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連載 - ケモノツキ-12

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ケモノツキ_12_公園のベンチにて



「…ならば、悠司。俺に、この国の都市伝説を、教えてくれないか?」
「え…僕が、ですか?」
「あぁ。迷惑でなければ、だが。」

 公園のベンチに並んで腰掛ける、カインと悠司。
 カインの瞳が、悠司をじっと見つめる。

 悠司は一瞬悩む。
 僕なんかが人にものを教えるなんてできるのか、と。
 目を伏せながら、カインに言葉を返す。

「迷惑だなんて…むしろ、嬉しいです。」

 だが、一瞬で改める。
 カインさんは、僕を頼ってくれた。
 なら僕は、その気持ちに精一杯答えよう。
 悠司は顔を上げ、カインの瞳を見つめながら、言葉をつむぐ。

「僕に出来ることなら、なんでもします。」
「…ありがとう、悠司。」

 お礼の言葉と共に、カインは悠司に微笑む。
 その微笑につられるように、悠司もまた、微笑んだ。

   ・
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「えっと…まずは何から説明したらいいのか…。」
『んなもん適当でいいんだよ。』
『それでも問題ないとは思いますが、危険度や知名度が高いものから…が妥当でしょうか。』
『んーっと、町中で遭遇する奴で危険度No.1っていえば…兄貴?』
『……否定できませんね。』

 あれは色々な意味で危険だ。色々な意味で危険だ。
 悠司自身は「色々な意味」については理解していないが、危険な都市伝説だということは把握している。

「じゃあまずは、危険度が高くて遭遇しやすい、「兄貴」という都市伝説を。」
「アニキ?Brotherのアニキか?」
「名前のいわれはちょっと僕にはわからないです…。ただ、そう呼ばれているので。」
「いや、気にする必要はない。その「アニキ」は、何が危険なんだ?」
「えっと、まず、筋力がとても強いです。それと、ピンクのオーラみたいなものを出してパワーアップする…とも聞いています。」
「ピンクのオーラ…東洋に語られる”気”のようなものか。」
「詳しくはわかってないんですが、似たようなものらしいです。」
「なるほど、気をつけるとしよう。その「アニキ」はどのような姿をしてるんだ?」
「あ、すみません。見た目は体の大きいボディービルダーで…服を脱いでることが、多いです。」
「…この町では、ピンクに光るボディービルダーが裸で町中を歩いているのか?」
「え、えっと、アレは特例というかなんというか…。」

 どう説明したものかと、しどろもどろになる悠司。
 このままでは、学校町に対して間違った印象を持たれかねない。
 ――――あながち間違っているともいえないが。

『あいつらは変態だから仕方ないよねー。』
「あいつらは変態なので仕方な……あっ。」
「ヘンタイ?それはどういうものだ、悠司?」
「あ、う…えーっと……。」

 再びしどろもどろになる悠司。

『主、話題を変えましょう。他の情報を。』
「そ、それより、危険な理由がもう一つあって!主に…というか9割以上、男性しか襲わないらしいです。なので、本当に気をつけてください。」
「なるほど、男しか襲わない裸のボディービルダーで、ヘンタイか…。」
「最後のは忘れてくださいっ!?」
『おい、お前のせいで変な言葉覚えてんぞ。』
『ま、まぁいいじゃない。いぶんかこーりゅーって大事よ?』
『変態を文化としてとらえるのはどうかと思いますが…。』
「凄く…やっちゃいけないことをしてしまったような気が…。」

 うなだれて頭を抱える悠司を、不思議そうに見つめるカイン。

「…落ち込んでるようだが、俺が何かしたのだろうか?」
「い、いえ!カインさんは何も!僕が迂闊だったといいますか…事故といいますか…。」
「そうか…。何があったのか知らないが、俺は何も気にしてないぞ。」

 むしろ気にされたら申し訳なさすぎます!
 と心の中で叫びつつ、変態という言葉を忘れてくれるよう全力で祈る悠司。

「…それより、この町には他にも多くの都市伝説がいるのだろう?続けてくれると、ありがたいのだが…。」
「は、はい!すみません!」

 そうだ、当初の目的を忘れちゃいけない。
 たとえ変態という言葉を覚えてしまったとしても、それで警戒心が強まるなら、なんら問題はないのだ。
 と、自分を無理矢理納得させ、顔を上げて再びカインに向き直る。

「えっと、有名で目撃件数が多いものから…で、いいですか?」
「ああ、悠司のやりやすい方法でかまわない。」
「ありがとうございます。じゃあ、一番目撃件数が多い「口裂け女」という都市伝説から…。見た目は赤い服で……」

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 公園のベンチに並んで語り合う、カインと悠司。
 その光景を、金の瞳をした小鳥が近くの木の上からじっと見つめていたが、
 悠司がその視線に気付くことは、なかった。



ケモノツキ_12_公園のベンチにて】    終

 





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