はらり、はらり
…雪が舞い落ちる
はぁ、と白い吐息を吐きだし、カイザーは空を見上げた
…雪が舞い落ちる
はぁ、と白い吐息を吐きだし、カイザーは空を見上げた
「……これは…さらに、雪が積もるでしょうかね」
ただでさえ、雪が積もっている冬の学校町
さらに、雪が積もるだろうか
さらに、雪が積もるだろうか
自分の能力が、少し扱いにくくなるな……と、ふと考えて
いっそ、その方がいいな、と考えた
自分の能力など、威力が落ちていてちょうどいい
いっそ、その方がいいな、と考えた
自分の能力など、威力が落ちていてちょうどいい
「…まぁ、私の力でどうにかできないのなら………メルセデスが、やるのでしょうね」
あの男は己と逆に、このような気候状態の方が扱いやすい
恐らくは、100%以上の力を引き出すのだろう
そうなれば……
恐らくは、100%以上の力を引き出すのだろう
そうなれば……
「………」
小さく、頭を振る
できることならば、そうならないでほしい
だが…きっと、自分か、メルセデスか、どちらかが、力をふるうことになるのだろう
できることならば、そうならないでほしい
だが…きっと、自分か、メルセデスか、どちらかが、力をふるうことになるのだろう
どれだけの犠牲が、出ることになるだろうか
……どうにかして、犠牲者を減らす手段はないだろうか
……どうにかして、犠牲者を減らす手段はないだろうか
リュリュとマドレーヌを探しながら、カイザーはそんな事を考える
犠牲は、一人でも少ない方がいい
犠牲は、一人でも少ない方がいい
さく、さく、と
雪を踏みしめ、一人進む
そして、一人で考え込む
相談できるような相手が、彼にはいない
いや、もう少し深刻度の低い悩みならば、まだ、相談相手がいるのだが……
雪を踏みしめ、一人進む
そして、一人で考え込む
相談できるような相手が、彼にはいない
いや、もう少し深刻度の低い悩みならば、まだ、相談相手がいるのだが……
さく、さく、さく
俯き、歩むカイザー
そんな、彼に
俯き、歩むカイザー
そんな、彼に
「カイザー司祭?」
と
なじみのある声で、名前を呼ばれた
ぴたり、思わず足を止める
なじみのある声で、名前を呼ばれた
ぴたり、思わず足を止める
「…カイン、司祭?」
「やっぱり、カイザー司祭…なぜ、ここに?」
「やっぱり、カイザー司祭…なぜ、ここに?」
さく、さく、と
雪を踏みしめ…見覚えのある、翡翠色の瞳をした西洋人の青年が、駆けてくる
……カイン・ディーフェンベーカー
「教会」所属の、契約者……カイザーにとっては、数少ない友人でもある
ここ半年ほど、顔は合わせていなかったが…
……確か、カインはイギリスの地方の教会を任せられていたはず
なぜ、日本に?
動揺を覆い隠し、カイザーは穏やかな笑みを浮かべ、答える
雪を踏みしめ…見覚えのある、翡翠色の瞳をした西洋人の青年が、駆けてくる
……カイン・ディーフェンベーカー
「教会」所属の、契約者……カイザーにとっては、数少ない友人でもある
ここ半年ほど、顔は合わせていなかったが…
……確か、カインはイギリスの地方の教会を任せられていたはず
なぜ、日本に?
動揺を覆い隠し、カイザーは穏やかな笑みを浮かべ、答える
「…「教会」の、任務がありまして。数日間、この街に滞在することになったのですよ」
「カイザー司祭も、ここで任務か?……何があるんだろうな、この街に」
「……もしや、あなたも?」
「あぁ。俺は、ニーナと合流して、彼女をサポートするよう、言われているんだが……なかなか、合流できなくて。この街は物騒だし、無事ならよいのだが…」
「カイザー司祭も、ここで任務か?……何があるんだろうな、この街に」
「……もしや、あなたも?」
「あぁ。俺は、ニーナと合流して、彼女をサポートするよう、言われているんだが……なかなか、合流できなくて。この街は物騒だし、無事ならよいのだが…」
ニーナと合流?
彼女を、サポート?
……まさか、カイン司祭まで、事態に巻き込まれている、というのか?
つぅ、と……己が、冷たい、嫌な汗を流したことを、カイザーは自覚する
彼女を、サポート?
……まさか、カイン司祭まで、事態に巻き込まれている、というのか?
つぅ、と……己が、冷たい、嫌な汗を流したことを、カイザーは自覚する
「そう…でしたか。ニーナの事は、私も聞きました。何でも、今は親切な方に保護されているようで……ひとまず、無事なようではありますよ」
カイザーの言葉に…カインは、やや驚いたような表情を浮かべて
しかし、次に浮かべたのは、ほっとしたような、表情
しかし、次に浮かべたのは、ほっとしたような、表情
「…良かった。無事なのか」
「えぇ。ただ、我々も保護してくださっている方の詳しい詳細は知らないのですよ…悪人では、ないようなのですがね」
「えぇ。ただ、我々も保護してくださっている方の詳しい詳細は知らないのですよ…悪人では、ないようなのですがね」
居場所はわからないままです、と小さく苦笑して見せる
そうか、とカインは考え込むような表情を浮かべる
……あぁ、この生真面目な司祭は、どうすればニーナと合流できるだろうか、それを考えているのだろう
そうか、とカインは考え込むような表情を浮かべる
……あぁ、この生真面目な司祭は、どうすればニーナと合流できるだろうか、それを考えているのだろう
できる、事ならば……自分達より先に、ニーナを見つけてほしい
そう、カイザーは考える
…できる、事ならば……ニーナを探さず、この街から逃げてほしい
カイザーは、そう考える
そう、カイザーは考える
…できる、事ならば……ニーナを探さず、この街から逃げてほしい
カイザーは、そう考える
だが、そのどちらをも………口に、出すことができない
自分は、友人すら、救えぬというのか
見捨てるというのか
自分は、友人すら、救えぬというのか
見捨てるというのか
(………いや)
…もう、とうの、昔に
自分は、この友人を裏切っているか
自嘲するように、気づかれないよう…カイザーは、小さく笑った
自分は、この友人を裏切っているか
自嘲するように、気づかれないよう…カイザーは、小さく笑った
カインが、顔を上げる
カイザーの自嘲するような笑みには気づいていないようだ
カイザーの自嘲するような笑みには気づいていないようだ
「俺も、カイザー司祭達に、合流すべきだろうか?」
「……いえ、あなたはあなたで、ニーナを探してください…一応、私の連絡先を、伝えておきますので。何かわかったら、伝えてくださいね」
「……いえ、あなたはあなたで、ニーナを探してください…一応、私の連絡先を、伝えておきますので。何かわかったら、伝えてくださいね」
わかった、とカインは頷いてくる
…こちらの事を、うたぐってすら、いない
信用されている……その事実が、心苦しい
…こちらの事を、うたぐってすら、いない
信用されている……その事実が、心苦しい
これ以上そばにいては、本心を悟られるかもしれない
そう考えて……カイザーは、話を切り上げてこの場を後にしようとした
その時
そう考えて……カイザーは、話を切り上げてこの場を後にしようとした
その時
「カインさん!……………っ!」
一人の、少年が…カインの名を呼びながら、駆けてきた
中学生か、高校生程度だろうか
…カインの、知り合いか?
中学生か、高校生程度だろうか
…カインの、知り合いか?
カインは、声に反応して、少年に視線を向ける
「悠司?…どうかしたのか?」
「あ、その……」
「あ、その……」
どうやら、悠司という名前らしい少年
カインに用があったようなのだが………ちらり、カイザーに視線を向けて、言葉を濁してくる
カインに用があったようなのだが………ちらり、カイザーに視線を向けて、言葉を濁してくる
…その、視線が、決して友好的なものではない事に、カイザーは気づいた
「お知り合いですか?」
「あぁ。この国に来て、不慣れな事もあったが。悠司には、ずいぶんと助けられた」
「あぁ。この国に来て、不慣れな事もあったが。悠司には、ずいぶんと助けられた」
小さく、笑うカイン
いつも通りの、穏やかだが……どこか、寂しそうな笑顔
だが、カインがこの悠司という少年に、本当に感謝しているのだと…それが、伝わってきた
いつも通りの、穏やかだが……どこか、寂しそうな笑顔
だが、カインがこの悠司という少年に、本当に感謝しているのだと…それが、伝わってきた
「そうでしたか……彼が、お世話になったようですね。ありがとうございます」
「……いえ」
「……いえ」
警戒、それが伝わってくる
…さて、どうしたらいいものか
悠司という少年が自分を警戒してきている理由を察し、カイザーは悩む
カインの前でなければ、すぐにでも、それに関する話をしたいところだが…
…さて、どうしたらいいものか
悠司という少年が自分を警戒してきている理由を察し、カイザーは悩む
カインの前でなければ、すぐにでも、それに関する話をしたいところだが…
カイザーの悩みには、意外な助け舟が出された
どうやって、カインと別れて、なおかつ…この、悠司という少年と話すか、その悩みは
ひら………と
視界に入り込んできた…一頭の漆黒の蝶により、解放される
どうやって、カインと別れて、なおかつ…この、悠司という少年と話すか、その悩みは
ひら………と
視界に入り込んできた…一頭の漆黒の蝶により、解放される
「…蝶?」
「え?こんな季節に……?」
「え?こんな季節に……?」
季節外れの、蝶
…雪が降るような季節に、蝶が飛ぶはずが……ない
…雪が降るような季節に、蝶が飛ぶはずが……ない
悠司の警戒が強まったのを、カイザーは感じ…カイザーも、かすかに警戒した
そんな、中
カインだけは……蝶を見て、驚いたような
どこか、焦ったような表情を、浮かべて
そんな、中
カインだけは……蝶を見て、驚いたような
どこか、焦ったような表情を、浮かべて
「…す、すまない。カイザー司祭。悠司。き、急用を思いだした!」
「え…カインさん?」
「え…カインさん?」
ひどく、慌てている様子のかいn
ひらり、ひらり
漆黒の蝶は……ゆっくりと、カインの周囲を、飛んでいる
ひらり、ひらり
漆黒の蝶は……ゆっくりと、カインの周囲を、飛んでいる
「すまない……後で、また」
「…は、はい」
「…は、はい」
カインの様子に、押されるように頷く悠司
カインからの、窺うような視線に…カイザーも頷く
カインからの、窺うような視線に…カイザーも頷く
「わかりました。また、後日」
「………本当に、すまない」
「………本当に、すまない」
小さく、苦笑して
カインは、ひらひらと飛んでいき始めた漆黒の蝶を追いかけ始めた
ひらひら飛ぶ、明らかに異質な存在である蝶に…カイザーは、こっそりと感づく
カインは、ひらひらと飛んでいき始めた漆黒の蝶を追いかけ始めた
ひらひら飛ぶ、明らかに異質な存在である蝶に…カイザーは、こっそりと感づく
……あぁ、あれが、カインの「秘密の親友」なのだろうな、と
カインの「秘密の親友」に、こっそりと感謝しながら
…カイザーは、悠司に視線を向けた
ば!と、悠司が警戒の視線を向けてくる
…カイザーは、悠司に視線を向けた
ば!と、悠司が警戒の視線を向けてくる
「…悠司さん、でしたね。そう、警戒なさらないでください………少なくとも、今は、何もしません」
「今は……ですか?では、後では、何かすると?……「教会」の、方が」
「今は……ですか?では、後では、何かすると?……「教会」の、方が」
あぁ、やはり、気づかれていたか
それは、そうだろう
明らかに司祭という姿に……この、銀のロザリオだ
このロザリオは、「教会」の一員である証だから
それは、そうだろう
明らかに司祭という姿に……この、銀のロザリオだ
このロザリオは、「教会」の一員である証だから
「…あなたは、どこの組織の方でしょう」
「………」
「………」
カイザーの質問に、悠司は答えない
ただ、恐らくは「組織」辺りであろう、とカイザーはあたりをつける
……その上で
周囲に、自分たち以外の気配がないことを確認し
そして、誰からの視線も感じないことを確認して……告げる
ただ、恐らくは「組織」辺りであろう、とカイザーはあたりをつける
……その上で
周囲に、自分たち以外の気配がないことを確認し
そして、誰からの視線も感じないことを確認して……告げる
「…警告、します……できる限り早いうちに、学校町を、離れなさい」
「っ!」
「……私にできることは、この警告くらいです………大切な人を連れて、学校町を離れなさい」
「っ!」
「……私にできることは、この警告くらいです………大切な人を連れて、学校町を離れなさい」
ただ、この警告しかできない
……その事実が、恨めしい
己の無力さが………己の罪深さに、自分自身を嫌悪する
……その事実が、恨めしい
己の無力さが………己の罪深さに、自分自身を嫌悪する
「っ何を、するつもりなんです」
敵意交じりの、悠司の視線
それに苦笑しながら、小さく、首を左右に振った
それに苦笑しながら、小さく、首を左右に振った
「………それは、話せません。正直なところ……「どちらになるのか」、まだ、わからないからです。ただ、どちらにせよ…学校町からは、離れたほうがいい」
「…何故、警告してくれたんですか?」
「あなたは、カイン司祭に親切にしてくださったようですから」
「…何故、警告してくれたんですか?」
「あなたは、カイン司祭に親切にしてくださったようですから」
カイザーの、その言葉に…悠司の視線が、沈んだ
「…あの人も…「教会」所属、なんですね」
呟くような声
そうです、と頷き……しかし、続ける
そうです、と頷き……しかし、続ける
「彼も、「教会」所属の契約者ではあります……しかし、彼は「教会」所属とは思えぬ程、心の広い人物です。他の「教会」所属の契約者とは、一緒にしないで上げてください」
「………?」
「妖精や、悪魔……異教の神まで、彼は存在を認め、尊重しようとする。そんな存在、「教会」には他にいませんよ。一歩間違えば、破門の烙印を押されるでしょうね、彼は」
「………?」
「妖精や、悪魔……異教の神まで、彼は存在を認め、尊重しようとする。そんな存在、「教会」には他にいませんよ。一歩間違えば、破門の烙印を押されるでしょうね、彼は」
常に綱渡りの状態
それが、カインの現状だ
本人には、カケラも自覚がないようだったが
それが、カインの現状だ
本人には、カケラも自覚がないようだったが
「だから、どうか。彼が「教会」所属だからと言って、嫌わないで上げてください。彼は、本当に心優しくて…………そして、哀れな、人ですから」
「哀れ……?」
「……できれば。彼にも、学校町から離れるよう、告げてください………私が言った事は、伏せて」
「哀れ……?」
「……できれば。彼にも、学校町から離れるよう、告げてください………私が言った事は、伏せて」
…伝えられるのは、せいぜい、ここまでだ
……これが、自分にできる精一杯
……これが、自分にできる精一杯
できれば、この悠司という少年に、学校町から離れてもらいたい
悠司という少年に、カインを嫌わないでもらいたい
……できれば…カインにも、学校町を離れるよう、説得してもらいたい
悠司という少年に、カインを嫌わないでもらいたい
……できれば…カインにも、学校町を離れるよう、説得してもらいたい
「あ……ま、待って!」
立ち去ろうとした、カイザーを
悠司は、慌てて止めてくる
悠司は、慌てて止めてくる
だが、カイザーは止まらない
…これ以上接触し続けて、情報を渡しては……感づかれるかも、しれないから
…これ以上接触し続けて、情報を渡しては……感づかれるかも、しれないから
ただ
「教えてください!………学校町に、何が起きようとしているのか。なぜ、離れなければ、いけないのか!!」
その、問いかけに
止まることなく、振り返ることなく
ただ、簡潔に……告げた
止まることなく、振り返ることなく
ただ、簡潔に……告げた
「……焼き尽くされるか、凍りつかされるか。どちらかだと、思われます」
そして
焼き尽くすことになるのは…………きっと、自分なのだ
祈るような気持ちで、カイザーはここまでを告げた
焼き尽くすことになるのは…………きっと、自分なのだ
祈るような気持ちで、カイザーはここまでを告げた
どうか、どうか………カインと、悠司という少年が、犠牲にならぬように、と
それを、強く、強く……神に祈ったのだった
それを、強く、強く……神に祈ったのだった
to be … ?