誘拐と人食い 08
脳天を投げナイフで打ち抜かれた『ソニー・ビーン一家』の子供達
だが彼らは何事も無かったかのようにそのナイフをずるりと引き抜き、手に入れた刃物でそのまま襲い掛かってくる
「どこまで無敵なのよ、こいつら!」
悲鳴じみた声を上げながら、それでも手持ちの武器を使わざるを得ない軽業師の女
「少なくとも『絶対に負けない』程度にだ。つまりこっちは、引き分けか負けで、被害を最小限に抑えるしか無いわけだ」
片手横撃ちの拳銃で迫る子供達を撃ち落すサロリアス
子供達は衝撃で跳ね飛ばされても即座に起き上がり向かってくる
「梨々、逃げるための足を呼ぶ。俺が手を止める一分をなんとか埋めろ」
「無茶言うっスね。まー社長に頼られるのも良い気分なので頑張るっスよ」
梨々はにへらと笑い、サロリアスの懐から拳銃を二丁抜き取ると、それを両手に構えてすうっと目を閉じる
「あっしは体力無いんスからね? マジで一分が限界っスよ」
「充分だ、頼む」
そう言うとサロリアスは、すぐに銃を下ろし携帯電話の番号を素早く打ち込む
その隙を逃すかと言わんばかりに一斉に動き出した子供達を、目を閉じたままの梨々が放った銃弾が纏めて叩き落す
だが梨々もまた正確かつ迅速な動きをするために、筋肉や関節を無理矢理酷使している
それまでギリギリだった戦線を一人で二人分支えるという事の無茶が、ものの数秒でずしりと全身に圧し掛かってくる
そして、ふと
思考の読み取り先を向かってくる敵から周囲一帯に切り替えた為に、梨々はそれを読み取る事ができた
「そこの優男! ピエロから離れるっス!」
襲ってくる子供達を撃ち落しながら、唐突に梨々が叫んだ
「おい、そりゃ一体どういう」
暴れ回るライオンの攻撃を潜り抜けてくる子供達を鞭で迎撃していた猛獣使いの男が、怪訝そうに問い返したその時
その腹から血に濡れた人骨を削り出したの刃が飛び出していた
「な、んだ……と……?」
ぐり、と刃が捻られ
血を吐いて倒れる猛獣使いの男
長らく『人攫いサーカス』に取り込まれていた、いや、潜り込んでいた『ソニー・ビーン一家』の子供の一人は、家族との再会を喜ぶように笑顔の化粧の下で微笑んでいた
だが彼らは何事も無かったかのようにそのナイフをずるりと引き抜き、手に入れた刃物でそのまま襲い掛かってくる
「どこまで無敵なのよ、こいつら!」
悲鳴じみた声を上げながら、それでも手持ちの武器を使わざるを得ない軽業師の女
「少なくとも『絶対に負けない』程度にだ。つまりこっちは、引き分けか負けで、被害を最小限に抑えるしか無いわけだ」
片手横撃ちの拳銃で迫る子供達を撃ち落すサロリアス
子供達は衝撃で跳ね飛ばされても即座に起き上がり向かってくる
「梨々、逃げるための足を呼ぶ。俺が手を止める一分をなんとか埋めろ」
「無茶言うっスね。まー社長に頼られるのも良い気分なので頑張るっスよ」
梨々はにへらと笑い、サロリアスの懐から拳銃を二丁抜き取ると、それを両手に構えてすうっと目を閉じる
「あっしは体力無いんスからね? マジで一分が限界っスよ」
「充分だ、頼む」
そう言うとサロリアスは、すぐに銃を下ろし携帯電話の番号を素早く打ち込む
その隙を逃すかと言わんばかりに一斉に動き出した子供達を、目を閉じたままの梨々が放った銃弾が纏めて叩き落す
だが梨々もまた正確かつ迅速な動きをするために、筋肉や関節を無理矢理酷使している
それまでギリギリだった戦線を一人で二人分支えるという事の無茶が、ものの数秒でずしりと全身に圧し掛かってくる
そして、ふと
思考の読み取り先を向かってくる敵から周囲一帯に切り替えた為に、梨々はそれを読み取る事ができた
「そこの優男! ピエロから離れるっス!」
襲ってくる子供達を撃ち落しながら、唐突に梨々が叫んだ
「おい、そりゃ一体どういう」
暴れ回るライオンの攻撃を潜り抜けてくる子供達を鞭で迎撃していた猛獣使いの男が、怪訝そうに問い返したその時
その腹から血に濡れた人骨を削り出したの刃が飛び出していた
「な、んだ……と……?」
ぐり、と刃が捻られ
血を吐いて倒れる猛獣使いの男
長らく『人攫いサーカス』に取り込まれていた、いや、潜り込んでいた『ソニー・ビーン一家』の子供の一人は、家族との再会を喜ぶように笑顔の化粧の下で微笑んでいた
―――
「ねぇ、ホントに行くの? このルートを下手に進むと到着地点は『あの世』だからね?」
本来ならカーナビがセットされているであろう場所に、どういう仕掛けか体勢を崩す事なく張り付くように座り込んだ少女
大型トラックの運転席で、運転手の青年は笑う
「じゃあ、行かなかったらどうなる?」
「遠回りしてこの町ごと『あの世』逝き」
「じゃあ今のうちに手を打った方が良いだろ? あの人、支払い良いし」
不満げに頬を膨らませる少女、『あの世送りのカーナビ』
「引き返すなら死なないよ? それにほら、とりあえずこの町から逃げれば良いんだから。ほらそこの交差点を右に行けばとりあえず回避……って左はダメだってばー!」
歩行者の気配が無いのを感知してか、ろくに減速もせずにトラック後部を横滑りさせながら
トラックは町外れの目立つテントに向けて、むしろ加速すらする勢いだった
「俺はさ、お前のナビを信頼してるんだけどなぁ」
「それを言われるとなぁ」
死へと向かう道が判る能力
それは転ずれば、死を避ける道が判るという事
「しょうがない、頑張るか」
少女はカーナビの位置から、ぽんと助手席の位置へと飛び移りシートベルトをしっかりと締める
「ナビ通りに運転してくんないと即死だかんね?」
「おうよ、運転は任せとけ」
トラックの前方には、広い空き地に建てられた巨大なサーカスのテント
「最短ルートで行くなら、骨組みのとこ避けて布をぶち抜いてくからね!」
「お前の示すルートは全部正しいさ!」
「オッケー! 角度微調整、もうちょい右、もうちょい、そこ! あたしの合図でアクセル全開、次の合図で全力ブレーキ!」
「了解!」
「カウントいくわよ! 3……2……1……ゴー!」
本来ならカーナビがセットされているであろう場所に、どういう仕掛けか体勢を崩す事なく張り付くように座り込んだ少女
大型トラックの運転席で、運転手の青年は笑う
「じゃあ、行かなかったらどうなる?」
「遠回りしてこの町ごと『あの世』逝き」
「じゃあ今のうちに手を打った方が良いだろ? あの人、支払い良いし」
不満げに頬を膨らませる少女、『あの世送りのカーナビ』
「引き返すなら死なないよ? それにほら、とりあえずこの町から逃げれば良いんだから。ほらそこの交差点を右に行けばとりあえず回避……って左はダメだってばー!」
歩行者の気配が無いのを感知してか、ろくに減速もせずにトラック後部を横滑りさせながら
トラックは町外れの目立つテントに向けて、むしろ加速すらする勢いだった
「俺はさ、お前のナビを信頼してるんだけどなぁ」
「それを言われるとなぁ」
死へと向かう道が判る能力
それは転ずれば、死を避ける道が判るという事
「しょうがない、頑張るか」
少女はカーナビの位置から、ぽんと助手席の位置へと飛び移りシートベルトをしっかりと締める
「ナビ通りに運転してくんないと即死だかんね?」
「おうよ、運転は任せとけ」
トラックの前方には、広い空き地に建てられた巨大なサーカスのテント
「最短ルートで行くなら、骨組みのとこ避けて布をぶち抜いてくからね!」
「お前の示すルートは全部正しいさ!」
「オッケー! 角度微調整、もうちょい右、もうちょい、そこ! あたしの合図でアクセル全開、次の合図で全力ブレーキ!」
「了解!」
「カウントいくわよ! 3……2……1……ゴー!」
―――
操手を失ったライオンが戸惑いを見せた隙に、その耳と延髄に刃を突き立てられ悶絶する
暴れてはいるもののその力は弱々しく、砂糖にたかる蟻のように集まる子供達を撥ね退ける事は出来なかった
主と共に動かなくなるライオンを眺めながら、ずるりと骨刀を引き抜く道化師
彼が立つのは既に崩れた防衛ラインの一角に既に食い込んだ位置
守られる位置にいた大、サロリアス、団長が無防備な姿を晒しているが、彼らが逃げると戦っている梨々、まぐろ、軽業師の女の背中を晒す事となる
「電話は済んだ。梨々、銃返せ」
「んな暇あるわけなでしょうが!?」
絶え間なく引き金を引き続ける梨々
弾丸が無限に出るものの、別に自動小銃のような機構ではない
弾丸を撃てば撃つだけ引き金を引かねばならず、それを機関銃のような速度でぶっ放していた梨々の指は、最早自分の意志ではなくただの疲労からくる痙攣で動いている有様だった
「しょうがねぇな……素手でアレを捌けるか?」
「まあ一人が相手ならなんとか」
血塗れの骨刀を下げ、じりじりと間合いを詰めてくる道化師を見て、とりあえず動きやすいようにと重心を落とした構えを取る大
頭を抱えて震えている団長は既に戦力として度外視されているようだ
派手な波状攻撃を受けている女性陣とは対照的に、一歩踏み込めば攻撃が届く距離で、静かに間合いを取り合う男性陣
先に動いたのは道化師だった
大きく身体を沈めて一気に間合いを詰めようと動き
「……え?」
足を縺れさせて派手に転倒した
そのまま足元を狙ってくるのかと視線を落とした、その瞬間
いつの間にか道化師の背後に潜んでいた『ソニー・ビーン一家』の子供達が、次々と道化師の背中を踏み台にして大に飛び掛ってきた
一人目の攻撃を避け、腕を掴んで後ろへ放り投げる
空中を泳いだ一人目は、そのまままぐろのバレーボールのようなアタックで敵陣に叩き返された
二人目の攻撃が頬を掠めたが、そのままいなして反対側へと投げ転がした
だが三人目の攻撃までは避けきれない
二人目までをいなす動きまで完全に読まれていたかのように、喉元目掛けて突き出される鋭利に尖った骨の槍が、肉を貫き鮮血を撒き散らす
「痛ぇだろうが、この野郎」
大の喉元をその腕で庇い、一瞬動きが止まったその鳩尾に痛烈な前蹴りを叩き込む
所謂ヤクザキックで大きく跳ね飛ばされた勢いで、腕を貫いていた槍が肉を引き千切りながら引き抜かれた
「すいません、元締め」
「これ以上的が減ると持たねぇからな」
コートの袖を真っ赤に染めて、顔色一つ変えずにそう返すサロリアス
「それにまあ、そろそろ時間だ」
携帯電話の液晶は、電話を掛けてからほんの数分しか経っていない事を告げている
だが救世主はその通り現れる
布を引き裂き、タイヤを軋ませる音と共に
威嚇するように明滅するヘッドライトと、派手に打ち鳴らされるクラクション
「お待たせしました! 荷物はどちらに!」
「女三人、男三人だ」
運転席から身を乗り出して叫ぶ青年に、サロリアスは告げる
「そんなにどうやって乗るのよ!? あんたは降りちゃダメだからね、すぐ発進できなきゃダメなんだから! 降りたらアウト、100%『あの世』行き!」
「でも荷台開けるなら俺がやんなきゃ。構造わからんだろ普通の人には」
その言葉に、大が即座に動く
「鍵貸して下さい。港で積み下ろし手伝ったりしてたんで、開け方は判ります」
「オッケ、任せた」
運転席から放り投げられた鍵を受け取って、即座に荷台の扉を開く大
「戦えない奴からだ、乗り込め」
「は、はひっ」
既に腰が抜けかけている団長を、蹴り飛ばすようにして荷台に放り込むサロリアス
「こっちに飛び込め! 乗ったら即座に出るぞ!」
続いて大が乗り込み、ふらふらと駆け寄ってきた梨々を引き摺り上げる
震える梨々の手から毟り取った拳銃で子供達を牽制しながら、軽業師の女とまぐろが文字通り飛び込んできたところで、サロリアスも荷台へと飛び込んだ
「全員乗った!出せ!」
「あいよー!」
後部扉が開けっ放しで固定された荷台から転がり落ちないように、それぞれが支え合うように身を強張らせる
とんでもない加速と共に、入ってきた場所とは逆方向にテントの布地をぶち破りながら加速するトラックを、流石の『ソニー・ビーン一家』の子供達も追う事は出来なかった
逃がした獲物の騒がしさが多くの人々を集めてしまう前に、仕留めた獲物を我が家へと運ぶべく
速やかに解体、運搬作業へと移行していったのだった
暴れてはいるもののその力は弱々しく、砂糖にたかる蟻のように集まる子供達を撥ね退ける事は出来なかった
主と共に動かなくなるライオンを眺めながら、ずるりと骨刀を引き抜く道化師
彼が立つのは既に崩れた防衛ラインの一角に既に食い込んだ位置
守られる位置にいた大、サロリアス、団長が無防備な姿を晒しているが、彼らが逃げると戦っている梨々、まぐろ、軽業師の女の背中を晒す事となる
「電話は済んだ。梨々、銃返せ」
「んな暇あるわけなでしょうが!?」
絶え間なく引き金を引き続ける梨々
弾丸が無限に出るものの、別に自動小銃のような機構ではない
弾丸を撃てば撃つだけ引き金を引かねばならず、それを機関銃のような速度でぶっ放していた梨々の指は、最早自分の意志ではなくただの疲労からくる痙攣で動いている有様だった
「しょうがねぇな……素手でアレを捌けるか?」
「まあ一人が相手ならなんとか」
血塗れの骨刀を下げ、じりじりと間合いを詰めてくる道化師を見て、とりあえず動きやすいようにと重心を落とした構えを取る大
頭を抱えて震えている団長は既に戦力として度外視されているようだ
派手な波状攻撃を受けている女性陣とは対照的に、一歩踏み込めば攻撃が届く距離で、静かに間合いを取り合う男性陣
先に動いたのは道化師だった
大きく身体を沈めて一気に間合いを詰めようと動き
「……え?」
足を縺れさせて派手に転倒した
そのまま足元を狙ってくるのかと視線を落とした、その瞬間
いつの間にか道化師の背後に潜んでいた『ソニー・ビーン一家』の子供達が、次々と道化師の背中を踏み台にして大に飛び掛ってきた
一人目の攻撃を避け、腕を掴んで後ろへ放り投げる
空中を泳いだ一人目は、そのまままぐろのバレーボールのようなアタックで敵陣に叩き返された
二人目の攻撃が頬を掠めたが、そのままいなして反対側へと投げ転がした
だが三人目の攻撃までは避けきれない
二人目までをいなす動きまで完全に読まれていたかのように、喉元目掛けて突き出される鋭利に尖った骨の槍が、肉を貫き鮮血を撒き散らす
「痛ぇだろうが、この野郎」
大の喉元をその腕で庇い、一瞬動きが止まったその鳩尾に痛烈な前蹴りを叩き込む
所謂ヤクザキックで大きく跳ね飛ばされた勢いで、腕を貫いていた槍が肉を引き千切りながら引き抜かれた
「すいません、元締め」
「これ以上的が減ると持たねぇからな」
コートの袖を真っ赤に染めて、顔色一つ変えずにそう返すサロリアス
「それにまあ、そろそろ時間だ」
携帯電話の液晶は、電話を掛けてからほんの数分しか経っていない事を告げている
だが救世主はその通り現れる
布を引き裂き、タイヤを軋ませる音と共に
威嚇するように明滅するヘッドライトと、派手に打ち鳴らされるクラクション
「お待たせしました! 荷物はどちらに!」
「女三人、男三人だ」
運転席から身を乗り出して叫ぶ青年に、サロリアスは告げる
「そんなにどうやって乗るのよ!? あんたは降りちゃダメだからね、すぐ発進できなきゃダメなんだから! 降りたらアウト、100%『あの世』行き!」
「でも荷台開けるなら俺がやんなきゃ。構造わからんだろ普通の人には」
その言葉に、大が即座に動く
「鍵貸して下さい。港で積み下ろし手伝ったりしてたんで、開け方は判ります」
「オッケ、任せた」
運転席から放り投げられた鍵を受け取って、即座に荷台の扉を開く大
「戦えない奴からだ、乗り込め」
「は、はひっ」
既に腰が抜けかけている団長を、蹴り飛ばすようにして荷台に放り込むサロリアス
「こっちに飛び込め! 乗ったら即座に出るぞ!」
続いて大が乗り込み、ふらふらと駆け寄ってきた梨々を引き摺り上げる
震える梨々の手から毟り取った拳銃で子供達を牽制しながら、軽業師の女とまぐろが文字通り飛び込んできたところで、サロリアスも荷台へと飛び込んだ
「全員乗った!出せ!」
「あいよー!」
後部扉が開けっ放しで固定された荷台から転がり落ちないように、それぞれが支え合うように身を強張らせる
とんでもない加速と共に、入ってきた場所とは逆方向にテントの布地をぶち破りながら加速するトラックを、流石の『ソニー・ビーン一家』の子供達も追う事は出来なかった
逃がした獲物の騒がしさが多くの人々を集めてしまう前に、仕留めた獲物を我が家へと運ぶべく
速やかに解体、運搬作業へと移行していったのだった
―――
「ああ、長年かけてコツコツと大きくしてきたサーカス団が、よもやこんな形で幕を閉じる羽目になるとは」
揺れる荷台の隅っこで、膝を抱えはらはらと涙を流す『人攫いサーカス』の団長
「コツコツも何も人攫ってりゃ、そのうち『組織』なりなんなりから討伐されてるだろうが」
腕の付け根を縛り上げ止血を施しながら、サロリアスが睨み付ける
「そんなにサーカス自体が好きなら、攫わんで普通に人を雇って育てろ」
「無茶を言わんで下さい。口裂け女に、綺麗って聞くなら裂けた口を整形してこいって言うようなもんですよ……存在意義を歪めたら、契約者持ちでもない限り別のとこが歪むもんです」
「無理強いはしねぇが、次にこの町で何かやらかしたら……『骨折治療の検体アルバイト』に送り込むぞ」
「や、やりゃあしませんよもう! 日本から出て、口減らしで捨てられる子供や戦災孤児でも拾い集めますよ」
「最初からそうしとけ」
「素養が無い子を育てるのは大変なんですよ。派手で煌びやかなステージをまた作り上げるのに、何年掛かる事やら」
まぐろに頭を撫でられ、大に差し出されたポケットティッシュで鼻をかむ団長
とても誘拐の被害者と加害者といった様子には見えなかった
「暢気なもんだな、お前ら」
やや呆れた様子のサロリアスに、大は苦笑を浮かべる
「結果としては、まぐろが戦力になってここにいる皆が助かったと思えばそれでいいかな、と」
「えらい? まぐろ、頑張ったよ?」
「うん、よく頑張った」
「えへへー」
頭を撫でられて、嬉しそうに微笑むまぐろ
「あーもー、頑丈な連中は素敵っスねぇ。あっしは三日ぐらいじっくり湯治に行きたいっス。社長、休暇下さい休暇」
「阿呆、これからそいつを連れて『誘拐結社』に落とし前つけさせに行くぞ。こいつがこの町で仕事しなきゃ、こんな余計な事にゃあ巻き込まれなかったんだ」
サロリアスの怒気に、やっと落ち着いた様子だった団長が身震いして縮こまる
「ここ数日の騒動分で使った金は、色つけて絞り取ってやるから覚悟しておけ」
「あのー……しばらくサーカスの公演も誘拐の仕事も無いみたいなんだけど、私はどうすれば」
おずおずと手を上げる軽業師の女
「済まん、サーカスがサーカスとして機能せん以上、ワシに養う甲斐性は無い」
「ちょっ!? 皆で一つの都市伝説なのにそりゃ無いですよ団長!?」
「車もテントも資材も財産も全部置いてきてしまったのに、これ以上ワシに何ができると!?」
「逆ギレられた!? 『ソニー・ビーン一家』とやらが引き上げていった後に回収すればいいじゃないですか!」
「あれが正真正銘『ソニー・ビーン一家』なら、あいつらの本質は人食いであり強盗だ! 金目のものは全部持っていかれとるわい!」
「って事は私の私物も!? こつこつ貯めてたお給料も!? ああもう、現金管理は止めて銀行口座作りましょうって経理に言われた時にやっとけば!」
団長の襟首を掴んでがくがくと揺さ振る軽業師の女
「うちから借りるっスか?」
「り、利息とかは」
「法定ぶっちぎりっス。闇金っスから」
床に突っ伏したまま、親指を立てて良い笑顔を浮かべる梨々に、軽業師の女はがっくりと膝をつく
「……そんなに広くないけど、うちに来るか?」
「えー!?」
見かねた大がそう声を掛けた途端、珍しくまぐろが不快感を露わにした抗議の声を上げる
「困ってる人は助けた方が良いと思うぞ。まぐろを攫ったけど、そんなに悪い人じゃないみたいだし」
「そうじゃなくてー!」
わたわたと手を振り回し、何かを思いついたように大の元へ駆け寄り
その腕にぎゅっと抱き付き、軽業師の女に向けてべーと舌を出すまぐろ
「意地悪をするもんじゃないぞ、まぐろ」
「意地悪じゃないもんー!」
ぷうと頬を膨らませ、ぐいぐいと大の腕を引っ張り抗議するまぐろ
そんな二人の問答を眺めながら、サロリアスは梨々に訊ねる
「性根は真っ直ぐな奴なんだが。ありゃ天然か?」
「ド天然っス。乙女心とか理解できないタイプっスね、ありゃ……まあ社長も人の事は言えねっスけど」
「何がだ?」
「別に何でもねっスよ」
かくして生き延びた面々を乗せたトラックは、町外れから人々が行き交う安全圏へと戻っていく
そして
揺れる荷台の隅っこで、膝を抱えはらはらと涙を流す『人攫いサーカス』の団長
「コツコツも何も人攫ってりゃ、そのうち『組織』なりなんなりから討伐されてるだろうが」
腕の付け根を縛り上げ止血を施しながら、サロリアスが睨み付ける
「そんなにサーカス自体が好きなら、攫わんで普通に人を雇って育てろ」
「無茶を言わんで下さい。口裂け女に、綺麗って聞くなら裂けた口を整形してこいって言うようなもんですよ……存在意義を歪めたら、契約者持ちでもない限り別のとこが歪むもんです」
「無理強いはしねぇが、次にこの町で何かやらかしたら……『骨折治療の検体アルバイト』に送り込むぞ」
「や、やりゃあしませんよもう! 日本から出て、口減らしで捨てられる子供や戦災孤児でも拾い集めますよ」
「最初からそうしとけ」
「素養が無い子を育てるのは大変なんですよ。派手で煌びやかなステージをまた作り上げるのに、何年掛かる事やら」
まぐろに頭を撫でられ、大に差し出されたポケットティッシュで鼻をかむ団長
とても誘拐の被害者と加害者といった様子には見えなかった
「暢気なもんだな、お前ら」
やや呆れた様子のサロリアスに、大は苦笑を浮かべる
「結果としては、まぐろが戦力になってここにいる皆が助かったと思えばそれでいいかな、と」
「えらい? まぐろ、頑張ったよ?」
「うん、よく頑張った」
「えへへー」
頭を撫でられて、嬉しそうに微笑むまぐろ
「あーもー、頑丈な連中は素敵っスねぇ。あっしは三日ぐらいじっくり湯治に行きたいっス。社長、休暇下さい休暇」
「阿呆、これからそいつを連れて『誘拐結社』に落とし前つけさせに行くぞ。こいつがこの町で仕事しなきゃ、こんな余計な事にゃあ巻き込まれなかったんだ」
サロリアスの怒気に、やっと落ち着いた様子だった団長が身震いして縮こまる
「ここ数日の騒動分で使った金は、色つけて絞り取ってやるから覚悟しておけ」
「あのー……しばらくサーカスの公演も誘拐の仕事も無いみたいなんだけど、私はどうすれば」
おずおずと手を上げる軽業師の女
「済まん、サーカスがサーカスとして機能せん以上、ワシに養う甲斐性は無い」
「ちょっ!? 皆で一つの都市伝説なのにそりゃ無いですよ団長!?」
「車もテントも資材も財産も全部置いてきてしまったのに、これ以上ワシに何ができると!?」
「逆ギレられた!? 『ソニー・ビーン一家』とやらが引き上げていった後に回収すればいいじゃないですか!」
「あれが正真正銘『ソニー・ビーン一家』なら、あいつらの本質は人食いであり強盗だ! 金目のものは全部持っていかれとるわい!」
「って事は私の私物も!? こつこつ貯めてたお給料も!? ああもう、現金管理は止めて銀行口座作りましょうって経理に言われた時にやっとけば!」
団長の襟首を掴んでがくがくと揺さ振る軽業師の女
「うちから借りるっスか?」
「り、利息とかは」
「法定ぶっちぎりっス。闇金っスから」
床に突っ伏したまま、親指を立てて良い笑顔を浮かべる梨々に、軽業師の女はがっくりと膝をつく
「……そんなに広くないけど、うちに来るか?」
「えー!?」
見かねた大がそう声を掛けた途端、珍しくまぐろが不快感を露わにした抗議の声を上げる
「困ってる人は助けた方が良いと思うぞ。まぐろを攫ったけど、そんなに悪い人じゃないみたいだし」
「そうじゃなくてー!」
わたわたと手を振り回し、何かを思いついたように大の元へ駆け寄り
その腕にぎゅっと抱き付き、軽業師の女に向けてべーと舌を出すまぐろ
「意地悪をするもんじゃないぞ、まぐろ」
「意地悪じゃないもんー!」
ぷうと頬を膨らませ、ぐいぐいと大の腕を引っ張り抗議するまぐろ
そんな二人の問答を眺めながら、サロリアスは梨々に訊ねる
「性根は真っ直ぐな奴なんだが。ありゃ天然か?」
「ド天然っス。乙女心とか理解できないタイプっスね、ありゃ……まあ社長も人の事は言えねっスけど」
「何がだ?」
「別に何でもねっスよ」
かくして生き延びた面々を乗せたトラックは、町外れから人々が行き交う安全圏へと戻っていく
そして
―――
「あいつらの住処さえ把握できれば、下水道全面制圧とか無茶をしなくてもなんとかなると判断しました」
「こんきすたどーるー」
「とりあえず隠蔽能力で僕達以上の能力者はそうそう居ないと思うので、自力で探索したいと思います」
「えくすぷろーらー」
「さっちゃんから地図は貰えたので、あとは現地の状況を確認して。例の手でいけそうなら、人員を集めようと思います。無限に増えるとかよりは簡単に集めれそうだし」
「すかうとー」
「それじゃあ、出発進行ー」
「れっつごー」
いつもの黒服姿ではなく、洞窟探検でもするかのような服装のπ-Noの二人
これから食人強盗一家の住処であり、数多の爬虫類や巨大生物が跋扈する学校町の下水道大迷宮に乗り込むとは思えない軽いノリである
『いつ』という認識を自在に偽装する『フライング・スパゲティ・モンスター』
『ある』と『ない』という認識を自在に偽装する『インヴィジブル・ピンク・ユニコーン』
この二つの能力が同時に使われた時、この二人を認識できる存在はこの世界には存在しなくなる
なにせパロディカルトとはいえ、格で言えば創造神級の存在である
戦闘や暗殺に使えばこれ以上無いはずの能力ではあるのだが、この二人はそんな考えも身体能力も持ち合わせていない
だからこそ契約ができて、呑み込まれて黒服となる程度で済まされているのだろう
かくして、たった二人の探索作業はここに始まったのであった
「こんきすたどーるー」
「とりあえず隠蔽能力で僕達以上の能力者はそうそう居ないと思うので、自力で探索したいと思います」
「えくすぷろーらー」
「さっちゃんから地図は貰えたので、あとは現地の状況を確認して。例の手でいけそうなら、人員を集めようと思います。無限に増えるとかよりは簡単に集めれそうだし」
「すかうとー」
「それじゃあ、出発進行ー」
「れっつごー」
いつもの黒服姿ではなく、洞窟探検でもするかのような服装のπ-Noの二人
これから食人強盗一家の住処であり、数多の爬虫類や巨大生物が跋扈する学校町の下水道大迷宮に乗り込むとは思えない軽いノリである
『いつ』という認識を自在に偽装する『フライング・スパゲティ・モンスター』
『ある』と『ない』という認識を自在に偽装する『インヴィジブル・ピンク・ユニコーン』
この二つの能力が同時に使われた時、この二人を認識できる存在はこの世界には存在しなくなる
なにせパロディカルトとはいえ、格で言えば創造神級の存在である
戦闘や暗殺に使えばこれ以上無いはずの能力ではあるのだが、この二人はそんな考えも身体能力も持ち合わせていない
だからこそ契約ができて、呑み込まれて黒服となる程度で済まされているのだろう
かくして、たった二人の探索作業はここに始まったのであった