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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 三面鏡の少女-86

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Elfriede

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三面鏡の少女 86


 ぱしん、と
 頬を張られた衝撃にも、ヘンリーはまるで反応を見せない
 寒さで麻痺しているのか、心が麻痺しているのか
 頬を張った本人、パスカルもその様子に眉を顰める
「……普段のツッコミならともかく、こいつにここまでやったのバレたら……まあ抹殺されんだろうなぁ」
 そう呟くと、パスカルはヘンリーの襟首を掴んで無理矢理立ち上がらせ、先程引っ叩いた頬に今度は拳を叩き込む
 鈍い音と共に身体が半回転し、もんどりうって雪の中に倒れ込んだヘンリーは、流石に頬を抑えて目を白黒させている
「そうやってお前を滅入らせるのが奴らの狙いだって気付け、馬鹿野郎!」
「だけど……俺が、やった事は」
「やってなけりゃ、家族三人仲良く奴らのお人形さんだ」
 倒れ込んだヘンリーの傍らに屈み込み、その顔を覗き込みながらパスカルは怒気を込めた声で語る
「あいつが最期に言ってやがっただろう。実の息子を、その肉体で犯してやろうとした時に伝わってきたあの絶望感……ってな。あのクズ女が大喜びするほどに、お前の家族はその行為に絶望してたんだ」
 雪の中で冷え切ったヘンリーの手を、同じように冷たくなった手が包む
「そんな絶望感から、お前は家族を救ったんだ」
「だけど、殺さなくても済んだはずだ……今だって、これだけの人達が助かったのに」
「その時と今じゃ状況が違う。その時にできる最善の事を、お前はできたんだ」
 濡れた髪を、濡れたメイド服を身体に纏わりつかせ、至極真剣な顔で
「幸せになれ、楽しく生きろ。お前が家族のために、お前をこんな目に遭わせた奴らに復讐するために、自分は幸せだと胸を張って言えるようになれ」
「……俺は、幸せになってもいいのか?」
「たりめーだ。有羽の野郎もそうだが、お前らは色々溜め込み過ぎるんだよ。ツレにぐらい悩み相談の一つや二つぐらいしてみろってんだ」
 この場に有羽が居たのなら《お前は相談には乗ってくれるがそれ以上に面白がるだろうが》と突っ込みを入れられていただろう
「恋人が死んだ時すら泣きやしねぇんだぞ、あいつ。茶化さねぇっつーのそんな時ぐらい」
 握った手を解き、その顔を胸元に抱き寄せる
「泣きたいなら胸ぐらい貸してやる。安らぎたいなら膝枕ぐらい貸してやる。ツレぐらいには安心して弱みぐらい見せとけよ」
 そう言ったところで、パスカルが小さく息を吸ったかと思うと
「へくしっ!」
 大きなくしゃみをして、ずずと鼻を啜り苦笑を浮かべる
「はは、なんか格好つかないもんだな。まあ俺じゃこんなもんか」

―――

「なんだか近寄り難い雰囲気ね」
「そうだね……あっちはあっちで任せて良いかもね」
 繰はなにやらもじもじしながら、ディランに付かず離れずといった距離で、その服の裾をぎゅっと握っている
「それより、この状況はどうしようか。このままにしておいたら、皆風邪を引いちゃうどころじゃないし」
「どっかに運ぶなら、やれなくもないけど……こいつに頼んだ方が良いわね」
 倒れた人達の中から、雪の中では目立つ黒服を一人髪の毛で引っ張り出し、ぺちぺちと顔を叩き揺り起こす
「……おや?」
「おや、じゃないわよ。何やってんのよあんたは」
 頭を押さえながら、どこかぼんやりとした顔で辺りを見回す黒服、A-No.18782
「『組織』の方に連絡してよ。これだけの人達の後始末とか私達じゃ無理なんだから」
「いきなり人使いが荒いですね、まったく……二つも都市伝説の影響を受けて調子良くないんですよ」
「一般人だって気絶してるだけだってのに、だらしないわね」
「黒服ってのは都市伝説存在なんだから、影響が大きい時があるんですよ……相性の良し悪しもあるんでしょうけど」
 やれやれといった調子で立ち上がり、濡れた携帯電話の状態を確認しながら電話を掛ける
「まあこの現場はこちらで引き受けますよ。何かあったら連絡しますので、風邪を引かないうちに引き上げて下さい」
 そう言われて、繰は初めて冬の寒空の下に部屋着のままでいる事を自覚した
「ふぁ……くしっ」
 ぶるりと身震いして、ディランに顔を見せないように後ろを向いて小さくくしゃみをする
「繰ちゃん、ちょっと顔赤くない?」
「だ、大丈夫よ! まじまじと見詰めないでよ!」
「え、でも風邪とか……」
「大丈夫だって言ってんでしょ!? 熱とか無いから、ちょ、手でいいでしょ!? おでことか合わせなくても!」
 そんな二人のやり取りを見ながら、A-No.18782はやれやれと肩を竦める
「まったく、ご馳走様ですよ」


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