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連載 - ケモノツキ-13

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「歩み止めるは叶わず」より

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ケモノツキ_13_「教会」は警告する


 学校町とは不干渉であったはずの「教会」。
 それが明らかな害意を持って、学校町に進入してきた。
 そして、「学校町に何かが起きる」と警告してきた
 「協会」は敵ではないのか?それなのになぜ警告を?「教会」の目的は?
 答えの出ぬ問題に、悠司は半ば混乱していた。

「……「協会」が学校町を…襲う?」
『焼き尽くされるか凍りつかされるって、結構ヤバいんじゃない?』
『主、すぐにでも黒服に報告するべきです。』
「そうだ、黒服さんに報告して「組織」に止めてもら……。」

 携帯電話に伸ばされた手が止まる。
 「組織」に報告することが一番正しい方法であると、理解はしている。
 だが、先ほどのカインの態度と司祭の言葉をみると、二人は親しげな間柄に思えた。
 カインは自分を信頼してくれていて、その結果、司祭は悠司へ警告をしてくれた。
 その双方の信頼を裏切るような行為に、悠司は戸惑いを覚える。

『おい主、なにボーっとしてんだよ。報告すんじゃねーのか。』
「……黒服さんに報告したら、あの人…「組織」」に狙われるんじゃ…。」
『そうなんじゃない?「組織」ってそういうもんだし。』
「それって、僕を気遣って警告してくれた人を、僕の手で危険に晒す、ってこと……だよね。」
『じゃあ学校町が壊されるのを黙って待つってのか?』
「そ…それは……。」

 わかっている。そんなことはできるはずが無い。許されるはずが無い。
 二人の信頼を失うことと、学校町全体の危険を天秤にかければ、答えは明らかだ。
 だが悠司は、そこまで割り切って考えることはできない。

 そんな悠司の心中を察して、タマモが悠司に話しかける。

『主、先の司祭は、こちらが何らかの組織に加入していることを悟ったと思われます。そして、その上で警告してきました。
 ならば自分の話した情報が、私たちの組織に流れることも見越している…とは考えられませんか?』
「それは…そうかもしれない。でもそれって、「協会」への裏切り行為じゃ…?」
『警告した理由は、主がカインの縁者だったから…と言ってはいましたが、それも本音かどうかはわかりませんね。』
『ホントはあんなことしたくないんじゃない?誰かに止めて欲しいとか。』
『その可能性も考えられますね。いずれも今は憶測にすぎませんが。』

 あの司祭は、悠司が「組織」に報告することを望んでいるのかもしれない。
 タマモたちの言葉を受け、悠司はそう考えた。
 しかし今度はカインのことが頭をよぎる。
 カインと親しい同胞を「組織」へ売る行為に、悠司は再び悩む。

「でも…カインさんと親しい人を危険に晒すなんて、そんなのカインさんが……」
『いつまでもうじうじ言ってんじゃねーよ鬱陶しい。じゃあカインの野郎に直接聞いてみりゃいいだろうが。』
「…えっ?」
『あ、それいいかもー。それが一番わかりやすいじゃん?』
「で、でもさっきの人、自分が言ったということは伏せて欲しいって言ってたけど…。」
『そこは適当に誤魔化しましょう。それくらいならどうとでもなりますよ。』
『今ならまだ俺が匂いであいつを追えるぞ。どうするんだ、主?』

 あの司祭が「組織」への報告を良しとして、カインもそれを良しとするなら、悩む道理はどこにもない。

「…うん、わかった。お願い、タイガ。カインさんを探し出して。」

 そう言って目を閉じる悠司。
 直後、タイガが目を開き、周囲を見渡しながら気だるそうに頭をかいた。

「戦えねぇのはつまんねぇな……。めんどくせぇからさっさと終わらせるぞ。」

 タイガは辺りの匂いを数回嗅ぐと、カインの去った方向へむけて走り出した。

『ねえタマモ。質問を誤魔化すって言ってたけど、どうすればいいの?』
『そうですね…。まず話す内容ですが――――』

   ・
   ・
   ・

 



 既に日は落ちて暗くなった学校町を、タイガは迷うことなく走っていく。
 雪の降る中でもタイガの嗅覚は、確実にカインの匂いを捕らえていた。
 そしてついに、前方に見知った後姿を見つけた。
 後ろから走ってくる音に気付いたのか、カインが後ろを振り返った。

「悠司…?」
「やっと見つけたぜ……。主がお前に話があるってよ。じゃ、あとは勝手にしろ。」

 タイガは目を閉じ、悠司に体を明け渡す。
 そして襲い掛かる筋肉痛に、悠司は雪の上に崩れ落ちた。

「ゆ、悠司ッ!?大丈夫か!?」

 崩れ落ちた悠司に駆け寄るカイン。
 その様子を見て、以前と同じ能力の代償だと判断したカインは、悠司に手をかざす。
 すると優しい光が悠司を包み、その体を癒していく。

「す、すみませんカインさん……。」
「気にしなくていい。だが、そうまでして俺を探して一体どうしたんだ?」
「……カインさんに、相談したいことがあるんです。聞いて、もらえますか?」

 悠司はカインの目を見つめる。
 その目から深刻さを感じ取り、カインは深く頷いた。

「わかった、俺でよければ相談に乗ろう。」
「……ありがとうございます。」

 一度深く深呼吸をしてから、悠司はゆっくりと話し始めた。

「僕の友人が……悪いことをしようとしてるのを知ってしまったんです。
 それを止めたいけれど、僕の力ではどうすることもできなくて……その友人を止めるよう、他の人にお願いしようと思っているんです。
 でもそうすると、その友人は一生辛いことになるかもしれない……。かといって何もしなければ、関係のない多くの人が不幸になる。
 ……もしカインさんならこういうとき、どうするべきだと思いますか?」

 カインの目を真っ直ぐ見つめながら、悠司はその答えを待つ。



ケモノツキ_13_「教会」は警告する】    終

 


「答える者」へ続く



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