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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 花子さんと契約した男の話-62

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だれでも歓迎! 編集
 12月30日
 家は、大晦日にバタバタしたくないからと、この日に大掃除をする
 …何分、昔から使ってる家だから、無駄に広いのだ
 組員総出での掃除となる

「龍一、自分のお部屋は片付いた?」
「……一応」

 俺は、俺の部屋の掃除を終えて
 他の掃除を手伝おうかとしていた

 そんな俺を見つけて、お袋が告げてくる

「じゃあ、先に蔵の方に行っててくれるかしら?私達も、手が空いたら行くから」
「……わかった」

 ……あぁ、あそこはどうしても後回しになるからな…

 …一応、古い屋敷だからか、家には蔵がある
 年に何度か開け放って掃除とか換気はするのだが、掃除が大変な場所である事に違いはない
 そして、別に日常生活で使っている場所でもないから……後回しになってしまうのだ、どうしても

 ひとまず、お袋があぁ言うということは、他の場所は手が足りているんだろう
 言われたとおり、蔵に向かう

 ぱたぱたと、そんな俺の横を、花子さんがついてきた
 こっちの家の掃除など手伝わなくとも良いだろうに、手伝ってくれているのだ
 …まぁ、この家じゃあ、花子さんが「見えない」人間の方が多いから、見られてないところしか掃除できないんだが

「みー?あそこをお掃除するの?」
「あぁ………花子さんも、入った事があったんだったな」
「みぃ。埃っぽかったの」
「……普段は閉め切ってるからな。花子さんは、無理に手伝わなくともいいぞ」
「み!大丈夫なの。お手伝いするの」

 無邪気に言ってくる花子さん
 正直、ありがたいのは事実
 好意を受け取りながら、蔵に向かう
 南京錠を外して、重い扉を開けた
 …相変わらず、埃っぽい

 さて、どこから手をつけようか
 俺が、ぼんやり中を見回すと

「………ぁ」

 …ふと
 懐かしい物を見つけた
 その箱を手に取り、蓋を開ける

「み??」

 花子さんが、近づいてくる
 構わず、中のそれを取り出した


 …それは、古い、絵
 絵と言うよりは、絵巻物、とでも言うべきだろうか
 何百年も昔に描かれた、と言う訳でもない
 せいぜい、明治初期に描かれた物

「けーやくしゃ、それ、なぁに?」
「……ん……家に昔から伝わっている、物だ」

 それは、ある真実を記した物

 ……懐かしい
 初めに、これを見つけた時を思い出す

 まだ、花子さんとも契約してなかった
 幼い頃の、事を



 あの日
 龍一は、いつも通り、家に伝わる刀の前にいた
 そして、飽きる事なく、安置されている刀をじっと見つめ続けていた

 そんな龍一の少し後ろにいるのは、菊
 親について、本家に来ていたのだ

 龍一が、菊に話し掛ける訳でもなく
 菊が、龍一に話し掛ける訳でもなく
 ただひたすらに、沈黙が続き…

 ……ばぁん!!と
 襖が、勢いよく開けはなたれた音で、その沈黙は破られた

「やぁ!龍二君!遊びに来たよ!!」
「……癸酉さん……?…俺は、龍一なのですが」
「まぁ、細かい事は気にしないで、龍吉君……あれ?そっちの子は?」

 突然、やってきた癸酉
 それに対し人見知りしたように、龍一の影に隠れた菊
 龍一が、そんな菊に話し掛ける

「……河伯家の方だ」

 龍一の、その言葉に
 菊はほっとして、前に出た

「…お初にお目にかかります。獄門寺 菊と申します…獄門寺家 分家の者です」
「あはは、龍三君と一緒で硬いなぁ、もっとフレンドリーでいいんだよ!僕は河伯 癸酉。よろしくね、薔薇君!」
「菊です」
「……癸酉さん、花の名前と言う以外、共通点のない間違いはきびしいと思います」

 いつも通り、お気楽な癸酉
 く、と、座っていた二人の手をとり、立たせる

「ほら、せっかくいい天気なんだし、外で遊ぼうよ!」
「あ……その……」
「…わかりました」

 戸惑っている菊と、素直に手を引かれて行く龍一


 ……カタリ、と
 一瞬、刀が小さく音を立てたのだが
 この頃は、まだ三人の内誰も、その音に気づく事はなかった


 獄門寺家の裏庭までやってきた三人
 さて、何をして遊ぼうか

「よし!ここはお決まりの、仮面ライダーごっこを!!」
「……すみません。つい最近、「太陽に吼えろ」の再放送が始まったので、そっちは見ているのですが……仮面ライダーは、まだよく知りません」
「…じ、「仁義なき戦い」とか「ゴッドファーザー」なら見てるけど……仮面ライダーは、よく、知らない」
「どっちもお子様がセレクトする作品じゃないよねっ!?って言うか、雉君の方の親御さんは、子供がそれを見ていて何も言わないのかなっ!?」
「…き、しかあってないです…」

 ごっこ遊びをするには、全員がそれをきちんと知っている必要性があるだろう
 癸酉が教えてもいいのだが、この二人に教えるには時間がかかりそうだ
 どうしようか、癸酉が考えていると

 …ふと
 癸酉の視線に入ったのは、獄門寺家の、蔵

「そうだ!あの蔵を探検しよう!」
「ぇ…」
「何か、珍しい物があるかもしれないし」

 大きな、蔵
 子供にとって、そこは立派な冒険場所となる

「…でも……勝手に入ったら…」
「大丈夫だよ、ちょっとくらいなら!」
「……中の物を壊さなければ、問題はないと思いますが」

 おどおどしている菊と、淡々と告げる龍一
 龍一の了承を得た事で、癸酉は喜んで蔵に向かってかけていった
 龍一がその後をゆっくりとついていき、菊が慌てて、二人を追いかける

 子供の手には、重たい南京錠
 鍵を預けられていたのだろう
 龍一が、それをあっさりと開けた
 重たい扉を、三人がかりで何とか開ける

「うわ……暗いね…」
「……明かりがほとんどありませんから」

 そっと、中に入っていく三人
 ……確かに、暗い
 子供に恐怖を感じさせる、お化けでも出てきそうな暗さ

 だが、癸酉は負けずにずんずん進んでいく
 何か、面白そうなものはないか、きょろきょろ見回していた
 龍一も、背中に菊がほぼ張り付いた状態で、入っていく

「ん~、刀とかないかな。古い刀とか」
「……刀なら、親が持っている物がありますが。いつでも見せてもらえますよ」
「…こっちの、親も…刀とか薙刀、持ってる……時々、使ってる…」
「何に使ってるのかな。パフォーマンスだよね、居合いとか型のパフォーマンスで使うんだよね?生き物を切ったりしてないよね!?」
「……大丈夫です」
「…死なせない程度に、切ってる」
「地味に怖いよ!?さらっと言われるのがなおさら怖いよ!?」

 三人一緒のせいだろうか
 それとも、癸酉のおかげでこう言う会話になっているせいだろうか
 暗い中でも、三人は進んでいく
 …そして

「あれ、この箱、何だろう」

 以前、開け離れれた時、きっちりと閉められなかったのだろうか
 蓋が開きかけた、大きな箱があった
 好奇心を刺激されたのか、癸酉はその箱に近づいていく

「何が入ってるんだろ……龍千君、開けちゃっても大丈夫かな?」
「……龍一です…貴重な物は、鍵つきの箱に入っているはずですから……問題、ないかと」
「じゃあ、開けちゃうね~」

 うきうきと、箱を開ける癸酉
 宝箱でも開けるような気分で蓋をとり、中を覗き込んで…中から、何か取り出す

「何だろ、巻物かな…?」

 ぱらり
 気楽に、それを開いた癸酉だったが

「うわぁっ!?」

 と、悲鳴をあげて、それを落としてしまった
 その悲鳴に驚いたのだろうか、菊が一瞬、びくりと体を震え上がらせる
 少々涙目気味なのだが、長い前髪のおかげで、気付かれてはいない

「……どうしました?」
「な、中、これ」
「………?」

 てとてと、近づく龍一
 巻物を拾い上げ、見つめた

「……これは」
「何か、すごい血塗れの絵が描いてるよ……切られてるのが鬼だから、鬼退治の話が書かれてるのかもしれないけど…」

 癸酉の言う通り、その巻物は、絵巻物で……描かれていたのは、血みどろの光景だった

 倒れ付している、数体の鬼
 それを切り伏せたであろう、刀を持った若い男は、全身返り血塗れだ

 鬼は、人に近い姿の者もいれば、完全に化け物じみた鬼もいる
 その全てを、刀を持った男が、切り伏せた……そんな、光景と思われた

 その絵は、酷く生々しく
 まるで、実際にあった場面を、絵に描き止めた物に見えて
 ……正直、普通のお子様が見れば、トラウマ物だ

「………」
「…若…?」

 そんな、絵巻物を
 龍一は、じっと、じっと……興味深げに見つめていた
 片手で持って、絵の他に書かれている字を、指でなぞりながら、読み解いているようだった

「…り、龍三郎君?それ、怖くないの?」
「……龍一、です………いえ、怖い、とか、恐ろしいとは感じません。興味深いです」
「興味深い?」
「……はい」

 そっと、その絵巻物を床に広げる龍一
 菊も、ちょっと怖かったのだろうか
 こそこそ、癸酉の後ろに隠れてしまった
 癸酉も、直視はできないのか、やや視線をそらしている
 そんな二人に構わず、龍一は、中央に描かれた若者を指で示す

「……この方は、獄門寺家の、八代目様です」
「八代目様?」
「…知って、ます……獄門寺家が、現在まで続くキッカケ…栄えるキッカケを、作ったお方…」

 ぽつり、菊が答える
 そう、と龍一は頷いた

「……八代目様は、とある方から刀を授かり、それで鬼を切った、と伝えられています…これは、その様子を書き記したものです」
「刀って、屋敷に安置されてる、龍男君がいつも見詰めてる奴?」
「……龍一です………あの刀、ですね」

 絵巻物に描かれた若者
 …それが持つ、血塗れた刀
 それは、獄門寺家の本家に安置されている、八代目の代より伝わっている刀に間違いはなかった

「それで、興味深い、って?」
「……八代目様の周りに描かれた、切り伏せられた、鬼……それは、全部で七体います」

 龍一の言葉に、癸酉は勇気を振り絞って、絵巻物に視線をやった
 ひぃふぅみ、と数える

「…うん、7体いるね。それで?」
「……この鬼達は、獄門寺家の…八代目様より前の先祖である、とこれには示されています」
「え?」

 きょとん、と絵巻物を見つめる癸酉
 菊も、不思議そうに絵巻物に視線をやる

「この、鬼が?」
「……はい」
「家も、先祖は河童って言われてるけど……あれ?龍蔵君の先祖って、鬼?」
「……龍一です……いえ、我が家の先祖は、間違いなく、人間でした」

 ただ、と
 切り伏せられた鬼を見つめながら、続ける

「……人間として生まれながら、鬼となった、ただ、それだけです」
「…鬼に、なった?」

 首をかしげた菊に、そう、と龍一は頷き、続ける

「……子を成した時には、まだ、人だった。けれど、その後に「鬼」となった……八代目様は、鬼となった己の先祖達を切り伏せた。そう、記されています」
「それって、自分の親も入ってたんだよね?…それも、斬ったの?」
「……そう、記されています。鬼であらば、全て切り捨てた、と」

 親殺し
 それをも、含んだ記録
 龍一は、その事実を淡々と読み上げる

 恐ろしさを、感じているのか、いないのか
 無表情と淡々とした声から、その真意は見えない

「……獄門寺家の人間は……鬼に、なりやすい。心が修羅と化し、最後には鬼になる事が珍しくなった…と、されています」
「…それは。龍一君も、いつかは、鬼になっちゃう、って事?」

 珍しく…名前を間違われる事なく、癸酉から告げられた言葉
 菊が、また、小さく体を跳ねらせた
 そして、じっと、龍一を見つめる

 龍一は
 じっと、じっと、絵巻物を見詰めて

「……わかりません」

 と
 首を、左右に振った

「……この、絵巻物では……八代目様の代から、獄門寺家で鬼と化した者はいない、とされています」
「八代目様って人の親が、最後の鬼だったって事だね」
「……はい。八代目様は、人として死んだとされています…それ以降の歴代当主も、人として死んでいっています」

 ですが、と
 龍一は、淡々と続ける

「……獄門寺の人間が、修羅に堕ちやすいのは、鬼になりやすいのは、事実………俺が鬼にならない保障は、どこにもありません」

 自分が
 人間ではなくなるかもしれない
 その事実を、龍一は淡々と口にした


 ……もし、人ではなくなったら
 その時は、仕方がない
 そうとでも言うような、口調


 重苦しい空気が、蔵の中を包み込んだ
 菊は小さく震えて、すぐにでも泣き出しそうだ
 龍一は、何も言わない
 ただ、囚われたかのように、絵巻物を見つめ続けている

「……大丈夫だよ」

 そんな中
 癸酉が、ぽつりと口を開いた

「……癸酉さん?」
「龍一君はさ。一生懸命、八代目様を模範にして、八代目様みたくなろうとしてるよね。だから、大丈夫だよ」

 それは
 気休めに過ぎない言葉だったかもしれない

「龍一君が模範としている八代目様は、鬼になってない。だから、八代目様を目指している龍一君は、鬼になったりしないよ」

 …だが
 その、言葉は
 幼い龍一の言葉に……深く、響いた

「……だと、いいのですが」
「大丈夫だって。ね、菊君?」
「…ぇ」
「龍一君は、大丈夫。僕と菊君で保障しようよ。大丈夫だって。そうすれば、龍一君は、きっと、鬼になったりしないよ」

 癸酉に、そう言われて
 菊は、おどおどと、龍一と癸酉を交互に見つめて

「………なりま、せん…若は、鬼になったり、しません」

 と、そう、口にした

「若は、八代目様の、生まれ変わり………だから、鬼になったり、しない」
「……菊」
「あはは、生まれ変わりかどうかは、わかんないけどさ。龍一君なら大丈夫だよ。こんなの、気にしなくたっていいんだよ」

 そっと、龍一から絵巻物を取り上げて
 くるくる閉じて、箱にしまった癸酉
 しっかりと、蓋をする

「さて!外に出ようか。やっぱり、いい天気だしさ。外に出たほうがいいよね」

 龍一と菊の手をとり、癸酉は歩き出す
 二人共、大人しく手を引かれて、蔵の外に出た
 扉を閉め……龍一が、鍵をかける

「あ、そうだ」
「…?」
「……何です?」
「この蔵の中で見た、あれ。三人で内緒にしておこう。怖い物を見たって知ったら、親が辺に心配しそうだしさ」

 癸酉の、その提案に
 二人は、こくりと頷いた

 …特に、龍一は、親が時々変なところで過保護で暴走する事を知っていたので、深く深く、頷いた

「よーし、これは三人の秘密!バラしちゃ駄目だからね!……さ、改めて、かくれんぼでもしようか!」

 誰が最初に探す役をやろうか、と
 わざわざ、「鬼」と言う単語を避けてくれた癸酉
 ……その気遣いに、龍一はこっそりと、笑みを浮かべたのだった



 ……懐かしい記憶
 それを思い出しながら、龍一はその絵巻物をしまいこんだ

 あの時の出来事は、約束通り、誰にも語っていない
 菊も、癸酉も、あの時の事を覚えているかどうかはわからない
 二人共、龍一よりも年上だったから……学校やら何やらで忙しくなってからは、会う機会も減ってしまった
 分家の人間である菊とは、まだ何だかんだで顔をあわせているが、癸酉とはなかなか会う事がなくなってしまっている


 …それでも
 あの記憶は、龍一にとって、大切な記憶の一つだ


「…さて。掃除をはじめるか」
「みー!」

 埃を落とすべく、掃除をはじめる


 幼い頃、ささやかな冒険をした場所
 その思い出を、噛み締めるように
 龍一は、大掃除に着手したのだった




fin








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