の囁き」時代に、取り憑いた先の宿主である俺の感じた事とか思った事が、そのままデビ田にトレースされるらしい。しかも強制で。
 最早プライベートも何もあったもんじゃない。俺にとってもデビ田にとっても、完全に負の能力である。

「――――いやまぁ、確かに遅いけどなぁ……」

 両手を交差させて体を抱きしめながら、アパートの二階を見やる。
 明りの向こうで黒い影が幾つか動いているところを見ると、未だに準備中らしい。

 ――今日は、というより今日も、俺たち山田家の仕事の日である。
 一日の労働時間平均10時間。休み不定期。
 どこぞのブラック企業もびっくりの勤務条件なのは、業務内容が「都市伝説の退治」なんてブラック所の騒ぎじゃないからだ。
 さらに詳しい内容紹介は省くとして、退治屋の朝は早い。
 真夜中限定。早朝限定なんて都市伝説が跋扈しているせいで、ここ数日まともに寝た記憶が無い。
 勿論、基本的にそこまで酷い状態になるのは俺だけで、他山田家民はある程度の睡眠時間をきちんと確保しているのだが、それでも今日のような「総出」の日が出てきてしまう。

 現状、俺は着替えを始めた女性陣に追い出され、彼女達が降りてくるのを待っているわけなのだが

「オセェ」
「遅いな」

 男性と違って、女性には色々あるらしい。
 寒空の下、俺とデビ田は二人でしばらくの間、体を縮こまらせていた。


【Continued...】



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