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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん、エピローグに至るまで-神智学協会決戦-11

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 異界を渡った者がいる事に馬上のTさんとユーグは気付いた。互いに反応を注意深く探り合い、相手が同じような目で見ていることからその事を掴んでいるであろう事を察して、どちらからともなく口を開く。
「異界を渡って行った者がいるな」
「おそらくオルコット様だろう。エレナは何としてもオルコット様を先に行かせようとするだろうし、お前達の仲間が徹心の異界に退く理由も見当たらない。それに、先程叢雲が崩れる直前にオルコット様が都市伝説を解放したのが見えた」
 ユーグが言っているのは叢雲が空中で散じる直前に現れた光の事だろうと思い、Tさんは推論を述べる。
「あの光、あれは≪虹≫……いや」
 Tさんは虹を生物だと論じる都市伝説をオルコットの契約都市伝説かと思いかけ、違うだろうと考え直す。
 ……光の数が七色を越えていたし、生き物であるようにもみえなかった。あそこまで大量の光を展開する無生物……。
 Tさんは一連の戦闘が開始される時に遠くからオルコットを見ている。その時に確認したオルコットの姿を思い出す。白い肌に白い髪の、組織の主たるに相応しい年輪が刻まれた、しかし若々しい生彩に富んだ雰囲気を持つ男だった。
 ……所持していた武装は宝石を嵌めこんだ鞘入りの剣、柄の色は金だったか……そしてモニカに契約させようとしている都市伝説は≪聖槍≫……。
 おそらくは、とTさんは剣の銘を口にする。
「≪ジュワユーズ≫」
 Tさんの前に乗って手綱を繰っているユーグは無言だ。それ故に正解だろうと思いながらTさんは浅く眉を寄せる。
 ……舞達も心配だが、異界を抜けたという事は師匠が抜けられたという事……。
 叢雲が砕ける姿を見た。一応自壊させたようではあるが、そうしなければならないような展開になっているという事は、力押しで通り抜けられた可能性も高いという事だ。
 ……心配してもしょうがない事ではあるが……。
 千勢の戦い自体は続いているという事は影色の馬が進む先から強烈な風が吹き抜けて来る事から察しがつく。千勢が戦闘不能になっているという事はないだろう。しかしTさんにはあの千勢が敵を黙って通すとは到底思えない。
 ……通り抜けるのを許さざるを得ない状況になっているのか……そうだとすれば相手は相当の難敵。
 無事であればいい。そう考えるTさんを乗せて馬は徹心の異界の入り口を目指して駆けて行く。
 オルコットが徹心の異界に抜けたであろう今、話し合いの時間は取れるだろうか、そう懸念しながら。


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 将門と弘蔵は互いの兵をぶつけ合うようにして、相手の指揮者の動きを止めようと策動していた。
 相手が展開する陣に対応するように自陣を組み直し、兵のぶつかり合いで陣形にほころびが生じれば、そこは指揮者本人がすかさず埋めて行く。
 容赦のない兵の扱いに、身体の一部が欠損しようともものともしない筈の≪夢の国≫の住人も凍死兵達も、戦闘を行える者の数を目に見えて減じていた。
 将門を狙う為に残りの凍死兵達を凸型の突撃陣形に組み直した弘蔵に対応するため、≪夢の国≫の住人達を槍衾の壁として布陣させながら将門が愉快げに言う。
「クク、不死性を持つ兵の用法とはこうでなくてはなぁ。自らが陣頭に立つのもまた一興だが、戦闘経験が少ないあの王自らが陣頭に立つ運用法は効率的ではない」
 そうは思わぬかぁ? という問いかけを無視して弘蔵は倒れてもはや動く事のない凍死兵から弓と矢筒を拝借して、自らも凍死兵の突撃陣形の殿に加わった。
 弓と矢の調子を瞬時に確かめ、矢を矢筒ごとわし掴んで強引につがえる。
 弓を引き絞ると同時に突撃を敢行していた凍死兵達が将門の築いた槍襖を破りきる事が出来ずに落雷の直撃を受けて消し飛ぶ。
「亡者の群れでは我には届かぬなぁ!」
 返す刀で槍襖の密集陣形がそのまま弘蔵に向けて押し寄せてきた。それに対して弘蔵はつがえた矢を撃ち放つ。
「〝水破〟!」
 強引に矢筒ごと放たれた矢はかつて黒雲に隠れた妖異の姿を捉えた伝承を持つ矢だ。
 矢群は伝承通り、≪夢の国≫の住人の壁を撃ち抜いて、その背後に隠れた将門の周囲に突き刺さった。矢はそこで一つの力を発現させる。
「ふん、味な真似を……」
 地を縫った矢は、矢同士で霊力を繋ぎ、結界を結んだのだ。結界の中に将門は閉じ込められた形になる。
 そして弘蔵は今の一撃で手持ちの兵を失った将門が結界を破壊する為の行動に出る前に次の行動に移った。
「〝雷上動〟、いけるな?」
 弓へと言葉をかける。弓へと告げられたのは〝水破〟を放ったとされる霊弓の名だ。〝水破〟の一斉発射の為に乱暴に扱われた弓は、しかし持ち主の使用に耐えた事を己の健在によって示した。それを確認した弘蔵はやはり兵の屍から矢を一矢入手した。つがえ、狙いを定めながら号するのは〝水破〟・〝雷上動〟と共に語られる一本の霊矢の名、
「〝兵破〟!」
 水破が姿を捉えた妖異を撃ち抜いた討魔の矢として語られる一矢は、結界の中で動きを封じられた将門へと複雑な軌道を描いて突き進んだ。〝水破〟によって築かれた結界の檻を透過した霊矢は、
「――ふん」
 将門の一刀のもとに斬り払われた。
 数瞬の後には地で結界を結んでいる〝水破〟を雷の呪力で破壊しつくす。
「こめかみ狙いの討魔の矢、当たるならば我に効力があったやも知れぬなぁ!」
 将門の言葉には応じる者が無かった。その場には誰一人として生きている者が居なかったのだ。見渡す限りに見えるのは弘蔵と将門が指揮していた兵達のおびただしい量の残骸だけで、弘蔵の姿が無い。その気配すらもだ。
「……どういうことだぁ?」
 呟く将門の背後で不意に気配が生まれた。虫か何かのように微弱な気配だ。
 特に気にかけるような何らかの生き物が居るようにも見えない空間、そこに将門は即座に一刀を叩き込んだ。
 同時に硬質なものが折れる音が聞こえる。
 将門が振るった刀が捉えたのは戦端に火を灯した槍、〝小松明〟の柄だ。そしてそれを握って刀を受け止めているのは、
「次は隠行の術か! 武芸者、面白い能力よ。しかし我を殺すには一歩足らぬなぁ!」
「その一歩は今、踏み込めた」
 弘蔵は柄が破損した〝小松明〟を手放し、手持ちの最後の一刀、両刃の直刀を引き抜いた。将門の刀が翻ってくるよりも早く、間髪いれずに刃を身体に突き刺す。刃は鉄身とすら言われた将門の身体を易々と貫いた。
 その行動に対して、将門は問題ないと言わんばかりに言葉と刃を放って来る。
「ははは! それがどうした武芸者よ! そのようなただの刃物では我、平将門は堪えぬぞ!」
 弘蔵はそれでも突き刺した刃を握り込み、呟く。
「たしかに、丈夫に作らせてはいるが、この刃は所詮拳十個分の長さを持つだけの無銘の一品だ」
 しかし、と言葉を続けた弘蔵は剣を抉り込む。将門が着こむ鎧の破片が無理な負荷にはじけ飛び、剣が淡く光る。
「今この戦場において儂が扱う限りにおいて、この剣は神威を殺し尽くす」
「なに……?」
 将門の動きが止めり。そして自身に起きた異常な現象に不審な顔をする。身体に罅が入っていくのだ。
「これは……?」
 神の身体が砕けていく。その原因となっているのは弘蔵が突き刺した剣だ。
「〝天之尾羽張〟と共に」
 弘蔵は剣の銘を言明し、告げた。
「――祀り上げられし神を弑し奉る」
 かつて火神を殺したという十束剣、〝天之尾羽張〟の神殺しが将門を侵し、彼の身体を破砕した。






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