「答える者」より
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ケモノツキ_14_カイザー司祭の真実と歪曲
ファーティマの手を優しく握りながら、悠司はカインの言葉を反芻する。
カインはカイザー司祭を信用しており、またカイザー司祭もカインを大切にしているのだと理解する。
ふと、カイザー司祭の言っていたことを思い出す。
カインはカイザー司祭を信用しており、またカイザー司祭もカインを大切にしているのだと理解する。
ふと、カイザー司祭の言っていたことを思い出す。
―――できれば。彼にも、学校町から離れるよう、告げてください………私が言った事は、伏せて
カイザー司祭の意を汲むのであれば、カインに伝えるべきだろう。
だがどうやって?
こんなにも危険なことを何故知っているかと聞かれたら、どう答えればいい?
カイザー司祭から聞いた、と言えば、カイザー司祭の意に反することになってしまう。
風の便りに、と言っても、きっと信じてもらえないだろう。
「組織」の情報だと言えば、信じてくれるかもしれない。
だが、自分が「組織」所属だと知ったら、カインは自分のことをどういう目で見るのだろうか。
だがどうやって?
こんなにも危険なことを何故知っているかと聞かれたら、どう答えればいい?
カイザー司祭から聞いた、と言えば、カイザー司祭の意に反することになってしまう。
風の便りに、と言っても、きっと信じてもらえないだろう。
「組織」の情報だと言えば、信じてくれるかもしれない。
だが、自分が「組織」所属だと知ったら、カインは自分のことをどういう目で見るのだろうか。
黙りこんだ悠司にカインが声をかける。
「…悠司?まだ、悩み事があるのか?」
「い、いえ、もう大丈夫です。相談に乗ってもらって、ありがとうございました。……どうか気をつけて…っ。」
「い、いえ、もう大丈夫です。相談に乗ってもらって、ありがとうございました。……どうか気をつけて…っ。」
悠司はカインの返事も待たず、逃げるようにその場を後にした。
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カインと別れてしばらくして、悠司はファーティマの手を握り締めていることに気付く。
ゆっくりと手を開くと、古いビーズでできたそれはじゃらりと音を立てた。
ゆっくりと手を開くと、古いビーズでできたそれはじゃらりと音を立てた。
「ファーティマの手……。護符…お守り、か。」
悠司はファーティマの手を目の前にかざす。
歩くのにあわせてちゃらちゃらと音を立てて揺れるそれを眺める。
歩くのにあわせてちゃらちゃらと音を立てて揺れるそれを眺める。
「カイザーさんの警告…カインさんに伝えられなかったな……。」
『ええ……。ですが…あの状況では仕方ない、と…思います。』
「……タマモ?」
『ええ……。ですが…あの状況では仕方ない、と…思います。』
「……タマモ?」
タマモの声色に違和感を覚える。
元気がない、疲れている、苦しんでいる、そんな声色。
元気がない、疲れている、苦しんでいる、そんな声色。
「タマモ、なんか辛そうだけど…どうしたの?」
『……申し訳ありません。ファーティマの手…魔を祓う護符が、私に影響を…及ぼしているようです。』
「なっ…!」
『……申し訳ありません。ファーティマの手…魔を祓う護符が、私に影響を…及ぼしているようです。』
「なっ…!」
思わずファーティマの手を投げ出す。
それは音もなく雪の上に着地した。
それは音もなく雪の上に着地した。
「だ、大丈夫、タマモ!?」
『ん……どうやら、ファーティマの手に触れていなければ問題ないようです。』
「そう……よかった…。でも、タマモが辛いなら…カインさんには悪いけど、これ……。」
『いえ。たしかに辛くはありますが、例えるなら風邪をひいたような感覚ですので、たいしたことはありません。』
「それでもタマモが……」
『ん……どうやら、ファーティマの手に触れていなければ問題ないようです。』
「そう……よかった…。でも、タマモが辛いなら…カインさんには悪いけど、これ……。」
『いえ。たしかに辛くはありますが、例えるなら風邪をひいたような感覚ですので、たいしたことはありません。』
「それでもタマモが……」
なおも食い下がる悠司をさえぎるように、タマモが口を開く。
『それに、相手の好意から貰ったものを捨てるなんて、無粋でしょう?』
「……わかった。急いで帰るから、ちょっとだけ我慢してね。」
「……わかった。急いで帰るから、ちょっとだけ我慢してね。」
悠司はファーティマの手を拾ってポケットに仕舞い、自宅へ向けて走り出した。
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悠司は家にたどり着くや否や、自室に駆け込んでファーティマの手を机の上に置いた。
「タマモ…気分はどう?」
『ええ…。やはり、触れてさえいなければ問題ないようです。』
『ええ…。やはり、触れてさえいなければ問題ないようです。』
悠司はホッと安堵の息を漏らす。
「そういえば、タイガとミズキはファーティマの手、大丈夫だったの?」
『別になんともねーよ。女狐が軟弱だっただけだろ。』
『ほら、タマモは馬鹿犬と違って繊細だから仕方ないって。』
『じゃあてめーはどうなんだよ雌猫。』
『あたしは馬鹿犬と違って強いからなんともなかったもんねー。』
『「強い」じゃなくて「鈍い」の間違いだろ?』
「ま、まあまあ。でもなんでタマモだけ…?」
『……理由はわかりませんが、私の体質に過敏に反応しただけかと思われます。…ご迷惑をおかけしました。』
「ううん、タマモが無事でよかったよ。……無理はしないでね。」
『……ありがとうございます。』
『別になんともねーよ。女狐が軟弱だっただけだろ。』
『ほら、タマモは馬鹿犬と違って繊細だから仕方ないって。』
『じゃあてめーはどうなんだよ雌猫。』
『あたしは馬鹿犬と違って強いからなんともなかったもんねー。』
『「強い」じゃなくて「鈍い」の間違いだろ?』
「ま、まあまあ。でもなんでタマモだけ…?」
『……理由はわかりませんが、私の体質に過敏に反応しただけかと思われます。…ご迷惑をおかけしました。』
「ううん、タマモが無事でよかったよ。……無理はしないでね。」
『……ありがとうございます。』
タマモの無事に安堵し、悠司はこれから自分がなすべきことを考える。
思い出すのはカインの言葉。
思い出すのはカインの言葉。
―――決して、その者に任せきりにはしない。自分も、最後までその友人を止める為に、力を尽くすさ
「僕に何ができるのかは分からないけど……やらなくちゃいけないことは、分かってる。」
そう呟くと、ポケットから携帯電話を取り出した。
数コールの後、電話が繋がる。
数コールの後、電話が繋がる。
「橘野悠司、どうしました?」
「黒服さん、「協会」に関することで報告したいことがあります。」
「……どうぞ。」
「黒服さん、「協会」に関することで報告したいことがあります。」
「……どうぞ。」
一息つき、報告を始める。
「ついさっき、「教会」に所属する人から警告を受けました。近々、学校町が燃やし尽くされるか凍りつかされる。この町から離れろ…と。」
「「協会」の者から警告、ですか。」
「はい。それ以上は何もせず、去っていきました。」
「「協会」の者から警告、ですか。」
「はい。それ以上は何もせず、去っていきました。」
電話の向こうから何かを考えているような雰囲気が伝わってくる。
数秒の間の後、黒服が口を開いた。
数秒の間の後、黒服が口を開いた。
「……連絡が遅れましたが、最近「協会」所属者が学校町に進入し、既にいたるところで目撃情報が出ています。」
「そうだったんですか?」
「何人かの写真があります。後ほど渡しますので、該当人物がいないか確認してください。」
「はい、わかりました。」
「では、その警告をしてきた者の契約都市伝説、名前、その他あらゆる情報を、知りうる限り教えてください。」
「都市伝説はわかりませんでした。名前は……」
「そうだったんですか?」
「何人かの写真があります。後ほど渡しますので、該当人物がいないか確認してください。」
「はい、わかりました。」
「では、その警告をしてきた者の契約都市伝説、名前、その他あらゆる情報を、知りうる限り教えてください。」
「都市伝説はわかりませんでした。名前は……」
一瞬言葉に詰まる。
しかし、すぐに言葉を繋ぐ。
しかし、すぐに言葉を繋ぐ。
「…カイザー司祭。そう名乗っていました。」
「カイザー。本人がそう名乗ったのですか?」
「……はい。」
「カイザー。本人がそう名乗ったのですか?」
「……はい。」
そう答えるしかなかった。
本当はカイザーの名前はカインから教えてもらったのだが、カインのことを報告するわけにはいかない。
本当はカイザーの名前はカインから教えてもらったのだが、カインのことを報告するわけにはいかない。
「他に何か報告することは?」
黒服の言葉に数秒考え、言葉を発する。
「僕に警告してきたカイザーさ…カイザー司祭、悪い人には見えませんでした。もしかしたら何か理由があって、仕方なく協力しているのかも……。」
「それはあなたの主観でしかありません。」
「それはあなたの主観でしかありません。」
悠司の言葉はあっさりと否定される。
「で、でも!現に僕に警告を……」
「相手の目的、真意が不明な以上、それすらも策略である可能性があります。警告内容が虚偽である可能性も否定できません。」
「それは……。」
「警告内容が事実だとしても、学校町を襲うことを知っていながら止める意思を見せていないのは、明確な共犯行為です。「組織」として、しかるべき対応をとらせていただきます。」
「相手の目的、真意が不明な以上、それすらも策略である可能性があります。警告内容が虚偽である可能性も否定できません。」
「それは……。」
「警告内容が事実だとしても、学校町を襲うことを知っていながら止める意思を見せていないのは、明確な共犯行為です。「組織」として、しかるべき対応をとらせていただきます。」
しかるべき対応……すなわち、見つけ次第討伐ということだろう。
悠司は考える。
自分に何かできることはないのか?
自分に警告してくれたカイザーのために。カイザーを慕うカインのために。
悠司は考えるが、カイザー司祭を信じてもらうための言葉が見つからない。
悠司は考える。
自分に何かできることはないのか?
自分に警告してくれたカイザーのために。カイザーを慕うカインのために。
悠司は考えるが、カイザー司祭を信じてもらうための言葉が見つからない。
「現状では、カイザーを信用する材料が圧倒的に足りません。「組織」へ報告はしますが、信憑性は薄いと判断せざるを得ません。」
その言葉に、一つ思い当たる。
信用する材料なら、ある。
悠司は机の上に視線をやる。
信用する材料なら、ある。
悠司は机の上に視線をやる。
「黒服さん…一つ、言い忘れてたことが。」
「なんでしょう?」
「……ファーティマの手をいう護符を、カイザー司祭から受け取りました。念のため、持っておけと。」
『主、何を…!』
「なんでしょう?」
「……ファーティマの手をいう護符を、カイザー司祭から受け取りました。念のため、持っておけと。」
『主、何を…!』
嘘だ。
ファーティマの手はカインから貰ったもの。
カイザー司祭とは何の関係もない。
ファーティマの手はカインから貰ったもの。
カイザー司祭とは何の関係もない。
「ファーティマの手?それをカイザーから受け取ったのですか?」
「……はい。」
「敵から安易に物を受け取るのは危険な行為です。次からは警戒してください。」
「……はい、すみません。」
「……はい。」
「敵から安易に物を受け取るのは危険な行為です。次からは警戒してください。」
「……はい、すみません。」
再び電話の向こうから、何かを考えるような雰囲気が伝わってくる。
「「協会」所属のものがファーティマの手を持っていたとなると、少々事情が変わります。」
「どういう…ことですか?」
「どういう…ことですか?」
悠司は、自分が下手なことをしたのではないかと不安になる。
「ファーティマの手はイスラム圏に伝わる護符です。「協会」所属の者が持つにしては、明らかに異常な物です。」
「え…そうなんですか?じゃあなんで……。」
「え…そうなんですか?じゃあなんで……。」
悠司が思うのはカインのこと。
なぜ「協会」所属のカインがそんなものを持っていたのだろうか。
なぜ「協会」所属のカインがそんなものを持っていたのだろうか。
「異教の護符を所持している理由はわかりませんが、可能性の一つとして、「協会」に反目していることがあげられます。」
「じゃあ、カイザー司祭はこっちの味方に…?」
「絶対の敵ではないというだけで、こちらの味方というわけではありません。あくまで可能性があるというだけです。」
「じゃあ、カイザー司祭はこっちの味方に…?」
「絶対の敵ではないというだけで、こちらの味方というわけではありません。あくまで可能性があるというだけです。」
落胆する悠司。
だが、カイザー司祭は敵ではないかもしれないということが伝わった。
その事実に、わずかばかりの安堵を得る。
だが、カイザー司祭は敵ではないかもしれないということが伝わった。
その事実に、わずかばかりの安堵を得る。
「私はこれらの情報を早急に「組織」全体へ伝達します。他に報告するものはありますか?」
「…いえ、特には。」
「わかりました。ではそちらに黒服を向かわせますので、ファーティマの手を渡してください。同時に「協会」の写真も送りますので、該当人物がいればその黒服に報告してください。お疲れ様でした。」
「…いえ、特には。」
「わかりました。ではそちらに黒服を向かわせますので、ファーティマの手を渡してください。同時に「協会」の写真も送りますので、該当人物がいればその黒服に報告してください。お疲れ様でした。」
そう告げられたのち、一方的に電話を切られる。
部屋が静寂に包まれる。
部屋が静寂に包まれる。
『…主、なぜ嘘を?』
タマモがゆっくりと問いかける。
「……カイザーさんは僕に警告してくれて…カインさんも、カイザーさんはいい人だって……。そんな人を討伐なんて…させたくは……。」
『その嘘によって…間違った情報によって、その情報を受け取った人が危険に晒される可能性もあるのですよ?』
『その嘘によって…間違った情報によって、その情報を受け取った人が危険に晒される可能性もあるのですよ?』
辛辣な言葉が悠司に突き刺さる。
それが正しいことはわかってる。
だからこそ悠司は答えられない。
それが正しいことはわかってる。
だからこそ悠司は答えられない。
『主、その覚悟があるのですか?』
『主様……。』
『主様……。』
悠司は答えられない。
タマモもそれ以上は何も言わない。
ただ静かに時間だけが過ぎていく。
タマモもそれ以上は何も言わない。
ただ静かに時間だけが過ぎていく。
【ケモノツキ_14_カイザー司祭の真実と歪曲】 終