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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 正体不明-07

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Elfriede

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正体不明 07


 時計を見れば午前七時
 あふ、と欠伸をしながら読んでいた漫画の単行本をぱさりと積んで、両手を頭の上で組んでぐいと伸びをする
「さて、と……一度都市伝説に遭遇してしまえば、この町に居る限り縁は消えないってぇ話だけど」
 借りた個室の後片付けをして、会計を済ませて漫画喫茶を後にする
 黄色く感じる朝日を浴びて、詩卯はにひひと笑う
「や、元気してた? やっぱり縁ってのはあるみたいだね」
「都市伝説の『縁』ってのは、そういうものだからね」
 最初に詩卯を助けた男、Z-No.999はそう言って苦笑を浮かべた
「昨日も襲われたんだって?」
「うん。変身ヒーローみたいなおにーさんに助けてもらった。それもこれも縁ってやつかな?」
「単純に運が良いっていうのもありそうだけどね」
「どこまで続く運かはわかんないけどね。ところでそちらはお知り合い?」
 早朝の駅前ではなかなか目立つ、サングラスの黒服姿
 それが二つ並んでいては更に目立つ
「うちの上司。こないだの事の報告と、昨日の様子を知って……お願いがあるそうなんだ、これが」
 Z-No.999の後ろで、静かに頭を下げるのは
 Z-No.0、然河斬九郎
「報告を受けて、確信とはいかないものの、充分な可能性があると仮定して協力を要請したい」
「協力?」
 斬九郎は表情一つ変えず、冷ややかに
「あの化物……『ブロブ』とその契約者を倒すために、囮になってもらいたい」

―――

「それにしても、よく引き受けたね。二度目なんて助かったのは偶然だろ?」
「まー何て言うのかな……とりあえず誘き出せさえすれば、やっつける算段は立ってるわけでしょ?」
「らしいけどね。そこに、きみが助かる算段は含まれちゃいない」
「正直で良いじゃない、上司さん」
 にひひ、と
 詩卯はいつもの癖のある笑い声を上げる
「バイトとはいえ、カミサマの下で働いてたからね。この命いっこで、もっと沢山の人が危険に晒されるのを防げるなら、まあいいかなって」
「強いね、きみは」
「おにーさんや上司さんが正直だったからね。逆に踏ん切りがついたよ」
 笑顔のまま、ひらひらと手を振って
 くるりとその場で回って見せてから、軽やかな足取りで夜道へと踏み出す
「じゃ、いってくる。お仲間の人達が頑張ってくれる事を祈ってるよ。巫女さんが祈ってるんだからしっかりやってよー」
 冗談めかした様子でそう告げて、夜闇の中へと消えていく詩卯
 Z-No.999は彼女との同行を禁じられている
 逃げるのに適した能力と遭遇した場合、すぐに引き上げてしまうという報告があった以上、一度『ブロブ』の契約者に能力を見せた彼が近くに居るわけにはいかないからだ

―――

「おー、速攻食いついたのかなー? こんな時間に怪しい女の子はっけーん」
 学校町の遥か上空から、節を抜いた竹筒で地上を見下ろす黒羽
 狭い視界の中に、一人の少女が元気に歩いている姿が見える
《黒羽っち、ターゲットは見付かったっスか?》
「おうさ、視界はクリアー。ターゲットはB7の交差点から北へ向かって移動中だよー」
 無線を通じて、待機している面々に目標の位置を告げ
 その背筋に、なにやらぞくりと寒気が走る
「……お?」
 黒羽が遥か下に見下ろす地面で、少女は、真上を向いていた
 夜闇に紛れる黒服姿の烏天狗を視界に捉えているかのように
「流石にこの高さに仕掛けてくるタイプの能力じゃないはずだけど」
 へらりと余裕の笑みを浮かべていたその頬に、冷や汗が伝う
「マジで油断できないかもなー、りっちゃんもせっちゃんも気をつけろよー?」

―――

「う、ん?」
 少女を視界に捉えた梨々の表情が、僅かに歪む
「どうしたの梨々ちゃん?」
「いや……あの子の思考を読んでたんスけど、なんかたまーにもの凄いノイズが」
 梨々の思考に飛び込んできたのは、数十人が集まる賑やかな場所で回線を開きっ放しにしたような、大量の思考
 それが時折、ちりちりと混線するように届いてくる
「それはともかくとして……あの子、考えてるのはご飯を残さないで食べようっていう、お母さんの言葉だけっスね」
「そう……良い子だったのね」
「そうっスね……食欲だけの化物に利用されるのは、ここまでにしてやるべきっス」
 梨々はがさりと『隠れ蓑』を羽織り直す
「『ブロブ』自体の考えは読めないっスけど、餌に引っ掛かって動きを見せれば即行くっスよ」
「ええ、黒羽ちゃんから私に繋いで、斬九郎さんで締め。速攻勝負ね」

―――

 ざり、と
 アスファルトを靴底が撫でる
 緊張でからからに乾いた喉を、唾を飲み込んで無理矢理に湿らせ
 詩卯は告げる
「また会ったね、お嬢ちゃん」
 待ち切れない食べ逃しを察知し、食欲で溢れる涎を飲み込んで
 少女は告げる
「また会ったね、お姉ちゃん」
 声が届く距離ではないものの、互いの顔を確認してそれぞれの口から挨拶のように声が漏れる
 そして少女は、満面の笑顔を浮かべ、ぺこりと頭を下げながら宣言した
「いただきます」
 少女の肌から赤い粘体がじわりと溢れ出し、鞭のように迸った


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