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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん、エピローグに至るまで-神智学協会決戦-06

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 オルコットとエレナは先頭に立ち、軍勢を丸呑みにしようとでもいうような勢いで突き進んでくるそれぞれの正面にある叢雲の首へとそれぞれ剣と≪デリーの鉄柱≫を横薙ぎに叩きつけた。
 二本の首がそれぞれ横合いからの一撃に軌道を乱されて道の中央でぶつかり合う。オルコットは更に首を二本共手にした剣ですれ違いざまに落とした。
 啼くような音を空へと響かせて水蒸気へと還元する雲竜の残滓を貫くようにオルコットが引き連れた軍勢から射撃が行われた。道の奥で、あるいは別の角度からオルコット達を狙っていた雲竜の他の首に対する牽制だ。彼等の射撃は直接的に雲竜を滅ぼす程の威力は無かったが、
「――よくやった」
 僅かな間でも注意をひきつけるという目的は果たした。
 気を逸らされた叢雲の首を順次断ち切りながら、オルコットは≪夢の国≫の道を駆け抜けていく。やがて曲がり角に出くわした。これまで進軍してきた大きな道幅の一本道はどうやらこの曲がり角の先へと続いているらしい。叢雲の胴体に当たる部分も、その道を曲がって現れているようだ。
 ……虎穴に入らずんばと言うのだったか……。
 軍勢の先頭に立ったまま、オルコットはほぼ直角なその角を曲がった。曲がった先もこれまでと変わらない広さの道が続き、その道の両脇にもこれまでより多少背が高くなったくらいで全体的な雰囲気は同じ、滑稽にも不気味にも見える様々な建物が並んでいる。それらの建物に沿う形で流れている水路も健在で、そこに浮かび流れる何枚かの花弁の存在が、問題無く水路の水が流れている事を確認させる。≪冬将軍≫はこの国の主と戦っているのだろうとオルコットは思考し、
 直後、
 道一杯に広がった巨大な切断力が雲竜の下を這うようにして駆けてきた。
 草薙の名を冠する斬撃だ。
 エレナが斬撃の正体を短く呟いて身構える。しかしそれよりも一歩先へとオルコットは進み出た。
「――っ!」
 オルコットの持つ剣と草薙の斬撃が激突する。
「私と相対するのに飛び道具とはいただけんな、鬼神よ!」
 草薙の斬撃が砕かれた。
 空気が破裂する裂音が大気をつんざき、周囲にわだかまっていた雲竜が変じた水蒸気が吹き飛んだ。
 砕かれた余波で周囲の建物や後方の軍勢に被害を出す草薙に舌打ちし、オルコットは速度を落とす事なく進軍を続けさせた。突き進む先、吹き払われた水蒸気の中から現れたのは大量の≪夢の国≫の住人と、
「撃て!」
 陣頭に立った千勢だった。
 彼女の言下、撃ち出されるのはサバンナの獣たちが牽引する大砲や投石機の類からの砲撃だ。
 初弾の着弾の音が響く。もうもうと立ち込める煙に対して千勢による草薙の斬撃が再度振るわれた。
「モニカは渡せない。お前達の目的を果たさせるわけにはいかん。ここで大人しく薙ぎ払われろ!」
 対するオルコットは草薙の斬撃が軍勢に至る前に砕きながら吼える。
「押し通る! 覚悟してもらおう、千勢!」
 今の砲撃と斬撃の余波で先頭付近の凍死兵が削られた。その被害を微々たるものと判断して、オルコットは敵陣へと攻め入った。
 最前、次弾が装填された砲が並ぶ中へと飛び込み、
「ッ!」
 身を回しざま、牽引の獣や砲を扱う住人を斬り捨てる。
 ……≪テンプル騎士団≫が居ればシリアやパレスティナのようにライオンごと獣の群れも片付けやすかろうに。
 砲を牽引する獣達の主君を視界に一瞬捉えながらオルコットの一閃は一周を刻む。身を回す刹那の間に背後を確認したオルコットは姿勢を地面すれすれにまで下げた。
 オルコットの動きを察したエレナが射撃の許可を下す声が背後から聞こえ、削れた戦列を迅速に組み直した凍死兵達が射撃を行った。
 射撃を行いながら進軍の足を止めずにエレナを先頭とした戦列は突き進む。その戦列に対して≪夢の国≫の住人もそれぞれの武器を抱えて応じる。≪夢の国≫の住人を潰すようにオルコットは立ち回り、突然自身の周囲を包みこんだ影に舌打ちした。
 空を見上げる。そこには白い雲竜の姿があった。先程の交差で落とした雲竜の首のうちの生き残りの一本だ。
 大口を空けたそれはオルコットや使い手を失った大砲ごと石畳を食い破ったかのように見えた。
 だがまもなくその光景は見間違いであったと知らされる事になる。
 雲竜の首を駆けあがる人影がある。オルコットだ。
 彼は走りながら首へ突き刺した剣を滑らせ、雲竜を縦に引き裂いていく。彼が駆けあがる先には千勢が居た。彼女は≪壇ノ浦に没した宝剣≫を振りかぶる。
「その剣、相当の業物と見るが、徹心ですら終ぞ知る事は出来なかった剣の正体、さてなんだろうかな」
「その身で味わって確かめるといい」
 叢雲の八つの首が胴の上、千勢とオルコットは剣を互いにぶつけ合った。
 硬質な音がこだまし、二人は弾かれたように距離を取る。
「こうして実際に会うのは初めてだな、オルコット。御大将自ら御出陣となると流石に決戦の気運が感じられるじゃあないか!」
 宝剣の一振りを合図として叢雲の首を再生させながら千勢が言い、オルコットが応じる。
「お前が最終防衛線か、千勢」
「さて、どうだろうな……だが、まあ」
 千勢はオルコットへと宝剣の切っ先を向ける。
「徹心の所には最近のハードワークで臥せっているかわいいペットも、馬鹿弟子の嫁も、その人形も、モニカもフィラちゃんも居る。徹心一人くらいならくれてやってもかまわんが、こうまで綺麗どころが揃っていると易々と血気盛んな男を通すわけにはいかんよ」
「なるほど、確かにこの戦いの為に相当な戦力を引き入れて来ている。簡単には通してもらえんのだろうな」
 しかし、とオルコットは眼光鋭く千勢を見据えた。
「そう易々と私達を止められると思うな!」
 巨大な雲竜の上で、戦闘が行われる。


            ●


 〝抜丸〟が雷の主を辿って飛翔していくのを弘蔵は高速で追っていた。〝抜丸〟は追いつくのも難しい速度で斬るべき対象目指して飛んで行く。本隊から割いて来た兵は追いつけず、〝蛍丸〟で弘蔵が示した道を辿って来ている事だろう。
 ……〝抜丸〟の気が急く程の敵がこの先にいると言う事か。
 どんどん速度を上げていく〝抜丸〟を追いながら弘蔵は強敵との戦いの予感に笑む。命のやり取りは実に充実した時間を提供してくれるものだ。
 ……その充実の為にこそ、この身をウィリアムのい手ででいじらせたかいがあるというものだ。
 モニカが≪杞憂≫や≪聖槍≫との契約を滞りなく行う為の全段階の実験に身を投じる。半ば自らの命を捨てる事と同義の行為だが、弘蔵は自ら望んで身体に手を加えた。身についた力は確かに自身を強力にしてくれた。共に実験に臨んだ者達の末路は哀れの一言だったが、弱かったということだろう。強ければ生き、弱ければ死ぬ。戦場の真理は世界の理だ。
 オルコットはその在り方を改めようとしている。非常に興味深い。強さのみを求めて全てを投げ打ってきた弘蔵とは全く別の世界がオルコットには視えているに違いない。
 ……あれほど強い男が今の、強い者が上に立つ事ができる世界を壊そうとしている。
 面白い。そしてその道を行くオルコットの前には強い敵が立ちはだかる筈だ。そう思っていたのは正解だった。今まで幾人もの強者が立ちはだかり、そして、
 ――最後の敵はここまでの大物だ……!
 快いと思いながら〝抜丸〟が路地を抜けるのを追う。路地を抜けた先には本隊が進んで行った程ではないが、広い道があった。そして〝抜丸〟が飛翔する先には、
「≪夢の国≫の住人……辿りついたか」
 陣列をなす≪夢の国≫の住人が控えていた。
 〝抜丸〟は隊列の中央へと愚直に突入した。2、3体の≪夢の国≫の住人を斬りつけて破損した〝抜丸〟の後を追うように弘蔵もまた隊列へと突入する。
 〝蛍丸〟の刀身再生が間に合わない程の速度で太刀を振るい、隊列の奥に感じる強烈な気配へと向けて進む。〝蛍丸〟が再生できなくなる程に崩壊すると、弘蔵は新調した包丁を取り出した。切りつけるように鋭く言葉を放つ。
「〝北谷菜切〟!」
 斬撃波が隊列を穿つ。切り拓かれた隊列の壁の先に≪ベイチモ号≫を破壊した雷の主の気配を感じ、その幽鬼とも神霊ともとれる気配へと向けて弘蔵は背から二本目の槍を引き抜いた。そうしながら相手の正体を推定する。
 ……あれはおそらく――。
 おそらく若武者の正体はそうだろうと思いながら弘蔵は槍を投擲した。
「〝隼風鉾〟――行けぃ!」
 風を巻いて撃ち出された全長3メートルに及ぼうかという大矛は≪夢の国≫の住人ごと気配の主を貫こうとし、しかし気配の主の一刀の下に払われた。
 おおっ。と感嘆の声を内心に生み、弘蔵は気配の主の前に立った。≪夢の国≫の住人が全方位から武器を突きつけて来るのを無視して、見定めるように気配の主へと視線を向ける。
 雷の主の正体は甲冑に身を包んだ若武者だった。甲冑に覆われているために身体の様子はうかがえないが纏う気配は重く、こちらを見返す眼光もまた戦意に溢れている。
 見合う時間は僅かな間。しかしその僅かな時間で互いの力量を測るには十分だった。
 一刀の衝撃で半ばから折られ、道の脇に転がっている業物の槍を見て、弘蔵は苦笑した。
「朝敵殺しの相を持つ武具だったのだがな。……先程からの雷撃の主だな?」
 再生の気配を見せない死んだ〝蛍丸〟を捨て、弘蔵は言葉を続ける。
「その呪いに傾いた霊気、そしてモニカ嬢やその保護者が身を寄せていた組織の名から≪首塚≫の主と見受けるが」
 若武者は口を開いた。自負のこもった声で、
「いかにも。我は平将門也」
 昂然と告げられる名に弘蔵はやはり、と思い、これは凄いと感心する。徹心がこの戦に事情に疎い者を投入してくるとは考えづらい。おそらくあの平将門を説き伏せてきたのだろう。
 ……これは面白い……!
 歯を剥いた笑みを湛えながら弘蔵は目前の敵へと問う。
「平将門、お前は儂の死となるか? それとも我が武勇の誉れとなるか?」
「愚問よ、≪神智学協会≫の武芸者」
 自分の強さに対する絶対的な自信に裏打ちされ言葉だ。心地よい。そう思いながら弘蔵は周囲で≪夢の国≫の住人達によって構えられる武器に対するように刀に手をかけた。
 では――、と心中で前置きして身体に力を込め、
「――参る!」
 爆発させた。






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